我々が知っていること
先日、東京で開催されたイベントで発表されたばかりの本作は、ルイ・ヴィトンが進める独立系時計師とのハイレベルなコラボレーションの最新作で、きわめて希少なLVDB-03 GMT ルイ・バリアス(LVDB-03 GMT Louis Varius)だ。今回、この世界的ラグジュアリーブランドがパートナーに選んだのは、スイスの独立系ブランドであるドゥ・ベトゥーンだ。ラインナップは10本限定のチタン製トラベルウォッチである本作、そしてペアリングされた腕時計の巻き上げと時刻合わせを行うことができるクロック、LVDB-03 サンパティーク ルイ・バリアスが付属する2セットで構成される、計12本の腕時計と2台のクロックだ。このルイ・ヴィトン×ドゥ・ベトゥーン ルイ・バリアス プロジェクトは、ルイ・ヴィトンのタンブール タイコケースやトランクと、ドゥ・ベトゥーンのドニ・フラジョレ(Denis Flageollet)氏が長年培ってきた独創的なウォッチメイキング、すなわちチタンを纏った星空のような天体の世界観を融合させることを目指している。
LVMHのウォッチ部門ディレクターであるジャン・アルノー(Jean Arnault)氏が、ドゥ・ベトゥーンの共同創業者であるドニ・フラジョレ氏とともに聴衆に語りかける。
新作のLVDB-03 GMT ルイ・バリアスは12本限定。
LVDB-03 サンパティーク ルイ・バリアスは2セット限定。
語るべきことは山ほどあるが、まずは腕時計から始めよう。LVDB-03 GMT ルイ・バリアス(ドゥ・ベトゥーンのスターリーバリアスにちなんだ遊び心のある名称だ)は12本限定で、そのうち2本は前述のクロックとセットになっている。12本すべての腕時計は共通のスペックを持ち、ドゥ・ベトゥーンのシグネチャーであるブルーで、熱酸化処理を施したチタン製の直径45mm×厚さ14.05mmのタンブール タイコケースを採用。ラグとリューズにはプラチナが使用されている。ラグ幅や防水性能などの細かなスペックについては後述する。
このコラボレーションのインスピレーションについてより深く知るために、ジャン・アルノー氏とドニ・フラジョレ氏の長い対談を収めたルイ・ヴィトンとドゥ・ベトゥーンによる動画を掲載した。彼らはこの時計やプロジェクトの目標、そしてそもそもなぜ両ブランドが手を組むことになったのかについて語っている。また新作の腕時計、クロック、トランク、そして細部に宿る手仕事の美しさを捉えたショットも満載だ。
機能面では、LVDB-03 GMTはシンプルに時間(時・分)を表示し、その周囲をポインタージャンピングデイトが囲むレイアウトを採用。さらにその外周には、球体の惑星型マーカーで昼夜(昼はローズゴールド/RG、夜はブルースティール)を示す、一段低い位置に配された24時間表示の第2時間ゾーンを備えている。その外側には、薄いベゼルの縁まで広がるタンブールスタイルの時・分トラックがあり、傾斜したフランジの12カ所に“LOUIS VUITTON”の文字が刻まれている。
中央のダイヤルはブルーチタン製だ。そこにドゥ・ベトゥーンらしい魅力を加えているのが、ホワイトゴールド(WG)の要素、18KRGの太陽、そして“LV”ロゴを描き出すWG製の星座だ。
内部には、DB2507LVと呼ばれるドゥ・ベトゥーン製の手巻きムーブメントが搭載されている。404個の部品で構成されるこの2万8800振動/時で振動するムーブメントは、サイズが直径30mm×厚さ10.35mm。自動調整式のツインバレルにより5日間のパワーリザーブを誇り、チタン製テンプ、シリコン製ガンギ車、そしてドゥ・ベトゥーン独自のトリプルパラシュートショックアブソーバーを備えている。さらに本作の“LV”仕様にはクロックとの接続機能が追加されており、リューズを介して巻き上げの制御や、針の位置調整に必要な情報をやり取りすることができる。12本すべての腕時計にこのサンパティーク機能が備わっているが、対応するクロックは2台しか製造されない。プロジェクトのリーダーたちへの敬意を表す仕上げとして、ムーブメントには“Louis cruises with Denis(ルイはドニと共に航海する)”と刻印されている。
