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Auctions フィリップス ジュネーブ・オークションのハイライト、隠れた名品、そしてその他の情報

破産してしまいそうなロイヤル オークのほか、たくさんの時計をご紹介。


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今朝、私はある使命を帯びてジュネーブに降り立った。春の時計オークションを取材するために、これから1週間、スイスの時計産業の中心地に滞在する。フィリップス、サザビーズ、クリスティーズ、そしてアンティコルムなどが、5月6日から10日まで毎日、街のあちこちでオークションを開催する予定なのだ。

 これらは今年最初のオークションではない。サザビーズは先週、香港でふたつのオークションを開催し、大ヒットを記録したNevadian Collectorオークションを筆頭に、オークションカレンダーを正式に始動させたのだ。アンティコルムもすでに多くのライブオークションを開催し、モナコレジェンドグループも4月下旬に印象的な成果を上げた。しかし今度のオークションは、昨年12月にニューヨークで行われたビッグイベント以来の、ビッグメゾンが一堂に会する大きな瞬間となる。

Audemars Piguet Royal Oak 5402ST

Lot 32: オーデマ ピゲ ロイヤルオーク 5402ST

 私は毎日、友人の写真家、ジェームス・K、通称@waitlistedと一緒に会場に入り、すべてのドラマを捉える予定だ。フィリップスは今週金曜日、5月6日に待望のロイヤル オーク50周年記念オークションで幕を開け、5月7日~8日にはジュネーブ・ウォッチ・オークション XVが開催される。

Audemars Piguet Royal Oak 15002BA

Lot 82: オーデマ ピゲ ロイヤル オーク 15002BA

Audemars Piguet Royal Oak Perpetual Calendar 25820ST

Lot 20: オーデマ  ピゲ ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー 25820ST

 私は、すべてのオークション、特にフィリップスのロイヤル オーク50周年記念セールとサザビーズのImportant Watchesに先立ち、主要なロットとオークションにおけるロイヤル オークの世界に焦点を当てたコンテンツを送る特別な一週間を計画した。しかし、その前に、今週末にフィリップスで開催される約300のオークションのハイライトと隠れた名品について、マクロレベルで見ておく価値がある。


ロイヤル オーク50周年記念オークション

フィリップスは、今週金曜日に開催されるロイヤル オーク限定オークションのために非常に印象的なカタログを作成した。オーデマ ピゲのロイヤル オークは今年50周年(びっくりした?)を迎え、世界中の多くのオークションハウスがその節目を記念しようとしているように感じられる。なかでもフィリップスはBacs & Russoと共同で、最も包括的な仕事をすることになった。

Audemars Piguet Royal Oak Perpetual Calendar 25820ST

Lot 44: オーデマ ピゲ ロイヤルオーク パーペチュアルカレンダー 25820ST

 オーレル・バックスのドリームチームは、カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)がカスタマイズして所有していたとされるPVDコーティングのモデルや、伝説のA2、ロイヤル オーク史上2番目に作られ、最も早い番号のRef.5402(1972年にバーゼルウォッチフェアで発表された4つのロイヤル オークのうちのひとつ)など、オークションに出品された88点の貴重なロイヤル オークを専用カタログにまとめた。

Audemars Piguet Royal Oak 14802ST

Lot 22: オーデマ ピゲ ロイヤル オーク 14802ST

 しかし、今週末にこれらの時計を詳しく紹介する前に、このオークションで選ばれた10点の興味深い逸品を紹介しよう。まずはパーペチュアルカレンダーから。気を引き締めていこう!

