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One to Watch アルドラ・ラボのデルタ タイプが提案する、すべてのタイムゾーンに対応したユニークなGMT表示

30分と45分の時差にも対応する、ユニークな新システムを搭載したトラベルウォッチ。

Photos by TanTan Wang

GMTは人気のある機能だ。フライヤー式であろうとコーラー式であろうと、第2、第3のタイムゾーンを追跡できる機能は、ウォッチメイキングにおいて最も実用的な機能のひとつだろう。しかし時計愛好家から絶大な支持を得ているにもかかわらず、本来ならあらゆる旅に対応するはずのこのトラベルウォッチをまったく役に立たないと感じる人々がいる。いや、リューズを引いたりベゼルを読んだりするのが億劫な人の話ではない。協定世界時(UTC)から30分または45分ずれたタイムゾーンを使用する国に住む人々のことだ。そしてそれは、遠く離れた辺境の地だけの話でもない。世界で最も人口の多い国であるインドも、30分の時差を採用している。ほかにもニューファンドランド(カナダなど)やオーストラリアの一部、スリランカなど多くの地域でこの30分の時差が使われており、ニュージーランドのチャタム諸島やオーストラリアの一部では45分の時差が採用されている

 インドで育ち、現在はワシントンD.C.に住む時計コレクターのナヴァ・クリシュナン(Nava Krishnan)氏にとって、従来のGMTウォッチで家族が住む故郷のタイムゾーンを把握できず、長年悩んでいた。そこでクリシュナン氏は自らこの問題に取り組むことを決意し、設計と試作を重ねた末に、ついにその難題を解決したと考えている。

Ardra Delta Type freestanding shot
Ardra Delta Type Crown Shot
Ardra Delta Type Bezel Shot

 それが、彼の新ブランドであるアルドラ・ラボ(Ardra Labs)から発表された最初の時計、デルタ タイプだ。スイス製で価格は2450ドル(日本円で約39万円)。30分と45分の時差を含む、地球上のあらゆるタイムゾーンの時刻を、ふたつ同時に表示できるユニークなデザインのコーラー式GMTウォッチである。ここで最も感心させられるのは、クリシュナン氏のソリューションがきわめてシンプルだということだ。しかも市場で最も普及しているGMTムーブメントのひとつ、セリタ SW-330を搭載してそれを実現している。

 本作の真髄は、特許取得済みの“PAN-GMT”表示にあり、ユニークな時刻表示方法を提供している。その実用新案特許は、時刻表示の仕組み全体を対象としており、先端に複数の矢印のような“指示点”を持つ分針、“指示点”それぞれに対応する複数のインジケーターを持つ24時間表示のGMT針、そして従来の1時間表示と24時間表示のホイールを介したそれらの回転関係をカバーしている。つまりこの特許は、従来のGMTムーブメントを用いながらも、こうした追加情報を表示できる仕組みをクリシュナン氏が実現したことを示している。

Ardra Delta Type GMT Hand
Ardra Delta Type Minute Vertex Closeup
Ardra Delta Type Handset Macro

 メインの時針は従来どおりだが、先端に複数の矢印のような“指示点”を持つが分針はひときわ目を引く。これは実質的に3本の針が1本になったようなユニークなV字型デザインで、ミニッツトラックの3カ所を同時に指し示す。“V”の角は標準となる分を示し、ブルーのスーパールミノバが塗布された矢印は30分、グリーンの夜光塗料が塗布された最も大きな矢印は45分の時差を表している。どの矢印が何を示すか忘れてしまっても、ダイヤルの6時位置にプリントされたカラースケールを見れば、どの色がどの時差を示しているかがわかる。このカラースケールはGMT針にも適用されており、逆L字型の針には同じ色のスーパールミノバを塗布したドットが3つ追加されている。これにより、サーキュラーサテン仕上げのインサートを備えた120クリックの両方向回転式GMTベゼルで、正確な時間を読み取ることができるのだ。

 針のスーパールミノバは手作業で塗布されているにもかかわらず、きわめて均一な仕上がりに感じられた。これはマイクロブランドのデビュー作としては素晴らしいディテールだ。針は深みと光沢のあるブラックダイヤルの上に配置され、アルドラ・ラボのロゴは色分け(と、夜光処理も)され、“分針のどの矢印がどの時刻を表示するか”を示す数値の上部にプリントされている。ミニッツトラックには、クリシュナン氏のルーツであるインドの伝統とそこからのインスピレーションを反映させた、とてもセンスのよい装飾モチーフが施されている。これは型破りな針のデザインを引き立てるのに十分な遊び心がありながらも決して過剰ではない、抑制の効いたデザインとして優れた例だと言えるだろう。