LVDB-03 GMTにはブラックレザーのライニングを施したブルーのファブリックストラップと、コニャックカラーのアリゲーターストラップの2本が付属し、それぞれにブルーチタン製のバックルが組み合わされる。
最後に、これはルイ・ヴィトンのクリエイションであるため、各時計にはモノグラムのトランクと、特別なトラベル用ウォッチケースが付属する。トランクはチタン製で、コーナープロテクターにはドゥ・ベトゥーンの手法を用いたブルーポリッシュ仕上げを施したチタンが採用されている。マット仕上げのこのトランクは、ルイ・ヴィトンがトラベルトランクの構造に軽量な金属を使用したきわめてまれな例だ。
クロックを含まない10本の腕時計の価格は、税抜きで37万5000ユーロ(日本円で約6940万円)となる。
では、クロックについて語ろう。
真に別次元の世界へと誘うのが、ドニ・フラジョレ氏とドゥ・ベトゥーンが製作した一対のLVDB-003 サンパティーク ルイ・バリアス クロックだ。これらはマリンスタイルでチタン製のデスククロックで、重量は約10kgにおよぶメテオライトのマルケトリが施されている。
LVDB-003 サンパティーク ルイ・バリアス クロック。
このクロックのどこから説明すべきか迷うほどだ。確かにこれは置き時計だが、LVDB-03 GMTのサポートシステムでもあり、間違いなくひとつの芸術作品でもある。
サイズは幅310mm×奥行き266mm×高さ260mm。天の川をテーマにしたモチーフを隠さないよう一対の三角形のフローティング針を用いたディスプレイの中央には、創業者ルイ・ヴィトンの星座にちなんだヘラクレスの像が手彫り(ミシェル・ローテン/Michèle Rothen氏による彫金)された、5NRGのドームが鎮座している。
そのドームの下には、LVDB-03 GMTを設置するためのプラットフォームがある。腕時計を外してここにセットすると、“サンパティーク”機能が作動する。LVDB-003 クロックは腕時計のリューズを介した接点を通じて、着用していないあいだに時刻を合わせ、ゼンマイを巻き上げることができるのだ。ストラップを外す必要すらなく、ルイ・ヴィトンが“クレードル(ゆりかご)”と呼ぶ場所に時計を置くだけでよい。
言うまでもないかもしれないが、この腕時計は(過去のいくつかのサンパティーク機能を搭載したクロックとは異なり)巻き上げや時刻合わせにクロックを必須とはしない。LVDB-03 GMTは、従来の時計と同様に手動で操作可能だ。このクロックは夜間の巻き上げを想定しており、公称±7分の範囲内で時刻を修正することができる。完全に機械的な方法で、リューズを介して腕時計の時刻を合わせるクロック。これに魔法のような魅力を感じずにはいられない。
クロック自体はチタン製のキーで巻き上げられ、1万8000振動/時で時を刻みながら11日間のパワーリザーブを維持する。ルモントワール・デガリテ(コンスタントフォース機構、上の写真で一部確認できる)を含む760個以上の部品で構成され、随所に高度な手作業による仕上げと工芸技術が凝縮されている。
星が散りばめられた中央のダイヤル、ガラス製のダイヤルプレート、手彫りの中央ドームに加え、LVDB-03 サンパティークのダイヤルの縁にあるケース側面にはジオラマのような風景が広がっている。これは3つの5NRG製リングを用いた立体的なアートワークの帯で、彫金が施された表面の総延長は1mを超える。
このイラストは過去にフラジョレ氏やルイ・ヴィトンとも仕事をしたベルギーのアーティスト、フランソワ・スクイテン(François Schuiten)氏によるものだ。彫金はすべて(ヘラクレスのドームと同じく)ミシェル・ローテン氏の手によって施されている。以下にその原画の一部を掲載する。