パーペチュアルカレンダー

 ロイヤル オークの誕生から約12年後の1980年代半ば、初代ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダーが正式に発表された。初代のRef.5548(APは間もなく5桁のリファレンスナンバーに変更)は、驚くほどスリムな自動巻きの永久カレンダームーブメント、Cal.2120/2800を搭載しており、これは後に重要になるが、うるう年表示がないのが特徴だ。さて、ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダーの初期の歴史をすべて掘り下げるつもりはない。それはすでに2年前にジェームズが途方もない形で行っているからだ。しかし、ロイヤル オークのアイデンティティにとってパーペチュアルカレンダーというコンプリケーションがいかに重要であるかを理解することが大切だ。ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダーは、ロイヤル オーク クロノグラフの約10年前、そしてロイヤル オーク トゥールビヨンの13年前に発表された。このフィリップスのカタログには、これまで製造されたなかで最も希少で人気が高いロイヤル オークができるだけ多く掲載されていると言われているが、そのなかでパーペチュアルカレンダーを搭載したロットは27点(グランドコンプリケーションを含む)。これはカタログの3割にあたる。そのなかから、私のお気に入りを5つご紹介しよう。

Audemars Piguet Royal Oak Perpetual Calendar 25636PT

Lot 15: オーデマ ピゲ ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー 25636PT

 APは1986年にロイヤル オーク パーペチュアルカレンダーの最初のスケルトンバージョン、Ref.25636を発表したが、開発のスタートは1983年にまでさかのぼると言われている。合計312本のサンプルが知られているが、プラチナ製ケースは41本のみだ。このサンプル、Lot 15はCシリアルナンバーとマーク1ダイヤル(6時位置にオーデマ ピゲの小さなサインがある)を備えており、このモデルの生産ラインの初期のものに位置づけられる。前回、2021年10月のモナコレジェンドでは40万ユーロ超えのものが出品された。フィリップスは現在、エスティメートを20万~40万スイスフラン(約2645万〜5285万円)としているが、私はオーバーに賭けた方が安心だと思っている。サザビーズも5月10日のジュネーブ・ウォッチ・オークションでRef.25636PTの美しいサンプルを出品するが、それはフィリップスのサンプルから数年後のものである。

Audemars Piguet Royal Oak Skeleton Perpetual Calendar 25636SP

Lot 42: オーデマ ピゲ ロイヤル オーク スケルトン パーペチュアルカレンダー 25636SP

Audemars Piguet Royal Oak Skeleton Perpetual Calendar 25636SP
Audemars Piguet Royal Oak Skeleton Perpetual Calendar 25636SP

 Lot 42にもう1本、超クールなRef.25636がある。ケースはスティール製、ベゼルとブレスレットのセンターリンクはプラチナ製で、 SSとプラチナを組み合わせた25本のうちの1本だ。プラチナベゼルのミラーポリッシュ仕上げを見れば、この金属のクールな組み合わせが、隠れた贅沢であることがわかる。その外観はステルス的だが、この時計を自分のものにするには相当な予算が必要だ。予想落札価格は15万〜30万スイスフラン(約1985万〜3965万円)。

Audemars Piguet Royal Oak Perpetual Calendar Skeleton 25829TP

Lot 33: オーデマ ピゲ ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー スケルトン 25829T、Image, Phillips

 ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダーの第2世代のスケルトンモデルで、Lot 33はタンタルとプラチナのふたつの金属で作られたRef.25829TPである。ポリッシュ仕上げのプラチナ素材とタンタルのエクストラダークグレー調が融合した興味深い組み合わせだ。この金属の組み合わせのスケルトンダイヤルは16例しか存在しないとされているが、興味深いことに、このサンプルのケースナンバーは25だ。これはAP社が25個のケースを連続生産し、スケルトンとソリッドダイヤルのRef.25820TPのあいだで非連続的に使用したためである。Lot 33の予想落札価格は8万~16万スイスフラン(約1060万〜2115万円)だ。

Audemars Piguet Royal Oak Perpetual Calendar 25654PT Asprey

Lot 40: オーデマ ピゲ ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー 25654PT “Asprey”

