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A Week On The Wrist IWC ポルトギーゼ・オートマティック 40を1週間レビュー

初代モデルを彷彿とさせるシンプルなスタイルで登場したファン待望の小振りなポルトギーゼ・オートマティック 40は、想像以上に“使える”時計だ。

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 皆さんにとって、憧れの時計とはどんな時計だろう。筆者にとってその一つはオメガのスピ⁠ードマスタ⁠ー 1957 トリロジーだった。Instagramのライブ配信などで何度も話をしているため、飽き飽きしている方もいるかもしれないが、これはHODINKEEにジョインする記念に購入した時計だ。実はこのとき、もう一つ購入するかどうか迷っていた時計がある。それが今回取り上げるIWCのポルトギーゼ・オートマティック 40だった。

 本機が発表されたのは2020年4月。発表されたばかりということもあり、結局購入することはできなかったのだが、今もって欲しい時計の筆頭となっている。そんなことから、自身初のA Week On The Wristを製作することが決まったとき、まずはこの時計で企画しようと心に決めていた。時計を1週間連続で着用してじっくりレビューするという本企画は、購入を考えていた自分には願ったり叶ったりだ。やっぱり欲しいと思わせてくれるかもしれないし、もしかしたら逆に気なるところが見えて別の時計に気持ちが移るかもしれない。いずれにしても、購入したいか否かの判断がつけられると思ったのだ。

 1週間ポルトギーゼ・オートマティック 40を着用してみて、どんなところに魅力を感じたのか、そして結局どちらに自分の気持ちが傾いたのか。それを皆さんにお伝えする前に、そもそもポルトギーゼとはどんなコレクションであるかを振り返っておきたい。


ポルトギーゼとは

1939年 初代ポルトギーゼ Ref.325(Cal.74搭載)

 1939年に登場した初代ポルトギーゼ Ref.325(Cal.74搭載)。以降、ポルトギーゼにはさまざまなモデルが登場するが、搭載ムーブメントからいくつかに分類できる。1944年ごろに登場したのが、第2世代のポルトギーゼ(Cal.98搭載)、そして登場年は不明だが、中断期間を含めて1981年まで製造された第3世代のポルトギーゼ(Cal.982搭載)がある。

 そして、再びシンプルなポルトギーゼが日の目を見るのが1993年。愛好家から“ポルトギーゼ・ジュビリー”と呼ばれている記念モデルのRef.5441(Cal.9828搭載)だ。その後、シンプルな機能のポルトギーゼが登場するまでにはかなりの時間を要することになるが、2008年にヴィンテージコレクションのポルトギーゼ・ハンドワインド(Cal.98295搭載)、そして2010年に登場したポルトギーゼ・ハンドワインド(Cal.98295搭載)などがあった。

1993年 ポルトギーゼ 記念モデル Ref.5441(Cal.9828)

2008年 ヴィンテージコレクションのポルトギーゼ・ハンドワインド(Cal.98295)

2000年 ポルトギーゼ・オートマティック 2000(Cal.5000)

2010年 ポルトギーゼ・ハンドワインド Ref.IW545408(Cal.98295)

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 紹介した時・分表示にスモールセコンドというシンプルなポルトギーゼは、実はすべて手巻きモデルである。2000年に既存のポルトギーゼ・オートマティックへと続く「ポルトギーゼ・オートマティック 2000」が登場するが、これはダイヤルにパワーリザーブインジケーターを備えたロングパワーリザーブモデルだ。最新作であるポルトギーゼ・オートマティック 40は自動巻きとしては初となる、オリジナルに近いシンプルなスモールセコンドのみの機能を実現したモデルなのである。さて、本企画の主人公であるポルトギーゼ・オートマティック 40とは、どんなモデルなのか。その詳細を見ていきたい。


ダイヤルについて

 本機のダイヤルに目をやると、細長いリーフ針、アラビア数字インデックス、そしてダイヤルとスモールセコンドを囲むようにレイルウェイミニッツトラックをあしらうなど、歴代ポルトギーゼにおけるデザインセオリーをしっかりと押さえている。