外側のふたつのリングは異なる速度で回転し、1日を通じて景色を変化させる。クロックの周囲を眺めると、蒸気機関車、アフリカの上空を飛ぶ熱気球、山頂を目指す登山者など、パノラマのような風景を楽しむことができる。ディスプレイ全体が連動しており、クロックが時を刻むとともにゆっくりと回転するのだ。
ルイ・ヴィトンによるチタン製のトランクに収められたLVDB-03 サンパティークルイ・バリアス。
両ブランドによる3年半以上の歳月をかけた成果であるこの驚異的なクロックは、わずか2台のみが製作される。クロック(と、その相棒であるLVDB-03 GMTと)のセット価格はこれまた驚くべき400万ユーロ(日本円で約7億3960万円)だ。
我々の考え
皆さんがルイ・ヴィトンを知っていることは前提とするが、ドゥ・ベトゥーンについては簡単におさらいが必要かもしれない。ドゥ・ベトゥーンは、ドゥニ・フラジョレ氏とダヴィド・ザネッタ(David Zanetta)氏によって2002年に設立された独立系ブランドだ。独特なケースやラグのデザイン、そして天体のモチーフをエレガントに用いることで知られている。創業から1世紀にも満たないブランドだが、独立系時計シーンへの影響力は無視できない。彼らの時計を他ブランドの作品と見間違えることはまずないだろう。
同ブランドは印象的な複雑機構、多様な素材の活用、そして特別な技術革新という幅広い歴史を持っている。今回のLVDB-03 GMTのベースとなったのは、2021年に発表されたDB25 GMT スターリーバリアスだ。これは新作のLVコラボモデルと同じDB2057ムーブメントを使用しており、標準的なDB25 GMTはケース径42mmだ。現在のカタログではRG製やポリッシュ仕上げのグレード5チタン製のモデル(参考までに、2022年時点での価格は10万5000スイスフラン/当時のレートで約1400万円だった)が展開されている。
今回のLVテーマの限定モデルは価格面で信じられないほどの飛躍を遂げているが、特別なドゥ・ベトゥーンのバリエーションとして、またルイ・ヴィトンの“トラベルイデオロギー”へのオマージュとして、これ以上ないコラボレーションの選択と言える。ルイ・ヴィトンのコレクターにとって、ダイヤルにあしらわれた星空のブランディングや、タンブール タイコケースへの変更は特別な魅力を放つ。過去2回の独立系コラボと同様、各ブランドの個性を尊重しつつ、熱狂的なLVおよびドゥ・ベトゥーンのコレクターに斬新な提案をすることに成功している。
また、このプロジェクトを全体の背景や経緯のなかで捉えることも重要だ。これはルイ・ヴィトンとラ・ファブリック・デュ・タンが、卓越した時計師に光を当てるために企画した5段階プログラムの第3弾だ。2023年にはレジェップ・レジェピとのLVRR-01 クロノグラフ ア ソヌリ、そして昨年3月にはカリ・ヴティライネン LVKV-02 GMR 6が発表された。LVRR-01は10本限定で各約45万スイスフラン(当時のレートで約7390万円)、LVKV-02は5本限定で55万ユーロ(当時のレートで約8900万円)だった。LVDB-03 GMTの価格帯は、昨年から残り3つのプロジェクトにどのブランドが選ばれるかという噂が飛び交っていたなかで、このストーリーにおいて最も予測可能だった部分かもしれない。しかし今回明らかになった時計、そして特にクロックについてはまったくもって驚きを隠せない。
東京での発表イベントで数分間LVDB-03を試着する機会を得て、上記の写真を撮影した。両ブランドの融合として、きわめて完成度が高いと感じる。それぞれのよく知られた特徴を反映しつつ、ルイ・ヴィトンが得意とする洗練されたモダンさや、ドゥ・ベトゥーンの複雑なケースやラグ構造に過度に頼ることなく、デザインが仕上がっている。ケースの最も幅が広い部分が手首に接するため着け心地がよく、とても軽い。鏡のように磨き上げられたラグは美しく、わかりやすいレイアウトのなかに無数のディテールが詰め込まれたダイヤルはまさに眼福だ。