 このアスプレイネーム入りRef.25654PTのダイヤルは、最初は徐々にトロピカルに変化しているのかと思ったのだが、実はこのカッパーブラウンの色調はすべてオリジナルなのだそうだ。このノンスケルトンのパーペチュアルカレンダーは1988年に製造され、プラチナ製は38本しかないうちの最初の1本、つまり“ヌメロ・ウーノ”なのだ。アスプレイのサインも入っており、コレクターにはたまらない1本だ。フィリップスはLot 40の予想落札価格を25万〜50万スイスフラン(約3300万〜6600万円)としている。

Audemars Piguet Royal Oak Perpetual Calendar 5554ST

Lot 54: オーデマ ピゲ ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー 5554ST

 最後に紹介するのはLot 54、ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダーの生産2年目である1985年のシリアルが4桁のサンプルである。マーク1のダイヤルを持ち、うるう年表示がないという、初期型ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダーのわかりやすいふたつの特徴を備えている。カタログノートによると、このモデルにはいくつかの興味深いディテールが隠されており、特に裏蓋の内側に刻印されたケースのシリアルナンバーが特徴的だ。フィリップスはオーデマ ピゲのアーカイブ担当者と協力し、これが実際に正しく、すべてオリジナルであることを確認した。APによると、標準的な3針モデルのRef.5402(パーペチュアルカレンダーに使われる従来のケースより薄いだろう)で使用されていたいくつかのケースを再利用したとのことだ。確かに難解だが、ここで本当にインパクトがあるのはサイズである。Ref.5402のケースを使用しているため、APはほかのRef.25654よりも10%薄く、通常は厚さが8.25mmであるのに対して7.5mmであることを確認した。フィリップスによると、SS製のこのリファレンスは49例しか存在しないことが判明している。Lot 54の予想落札価格は8万~16万スイスフラン(約1060万〜2115万円)だ。

クレイジー・コンプリケーションズ

 おい、リューズはどこだ? ロイヤル オーク50周年記念オークションのLot 30は、ロイヤル オークで唯一、ケースサイドに伝統的なリューズがなく、代わりにケースバックにリューズが配置されている。ロイヤル オーク トゥールビヨン Ref.25831は、1997年に誕生25周年を記念して作られたモデル(いやはや、歴史を感じる)だ。この時計はトゥールビヨンを搭載したロイヤル オークの最初のモデルのひとつとして、SS製、ブルーダイヤルの25本が生産された。

Audemars Piguet Royal Oak 25831ST

Lot 30: オーデマ ピゲ ロイヤル オーク 25831ST

Audemars Piguet Royal Oak 25831ST

 また、APは薄さを優先しながらも自動巻きムーブメントキープしたかったため、バンパームーブメントを特徴としている。トゥールビヨンのケージと開口部をよく見て欲しい。少し奇妙に見えないだろうか? APは、世界的に有名な八角形ベゼルを模倣して、調速・脱進機のフレームをデザインした。おもしろいことにロイヤル オークならではのネジまで付属しているのだ。このRef.25831STは25本のうちの1本で、予想落札価格は12万~24万スイスフラン(約1585万〜3170万円)だ。

Audemars Piguet Royal Oak 25831ST

Lot 30: オーデマ ピゲ ロイヤル オーク 25831ST

 フィリップスでは、さまざまなユニークピースのグランドコンプリケーションが出品されたが、私にとっては、この1本がそのなかでも最高峰のものだ。Lot 68は、宝石をセットした複雑なロイヤル オークで、ミニッツリピーター、パーペチュアルカレンダー、ラトラパンテ・クロノグラフをダイヤモンドをセットしたブリリアントケースとブレスレットに収めた野獣のようなモデルだ。

Audemars Piguet Royal Oak Grande Complication 25990BC

Lot 68: オーデマ ピゲ ロイヤル オーク グランドコンプリケーション 25990BC、Image, Logan Baker

 ロイヤル オークコレクションの繊細さとスマートさを評価するコレクターにとって、このRef.25990BCは彼らを唸らせることだろう。しかし、それ以外の人にとっては? それは顎が外れるほどだ。このオークションのなかで、この時計に勝るものはないだろう。フィリップスの予想落札価格は25万~50万スイスフラン(約1585万〜3170万円)だ。