 リーフ針は繊細な印象があるが、作りは意外にも立体的。針のハカマ(針を取り付ける根元の軸)に台座を設け、ダイヤルとの間隔を詰めて美しく整えるのはポルトギーゼの伝統だ。また、アラビア数字インデックスはアプライド、スモールセコンドは同心円状パターンのスネイル装飾仕上げを採用している。一見するとシンプルなデザインだが、実は多彩なディテールを備えており、細部にまで神経を行き渡らせて作られていることがよくわかる。


ケース・ベゼルについて

 多彩な表情を見せるダイヤルと比べると、ケースは思いのほかシンプルなつくりをしている。ほかのポルトギーゼと同様、ケースは側面が垂直なシリンダースタイル。ベゼルにはパテック フィリップなど往年の高級時計が好んで用いたコンケーブ(内側に反った)デザインが採用されている。

 どちらも古典的な時計によく見られるディテールでクラシックな印象を与えているが、決してクラシックになり過ぎないのはケースが肉厚なためだ。もう少しラグを絞れば繊細な印象になったと思うが、やや太めのラグは程よく存在感を主張する。カジュアルなつけ方にもマッチさせるなら、個人的にはやはりこのくらいのボリューム感でよかったと思っている。


ストラップ・尾錠について

 ストラップには、針やインデックスの色に合わせてブルーのアリゲーターが採用されている。ちなみにブルーダイヤル、そしてシルバーメッキ×ゴールドインデックスのバリエーションにはブラックアリゲーターストラップがつく(18Kレッドゴールドモデルではダークブラウンアリゲーター)ため、この色味のレザーが採用されるのは、ポルトギーゼ・​オートマティック40では本機だけだ。

 レザーは厚めのしっかりとしたつくりだ。丈夫そうなのはいいところだが、つけ始めは固く腕になじむまでにはやはり時間がかかる。そして尾錠にはバタフライ・フォールディング・クラスプ(新開発)が採用される。慣れるまでは開けにくく感じるが、クラスプを引き上げれば開き、逆にクラスプの板を折り畳み上から押せばパチっと閉まり、着脱も簡単。レザーも痛めにくく便利だ。


ムーブメントについて

ポルトギーゼ・オートマティック 40が搭載するCal.82200。

 注目すべきは、やはり本機が手巻きではなく自動巻きということであろう。スモールセコンドのみのポルトギーゼは本機が登場するまでは現行コレクションにはなく、近いものとしては手巻きのCal.59215を搭載したポルトギーゼ・ハンドワインド・エイトデイズ(現在は生産終了)があったが、こちらは3時位置にデイト表示を備えていた(ケースサイズは43.2mmと大きい)。

 また、自動巻きでラインナップにあるのは、Cal.52010を搭載したポルトギーゼ・オートマティック(下写真)だが、こちらはダイヤルにパワーリザーブインジケーターを備えており、シンプルなスタイルとは言い難く、サイズも42.3mmとやや大きい。価格もSSモデルで146万3000円(税込)と、79万7500円(税込)のポルトギーゼ・オートマティック 40に比べるとかなり高額になる。

現行のポルトギーゼ・オートマティック。42.3mmという数字だけ見るとそこまで大きくなさそうだが、細いベゼルギリギリまでダイヤルスペースを広げているため、より大きく感じる。

現行のポルトギーゼ・オートマティックが搭載するCal.52010。こちらもペラトン自動巻き機構を採用しており、168時間(約7日間)ものロングパワーリザーブを誇る。

 そしてポルトギーゼ・オートマティック 40に採用されたのは、Cal.82200だ。これは2019年のダ・ヴィンチ・オートマティック “150 イヤーズ”で初登場となったムーブメントである。60時間パワーリザーブ、2万8800振動/時のハイビートで、自動巻き機構はIWC伝統のペラトン式。主ゼンマイを巻き上げる爪と自動巻きローターを支えるベアリング(おむすび型の部品)、そして爪が噛み合う中間車もセラミックス製であり、特に摩耗が生じやすいパーツがすべてセラミックス製となったため、設計上は長期の使用に耐えうる仕様となった。

