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我々が知っていること
ジュネーブからの新しいニュースだ。ゼニスとカリ・ヴティライネンが、フィリップスの協力のもと、とてもクールなスペシャルエディションウォッチをリリースすることになった。ゼニスのキャリバー135-Oは、1950年代に製造された観測用クロノメータームーブメントで、精度を求めるヴィンテージウォッチコレクターに長く愛されてきたものだ。
このプロジェクトは、2019年にオークションハウスとゼニスがコラボして、2本のエル・プリメロ クロノグラフのカスタムモデルが少量生産されたのち、フィリップス時計部門のオーレル・バックス氏とアレクサンドル・ゴッビ氏が交わした会話から始まった。これらの時計の成功に加え、同年フィリップスがチャリティオークションに出品したプラチナ製ユニークピースのエル・プリメロの製作後、バックス氏とゴッビ氏はゼニスにおいて、スイス時計メーカーのパイオニアであり、高い収集価値を持ち、永久に過小評価されているミッドセンチュリーのクロノメータームーブメントに焦点を当てた、別タイプのヴィンテージリバイバルを提案したのだった。こういった経緯により、このゼニス キャリバー 135 オプセルヴァトワール リミテッド エディションが誕生したのである。
ゼニスとフィリップスは、ゼニスのアーカイブから入手した1950年代のオリジナルムーブメントの修復と装飾を、ヴィンテージクロノメータームーブメントの加工とケーシングの経験を持つエキスパートである独立時計師カリ・ヴティライネンに依頼した。ゼニスは、1950年代初頭にヌーシャテルの天文台で行われた試験で実際に使用された希少なキャリバー135-O(天文台用)を提供した。
Cal.135は1948年から1962年にかけて約1万1000本が製造されたが(ポートロワイヤルコレクションで頻繁に見られる)、Cal.135-Oは天文台での試験用に作られ、ケースに入れることは想定されていなかった。この金メッキのムーブメントは、当時のゼニスの最高傑作であり、ムーブメントの製造期間中、230以上の部門最高のクロノメーター賞を受賞している。Cal.135-Oは、時計製造の歴史のなかで最も多くの天文台クロノメーター賞を受賞しており、現在でも最も精巧で正確な手巻き腕時計ムーブメントのひとつと見なされている。
Cal.135は、1945年にスイスの時計師Ephrem Jobinの指導のもと開発が始まった。彼は、当時のゼニスの技術責任者Charles Zieglerから、ゼニスがスイス国内および海外の天文台コンクールに持ち込むことができるクロノメーター・ムーブメントの開発に挑戦していた。
Cal.135は、13リーニュ(クロノメーター腕時計のコンクールで認められていた最大サイズのムーブメント)で、珍しい輪列配置が特徴だ。このムーブメントはオフセンターの分針とセンターホイールを特徴としており、この選択により、より大きなバイメタル構造の“ギョーム”テンプ(ブレゲ・オーバーコイルと緩急装置の組み合わせ)とより大きな主ゼンマイを搭載し、等時性と精度を向上させることができる。
今回ケースに収められた10個のムーブメントは1950年から1954年にかけてのもので、この5年間はゼニスがヌーシャテル天文台のクロノメーターコンクールで毎年1位を獲得し、特に記録的な成功を収めた時期である。これら10個のムーブメントは、ゼニスのクロノメーター研究所で、Charles FleckとRené Gygaxという時計職人によって個別に調整され、コンクールのために準備されたものだ。
これらのオリジナルのコンペティション用ムーブメントは、純粋に精度を追求するために設計されたため、実質的な装飾が施されていなかった。カリ・ヴティライネンの協力を得たのはこのためだ。1950年代のムーブメントは、ヴティライネンとヌーシャテルの時計職人チームによって、ひとつひとつ丁寧に分解、洗浄、修復し、装飾が施された。繊細な面取りとハンドグレイン仕上げが施されたブリッジ、美しく面取りされたネジ穴、スネイル仕上げが施された歯車は、サファイアガラスのトランスパレントケースバックからはっきりと見えるようになっている。ゼニスとカリ・ヴティライネンは、修復の過程でFleckとGygaxが行ったように、意図的にムーブメントのオリジナルレギュレーションを維持した。その結果、ムーブメントには衝撃保護機構を搭載しないという決定がなされている。
カリ・ヴティライネン率いるチームがムーブメントを復活させたあと、それぞれのモデルは、テーパードの効いたシャープなラグ、大型リューズ、滑らかなポリッシュ仕上げのベゼル、サテン仕上げのケースバンドを備えた38mm × 10.35mmのプラチナ製ラウンドケースに収められた。
このブラックダイヤルは、カリ・ヴティライネンがスイスのサン・シュルピスに構えるダイヤル製作工房コンブルミーン(Comblémine SA)でひとつひとつ製作されたもので、わずかにドーム型をしたシルバー製である。 各ダイヤルは、マットブラックの中央部をギヨシェ装飾が施された外側のリングが囲み、60個のスモールミニッツマーカーと12個のファセット・トライアングル・アワーマーカー(すべてロジウムメッキのジャーマンシルバー製)が点在するセクタースタイルのレイアウトだ。 6時位置のスモールセコンドサブダイヤルは、明るいアズラージュ仕上げで、それぞれのムーブメントのオリジナルのシリアルナンバーが記されている。