隠れた名品

 Lot 38の36mm、ブラッドストーンダイヤルのロイヤル オークは、今回のオークションでいちばんのヒット作だと思う。ジャスパーとも呼ばれるブラッドストーンダイヤルのロイヤル オークを見たことがなかったが、それにはちゃんとした理由がある。36mmのRef.4701BCは、1990年代前半に5本しか生産されなかったのだ。

Audemars Piguet Royal Oak 14701BC With Jasper Dial

Lot 38: オーデマ ピゲ ロイヤル オーク 14701BC、ジャスパー/ブラッドストーンダイヤル、Images, Phillips

Audemars Piguet Royal Oak 14701BC With Jasper Dial

 ただただ美しい。私がこのロットのカバーを吹き飛ばさない限り(疑わしい)、予想落札価格は7万~14万スイスフラン(約925万〜1850万円)とされている。決して安くはないが、希少価値と純粋な魅力が相まって、私のなかでは非常に魅力的な作品となっている。

Audemars Piguet Royal Oak 5402ST Chaumet Dial

Lot 39: オーデマ ピゲ ロイヤル オーク 5402ST ショーメ販売店サイン入り、 Image, Phillips

 上の時計は、ロイヤル オークの製造3年目にあたる1975年の初期型5402STという、まさにスゴい発見だ。それだけでもカッコいい。しかし、この時計が特別なのは、ダイヤルにパリの宝飾店ショーメのサインが入っていることだ。フィリップスによれば、Ref.5402にショーメのサインがあるのは3本だけで、これはジュエラーへの特別注文によるものだという。ショーメは、一時期ブレゲを所有していたこともあり、時計業界ではかなりの歴史を持っている。そのため、オーデマ ピゲと同じダイヤルにショーメの名前があるのは非常にクールなことだ。Lot 39の予想落札価格は8万~16万スイスフラン(約1060万〜2115万円)だ。

Audemars Piguet Royal Oak 14700ST

Lot 70: オーデマ ピゲ ロイヤル オーク 14700ST

 最後に、言わずと知れた36mmのサンプル、Ref.14700.だ。APは10年足らずのあいだ、この小さなサイズのロイヤル オークを提供しており、この特別なサンプルは1990年の発表後、最初に生産されたものだ。有名人の出自や興味深いコンプリケーションなどのわかりやすい魅力はなく、ディープな側面を切り取ったものだが、ロイヤル オークの歴史に興味がある人にとっては、モデル全体として過小評価されている章の始まりを象徴するものだ。フィリップスはLot 70の予想落札価格を3万~6万スイスフラン(約400万〜795万円)としている。どなたか私に数千ドルを貸してくれないだろうか?

Bacs&Russoと共同によるフィリップスのロイヤル オーク50周年記念オークションは、ホテル「ラ・レゼルヴ」で、2022年5月6日22時(日本時間)から開催される予定だ。


ジュネーブ・ウォッチ・オークション XV

フィリップスで金曜日に行われるロイヤル オークのテーマオークションが幕を閉じると、土曜日と日曜日は通常(時計オークションの世界にそんなものがあるとすれば)通り、ジュネーブ・ウォッチ・オークション XVが開催される。フィリップスがBacs & Russoと共同で主催するジュネーブ・ウォッチ・オークションは、2014年に現在の形になってから15回目となるが、これは絶対的な大イベントである。

An early F.P. Journe Chronomètre à Resonance from 2000.

