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私はIWCのことを、インヂュニアやパイロット・ウォッチ、アクアタイマーなどのような頑丈で専用の工具時計を製造するメーカーとして長い間見てきた。しかし一方で、IWCのコアコレクションの半分が、表向きはドレスウォッチであることも事実だ。ダ・ヴィンチ、ポートフィノ、そして今日ご紹介するポルトギーゼがそうだ(IWCのジュビリーコレクションの一部としてのみ存在するトリビュート・トゥ・パルウェーバーというドレッシーなモデルもあるが、話が脱線してしまう)。
デザインの観点から見ると、すっきりとした文字盤とスモールセコンドを備えたこの時計は、最近見た他のIWCと同じくらいヴィンテージのRef.325に近いものだ。IWCが、大型ケースを特徴としてきた本コレクションを、やや違う方向に持っていこうとしていることは明白である。とはいえ、HODINKEEの読者の皆様には、きっと気に入っていただけることだろう。
ポルトギーゼは、当初特別な依頼から誕生した時計であるという、このコレクションを際立たせる物語がある。2人のポルトガル人紳士が、IWCに懐中時計の精度を備えた腕時計を注文したのだ。これはIWCが、精度の高い懐中時計メーカーとしての地位を確立していた1930年代後半の話である。IWCは当時、簡単に調整できる大型で手巻きのキャリバーを懐中時計に使用することで、安定した精度を実現していた。2人のポルトガル人紳士に対するIWCのソリューションは、そんな懐中時計のムーブメントを大型の腕時計ケースに収めることだった。これが後にポルトギーゼの名で知られるようになる時計の、誕生にまつわる物語だ。
本日レビューするのは、本モデルから真っ先に連想するデザイン要素―ラウンドケース、視認性の高いアラビア数字、レイルウェイトラックのチャプターリングなど―をもった40mmの自動巻きのポルトギーゼだ。このモデルは、多くの時計愛好家がドレスウォッチに求めるサイズ感を実現している。また、他のモデルとは違い、女性の手首にもフィットするサイズ感でもある。IWCは、7日間のパワーリザーブをもつ42mmの2本の新作も発表したが、今回見ていくのは、直径40.4mm、厚さ12.3mmのモデルである。
とはいえ、40mmの最新ポルトギーゼは、必ずしも小さい時計であるとは言えない。直径と比較して、相対的なケースの厚さは、ビジネスやフォーマルなシーンを十分にドレッシーにカバーしつつも、手首に存在感を感じる時計だ。日付表示が無いこと、ゴールドや、ゴールドメッキ、ロジウムメッキ、またはブルーの美しいアプライドのアラビア数字(個人的にお気に入りの部分の1つで、私が所有するゴールドのIWC Cal.89の数字を連想させる)や、エレガントなリーフ針など時代を超越した時計であることを感じさせる。
一方で、このポルトギーゼ・オートマティック 40は、普段使いの時計として使用できるように思う。また、前述のような手首の上での存在感のために、あえて言えば、あなたの1本のみの時計コレクションとしても良いのではないだろうか。
ポルトギーゼ・オートマティック 40は、4種類のモデルがあり、そのうち3種類はステンレス製、1種類は18Kピンクゴールド製だ。この記事のために撮影した2つのモデルは、針にゴールドメッキを施し、18Kゴールドの数字とインデックスをあしらったゴールドバージョン(Ref.IW358306)と、ブルーの針とアプライドインデックスをもったステンレスバージョン(Ref.IW358304)だ。他2つのステンレスのオプションは、シルバーメッキ文字盤にゴールドメッキの針とアプライドインデックスを備えたRef.IW358303と、ブルー文字盤にロジウムメッキの針とアプライドインデックスのRef.IW358305である。
これら新作に搭載されているのは、IWCキャリバー82200だ。これは、2018年のダ・ヴィンチ・オートマティック “150 イヤーズ”―同じ40.4mmのラウンドケースではあるが輪郭は異なり、もちろんラグの形状も大きく異る―の発表時に初めて登場した新キャリバーだ。耐久性のあるセラミック製のパーツを備えた高効率のペラトン自動巻き機構を搭載した、現代的なムーブメントである。6時位置にはスモールセコンドがあり、2万8800振動/時で駆動し、60時間のパワーリザーブを持つ。
新型のポルトギーゼ・オートマティック 40について、気に入らない点はほとんど無い。ケースは、素晴らしい見た目であるだけでなく、手首にフィットするために設計されているかのように感じられる。欠点を見つけ出すなどほぼ不可能だったが、たった1つだけ見つけることができた。時計をひっくり返してムーブメントを眺めていると、何かが引っかかったのだ。もちろん美しいムーブメントのことではない。それは、3気圧の防水性能だ。
とはいえ、この時計を着けて泳ぎに行く可能性は高いだろうか? そうではないだろう。しかし、2020年の今日に発売される新作には、これ以上の防水性能をもたせるよう努力するべきだと感じている。クロノグラフやミニッツリピーターではないのだ。やや厚みのあるケースだからこそ、それが可能なのではないだろうか。堅牢なケースのため、ステンレスモデルをアリゲーターストラップからカジュアルなストラップに着け替えて、普段使い用になんてことは容易に想像できる。そしてそういう場合は、最低でも50mの防水性能、理想的には100mの防水性能があれば、と思ってしまう。
しかし、前述の通り、これはもうほとんど粗探しだ。この時計はしっかりとした作りで、ムーブメントは自社製であるだけでなく、IWC独自の巻き上げ機構を採用している。特に3つのSSモデルは、全て72万5000円(税抜)という価値提案に相応しい価格だと感じる。
新作のスペック等の詳細は、「IWC ポルトギーゼ・オートマティック 2020年新作 40mmと42mm(新色)の自動巻きモデルが登場」をご覧ください。
そのほか詳細は、IWCの公式サイトへ。
写真: ティファニー・ウェイド(Tiffany Wade)