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今年、スイス時計産業の雇用はCOVID蔓延後、初めて減少した。時計ブランドとサプライヤーが、需要の低迷と、経済成長の減速および貿易上の課題のなかで高まる不確実性に耐え忍んだためだ。Convention Patronale de l'Industrie Horlogère Suisse(CP/スイス時計産業雇用者団体)の報告によると、スイスの時計部門の雇用は2024年と比較して835人、または約1.3%減少した。同雇用者団体は、雇用の減少は“需要量の低下と、世界的な消費の減速を特徴とする、厳しい経済環境”のなかで起こっていると述べている。
スイス時計産業の雇用は2005年以降増加しているが、2009年に急激に減少した。出典: Convention Patronale de l' Industrie Horlogère Suisse
スイス時計産業の雇用の減少は、さらなる圧力に直面する可能性がある。というのも、業界の約4分の1の企業が、“短時間労働(RTH)”プログラムを利用しているからだ。これは企業が恒久的な人員削減を避けつつ、従業員の労働時間を削減することを可能にする国家主導のプログラムである。高級スイス時計の需要低迷が持続しているため、この政府プログラムの期間は18カ月から24カ月に延長された。同雇用者団体(CP)は、RTHプログラムが雇用への影響を制限し、時計製造の専門知識の継続性を維持する上で極めて重要であったと述べている。しかし現在の経済的圧力が継続または悪化すれば、業界は2026年にさらに厳しい状況に直面することになる。
CPは報告書で、“一部の企業にとっての短時間労働制度(RTH)の段階的廃止は、この部門の雇用への圧力を高める可能性がある”と述べている。“現在の状況が続けば、ますます厳しくなる経済環境に適応するための努力にもかかわらず、一部の企業は生産施設を縮小せざるを得なくなる可能性が高い”。
スイス時計産業は約6万5000人の雇用を占め、経済の主要な柱であり、時計とムーブメントは上位5つの最大の輸出部門のひとつだ。しかし中東とウクライナでの武力紛争、およびヨーロッパ全域、特に中国での経済成長の減速が相まって、一部の地域でのスイス製時計の需要を抑制している。一方、スイス時計の最大の単一国市場であり、輸出の約5分の1を占める米国へのスイス製品の輸入関税率の変動は、2025年に通常の貿易の流れを混乱させた。しかし11月に米国とスイスは合意に達し、関税を39%から15%に引き下げた。全体として、スイスの時計輸出は今年の終わりまでに2024年と比較して1.6%減少し、10月末時点で212億スイスフラン(当時のレートで約4兆470億円)となった。
スイス時計産業の雇用が年間ベースで前回減少したのは2021年であり、これは同部門がコロナ禍における店舗閉鎖や貿易の混乱によって引き起こされた一時的な売上減少に反応したためだった。その後、時計の需要が急増し、最も需要の高いモデルの2次市場価格が前例のないレベルまで急騰したあと、急激な反落を経て、現在は落ち着いている。2009年のサブプライム住宅ローン市場の崩壊が一因となった世界金融危機は、スイス時計産業の雇用にはるかに大きな打撃を与え、その年の雇用は約8%、つまり4000人以上も急落した。スイス時計産業はその後、約1万5000人の雇用を創出している。
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