ドニ・フラジョレ氏のドゥ・ベトゥーンとの協業を象徴する作品として、このコラボレーションはLVDB-03 サンパティーク クロックという驚異的な機械工学によって、その領域をさらに広げた。腕時計はそれぞれ幸運なオーナーのもとへ旅立つだろうが、このクロックのフォルムと機能には抗いがたい特別な“何か”がある(もちろん、その7桁のユーロ価格を考慮せずに楽しむのが最善だが)。
また、機械式のサンパティーク クロックがいかに希少であるかも特筆すべきだ。同様の形式の最近の例としては、フランソワ-ポール・ジュルヌ(François-Paul Journe)氏と、皆さんの予想どおりドニ・フラジョレ氏の指導のもと、THA社がブレゲのために製作したものがある。1991年に完成したブレゲ パンデュール・サンパティーク No.1は、実際に2025年5月のオークションで550万5000スイスフラン(手数料込み、当時のレートで約9億5600万円)で落札された。買い手は? ほかでもないフランソワ-ポール・ジュルヌ氏だ。サンパティーク クロックというアイデアのもうひとつのきわめて興味深い解釈としては、格別にクールなウルベルクのAMCも忘れてはならない。
シリーズ第3弾となる今回のドゥ・ベトゥーンは(クロックを除けば)最も生産本数が多く、(腕時計単体としては)最も低価格で最大のケースサイズとなった。ルイ・ヴィトンが共通のテーマや枠組みを押し通したくなる誘惑もあっただろうが、3つの例がすべて同じ動機を共有しながらも、最終的なデザインやウォッチメイキングのあり方、さらにはターゲットとする層までもがきわめて幅広く感じられる点は興味深く遊び心に満ちている。
手首の上にあるLVDB-03 GMTは、紛れもなくドゥ・ベトゥーンそのものだ。クロックとチタン製トランクまで含めたこのプロジェクトは、ドゥ・ベトゥーンのスタイルをより広いカテゴリーへと拡張しており、その成果はきわめて魅力的だと言えるだろう。
基本情報
ブランド: ルイ・ヴィトン×ドゥ・ベトゥーン(Louis Vuitton × De Bethune)
モデル名: LVDB-03 GMT ルイ・バリアス(LVDB-03 GMT Louis Varius)
型番: WATI11
直径: 45mm
厚さ: 14.05mm
ケース素材: チタン、ラグとリューズはプラチナ
文字盤: シルバー/ホワイト、ブルーチタン
インデックス: アプライド
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: ブラックレザーライニングのブルーファブリック、およびトーンステッチを施したコニャックカラーのアリゲーターの2本付属、いずれもポリッシュ仕上げを施したブルーチタン製ピンバックルを採用
ムーブメント情報
キャリバー: ドゥ・ベトゥーン DB2507LV
機能: 時・分表示、第2時間表示、デイ/ナイト表示、ジャンピングポインターデイト表示
直径: 30mm
厚さ: 10.35mm
パワーリザーブ: 5日間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 40
追加情報: 自動調整式のツインバレル、チタン製テンプ、ドゥ・ベトゥーン製のフラットな曲線を描くひげゼンマイ、シリコン製ガンギ車、トリプルパラシュートショックアブソーバー搭載
クロック情報
モデル名: LVDB-03 サンパティークルイ・バリアス(LVDB-03 Sympathique Louis Varius)
型番: Q1TA10
ムーブメント: DB5006、チタン製キーによる手巻き
サイズ: 幅310mm×奥行き266mm×高さ260mm
重量: 約10kg
素材: チタン、メテオライトのマルケトリ、5Nローズゴールドのドーム、イラストが刻印された5NRGのディスク
部品数: 763個
石数: 12
価格&発売時期
価格: 37万5000ユーロ(腕時計、日本円で約6940万円)/400万ユーロ(腕時計とクロックのセット、日本円で約7億3960万円)
限定: あり、腕時計12本/クロック2台
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