 普段使いとして性能的に申し分はないが、気になるのはリューズで主ゼンマイを巻き上げるときの方向が一般的な自動巻きとは逆ということだ。一般的な自動巻きの場合、主ゼンマイの巻き上げはリューズを12時側(上方向)に巻くが、本機の場合は6時側(下方向)に巻かないとならない。そもそも自動巻きのため、あまりリューズで主ゼンマイを巻くことは好ましくないし、慣れれば気にならないかもしれないが、はじめはこの仕様に違和感があるという人は少なくないのではないかと思う。


ア・ウィーク・オン・ザ・リスト

 腕にのせてみて、まず気に入ったのは、決して大きなサイズではないのに、とてもダイヤルが見やすいというところだ。これはベゼルを薄くしてダイヤルのスペースを出来るだけ広くとるポルトギーゼならではのデザインのおかげだ。しかも、アラビア数字インデックスがアプライド仕様であることに加えて艶のあるポリッシュ仕上げになっているのに対して、ダイヤルのベースの仕上げは表面を少し荒らしたマット仕上げだ。この仕上げの違いは、ダイヤルにメリハリを生み、時刻を読み取りやすくしている。

 新型ポルトギーゼのこの視認性の高さは明るいところに限った話ではない。前述のようにベゼルを薄く、ダイヤルスペースを広く取っているおかげで文字盤に光が入りやすい。夜光は施されていないので、さすがにダイヤルに光の当たらない真っ暗な場所での視認性は期待できないが、たとえ暗がりでも光を受けると立体的な針やインデックス、そしてダイヤルの仕上げの違いによってコントラストが生まれ、とても時刻が読み取りやすかった。これは実際に昼夜を通して着けてみて感じたこの時計の最大の魅力だ。


競合モデル

 正直なところ、この時計を好む人は筆者と同じようにポルトギーゼという存在そのものに引かれて興味をもつ人が多いのではないか。そのため、競合モデルと比較して検討するということはなじまないかもしれないが、「アイコニックなデザインやムーブメントを備えており、40mmのSSモデルで、ドレッシーにも日常使いにも耐え得るシンプルな高精度モデル」という条件から、ポルトギーゼと競合しそうなモデルをピックアップしてみた。

ジャガー・ルクルト マスター・コントロール・デイト

 ジャガー・ルクルトのマスターコレクションは、ブランド曰く必要最低限なミニマリズムにフォーカスしたアイテムである。その表現が物語るとおり、デザインに派手さはなく、歴代モデルを含めてツウ好みの時計として愛好家から高い評価を得ている。本機は2020年に発表された新作だ。搭載するCal.899ACは、フリースプラングテンプ、シリコン製脱進機の採用などの結果、ベースのCal.899よりもパワーリザーブが約70時間へと延びるなど、基本性能が向上。ポルトギーゼと同等以上の性能を備えている。

 サイズはポルトギーゼ・オートマティック 40とほぼ同じ40mm。厚みはポルトギーゼが12.4mmであるのに対し、8.78mmとかなり薄い。普段使いにも適した扱いやすいデザインだが、個人的にはカジュアルスタイルよりも、ポルトギーゼ以上にビジネスシーンやスーツとの相性がよいモデルだと感じている。そうした場面でつけることが多いなら、一考すべき選択肢だろう。

価格:82万2800円(税込);ジャガー・ルクルト公式サイトへ。

ショパール L.U.C XPS

 L.U.Cコレクションが誇る丹念な仕上げとディテールへのこだわりを受け継ぐL.U.C XPS。ショパールが説明するように、SSケースにエレガントな気品を醸す1本だ。本機が搭載するCal.L.U.C 96.50-Lはショパール考案のツインテクノロジー(積載式二重香箱)機構により約58時間パワーリザーブを備える。加えて、COSC認定クロノメーターの高精度仕様であることも特徴だが、これらの性能をマイクロローター式自動巻き機構により、ムーブメントの厚みを3.3mmに抑えつつ実現している点は驚くべきポイントだ。

