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東京都墨田区にあるモダンなワークショップを拠点とするクワイエットクラブ(Quiet Club)は、ふたつの大陸にまたがる3人のパートナーが共有する情熱の上に成り立っている。彼らのデビューウォッチであるFading Hours(フェイディング・アワーズ)は目的意識を持ち、思慮深いデザインへの信念に根ざしている、静かだが野心に満ちたプロジェクトだ。この取り組みの中心を担うのは、東京を拠点とする時計師の関 法史(せき のりふみ)氏。彼が23歳だった2021年、HODINKEEでもその初期のキャリアと受賞歴について紹介した。彼は2020年、2015年に創設され、アカデミー独立時計師協会(AHCI)との協力で運営されているF.P.ジュルヌ ヤング・タレント・コンペティションにおいて、アジア人初の受賞者となった人物だ。そしてクワイエットクラブはルイ・ヴィトン ウォッチ プライズ フォー インディペンデント クリエイティブズのファイナリストにも選出された。
しかしクワイエットクラブはあくまで3人による共同事業である。パートナーのうちふたりが米国を拠点としているため、ウォッチメイキングという未知の世界への野心的な飛躍がどのように形づくられたのか、彼らの言葉に耳を傾けてみよう。
クワイエットクラブのCEOである上田北斗(うえだほくと)氏はシアトルを拠点とし、自動車エンジニアリングのバックグラウンドを持つ。一方、3人目のパートナーであるジョニー・ティン(Johnny Ting)氏はサンフランシスコを拠点とし、テック業界で活躍している。「私のバックグラウンドは自動車エンジニアリングにあります」と上田氏は言う。「テスラモーターズの創業期に在籍し、モデルSの立ち上げを支援しました。その後、2014年ごろに自身の自動車ソフトウェア会社であるドライブモード(Drivemode)を共同設立。ジョニーが最初の社員、デザイン責任者として加わったのです」
一見すると、クルマから時計への転身は唐突に思える。「北斗から最初に時計について聞かれたときは驚きました」とジョニー氏は認める。「自分が追求するものだとは考えたこともありませんでしたから」。しかし会話が進むにつれて、そのアイデアは進化していった。「長年ソフトウェア業界で働いてきましたが、物理的な製品を開発することは次のステップとして完璧な選択のように感じ始めました。自分にぴったりの時計が見つからなかったのです。ユーザーエクスペリエンス(UX)デザイナーとして毎日身に着けられるものを求めていましたが、ダイバーズ、パイロット、クロノグラフといった伝統的なカテゴリーは私の生活にはしっくりきませんでした」
テックやデザインのバックグラウンドを持つ人々が設立した時計会社は、大きな可能性と新しい考え方を提示してくれるものだが、ジョニー氏と上田氏にとって職人の存在は不可欠だった。「早い段階で、このアイデアには時計師が必要であることが明らかになりました」と上田氏は私に語った。「今日存在しないものを発明できる人物です。関さんのことは、F.P.ジュルヌ ヤング・タレント・コンペティションで受賞した人物として記事で知っており、直接連絡を取ることに決めたのです」。上田氏は共通の知人を通じて関氏に連絡を取り、日本へ飛んで面会した。「時計のコンセプトについて話し合うと、彼の頭がフル回転しているのがわかりました。彼は、解決策がまだ存在しない問題に直面したときに興奮するタイプの時計師なのです」
わずか10年前であれば、この大陸を越えた協力関係はもっと時間がかかったか、あるいは実現しなかったかもしれないが、距離に関係なく完璧に機能しているようだ。「距離があるため、プロセスのほとんどはオンライン会議で行われます」と上田氏は言う。「ですがジョニーと私は隔月で東京へ足を運び、対面での時間も確保するようにしています」。ジョニー・ティン氏もこれに同意し、ブランドのワークフローをシームレスだと表現する。「全体のコンセプトや方向性を一緒に話し合い、私がそれらのアイデアを視覚的な言語に落とし込みます」とジョニー氏は語る。「そこから機能的な要件が生まれ、関さんと密接に連携しながら、時計が望みどおりに機能するように彼がメカニズムを設計するのです」。ジョニー・ティン氏と上田北斗氏の異色のテックバックグラウンドが珍しいアイデアをもたらし、関 法史氏の魔法のようなスキルがきわめてユニークなデビューウォッチを作り上げたのだ。
クワイエットクラブが最初に生み出したクリエイティブな腕時計は現在プレオーダー受付中で、詩的な名称とインスピレーションを持つフェイディング・アワーズ(Fading Hours)と名付けられている。過剰に注目を集めようとする複雑機構がセミスケルトンやフルスケルトンをとおして誇示される現代の潮流において、フェイディング・アワーズは異なるゲームを展開している。この時計には禅の静かな力が強く宿っており、私自身、外の世界ではなく所有者に語りかけるような、控えめながらも複雑なウォッチメイキングには大いに引かれる。ダイヤル上のロゴに関して、奇妙で唯一の変更点は、9時と3時のインデックスが文字のQとCを表すモールス信号になっていることだ。これには私の世界観も揺さぶられた。ムーブメントは関氏によって完全に自社で製造されている。「正直なところ、デビュー作で新しい機構を発明するのはきわめて大胆なことだと思われました」と上田 北斗氏は言う。「しかし私たちはこのリスクこそが、自分たちのビジョンを完全に実現するための唯一の実行可能な道だと考えたのです」
