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先週、オメガ スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル ブラック&ホワイトが発表されて以降、新作はもちろんのこと、にわかにリバースパンダ(別名、逆パンダ)ダイヤルの注目度が高まっている。HODINKEE Japanのエディターお気に入りのリバースパンダダイヤルウォッチを紹介する前に、まずはリバースパンダダイヤルとは何なのかを簡単におさらいしておきたい。
リバースパンダダイヤルを採用したブライトリングのスーパーオーシャン Ref.807(1957年)。
そもそもリバースパンダダイヤルとは、パンダダイヤルがあって初めて生まれた対となる存在だ。パンダダイヤルは、ホワイトダイヤルにブラックのインダイヤル、そしてリバースパンダダイヤルはそれを反転したブラックダイヤルにホワイトのインダイヤルの組み合わせを指す。どちらもメイン(時刻表示)とサブ(クロノグラフ積算計)のコントラストを高めることによって視認性と判読性を追求するという実用的な側面から考えられたものだが、特にレース中の瞬間計測やドライバーがひと目で理解できる配色が求められた1960年代のモータースポーツシーンと結びつき、ロレックスのコスモグラフ デイトナやホイヤーのカレラ、ユニバーサル・ジュネーブのコンパックスといった名作に採用されたことで、パンダ/リバースパンダダイヤルはクロノグラフの象徴的なデザインへと昇華した。“パンダ”の名称は後年の時計愛好家たちによる愛称で、文字どおりその配色が動物のパンダの顔のようであることに由来する。そしてパンダダイヤルとは配色が逆転しているから“逆パンダ”、“リバースパンダ”というわけである。
回転スティールベゼルを採用したコ・パイロット アヴィ Ref.765(1963年)。
リバースパンダダイヤル、すなわちブラックダイヤルにホワイトのインダイヤルの組み合わせを最初に取り入れたのはどんなモデルだったのか? 現在、わかっているものとしては、最初にこのダイヤルを採用したのは世界初のクロノグラフ搭載ダイバーズウォッチでもあるブライトリングのスーパーオーシャン Ref.807(1957年)だった。ブライトリングでは1950年代に誕生したコ・パイロット アヴィ Ref.765も1960年代(1963年)にリバースパンダダイヤルを採用するようになり、ツールウォッチには欠かせないスタイルとなっていった。
特に日本では情報が一瞬で整理でき、計測結果が明確なパンダ/リバースパンダダイヤルは合理的・実用的であることから、“かっこいい”よりも先に“正しい”をよしとする日本では好まれる傾向にある。そういった背景もあり、レギュラーコレクションではラインナップされていないが、日本限定エディションとしてパンダ/リバースパンダダイヤルモデルが用意されることは少なくない。
さて、各エディターはどんなモデルを選んだのか? 我々お気に入りのリバースパンダダイヤルを見ていこう。
チューダー ブラックベイ クロノ
このブラックベイ クロノはチューダーのクロノグラフ製造50周年を記念して、ブラッシュアップしてリローンチされたシリーズだ。シェイプされた41mmケースは過去のものからスリムになり、内部にはブライトリングと共同開発したCal.MT5813を搭載(意外と忘れがちなポイントだ)。どこかレトロな顔つきは4桁世代のロレックス デイトナを思わせつつ、ありそうでない2つ目レイアウトなのも独特だ。
一時は店頭に並ばないほどの人気だったが、発表から5年が経ち供給も安定しており、なおかつ今なお100万円を切る価格を実現しているのは驚愕の事実だと思う。ブレスレットスタイルが基本だが、レザーでも(しかもBUND付きの純正ストラップがある!)ファブリックストラップでもサマになるのが、クラシカルな雰囲気を与えた最大のメリットだろう。カラーバリエーションの多いシリーズだが、この逆パンダの完成度が高ければこそ、その後にフラミンゴブルーやマイアミピンクのような遊びの効いたモデルを作る余裕が生まれたように思える。
本音を言うと、ブラックベイ クロノのなかで最も好きなモデルは黒ダイヤルをベースとしたS&Gだ。インダイヤルにゴールドを配してギラついた雰囲気は他のクロノグラフに似ていなく、マッシブなケースと相まった強い存在感がたまらない。ただ、今回のテーマに沿って考えたとき、改めてこちらのクラシカルな逆パンダの良さを感じた。41mmケースは、トレンドに反して決してコンパクトではない。しかしクオリティを伴った大きめサイズの時計にはそこにしかない栄養があり、一定のニーズは常にある。
チューダーによる圧倒的な設計力とパーツの製造公差の低さによってもたらされた本機の装着性の良さは、心地よく大きな時計を着ける満足感を与えてくれる(実は2021年に数週間お借りしたことがある)。エレガントにシャラんと着けるというより、アクティブな日のアガる気持ちを表すように、あえて手元のボリュームで主張する、そんな時計なのだ。
価格:92万4000円(税込)
その他、詳細はチューダー公式サイトへ。
