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Photos by TanTan Wang
1月にルイ・ヴィトンが新作エスカル ミニッツ・リピーターを発表したが、その真価を理解するまでに少し時間がかかった。正直なところ、ドゥ・ベトゥーンとのコラボレーションモデルの影に隠れてしまったのかもしれない。しかし、ようやくエスカル ミニッツ・リピーターと向き合ってみたところ、じっくりと観察する価値のある時計だという結論に至った。
2024年にコレクションを刷新して以来、エスカルは3針のドレスウォッチとして、数多くのダイヤルバリエーションを展開してきた。しかし、今年1月は複雑機構の祭典のようだった。このミニッツリピーターと並んで、エスカル ワールドタイム フライング トゥールビヨンや、独創的なエスカル ツインゾーンが発表されたのである。これら複雑機構はコレクションに豊かな個性をもたらし、そしてアップデートされたケースデザインは、エスカルが3針モデルの枠を超えていかに優れたプラットフォームとして機能するかを証明している。
エスカル ミニッツ・リピーターのダイヤルは実に見事で、多くの要素が盛り込まれている。ひと目見ただけで、視線はすぐに中心部へと引き寄せられる。そこには、ゴージャスなグレーのフラム ギヨシェ装飾(flammé guilloché/編注;炎のような模様)をあしらったダイヤルが鎮座しているからだ。サンレイギヨシェ装飾に波のような動きを加えたこのダイヤルは素晴らしく、曲線を描くラインがあらゆる角度で光を捉える。このギヨシェ装飾は、アンティークのローズエンジン製の手動旋盤を用いて手作業で施されている。これはラ・ファブリック・デュ・タンが最近特に注力している分野だ(自社製造のダニエル・ロートのギヨシェダイヤルでも見られる)。
ダイヤルの外周にはレトログラード式のミニッツトラックが配置され、ファセット加工を施した大きな分針が毎時0分に瞬時に戻る。このアプライドインデックスはわずかに盛り上がっており、その先端はブランドのトランク製造に由来するテーパードした形状で、ゲージをモチーフにしたピンで装飾されている。プリントされたレイルウェイトラックでは、5分ごとにプリントされた数字と、10分ごとのアプライドインデックスが調和している。
ジャンピングアワー表示は6時位置に堂々と配置されており、大きな窓の周囲にはローズゴールド製の面取りと、ポリッシュ仕上げが施された凹状のリングが備わっている。これは一見さほど重要ではないデザイン要素に思えるかもしれないが、同色のジャンピングアワー表示を、視覚的に強いギヨシェ装飾のパターンから完全に分離させるという素晴らしい役割を果たしている。私は過去にブランドがダイヤルデザインとして、ロゴやモチーフを過度に繰り返す傾向があると指摘したが、今回のダイヤルの仕上がりはブランドのラインナップ内で最も気に入っている。写真では、このダイヤルは要素が多くて騒がしいと思われるかもしれないが、実物を見れば、ダイナミックでありながらも高い視認性を保った、まさに傑作と言えるプロポーションだ。
直径40mm、厚さ12.3mmという程よいサイズ感のローズゴールド製ケースは、2024年にエスカルコレクションのデザイン刷新時に確立された新世代のデザインコードを継承している。真上から見ると、ケースのシルエット自体にそれほどユニークさはない。しかし側面から見ると、ラグに施された装飾が、ブランドのアイコニックなトランクに備わっている真鍮製の金具を模していることがわかる。同様に、八角形のリューズもトランクの鋲を彷彿とさせるが、これらは純粋に装飾だ。それらはルイ・ヴィトンのモチーフであるが、控えめに施されており、時計全体の印象を邪魔することはない。驚くべきことに、この時計は50mの防水性能を備えているが、これはミニッツリピーターとしてはそれだけで驚異的な数値だ。手首への収まりもきわめて快適で、35万ドル(日本円で約5600万円)の時計に対して言うのは信じられないかもしれないが、ミニッツリピーターとしては日常使いに適していると言えるだろう。
巧みに隠されたミニッツリピーターの操作用スライド。
このモデルの控えめな技巧をさらに際立たせているのが、ミニッツリピーターのスライドレバーだ。多くのミニッツリピーターは、ケースの左側に大きな歯の付いたスライダーがあるため、すぐにそれとわかる。しかし本作に備わっているリピーターを作動させるためのスライダーは、実は左下のラグにある真鍮製の金具部分に組み込まれているのだ。ほかのラグにはない縦縞模様の溝によってその存在を明かしているが、スライド用の溝や切り込みは見えない。このスライダーの仕組みはとても独創的で、実物を手にして最初の数分間、どうやって作動させるのかまったく見当がつかなかったほどだ。
ミニッツリピーターの音色は明るく、ケースの防水性能を考慮すれば驚くほどの音量だ。シースルーバックからは、自社製のラ・ファブリック・デュ・タン Cal.LFT SO13.01を存分に眺めることができる。このキャリバー自体は新しいものではなく、ラ・ファブリック・デュ・タンがほかのいくつかの時計、特にジェラルド・ジェンタのラインナップで使用してきたものだ。Only Watchオークションのために製作されたミッキーマウスのジャンピングアワーを搭載したミニッツリピーターや、昨年のドナルドダックバージョンを覚えている人もいるだろう。それらのモデルではムーブメントが反時計回りに90°回転しており、ジャンピングアワーが3時位置に配置されていた。昨年発表されたジェラルド・ジェンタの限定生産のリピーターにも、ジャンピングアワーを除けば、同じ構造が採用されている。
ルイ・ヴィトンの名を冠した本作は、ストライプ装飾や際立ったアングラージュが施されており、ジェラルド・ジェンタに搭載されている同キャリバーと比較しても遜色はない。もちろん、ブリッジのブランド名は適切に変更されている。キャリバー自体がすでに素晴らしい外観を備えているため、これは悪いことではない。しかし35万ドル(日本円で約5600万円)を時計に投じる人々は共通したムーブメントではなく、何かしら独自の工夫を期待するかもしれない。とはいえ、そのウォッチメイキングは依然として壮観だ。
マークは1月にこの時計を紹介した記事で、エスカルをほかのミニッツリピーターと比較検討し、この新作は6桁半ばという価格にもかかわらず、比較的お買い得に感じられるかもしれないと述べていた。ここで彼の意見を繰り返すつもりはないが、私も同意見だ。これは、私が実際に着用している姿を想像できるミニッツリピーターだ。しかし本作で私が最も感銘を受けたのは、その全体的なデザインがいかに考え抜かれているかという点である。ルイ・ヴィトンによるマキシマリスト的なウォッチメイキングを最も繊細に表現した作品と言えるかもしれない。もしこれが同ブランドにおけるウォッチデザインのトレンドだとしたら、さらなる展開が楽しみでならない。
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