Lot 187: 2000年製の初期型F.P.ジュルヌ、クロノメーター・レゾナンス、Image, Phillips

 200点もの時計が競売にかけられるわけだから、その多様性の全体像を把握するには数時間かけてじっくりとカタログを読む必要がある。私が注目したのは、以下のようなものだ。

ロレックス

 エリック・クラプトンは今日、さまざまな議論を呼んでいるが、時計コレクターの世界で、これほどまでに伝説的なミュージシャンはそういないだろう。彼の時計趣味は、ギタリストとしての腕前と同様に、この界隈では注目されている。(彼のプラチナ製パテック フィリップ、Ref.2499を覚えているだろうか?)フィリップスは、かつて彼が所有していたロレックスのデイトナ Ref.6239を手に入れることができた。しかし、Lot 116はただのRef.6239ではない。これは“クレイジー・ドック”と呼ばれるもので、イエローゴールドにパルスメーターダイヤルを備えたユニークなデイトナなのだ。クラプトンはこの時計を1990年代にイタリアで購入したが、2003年にクリスティーズ・ニューヨークで、そして2007年にはアンティコルム・ジュネーブで販売され、世界的に注目を集めた。いずれも50万ドルを超える売上げではなかったが、今回は、それを上回る高値がつくと思わずにはいられない。

Rolex Cosmograph Daytona Ref. 6239 'Crazy Doc' previously owned by Eric Clapton.

Lot 116: ロレックス コスモグラフ デイトナ Ref.6239 “Crazy Doc” エリック・クラプトンが以前所有していたもの、Image, Phillips

 ジョン・プレイヤー・スペシャル。イエローゴールドにブラックアクセントのデイトナ Ref.6241は、3年間で300本しか製造されなかったとされる希少なクロノグラフで、これまでに製造されたクロノグラフのなかで最も希少な構成のひとつであると考えられている。フィリップスは、昨年12月にニューヨークで、オリジナルのゴールドブレスレットを装着したモデルを120万ドル以上で売却した。Lot 119のこのサンプルはストラップ付きだが、その評価は非常に興味深いものだ。

Rolex 'Paul Newman' Daytona Ref. 6241 With 'John Player Special' Dial

Lot 119: ロレックス ポール・ニューマン デイトナ Ref.6241 “ジョン・プレイヤー・スペシャル”ダイヤル、Image, Phillips

 ロレックスの初代ミルガウスは1956年に作られ、ロレックスのヴィンテージウォッチのなかでも最も希少なもののひとつである。50年代中頃のRef.6541は、緑色に着色されたサファイアクリスタルが特徴であったわけではない。Ref.6541は、科学者やエンジニアなど、高磁場の周囲で作業する人々が実際に使用することを目的としたツールウォッチだ。そのようなツール的な役割と、想定されるユーザー層の少なさから初代ミルガウス、Ref.6541のサンプルは今日において非常に少ないのだ。このLot 112のモデルは、ハニカムダイヤル、イナズマ秒針、非発光の夜光など、すべてを備えている。フィリップスの予想落札価格は20万~40万スイスフラン(約2645万〜5290万円)で、私には保守的に感じられるが、アンティコルムは1月にモナコで同様のモデルを約22万ユーロ(約3200万円)で販売しており、おそらくその目標通りになるだろう。

Rolex Milgauss Ref. 6541

Lot 112: ロレックス ミルガウス Ref.6541、Image, Phillips

 ロレックスのRef.6032 “プレデイトナ”オイスター クロノグラフは、過去20年間に2本しかオークションに出品されておらず、まさに希少品と呼ぶにふさわしいモデルだ。36.5mmの18Kピンクゴールドケースに収められたこの1960年代初期のクロノグラフは、旧友ジョン・ゴールドバーガー(John Goldberger)の著書『100 Superlative Rolex Watches』で特別に紹介されたものである。このRef.6032は、フィリップスのステージに登場した最初のモデルで、それだけ希少なのだ。それにロレックスの2レジスタークロノグラフなんて、そうそうお目にかかれないだろう? フィリップスは、Lot 114の予想落札価格を20万~40万スイスフラン(約2645万〜5290万円)としている。