Ardra Delta Type Lume Shot

 正直に言うと、最初にデルタ タイプの写真を受け取ったとき、この分針は読み取りが大変だろうと思った。しかし実際に時計を手に取り、クリシュナン氏から、先端に複数の矢印のような“指示点”が“分”を指し示すと説明を受けたあと、時刻の読み取りに困ることはなかった。実際のところ、この分針のデザインは、必要な情報を示すガイドラインがとても大きいため、理論的には従来の針よりも読みやすいと言える。また日中の視認性に加えて、時差を示す矢印のような“指示点”やドットに夜光が充填され、ミニッツトラックの装飾部分も発光することで、夜間の視認性も保たれている。しかしひとつだけ細かいことを言えば、ミニッツトラック全体とベゼルの数字にも夜光が施されていれば、実用性がさらに高まっただろう。

 時計を裏返すとシースルーバックになっており、56時間のパワーリザーブを誇る自動巻きムーブメント、セリタ SW-330を鑑賞できる。これは多くの時計で見られるごく標準的な光景だが、カスタムエングレービングが施されたローターのデザインは秀逸だ。私が手にした時計は数年前のプロトタイプだったため、ケースバックには“Patent Pending”(特許出願中)と記されていた。しかし現在は特許が取得されているため、製品版には“Patented”(特許取得済み)と刻印される(そして、私が撮影した写真のケースバックよりもずっとクリーンな仕上がりだろう)。

Ardra Delta Type GMT and Minute Hand Macro
Ardra Delta Type Lying Down Shot
Ardra Delta Type Caseback

 デルタ タイプは直径39mm×厚さ11mm、ラグ・トゥ・ラグ47mmで、316Lステンレススティール製のケースを持つ。ケースのシルエットはクラシックかつシンプルだが、よく見ると、内側のラグに施されたポリッシュ仕上げのファセットや、ケースサイドに施された美しい凹状のラインエングレービングといった、素晴らしい仕上げが施されていることがわかる。数値上はとてもクラシックなサイズだが、ラグのプロポーションとポリッシュ仕上げが施されたケースサイドのためか、本作は予想よりもやや大きく感じられた。

 しかしそれでも着け心地はよく、100mの防水性能とラバーストラップのおかげで、最も包括的なGMT機能を備えながらも、気兼ねなく使える時計を探している人にとってはよい選択肢となるだろう。正直に言うと、ラバーストラップは使い勝手がいいものの、やや洗練さに欠ける印象は否めない。その主な要因はテーパーのないデザイン、ケースの仕上げ、そしてあまりマッチしていないありきたりなポリッシュ仕上げを施したバックルだと思われる。しかし幸いなことに、これは交換可能な唯一のパーツであり、私なら手持ちの20mm幅のストラップに交換するだろう。

Ardra Delta Type Wrist Shot

 SW330を搭載したコーラー式GMTで、価格が2500ドル前後(日本円で約40万円)となると、一般的な意味での“コストパフォーマンス”の議論からは外れるかもしれない。しかし、デルタ タイプは別の価値を提案する。それは、特許によって保護されたGMTへのユニークなアプローチだ。デルタ タイプと1週間を過ごしたあとも、この時計はコンセプトと実装の両面でとても魅力的なオリジナリティを感じさせる。オフセットされたタイムゾーンで時・分を表示し、代替品になるような時計は、現在ほとんど存在しない。思いつく主なモデルはグラスヒュッテ・オリジナルのセネタ・コスモポリトくらいだろう。確かに、そちらは機械的により洗練された時計だが、このドイツ製ウォッチは直径44mmで、ストラップモデルの価格は2万4700ドル(日本円で約390万円)もする。この点を考慮すると、デルタ タイプはより幅広い層にとって、はるかに魅力的な選択肢となるはずだ。

 デルタ タイプは300本の限定生産となる。クリシュナン氏によれば、今後さらにバリエーションが登場する予定とのことだが、今のところブランドは小規模なスタートを切っている。しかし聡明なコレクターの情熱に支えられた有望なブランドにとって、これは力強い船出と言えるだろう。もしこれが始まりであるならば、その未来は明るいだろう。

 詳細はアルドラ・ラボ(Ardra Labs)の公式サイトから。