ユニバーサル トリコンパックス イービルクラプトン Ref. 881101/03
僕のヴィンテージウォッチのウィッシュリストの中で、常に上位に名を連ねているのがユニバーサル・ジュネーブのトリコンパックスです。トリプルカレンダー、ムーンフェイズ、クロノグラフという複雑機構をすべて搭載しながら、ケース径はわずか35.5mmに抑えられています。内部には手巻きの自社製ムーブメント、Cal.281を収め、実用性と美しさ、そして高度な技術力を高い次元で融合させた名作だと思います。
1940年代から製造されてきたトリコンパックスには数多くのバリエーションが存在しますが、そのなかでも僕が特に惹かれているのが、1960年代ごろに作られたリバースパンダ仕様のモデルです。とりわけ、ブラックダイヤルの「イービル・クラプトン」(通常のパンダダイヤルをエリック・クラプトンが愛用していたことに由来し、その反転配色からそう呼ばれています)ではなく、さらに希少性の高いスレートグレーのダイヤルを備えた、エキゾチックダイヤル仕様のRef.881101/03に強く心を惹かれています。
PHILLIPSで2025年に開催されたTOKIオークションで、このわずかにブルーを帯びたグレーダイヤルの実物を目にして以来、僕の中でトリコンパックスの印象は大きく変わりました。落ち着いた色調のなかに静かに宿る独特の存在感に、一瞬で心を掴まれたことを、今でもはっきりと覚えています。
オークションハウスなどの研究資料によれば、エキゾチックダイヤルを備えたトリコンパックスは現存数が26本未満とも言われ、シリアルはおおよそ2,684,5XXから2,684,8XXのごく限られた範囲で生産されたとされています。なかでも、この写真の個体のように6時位置に「Tri-Compax」表記を持たない仕様は、さらに少数派。
確かに希少な存在ではありますが、このトリコンパックスの魅力はそれだけではありません。トリプルカレンダー、ムーンフェイズ、クロノグラフを備えながら35.5mmというサイズ感、そしてこの独特なカラーリングは、現代のモダンウォッチではほとんど見られないもの。だからこそ、時代を超えてなお強く惹かれてしまうのだと思います。
価格: PHILLIPS TOKIオークションでは48万2600香港ドル(約980万円)で落札された。
その他、詳細はユニバーサル・ジュネーブ公式サイトへ。
ブライトリング クロノマット B01 42 ジャパン エディション
視認性や判読性という実用的な側面から生まれたパンダ/リバースパンダダイヤルだが、現在では“デザイン記号”として確立されたことで、その出自とは無縁のクロノグラフにおいても採用されるのが当たり前となった。しかしながら歴史的な正統性を大切にするのであれば、やはり最初のリバースパンダダイヤルを世に送り出したブランドは無視できない。筆者お気に入りのリバースパンダダイヤルはブライトリングだ。
最初に手がけたブランドというだけあって、ブライトリングにはリバースパンダダイヤルを採用するモデルが豊富にラインナップされている。正直なところ、それぞれ魅力的で1本に絞ることは難しいのだが、日本でしか手に入らないという希少性を加味するなら、クロノマット B01 42 ジャパン エディションはきわめて魅力的な選択肢だ。
プロフェッショナルツールであり、ブライトリングの最もアイコニックなタイムピースであるナビタイマーにはリバースパンダダイヤルが多い。こちらは現行のナビタイマー B01 クロノグラフ 41(AB0139211B1A1)。
アルマイトベゼルを備えた1964年発売のオリジナルを忠実に再現したクラシック アヴィ Ref.765 1964 リ・エディション。 ※現在日本では取り扱いがないため、購入については要問い合わせ。
クロノマット B01 42 ジャパン エディションは文字どおり、日本限定販売仕様モデルだ。ベースは、2020年にフルモデルチェンジを果たし、1984年に市販されたオリジナルに回帰したデザイン、そして円筒形状のコマが特徴的なルーローブレスレットを持つクロノマット B01 42。本作ではブラックダイヤルにホワイトではなく、シルバーのインダイヤルを合わせる。
レギュラーモデルは赤、ないしはライトブルーのクロノグラフ秒針を持つが、この日本限定モデルではクロノグラフ秒針を含めて針がすべてシルバーで統一されている。ホワイトのインダイヤルに赤や青のクロノグラフ秒針の組み合わせのほうが一層メリハリは出るとは思うが、インダイヤルも針もすべてシルバーとしたことでリバースパンダならではの高い視認性をキープしながら、精悍な雰囲気が強調されているところに筆者は心惹かれている。
価格:130万9000円(税込)
その他、詳細はブライトリング公式サイトへ。
タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ グラスボックス
グラスボックスが2023年に、カレラ クロノグラフの新しいプラットフォームとして登場してから、まもなく3年。このあいだに、ブランドはラインナップを大きく拡張してきた。今年のLVMH Watch Weekではノンデイトの41mm径モデルに加え、スプリットセコンド クロノグラフといったハイコンプリケーション機も発表。名実ともに、現在のタグ・ホイヤーを支えるコレクションへと成長している。さらに、ブランド全体でムーブメントの内製化が進んだ影響もあり、100万円を超える高価格帯モデルがラインナップの軸となっていった。まさに、現代におけるラグジュアリークロノグラフという様相をなしている。