クワイエットクラブの最初の作品は、(冗談を意図した)エレガントで静かな機能性に焦点を当てている。「時計は単に眺めるだけのものではありません」とYouTubeのブランドプレゼンテーションのナレーションは語り、こう付け加える。「それは感情や感覚に関するものであり、自身の個性や深みを加えることができる器になるのです」。フェイディング・アワーズの余白のあるダイヤルを見ると、この言葉が響く一方で、目に見えるギアの複雑さが控えめなデザイン言語と見事に並置されている。クワイエットクラブ最初のデザインの独自性は注目を集め、スイスのメーカーやほかの3人の日本人クリエイターと競い合い、ルイ・ヴィトン ウォッチ プライズ フォー インディペンデント クリエイティブズのファイナリストに選出された。初年度の目標生産数は10本。関 法史氏の仕事が手仕事であることを考えれば、これは野心的な数字だ。
フェイディング・アワーズの繊細な複雑さは、控えめなアラームによって音として表現される。これはゴングを叩くハンマーによって作動し、ミニッツリピーターに似ているが異なる仕組みだ。その音はデジタルの邪魔が入る世界において、着用者を優しくリセットさせるためのもの。至る所にあるiPhoneの甲高い上昇トーンではなく、優しい合図でタスクを切り替えることを思い出させてくれるかのようだ。「ウォッチメイキイングの観点から、最大の挑戦は時計をできるだけシンプルに使えるようにすること(例えばひとつのボタンでアラームの全機能を制御するなど)でした」と関氏は語る。「その裏側には信じられないほどの複雑さが要求されました。既存のメカニズムを組み合わせるだけでは機能的・操作的な要件を満たすことが不可能だったため、ほぼすべてをイチから設計しなければなりませんでした」。
これはクワイエットクラブの野心的な姿勢を雄弁に物語っている。しかしそれは独自の課題も提示する。「もちろん、これは困難なことでした」と関氏は言う。「しかし同時にエキサイティングでもありました。現実世界のニーズを満たすために新しいメカニズムを発明するプロセスは、ブランドにとってまったく新しい感覚であると同時に、ウォッチメイキングの原点に立ち返るような感覚でもあったのです」。ジョニー・ティン氏も同調し、「ここに関氏の独創性と芸術性が真に輝いています。彼はこれらの複雑な工学的パズルに対して効率的な解決策を見出すだけでなく、美しく緻密で視覚的にバランスの取れたメカニズムを作り上げることができるのです」と述べている。
40.3mmの直径、エルゴノミクスに基づいた44mmのラグ・トゥ・ラグ、そして12mmの厚さにより、日常の快適さは確保されているが、その機能はどうだろうか。チタン製のケースに収められたダイヤルは、マットな仕上げが手磨きで施された外側と内側のダイヤル、ポリッシュ仕上げを施したドーナツのような外輪、そして両者を分かつ1本の垂直線が特徴だ。5時位置の穴はアラームの作動状態を示している。アラームについて言えば、背後から垂直ハンマーが叩かれるとダイヤル全体が事実上のゴングとして機能し、フェイディング・アワーズ独特のまろやかな音色を奏でる。「コンセプトは集中状態に入るときと出るときに、鐘の音のような美しい音を鳴らすことでした」と関 法史氏はYouTube動画で語っている。
丸みを帯びた、ほぼドーナツ状の外側のダイヤルは、内側ダイヤルの外縁とその下のゴング機構を覆っている。短いラグの長さは、ボウル状のケース形状によって実現されており、ラグが上部で半分隠れているように見える。フェイディング・アワーズの画像の多くはデフォルトの10時10分のセットアップを示しているが、針をよく見て欲しい。実はメインの針の下にパテック フィリップ ノーチラス トラベルタイムのGMT針のように、別の時・分針が隠れている。これは、正確に指定した時刻に優しいリマインダーを必要とする場合にのみ現れるものだ。アラーム時刻を示すこれらの針は単一のリューズにあるプッシャーを押し、ベゼルを回して2本目の針を動かすことで設定される。これもまた初の試みだ。
緻密なダイヤルアートやカットアウトの華やかさを好む人にとって、ダイヤルそのものはその禁欲さゆえにプロトタイプのように見えるかもしれない。しかし私にとっては、このインダストリアルな雰囲気こそが大きな魅力の一部だ。フェイディング・アワーズは裏側から見ると異なる音色、あるいはゴングを奏でる。これこそがクワイエットクラブの時計製造責任者である若き時計師、関 法史氏が本領を発揮する場所だ。ムーブメントは関氏によって完全に設計、そして工学的にハンドクラフトされており、ほとんどの部品が自社で製造されている。ダイヤルゴングと垂直ハンマーの機構は、この種のものとしては初だ。1万8000振動/時のムーブメントは手巻きで、50時間のパワーリザーブを備えている。私には、それが懐中時計のムーブメントのような魅力をすべて備えているように感じられる。同時に、垂直ハンマーのためのスペースを確保するために大きなテンプを中央に寄せた、きわめて珍しい輪列配置を見せている。
8万5000ドル(日本円で約1335万円)という価格で、年間10本程度のきわめて限定的な生産であるため、フェイディング・アワーズの並置された魅力はごく限られた人々のためのものだ。しかし、これほど多様なバックグラウンドを持つ3人の頭脳が結集したそのあり方には強烈な魅力があると感じる。そして似たような腕時計が溢れる世界において、このトリオが希少なものを生み出したという事実に向き合おう。「私たちは現在もフェイディング・アワーズのプレオーダーを受け付けています」と、上田氏は最後に語った。「年末までに最初の納品を行う予定です。まだ年間約10本の生産能力に限られていますが、2026年にはチームを拡大して増産し、自分たちのビジョンを広げるための第2、第3のモデルのアイデアもあります」。私自身も、そして多くの読者も、今後の展開を注視し続けることになるだろう。
詳細については、クワイエットクラブのウェブサイトから確認して欲しい。
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