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ニューヨークのセレブ外科医、スティーブン・ストレンジ(Stephen Strange)博士を紹介しよう。トニー・スターク(Tony Stark)に匹敵する科学者で、ニューヨークの高級マンション、クルマ、名声、そして時計のコレクションを所有する。しかし、ランボルギーニのハンドルを握ったある運命的な夜が、すべてを変えてしまう。ストレンジは手術の責任者から、人生がままならないほどの麻痺を抱えた患者になってしまったのだ。
事故前の姿に戻る選択肢はほとんどなく、スピリチュアルな治療とホメオパシー治療を受けるため、最後の努力としてカトマンズにあるカマル・タージ(秘術の達人たちの本部)へ巡礼に行く。そこで彼が出合ったのは、回復以上のものだった。時が経ち、多くの訓練を経て、彼自身が魔術のマスターとなり、マントをまとったスーパーヒーローになるのだ。“ドクター・ストレンジ”という名前は、まったく新しい意味を持つようになる。興味深いのは、金持ちの一般市民から熱心な魔術師と変貌を遂げた彼が、かつての自分の記憶と、これからなりたい自分へのインスピレーションとなる特別で複雑な時計を持っていることである。
注目する理由
マーベルの映画作りが本格的に復活した。この2年間、『ワンダヴィジョン』から『ロキ』まで、ディズニープラスのテレビシリーズを散々見させられてきた。そしてマイナーな(と批評家が言う)映画『エターナルズ』。しかし、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が映画館で公開され、映画鑑賞の復活を告げ、巨大な興行成績を収めた。そして、スーパーボウルでは、2016年の『ドクター・ストレンジ』の待望の続編、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』の真新しい予告編が公開された。『ワンダヴィジョン』のシリーズが終わったところから始まるこの作品は、アメコミのファンにとっては待ち遠しいものだ。時計好きも同様に感じているはずだ。なぜなら、この予告編では、1作目で重要な役割を果たした時計がクローズアップされていたからだ。というわけで、ベネディクト・カンバーバッチのMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)デビュー作を再訪するために、2016年にタイムスリップしてみよう。
Watching Moviesでマーベル映画を取り上げたのも、HODINKEEでマーベル作品を取り上げたのもこれが初めてではない。しかし、主人公の物語にほぼ不可欠という意味で、腕時計を大きく取り上げたのはこれが初めてだ。この映画では、ドクター・ストレンジの時計は信仰であり、象徴であり、思い出の品なのだ。実際、時計は動かない。ストレンジが交通事故で命を落としそうになったように、時計も壊れてボロボロになっている。
破壊された時計はジャガー・ルクルトのマスター・ウルトラスリム・パーペチュアルだ。確かに奇妙な選択だが、ストレンジが時計好きであることを考えれば、そうとも言い切れない。交通事故の直前のシーンで、彼は街を見下ろす豪華なペントハウス・アパート(窓が多すぎるくらいだ)に住んでいる。彼が引き出しを開けると、中にはかなりの数の時計が収められている。全部を確認するのは難しいが、白いダイヤルのプリセラミックデイトナらしきものが確認でき、彼が騒がれる前からのファンであったことがうかがえる。
しかし、外科医としての最後となった運命的な夜、ブラックタイ・セレモニーにほかでもないこのJLCを選ぶ彼の姿を見ることができる。白いダイヤルと黒いストラップの組み合わせ、そして数々のコンプリケーションは、このようなイベントに最適だ。もちろん、彼がその場にたどり着くことはなかったが。
マスターシリーズは、JLCにとって最も重要なコレクションのひとつだ。このシリーズの特徴は、無駄のないデザインにキラームーブメントを搭載した時計を提供していることだ。その歴史は100年近く前に遡り、現在の大手時計メーカーにムーブメントを供給していた頃まで遡ることができる。このモデルは、ムーンフェイズ、日付、月、年表示など、あらゆる機能を搭載している。JLCによれば、これはまさにオンリーワンの時計であり、唯一無二の作品であるという。ストレンジは、このブランドの歴史を知っていたからこそ、この時計を購入したのだと思いたい。彼は根っからの時計オタクなのだと思う。彼のコレクションには、カメラのピントが合っていないものも多く、全体を把握するのは難しいが、さまざまな時計のデザインアプローチを代表するような、多彩なコレクションに見える。マスター・ウルトラスリム・パーペチュアルは、どう見てもハンサムなタイムピースだ。
映画では何度も登場し、クローズアップされる場面もある。ストレンジはカマル・タージへの旅にこの時計を連れて行く。映画の冒頭、中盤、そして文字通りのラストで登場し、それぞれの重要なストーリー展開に欠かせない存在となっている。そして、ストレンジがコスチュームを着たままこの時計を身につけていることが、ほかのスーパーヒーロー映画の時計とは違うクールなポイントだ。これこそ、趣味へのこだわりと言えよう。
見るべきシーン
前述したように、ストレンジはニューヨークの豪華なガラに出かける直前に時計の引き出しを開けている。タキシード姿の彼が引き出しから取り出したのは、JLCだった。そして、その時計を手に取り、カメラに向かって見せびらかす。その瞬間[00:10:34]、彼の手首にあるダイヤルとその複雑な輝きをはっきりと見ることができる。
映画のほぼ中盤、敗北し意気消沈した髭面のスティーブン・ストレンジは、カマル・タージでティルダ・スイントン(Tilda Swinton)演じるエンシェント・ワンと出会う。彼女は未来的なチベットの僧侶のような格好をしており、彼は風呂に入っていないヒッピーのような格好をしている。彼女は、ある条件に従う場合においてのみ、彼に神秘的な魔術を教えることに同意する。そしてストレンジは、まもなく敵となるモルド(演:キウェテル・イジョフォー/Chiwetel Ejiofor)に居室へと案内される。彼は内観の瞬間、ボロボロのポケットから時計を取り出し [00:34:15]、ちらりと見る。そしてカメラはJLCをクローズアップし、車の事故で砕けたサファイアのクリスタルを映し出す。彼がそれを裏返すと……そこにはさらに、ある刻印が見られる。「時間が、私があなたをどれだけ愛しているかを告げるでしょう。クリスティーンより。(Time will tell how much I love you - Christine)」と書かれている。クリスティーンは、レイチェル・マクアダムス(Rachel McAdams)演じる彼の恋人であり、病院の元同僚である。ダイヤル側ではほとんどわからないが、この刻印によって、この時計がスペシャルエディションであることがケースバックからわかるようになっている。正直なところ、これはシーンの感情的な重さを表現するのに最適な時計の使い方だと思う。この瞬間、もはや時計は単に時を刻む装置ではなくなるのだ。
クレジットが流れる直前、グリニッジ・ビレッジのブリーカー街177Aにある魔術師の本部の大きな窓の前に、魔術師となったドクター・ストレンジがマントをかぶり、完全なコスチュームを着て立っているのが映る。彼は時計を取り出し、コスチュームを着た手首に装着する[01:44:33]。ストレンジとJLCマスター・ウルトラスリム・パーペチュアルをここぞとばかりにクローズアップ、そしてワイド撮影。この時計がまるでヒーローのように見える。ここで画面が暗転するのだ。
『ドクター・ストレンジ』(ベネディクト・カンバーバッチ主演)の監督はスコット・デリクソン、小道具はバリー・ギブスが担当。Disney +でストリーミング、iTunesまたはAmazonでレンタルまたは購入可能。
Lead illustration, Andy Gottschalk
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