ぜひ、2023年にアップされた濃密な1週間レビューもチェックして欲しい。
そんなグラスボックスモデルの第1弾こそ、今回のテーマである“逆パンダ”ダイヤルのRef. CBS2210.FC6534であった。
今ではすっかり見慣れた、ホイヤーの初代クロノグラフから継承したドーム型サファイアクリスタル、風防に沿って隆起する独特なアウターフランジの中央には、アズラージュ仕上げを施した横3つ目のサブダイヤルが鎮座する。39mmとやや小振りでシャープなケース形状も相まって、全体としてはモダンなルックスだが、インデックスと針の夜光はヴィンテージを思わせるクリームカラー。クラシカルな雰囲気も漂わせている。現在は同じダイヤルで7連のメタルブレスも用意されているが、初登場時はカレラの出自を思わせるパンチングレザーストラップ一択だった。これがレーシーな逆パンダダイヤルやヴィンテージライクなディテールとよくマッチし、実に男らしい印象だった。
2025年12月に発表された、フラグメントデザインとのコラボレーションモデル。
逆パンダクロノグラフとして本作を推す理由は、もちろんそのルックスにもある。しかし加えて、昨年末に発表されたフラグメントデザインとのコラボ取材時、藤原ヒロシ氏の口からこのモデルについて言及があったことも、少なからず関係している。「ガラスケースのなかに入れてしまうと、何でもちょっとアートっぽくなるじゃないですか。ダミアン・ハースト的な感じというか、この時計もすべての要素をガラスに閉じ込めることでオブジェのような雰囲気を持っている。そこに強く惹かれましたね」とは、その時の彼の言葉だ。
これはとても面白い視点だと思った。風防に沿ってゆるやかにせり上がるアウターフランジを改めて見つめると、他に類を見ない特異なデザインである。ディスコボランテほどではないにせよ、どこかUFO的だ。ちなみにこのフランジ形状については、2015年以降に一部モデルで採用されていたグラスボックス風防において、チャプターリングが歪んで見えてしまう問題を克服するための工夫だった、という説も挙がっている。もしこの説が正しければ、技術的な課題を解決するための策だったということになる。しかし結果として、そのアプローチはタキメーターベゼルが丸ごとガラスの下に収まってしまったかのような不思議な印象を生み、唯一無二の外観を獲得するに至ったのだ。
逆パンダダイヤルのクロノグラフは骨太で、オーセンティックなモデルが多い印象だ。だがもしグラスボックスのユニークなデザインが気に入ったなら、是非一度スタイルに合わせてみることをおすすめする。
価格:101万2000円(税込)
その他、詳細はブランド公式サイトへ。
ジン ナビゲーションクロノグラフ 903.St.II
私が推したいリバースパンダウォッチはジンの903.St.IIだ。一見するとブライトリングのナビタイマーにそっくりだと思うかもしれない。というのも1979年に、クォーツショックの荒波のなかでブライトリングが一時休眠状態に陥った際、ジンの創業者であるヘルムート・ジンがデザインの権利やパーツを正式に買い取ったのがその理由だ。つまり、この903はナビタイマーの正統な血統を受け継ぐ、いわば兄弟のような存在なのである。
この伝統的なモデルが誕生から45年を経た2024年、劇的な進化を遂げた。ジンが目指したのは、クラシックな外見はそのままに現代で通用するツールとしてふさわしいスペックを与えることだった。
もともと回転計算尺を備えた時計は構造が複雑で水に弱く、3~5気圧程度の生活防水が限界というのが常識だった。しかし、ジンはこの常識をやぶるために41mmというサイズを維持しながらケースを再設計。以前の903にあった10時位置の計算尺操作用リューズをあえて廃止し、ベゼルそのものを回す機構にすることで、ダイバーズ級の20気圧防水を実現したのだ。
見た目の質感もブラッシュアップされた。以前プリントだったインデックスは、夜光塗料を練り込んだ立体的なハイブリッドセラミックに変更され、視認性が大幅にアップ。内部のムーブメントも刷新され、パワーリザーブは約60時間に延長された。クロノグラフは操作感のいいコラムホイール式を採用しており、シースルーバックからは緻密なメカニズムを眺めることができる。
こうした進化は本国ドイツでも高く評価され、ドイツの時計専門誌ARMBANDUHRENが主催する“ウォッチ・オブ・ザ・イヤー2025”では、名門ブランドを抑えて見事グランプリに輝いた。
歴史ある美しいデザインを楽しみたいが、日常では水や衝撃を気にせずガンガン使いたい。そんな実用性を重視する人にとって、最新の903はきわめて誠実なアップデートであり、有力な選択肢になるはずだ。
価格:75万9000円(税込、カウレザー仕様)
その他、詳細はジン公式サイトへ。
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