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近年、本当に新鮮さを感じさせる新しい時計デザインを見つけるのは決して容易ではない。独創性を狙った試みが常に成功するとは限らず、成功している時計が必ずしも独創的であるとも言えない。しかし、昨年10月のニューヨーク・ウォッチ・ウィークで目にした数えきれないほどの時計のなかでも私の記憶にもっとも強く残ったのは、デ・ライク&カンパニーが当時まだ発表していなかった新作ドレスウォッチのプロトタイプであった。
新作のカプリは、ブランド初となるドレスウォッチである。レクタンギュラー型のドレスウォッチ自体は決して珍しいものではないが、このカプリをひと目見れば、その完成度の高さに抗いがたい魅力が宿っていることに気づくはずだ。きわめてモダンかつミニマルな感覚で再解釈された、いわば現代的なシェイプドウォッチである。
俯瞰すると、ややスクエアにも見える広がりのあるダイヤルが、ふたつの存在感あるフローティングラグによって宙に浮かんでいるかのように見えるのが印象的だ。ダイヤルは3種類が用意されており、その表情はそれぞれ大きく異なる。そのなかでもアベンチュリン仕様を数日間試す機会を得た。このほかにも艶やかなジェットブラックのオニキスダイヤル、さらにアプライドのアワーマーカーやスモールセコンドを備えた、よりクラシカルなブルーダイヤルもラインナップされている。なかでもアベンチュリン仕様は要素が極限まで削ぎ落とされており、きらめくブラックの表面にはブランドロゴと“dutch crafted(オランダ製)”の文字がホワイトで配されるのみである。時分針はスケルトン仕様となっており、アベンチュリンとのコントラストによって際立つデザインだ。もっとも、本モデルにおいて視認性そのものが主目的ではない点もこの時計のスタンスをよく物語っている。
俯瞰で見たときの潔いまでのシンプルさに対して、カプリを別の角度から眺めると、いくつかの興味深いデザイン上の工夫が見えてくる。ケースはステンレススティール製で、側面にかけて大きく丸みを帯びており、サファイアクリスタルもそのケース形状に沿うように成形されている。その結果、カプリは側面からもダイヤルが直接視認できるという、非常にユニークな表情を生み出している。とりわけストーンダイヤルやアベンチュリンガラスへの配慮として、ダイヤルの縁には下方へなめらかにカーブするようていねいなポリッシュ仕上げが施されている。これによりクリスタルの曲線と美しく呼応し、正面を断ち切ったような印象ではなく、洗練されたサイドビューを実現している。こうした細やかな作り込みが、私にとってカプリを特別なものにしている。大半の人は見落としてしまうかもしれないが、時計全体のデザインに統一感と明確な意思を与えているのはまさにこうしたディテールなのである。さらに重要なのは、これだけの工夫を凝らしながらも、厚さ6.5mmというスリムなケースによってドレスウォッチとしての本分をしっかりと守っている点だ。レクタンギュラーケースのラグ・トゥ・ラグは38mm、ケース幅は28.5mmで、文句のつけようがない。
カプリは一体型ウォッチではないものの、ラグのデザインもまた、この時計でもっとも引きつけられるポイントのひとつである。ケース両端の外装部分は外側へ向かって傾斜するようにカット。そのため真上から見ても、ケースの丸みを帯びたオーバル形状がストラップの付け根部分にしっかりと表れている。これによって見た目にさりげない華やかさが加わるだけでなく、ダイヤルとクリスタルの広がりをほどよく引き締め、全体のプロポーションにエレガンスを保たせているのだ。仮にダイヤルに圧迫感があれば、この妥当なケースサイズであっても時計は実寸以上に大きく見えてしまったはずで、デ・ライク&カンパニーは絶妙な落としどころを見つけたと言える。
内部には、プゾー 7001の設計をベースに再構成した、手巻きのラ・ジュー・ペレ製D100キャリバーを搭載。ローレット加工を施したオニオンリューズで巻き上げるこのムーブメントは、パワーリザーブ約50時間、振動数2万1600振動/時(3Hz)と、十分な内容を備えている。カプリに採用されたD100はより上位グレードの仕様であるものの、その姿はソリッドケースバックの内側に隠されている。ケースバックのネジは見えないつくりとなっており、途切れのないシルエットを実現するため、それらはラグまわりに巧みに収められている。
実際に手首に乗せてみると、カプリはとても楽しい装着感をもたらしてくれる。ドレスウォッチに対してこう感じることはそう多くはない。ここまでの言葉からも伝わっているかもしれないが、私はこのデザインをかなり気に入っている。カプリは細部に至るまでしっかりと個性が宿っていながら、全体としては抑制の効いたミニマリズムによってバランスが取られている。堅苦しさを感じさせないドレスウォッチでありながら、フォーマルな場にもふさわしい重厚感も備えているのだ。ストラップは24mm幅から尾錠に向かって18mmへとテーパーしており、このプロポーションをやや独特に感じる人もいるかもしれない。しかし、より薄手でパッドのないストラップに替えれば、その違和感は自然と解消されるだろう。
カプリのダイヤルは3種類いずれも各50本限定で展開される。価格は2195ユーロ(日本円で約40万円)で、ムーブメントそのものの価値だけでなく、このユニークなデザインに注がれた時間と労力を重視する人にとっては、納得の行く設定と言えるだろう。実際に手にしているあいだ、私は何度もこの時計に手を伸ばし、さまざまな角度から眺めては、光の加減によって表情を変え、新たなディテールが浮かび上がる様子を楽しんでいた。こうしたつくり込みには素直に感心させられるし、その完成度もきわめて高い。そして何より、身に着けているあいだ何度も思わず笑みがこぼれる、そんな時計であった。レクタンギュラーウォッチのアイコンを求めるなら、カルティエ タンクやジャガー・ルクルト レベルソが堅実な選択肢であることに変わりはない。しかし、真に個性的な1本を探しているのであれば、このカプリは最高の選択肢となるかもしれない。
Photos by TanTan Wang
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