trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Business News リシュモンがボーム&メルシエを売却

老舗スイスブランドをイタリアの宝飾・時計小売業者であるダミアーニへ売却するこの取引は、時計業界における新時代の幕開けを告げるものとなるのだろうか?

ADVERTISEMENT

リシュモンは、傘下の時計ブランドであるボーム&メルシエをイタリアのダミアーニ・グループへ売却することに合意した。この動きは、スイス時計業界における新たなブランド売却や資産再編の号砲となると見られている。200年近い歴史を持つボーム&メルシエは、リシュモンの時計ポートフォリオにおいて、クリフトンやリビエラといったラインを中心に、手の届きやすい価格帯でスイス製のタイムピースを製造してきた由緒あるブランドだ。

baume et mercier

 しかし1830年に創設し、ピアジェ、カルティエの所有を経て、1980年代にのちにリシュモン・グループとなる組織に買収された同ブランドは、アナリストのレポートによれば、近年は赤字を計上しつつ売上の拡大に苦戦していた。

 スイス時計業界がよりプレミアムで高価格帯の製品へと焦点を移すなか、バリュープライスを特徴とするボーム&メルシエは、グループにとって資金を消耗させる存在になっていたとアナリストたちは指摘する。

 今回の取引を発表した声明のなかで、リシュモンは「ボーム&メルシエの長期的なポテンシャルは、ダミアーニ・グループの一員となることで最大限に発揮されるだろう」と述べた。ダミアーニは、サルヴィーニ、ブリス、カルデローニといったジュエリー資産のほか、ガラスメーカーのヴェニーニ、マルチブランドの時計・宝飾小売店であるロッカを擁するイタリアの高級コングロマリットである。

 両社によれば、ダミアーニは自社のマルチブランド流通ネットワークを通じてボーム&メルシエの認知度と普及率を高める意向であり、将来的には戦略的拠点に複数のモノブランドブティックを開設する計画だと言う。また、取引の完了は夏を予定しており、その後少なくとも12カ月間、リシュモンはブランドとその新しいオーナーに対してオペレーショナルサービス(運営業務)を提供するとしている。売却の金銭的条件は開示されておらず、リシュモンの役員も発表された声明以上のコメントは控えている。

 ダミアーニによるボーム&メルシエの買収は、昨年11月にフランス語の時計業界ニュースサイト『Business Montres』が最初に報じたものだが、これは業界の脱巨大化という新時代を背景に、主要グループによって苦境にさらされているブランドのさらなる売却を加速させる可能性が高い。

 「リシュモンが、時計を専門とする部門からボーム&メルシエを切り離すという決断は正しいものでした」と語るのは業界アナリストであり、スイスのリュクスコンサルトの代表を務めるオリバー・ミューラー(Oliver Müller)氏だ。モルガン・スタンレーは2024年の同ブランドの売上を約6900万スイスフラン(当時のレートで約120億円)と推定しており、ミューラー氏は同ブランドはこの10年間赤字が続いていたと考えている。

baume et mercier

 「ドイツ語のことわざに『lieber ein Ende mit Schrecken als ein Schrecken ohne Ende(終わりのない恐怖よりも、恐怖とともに終わるほうがいい)』という言葉がありますが、まさにそれです」と彼は言う。

 今回の売却合意は、CEOであるニコラ・ボス(Nicolas Bos)氏の指揮下にあるリシュモンが、カルティエやヴァン クリーフ&アーペル、ヴァシュロン・コンスタンタンといった同グループのプレステージ・メゾンと同等のペースやレベルで成長する可能性がないと判断した資産を、手放す意思があることを示している。ミューラー氏はグループが時計部門において不釣り合いであったり、文化的な適合性が低いと思われるほかのブランドについても変更を検討している可能性があると付け加えた。

 またミューラー氏はオメガ、ブレゲ、ラドー、サーチナ、ミドーなど約16のブランドを擁するスウォッチ グループも、業績不振のブランド売却を検討すべきだとしている。アナリストによれば、それらの多くはボーム&メルシエと同じエントリー価格帯にあり、互いに競合している状態だという。「しかし、あのグループにはいくつかの教条や不可侵の聖域があり、そのひとつが“ブランドを絶対に売却しない”ということなのです」と彼は指摘する。

ビエンヌにあるスウォッチ グループ本社。

 LVMHにおいても、そのウォッチグループは激動と混乱に見舞われている。今月開催されたLVMH ウォッチウィーク直前に、タグ・ホイヤーのCEOであったアントワーヌ・パン(Antoine Pin)氏の突然の退任が同社から発表された。12年間で7人目のCEOとなる後継者はまだ発表されていない。また、エル・プリメロ クロノグラフ ムーブメントやデファイ モデルで知られるLVMH傘下のゼニスはスイスの通信社AWPが報じた「LVMHがゼニスを売りに出している」とのニュースに対して反論した。

 「ゼニスの売却計画については、公式に否定します」とLVMHの広報担当者は述べている。

ゼニス デファイ エル・プリメロの限定モデル。

ADVERTISEMENT

 消費需要を冷え込ませる経済的な不確実性に加え、スイスフラン高や記録的な金価格によるコストの高騰、さらには価格上昇と、低生産量で高価格帯の時計へのシフトが進むなか、手が届くラグジュアリーな価格帯のスイス時計業界の多くが苦戦を強いられている。スイスの銀行、ヴォントベルの推定によれば、ボーム&メルシエの昨年の売上は約4400万ユーロ(当時のレートで約74億円)で、過去6年間で収益が半減したことになる。

 ヴォントベルのスイス株式リサーチ部門責任者、ジャン=フィリップ・ベルチー(Jean-Philippe Bertschy)氏は1月24日(金)のレポートで「ボーム&メルシエからの撤退はリシュモンの資本規律と、業績不振の資産に対して断固とした行動をとる姿勢を強化するものです」と述べた。

 「この動きは業界全体のダイナミクスを反映しています。高級品グループ全体で、小規模または業績不振の資産に対する精査が厳しくなっていることを浮き彫りにしているのです」とアナリストは分析している。

 リシュモンは、12月31日までの第3四半期における時計部門の売上が予想を上回ったと報告した。カルティエの時計を含まない同部門の売上は、為替変動の影響を除いたベースで前年同期比7%増となった。スウォッチ グループは今月後半に年間決算を発表する予定だ。