Rolex ref. 6032 Oyster "pre-Daytona" Chronograph

Lot 114: ロレックス Ref.6032 “プレデイトナ”オイスター クロノグラフ、Image, Phillips

 次はLot 219、ゴールドのプレデイトナ クロノグラフのセカンドだが、このサンプルはもう少し有名だ。トリプルカレンダーとクロノグラフを組み合わせたRef.6036は、ジャン・クロード・キリー(Jean-Claude Killy)が愛用した腕時計として世界中のコレクターに知られている。このモデルの特徴はケース素材にある。通常、キリーはスティールでしか見られないからだ。このイエローゴールドのモデルは多くの人の心を溶かすが、予想落札価格は50万~100万スイスフラン(約6610万〜1億3220万円)で、最も裕福な人だけが生き残ることができるだろう。

Rolex Datocompax Killy yellow gold

Lot 219: ロレックス プレデイトナ クロノグラフ Ref. 6036 “ダトコンパックス キリー”、18Kイエローゴールド、Image, Phillips

 ジュネーブ・ウォッチ・オークション XVに出品されたロレックスの最後のハイライトは、またしても金無垢の“プレデイトナ”オイスター クロノグラフである。しかし、これはRef.6034で、1963年にコスモグラフ デイトナが発表される2世代前に作られたものだ。Lot 221のこのモデルは、オリジナルのゲイフレールブレスレットが残っていることと、ケースとブレスレットに意外な金属が使われていることが特別な理由だ。ローズゴールドのRef.6034はほとんど知られていない。

Lot 221: ロレックス Ref.6034  “プレデイトナ”オイスター クロノグラフ、18Kローズゴールド。Image, Phillips

 そのため、2年前の2020年には、同様のRef.6034がアンティコルム・ジュネーブで60万スイスフラン(約7935万円)で落札された。フィリップスは一応念のため、このモデルの予想落札価格を20万~40万スイスフラン(約2645万〜5290万円)と発表している。

パテック フィリップ

 これは非常に特別なパテックフィリップだ。そして、このカタログのほぼすべての時計についてそう言うことができる一方で、このロットは少し異なるヒットとなっている。ほかのロットが希少性や熱狂的、排他的な難解さのスリルについてであるのに対し、このパテック フィリップのRef.1503は1941年製で、ユニークな出自を持っている。この時計は第二次世界大戦後の数十年間、逃亡中のナチス戦犯を探し出し、裁判にかけることに人生を捧げたユダヤ系オーストリア人紳士でホロコーストの生き残りであるサイモン・ヴィーゼンタール(Simon Wiesenthal)がかつて所有していたものだ。

A Patek Philippe Ref. 1503 previously owned by Simon Wiesenthal

Lot 212: パテック フィリップ Ref.1503 サイモン・ウィーゼンタールが以前所有していたもの。Images, Phillips

A Patek Philippe Ref. 1503 previously owned by Simon Wiesenthal
A Patek Philippe Ref. 1503 previously owned by Simon Wiesenthal

 この時計は、とてつもない人物が所有していたという実績があるだけでなく、ティアドロップ型のラグ、ブラックラッカー仕上げのダイヤル、ブレゲ数字のアプライドなど、驚くほど魅力的な時計なのだ。この時計は2005年に亡くなったヴィーゼンタールの遺族が、2007年にクリスティーズ・ジュネーブに出品したものだ。Lot 212の予想落札価格は、現在25万~50万スイスフラン(約1585万〜3170万円)に設定されている。

Patek Philippe Ref. 1518 'Pink On Pink'

