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One to Watch アンネリンデ・ダンセルマンと“ブラックチューリップ”―異彩を放つオランダの新星

大きなキャリアチェンジを経て、ジャガー・ルクルトとナーベル(Narbel)で経験を積んだダンセルマン氏。グローネフェルト兄弟のもとで学んだ彼女が、その時計製造技術を披露する。

現在、インディペンデントウォッチメイキングの世界では、オープンワークのダイヤル、露出したテンプ、精巧なディスプレイという見せるための要素が話題の中心となっている。しかし、アンネリンデ・ダンセルマン(Annelinde Dunselman)氏は静かにその逆の方向を向いている。オランダにある彼女のアトリエから生まれる時計はそうした衝動に抗い、代わりにプロポーションや抑制の効いたデザイン、そして着用者だけが理解できるディテールを通して控えめながらも気品を感じさせる。

Annelinde Dunselman

アンネリンデ・ダンセルマン氏の作品。ブラックチューリップ。

 ダンセルマン氏は「時計にはいつも魅了されてきました」と言う。そして彼女の選んだ、現代においては珍しいキャリア選択について語ってくれた。「子供の頃は、腕に何本もの時計を巻いて歩き回っていました。神秘的で美しいその内部では何が起こっているのか、その興味が尽きることはありませんでした」。彼女はオランダの小さな歴史ある町ズヴォレにアトリエを構える、“控えめ”が基本理念の時計師であり、デビュー作はブラックチューリップと名付けられた。幅広のラグを持つ38.5mmのステンレススティール製ケースが、シャープで多層的なダイヤルを縁取っている。そのダイヤルはレトロというよりはかなりモダンな印象で、ザラツ研磨が施されたグランドセイコーのケースを彷彿とさせるような、規律ある仕上げが施されている。遠目には時計のプロポーションはスポーティにも見える。しかし近づいて見ると、その関心は繊細な針や複雑なダイヤルの質感へと移り、注意深く観察することの価値を教えてくれる。

 ダンセルマン氏は長年にわたり最高の時計師たちと仕事をしてきたが、彼女のキャリアの始まりは時計師ではなく、ソーシャルワーカーだった。しかし最終的には、時計への情熱が勝ったのだ。「幼い頃に感じた好奇心や驚きは、ソーシャルワーカーであることよりも私には向いていました」と、形あるものを創りたかったダンセルマン氏は語る。「時計の魅力を真に理解し、その機械を把握し、そうしたオブジェがどのようにして命を吹き込まれるのかを学びたかったのです」と彼女は言う。「ウォッチメイキングは私が探し求めていた技術、創造性、そして奥深さのすべてを感じさせてくれました」。

Annelinde Dunselman

アンネリンデ・ダンセルマン氏。Photo by Monique Eller Photography

 ダンセルマン氏の忍耐力、努力、そしてディテールへの鋭いまなざしが、彼女をこの道へと導いた。その道のりでは、経験を積むために空き時間に家族経営の宝飾店でボランティアとして働いたことも含まれる。「私は熟練の時計・クロック職人から学ぶという機会を得ました。彼らからの教えは、今でも私の仕事に影響を与えています」と語る。ジャガー・ルクルトとフィリップ・ナーベル(Philippe Narbel)氏の元でのインターンシップを経て、彼女はグローネフェルトに最も長く在籍した。自らを“Horological Brothers”と称するバート・グローネフェルト(Bart Grönefeld)氏と、ティム・グローネフェルト(Tim Grönefeld)氏と共に働いた。グローネフェルト兄弟から学んだことで、本や勉強では得られないことは何かと尋ねた私に、彼女は「ある意味、答えはすでに質問のなかに含まれています」と答えた。「そこで学んだことはすべて、学校で学ぶウォッチメイキングをはるかに超えるものでした。本当に美しいものを創り出すために大切なのは、オブジェと深く、献身的なつながりを築くことでした」と微笑みながら語った。「多くの意味で、私にとって時間は異なる意味を持つようになりました。最高レベルでなければ十分ではないと理解し、その考え方は今も常に持ち続けています」と彼女は言った。

 彼女の歩みをさらに掘り下げる前に、まずはブラックチューリップのディテールを詳しく見ていこう。私が最初に感じた日本のウォッチメイキングとの関連性は、すぐに薄れていった。時計を間近で見ると、幅広で流れるようなラグのおかげで自信に満ちた風格がある。これは私が好む特徴だが、ダイヤルの複雑な世界観はユニークだ。時計自体は(私にとって)ほぼ完璧な直径38.5mmで、日常使いしやすい11.9mmという薄さを持ち、彼女のルーツであるオランダにちなんだ、風変わりなイースターエッグを備えたモダンなタッチが特徴だ。詳細は後述するが、時計を真上から見ると、凹面のベゼルが詳細なダイヤルを囲んでいる。ポリッシュ仕上げを施した幅広ラグがカジュアルなトーンを演出し、横から見ると、さらに多くの驚きと魅力が感じられる。