個人的なお気に入りは、秒表示の下にある "Neuchâtel "のサインだ。これは、ゼニスとカリ・ヴティライネンの本拠地であり、それぞれのムーブメントがかつて競い合った歴史的な天文台があるスイスの州を強調しているのだ。
10個の時計は、ヴィンテージ風のウォルナット材の箱に収められ、真鍮の留め具で固定されている。これは、ゼニスがマニュファクチュールからヌーシャテル天文台にムーブメントを輸送する際に使用したオリジナルのボックスへのトリビュートだ。
また、ゼニスの歴史家やコンプリート・コレクターのために、各時計にはディスプレイ用の1950年代のオリジナル木製ボックスが付属する。
我々が思うこと
ゼニスは、ハイビートの自動巻きクロノグラフムーブメント、エル・プリメロの重要性と歴史について、素晴らしい啓蒙活動を行ってきた。同時に、エル・プリメロに注目が集まるあまり、ゼニスの時計製造の歴史は、興味深い機械的特性や美的特性を備えた無数のエキサイティングなタイムピースで埋め尽くされており、つい見逃してしまいがちだ。
今年初めにゼニスのデファイ リバイバル A3642が発表されたとき、私がとても魅力的だと感じたのはそのためだ。ゼニスの豊かな歴史の新たな側面を浮き彫りにし、最終的には私がデファイのヴィンテージモデルを手に入れるきっかけとなった。歴史あるスイスの時計ブランドがアーカイブを公開することは、現代の時計コレクターや愛好家にとって、これまで触れることも評価されることもなかった時計製造の歴史の一端を知る機会となることだろう。
だから、このような歴史的に重要で知的な満足感を与えてくれる時計の発売が、ほとんど独占的なパッケージングであることは気にならない。他にどんな表現があるだろうか。結局のところ、10本しかないこの時計は、それぞれ13万2900スイスフラン(約1800万円)という高価格で、フィリップスを通じて独占的に販売される予定である。しかし、ゼニスはフィリップスやヴティライネンと提携し、このプロジェクトを秘密裏に完成させることもできたはずだ。この3社には、10本すべてを売り切るだけの富裕層と顧客層があるのだから。しかし、彼らはそうしなかった。完成した作品についてオープンにするということは、将来、何らかの形でこの作品が見直される可能性が非常に高いということなのだ。
ゼニスにとって、今日のリリースがもたらす本当の影響は、やがて数年後に起こるだろう。新しいゼニス キャリバー135 オプセルヴァトワール リミテッドエディションによって始まった議論は、現在、Cal.135のコマーシャルエディションを搭載した過小評価されているゼニスのヴィンテージウォッチに興味を持つ無数のコレクターの目(と財布)を開くことになると思う。そしてその興味は、将来ポートロワイヤルのような3針時計コレクションの復活への道を開くことにもつながるであろう。
時計製造における多くの事柄と同様に、ゼニス キャリバー135 オプセルヴァトワール リミテッドエディションの8桁の価格やほとんど入手不可能であることは、このモデルがそもそも魅力的で興味深いものであることを考えると、まったく二の次となる。大事なことは、Jobin、Gygax、Fleckの3人の手によって初めて世に送り出されてから50年以上経った現代において、その歴史と紛れもないクオリティにスポットライトが当たっていることなのである。
基本情報
ブランド: ゼニス(Zenith)
モデル名: キャリバー 135 オプセルヴァトワール(Caliber 135 Observatoire Limited Edition)
型番: 40.1350.135/21.C1000
直径: 38mm(ラグからラグの全長は46.5mm)
厚さ: 10.35mm(ドーム型のサファイア風防を含めない場合は7.95mm)
ケース素材: プラチナ 950
文字盤色: スターリングシルバーの文字盤、ブラックマットとギヨシェ仕上げ
インデックス: ロジウムメッキとファセットが施されたジャーマンシルバーのアワーマーカー、ドットミニッツマーカー
夜光: N/A
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: ブラックカーフスキンレザー、ホワイトゴールドピンバックル、ラグ幅19mm
ムーブメント情報
キャリバー: 1950年代初期のゼニス Cal. 135-Oをレストアしたもの。ヌーシャテルで開催された天文台クロノメーターコンクールで1位を獲得した個体。
機能: 時、分、秒
直径: 30mm
厚さ: 5mm
パワーリザーブ: 40時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 1万8000振動/時(2.5 Hz)
石数: 19
追加情報: カリ・ヴティライネンによるレストア
価格 & 発売時期
価格: 13万2900スイスフラン(約1800万円)
発売時期: フィリップスのエクスクルーシブ
限定: あり、10本
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