 40mmのケースサイズに対して、ケース厚は極薄の自動巻きムーブメントのおかげで7.2​mmに収まっている。デイト表示こそついているものの、スモールセコンドの自動巻きという点で言えば、競合モデルのなかでスタイル的に最もポルトギーゼ・オートマティック 40に近い。このモデルも性格的にはカジュアルというよりビジネスシーンやドレスアップしたスタイルの方が相性がよく、薄くエレガントなデザインは歳を重ねてもつけられるだろう。長く愛用することを考えると、悩ましい選択肢の一つとなりそうだ。

価格:106万7000円(税込);ショパール公式サイトへ。

グラスヒュッテ・オリジナル セネタ エクセレンス

 見ためはまったく異なるものだが、クラシックなデザイン、ポリッシュ仕上げのブルースティール針や表面をやや荒らしたシルバーカラーグレイン仕上げのラッカーダイヤルなど、ポルトギーゼ・オートマティック 40に最も近い競合となりそうなのが、このセネタ エクセレンスだ。搭載するCal36-01はポルトギーゼが搭載するCal.82200の約1.6倍以上となる約100時間のロングパワーリザーブを実現している。

 本機もどちらかと言えばビジネスシーンやスーツとの相性がよさそうだが、デザインバリエーションとして夜光つきのアラビア数字インデックスと針を備えたパイロットウォッチ風デザインもラインナップされており、非常に魅力的な選択肢となりそうである。ハイスペックでデザイン的にも筆者の好むところだが、難点を挙げるとすれば112万2000円(税込)という価格だ。ポルトギーゼ・オートマティック 40が79万7500円(税込)であることを考慮すると競合としてはやや価格が高いのだ。

価格:112万2000円(税込);グラスヒュッテ・オリジナル公式サイトへ。


最終的な考え

 日常的に使用するのに申し分ないパワーリザーブを備えたムーブメント、そして何と言っても非常に視認性の高いダイヤルはポルトギーゼ・オートマティック 40の大きな魅力だ。また、スモールセコンドにおいても高精度時計のセオリーを守り、秒単位で時刻がちゃんと読み取れるインデックスを設け、針をきちんとリーチさせるという細かく適切なディテールは、とても自分好みのつくりだった。

 そして、何より実際に着けてみて感じたのは、スタイルとしてはクラシックだが程よいボリューム感があるため、かしこまったスーツスタイルだけでなく、カジュアルな格好にもちゃんと収まってくれるところだ。この点は、ほかの時計ではなかなか得られない大きな魅力だと思う。特にドレスウォッチとしてつけられるものを1本持っておきたいが、普段あまり出番のない時計に抵抗があった筆者にとって、普段使いもしやすいこの時計は本当に魅力的に映った。

 さて、結局、気持ちはどちらに傾いたのか? 間違いなく欲しいという方向に傾いている。むしろ、1週間レビューしたことでこの時計を買わずして何の時計を買うのか、というくらいますます惚れてしまった。

 唯一の悩みは、ポルトギーゼ・オートマティック 40のSSモデルには3つの選択肢があるということ。本企画で着用したシルバーメッキダイヤルにブルーの針とブルーのアワーインデックスを合わせたIW358304のほか、同じシルバーメッキダイヤルにゴールドの針とインデックスを合わせたIW358303、そしてブルーのダイヤルにロジウムメッキの針とインデックスを備えたIW358305のなかで、どれがいいかという点だ。正直、どれも魅力的なのだ。

Ref.IW358303

Ref.IW358305

IWC ポルトギーゼ・オートマティック 40 Ref.IW358304。SSケース、シルバーメッキダイヤル、ブルーのアリゲーターストラップ。3気圧防水。ペラトン自動巻き機構、秒針停止機能つきスモールセコンド搭載、60時間パワーリザーブ、31石、2万8800振動/時のIWC自社製Cal.82200を搭載。価格:79万7500円(税込)。詳細は、IWC公式サイトをご覧ください