Annelinde Dunselman

 ブラックチューリップという名前はどこから来たのだろうか? その答えはオランダの歴史、17世紀のチューリップバブルにまでさかのぼる。今や国の象徴となったチューリップは、16世紀にオスマン帝国から伝わった。私の記憶が正しければ、この言葉自体、現在私たちが知るターバンに由来する。チューリップの花びらの襞(ひだ)を観察すれば、それも納得がいく。チューリップはオランダで富の象徴となり、愛好家のあいだでは、黒いチューリップを自然に咲かせることが究極の挑戦となった。これは花の遺伝的性質からほぼ不可能とされており、園芸における偉業、威信、豪華さ、そして希少性の象徴と見なされていた。もっと個人的な話をすれば、このデビュー作のブラックダイヤルバージョンを見てみたいものだが、それはダンセルマン氏自身がすでに検討していることだろう。「長期的には、私の作品が自ずと語ってくれることを願っています。品質や認知度を通じて、そして人々の心に響き続けるユニークでタイムレスなデザインを通じて」と彼女は述べた。

Annelinde Dunselman
Annelinde Dunselman

Photo by David Jumpa

 ケースサイドは丸みを帯びているが、ほぼ垂直に落ち込んでおり、サテン仕上げを施した目を引く貝のような波状の模様が特徴だ。安心感のある大きなリューズにはDunselmanの“D”が横向きでチューリップの形に巧みにデザインされ、エングレービングされている。これはブラックチューリップという名前にもちなんでおり、創造的なディテールが次々と現れる。私の個人的なお気に入りは、ベゼルサイドに丹念にエングレービングされた珍しいパターンのD模様だ。垂直のチューリップのシンボルと横向きのDが交互に並び、これらはロゴ入りのリューズ同様、ブラックラッカーで満たされている。ストラップ側のケースサイドには、ダンセルマンのオランダの伝統を強調するテキストがエングレービングされている。

 シルバーのダイヤルも、チューリップのようなDのロゴで飾られている。これを読むと、ロゴが過剰なのではないかと疑うかもしれない。しかしこれは、ロゴがエングレービングされたグランドセイコーのダイヤルのように、よほど近づかない限りわからない。シルバーホワイトのダイヤルにユニークで洗練された個性を与える、巧みな模様と化しているのだ。すっきりと見せるため、チューリップのDはすべて垂直に配置され、インナーベゼルの滑らかなミニッツトラックに縁取られている。これは凹面のベゼルとのバランスを取り、5分ごとにアプライドのドットインデックスとシャープなブラックプリントが施されている。ロゴは、12時位置の窪んだテキストの上に配されたD字型のプレートにも再び現れる。ほかにも、インナーベゼルとマッチするシルバーホワイトの縁取りが6時位置の段差のあるインダイヤルを囲い、スモールセコンド表示を示していたり、その下部には“BLACK TULIP”の名前が見えたりと見どころは多い。そして秒針には黒いチューリップがあしらわれ、これもまた発見する楽しみのある魅力的なイースターエッグだ。

Annelinde Dunselman

 こうしたディテールを発見することに喜びがある。シルバーとグレーのツートンで、ミニマルに見えるダイヤル上では、繊細な時・分針が優美なコントラストを生み出している。サファイアクリスタルのケースバックからは、チューリップのシンボルは一切見られない。私が本作に抱いた“成熟したデビュー作”という第一印象は、ムーブメントであるCal.D202.5によってさらに強固なものとなった。

 専門家の友人たちと共同で自社開発されたこのムーブメントは力強い初披露作だ。ディテールに細心の注意を払った、直径31.8mmの手巻き式である。125個の部品で構成され、厚さは7.8mm。ロジウムメッキが施されたブリッジがケース内部を魅力的にする。手作業で施されたアングラージュやポリッシュ仕上げのネジといった、研究し尽くされたディテールも見て取れる。ブランドの象徴となるであろう、香箱に施された深いレリーフ彫刻も同様だ。完成度の高いオープンワークのディテールは、初めてにしてはかなり印象的な100時間のパワーリザーブを誇るムーブメントをより一層力強いものにしている。

Annelinde Dunselman

Photo by Davis Jumpa.

 ダンセルマン氏によると、10本限定のブラックチューリップは唯一無二のデザインと見なすことができ、そこには目標と挑戦があったと言う。「レンダリングや中途半端なデザインから始めたくはなかったのです」と彼女は語る。「ムーブメントを実際に作り、それを感じ、理解したかったのです。ちょうど昔の職人が、文字どおり自分の作品を市場に持ち込むように。潜在的な顧客や関心を持つ人々が実際に時計を手に取り、私が作り上げたものを真に体験できるようにしたかったのです」。これこそが、彼女がコレクションやシリーズものを避けることにした理由だ。「毎回、新しいものをデザインし、開発することに挑戦し続けたいと思っています。それが、現在この工芸に大きなやりがいを感じている点です。私にとっての大きな挑戦は、認知度と刷新のあいだのバランスを見つけること。それはつまり特定のフォーマットに忠実でありながらも、毎回あえて違うものを創り出すことです」

 ブラックチューリップは現在製造中で、10本に限定される。各モデルにはブラウンのアリゲーターレザーストラップが付属する。価格は3万8000ユーロ(付加価値税別/日本円で約695万円)。

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