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Introducing オリスの新しい自社製ムーブメント Cal.400

これまでとは全く異なるオリスと言ってもいいかもしれない。

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メーカーが新しいムーブメントを発表することはそれほど多くないが、多くの人がご存知のように、それにはそれなりの理由がある。ムーブメントは、時計の中で最も語られることの少ない部分であるにもかかわらず、時計を時計たらしめている部分であり、その開発や製造には非常に高額な費用がかかるからだ。いわゆる新しいムーブメントは多くの場合、実際は既存のムーブメントのバリエーションであり、全く新しい自社製キャリバーを開発するには、何年もの歳月、そして数百万ドル(または円なのか、フランなのか、ユーロなのか。メーカーがある場所によって異なる)にもおよぶ費用を要する。その結果、自社製ムーブメントの量産化は、一般的に巨大グループに属し、潤沢な資金をもっているか、または量産化を行うために必要なリソース(と資金)をもっている個別企業によって行われる。これは全てオリスが発表した自動巻きで、5日巻き、そして耐磁性を備えたムーブメントである新しいCal.400の発表が、オリスとファンにとって大きな意味をもつということを示している。

新しいCal.400。何かに似ている?

 オリスのファンもムーブメントマニアも、これがオリス初の自社製ムーブメントではないことを知っているだろう。初の栄誉は2014に発表されたCal.110、すなわち、必要なパワーリザーブを提供するために大きな香箱を中心として構築された10日間パワーリザーブの手巻きムーブメントに贈られるものだ。この発表以降、Cal.110にはいくつかのバリエーションが登場した。パワーリザーブインジケーターとスモールセコンドを搭載したCal.110に続き、Cal.111(デイト表示付き)、Cal.113(デイト、月、ビジネスカレンダー、曜日表示、パワーリザーブインジケーター付き)、Cal.114(単独調整可能な24時間針付き)、Cal.115(Cal.114のスケルトンバージョン)が発表されている。

 10日間のパワーリザーブを確保できるように、110シリーズのキャリバーは34mmと、かなり大きく、これまでに発表された時計も同様に大きくなっている(たとえば、ビッグクラウンプロパイロットは44mmある。だが、ロングパワーリザーブモデルの基準からいえば、それほど巨大なものではない)。そのため、このムーブメントとそれを搭載した時計はややニッチな製品になりがちであり、オリスのムーブメントラインナップには、より幅広い時計に使用するのに適した素朴なプロポーションの自動巻きキャリバーの登場が、長い間求められていた。それが新しいCal.400だ。

オリスによると、Cal.400は、エネルギー伝達の効率を高め、長いパワーリザーブに貢献する特殊な歯形のギアを採用しているという。

 リリース前のディスカッションの中で、オリスはこのデザインの目的は“問題を解決すること”であり、単に自社製ムーブメントをもつためのものではないと述べている。このロングパワーリザーブは、他の時計を所有している可能性のある人(オリスの時計ユーザー)や、手首から時計を数日間外していても、まだ動いている時計を見つけたいという人が、わざわざワインダーを購入する必要なく、便利に使い続けられることを目的に設計されている。

 Cal.400の動力は、2つの香箱によって供給され、歯車の歯形や脱進機を含む輪列の設計は、摩擦によるエネルギー損失を最小限に抑え、効率を最適化することを目的としている。オリスによると、従来のムーブメントでは、エネルギー伝達効率が平均70%であるのに対し、Cal.400では約85%に向上しているという。この優れた伝達効率は、非常に低い摩擦で相互作用し、もちろん、潤滑油を必要としないシリコン製レバーとガンギ車を使用することで実現した(このムーブメントや同じソリューションを使用している他のムーブメントでは、このことが長期的な精度安定性の向上に貢献している)。

 シリコン製のヒゲゼンマイを使用していないにもかかわらず、このムーブメントでは、テンプ、エスケープホイール、レバーなどの重要な部品の軸はもちろんのこと、レバーやエスケープホイールなどを含めた合計30個ものパーツが磁性体で作られている。オリスによれば、Cal.400は2250ガウスの負荷テストを受けているという。また、“耐磁”時計の国際規格では、時計が耐磁性ありと名乗るためには、200ガウスの磁場に曝された後、精度の平均日差が±30秒以下でなければならないと規定されているようだが、Cal.400はそれを遥かに超える2250ガウスの磁場に曝された後の平均日差が±10秒しかない。

 さらに興味深いことに、オリスは自動巻きムーブメントの典型的な故障の原因となるボールベアリングを使用しないことを選択した。その代わりに、固定されたピボットを中心に回転するスライドベアリングシステムを採用している。直感的には、ボールベアリングを使用したものよりも摩耗が激しく、ストレスのかかるデザインのように思われるかもしれないが、オリスはこのシステムとムーブメントの他の技術的解決策に十分な自信をもっており、10年間の品質保証と10年毎のオーバーホール推奨期間を提供する。これは、通常5年で推奨さている値の2倍にあたる(この20年でシリコンをはじめとするハイテク素材のソリューションが時計製造に浸透してきたが、この間隔は徐々に向上している)。

 ムーブメントは28mm×4.75mmと、明らかに汎用性の高いエンジン(業界では“トラクター”と呼ばれている)であり、十分に薄く、追加機構を動作させるのに十分なトルクを生み出す(また、提供されたプレスイメージでは、オリスベアを象ったようなイメージに見える)。 このモデルは、オリスにユーザーに信頼性が高く、耐久性に優れた自社製ムーブメントをリーズナブルな価格で提供することを目的としていることは明らかだ。ちなみに、オリスは、自社製キャリバーでは難しい、あるいは不可能と思われるエントリーレベルの価格でも時計を提供するために、エボーシュムーブメントの使用を完全に放棄する予定はないと述べている。分単位で手頃な価格の良い時計が少なくなっていることを考慮すると、これは広く時計業界が称賛できることだと私は考えている。そして、今後数年の間に、Cal.400がより広く、より広範囲の時計に搭載されていくのを見ても、私は驚かないだろう。結局のところ、新しいムーブメントは、往々にして様々な調和に対する序曲となるのである。