Lot 213: パテック フィリップ 永久カレンダー・クロノグラフ Ref.1518 “ピンク オン ピンク”、Image, Phillips

 デジャブだろうか? サザビーズがピンク オン ピンクのRef.1518をオークションで落札してから1週間も経っていないのに、もうひとつ出品されているのだから。たった14本しか知られていない時計なのに、とんでもない偶然だ。12月にはサザビーズ・ニューヨークのオークションで史上3番目に高価な腕時計、特にきれいなピンク・オン・ピンクのRef.1518が落札された。明らかに一部の一流コレクターのあいだでは、市場を試す時期が来ているようだ。数百万ドルの値札を何度も付けられるだろうか? 今週末のLot 213まで待つ必要がある。

インディーズ、変わり種、その他

 我々はロレックス、パテック フィリップ、オーデマ ピゲだけで生きているわけではないし、それはオークションハウスも同じだ。フィリップスのジュネーブ・ウォッチ・オークション XVには、独立時計師の作品や、メジャーグループブランドの意外な時計も含まれている。

F.P. Journe Octa Zodiaque Unique Piece For 2005 Children's Action Auction

Lot 300: F.P.ジュルヌ オクタ ゾディアック 2005年チルドレンアクション オークションのためのユニークピース、Image, Phillips

 このロットは、2005年にチルドレンアクションのために製作されたユニークピース、F.P.ジュルヌのオクタ ゾディアックだ。F.P.ジュルヌの人気は誰もが知るところだが、チャリティーのために販売されたユニークピースは、さらに注目を集めることだろう。そして何より、出品者とフィリップスは、オークションの全収益を再びチルドレンアクションのチャリティーに寄付することに同意している。現在の予想落札価格は15万~30万スイスフラン(約1985万〜3970万円)だ。

MB&F X Urwerk C3H5N309 Experiment ZR012 in Zirconium

Lot 104: MB&F×ウルべルク C3H5N309 Experiment ZR012 (ジルコニウム製)、Image, Phillips

 MB&Fとウルべルクが2012年に発表したコラボレーションモデル、C3H5N309 エクスペリメント ZR012には、いつも魅了されている。ジルコニウムまたはブラックジルコニウムで作られた12本限定モデルで、ヴァンケルエンジンにインスパイアされたムーブメントを搭載したエクスペリメント ZR012は、過去10年間に急増した風変わりな独立時計製造の世界の基礎となる作品と考えるのが正しいと思う。Lot 104の予想落札価格は2万~4万スイスフラン(約265万〜530万円)だ。

Omega Speedmaster 'Alaska Project II' Ref. 145.022

Lot 111: オメガ スピードマスター“アラスカプロジェクトⅡ” Ref.145.022、Images, Phillips

Omega Speedmaster 'Alaska Project II' Ref. 145.022

 オメガのユニークなスピードマスターのトリオの始まりとして、フィリップスはジュネーブ・ウォッチ・オークション XVにオリジナルのアラスカプロジェクト“アラスカⅡ” スピードマスターを出品した。昨年11月に記録的なRef.2915-1が落札された後に、このアラスカプロジェクト(Lot 111)が高い予想落札価格の20万スイスフラン(約2645万円)を超えなければ、私はショックを受けると思う。

Omega Speedmaster 'Monza' prototype from 1995.

Lot 168: オメガ スピードマスター“ モンツァ” プロトタイプ(1995年製)、Image, Phillips

 こちらも興味深いスピードマスターだ。Lot 168は1995年頃に製造されたプロトタイプで、ホワイトダイヤルに6時位置に“MONZA”と書かれた奇妙な赤いサインが入っている。この時計にはシリアルナンバーがなく、保証書も付属していないが、オメガはフィリップスにこの時計が正規のプロトタイプであることを確認したとのことだ。なんてカッコイイのだろう。このオフビートなオメガの予想落札価格は3万~6万スイスフラン(約400万〜795万円)だ。

Omega Speedmaster Date prototype ref. 145.0022 // 345.0022

Lot 273: オメガ スピードマスター プロフェッショナル デイト プロトタイプ、2003年頃、Ref.145.0022 /345.0022、Images, Phillips

Omega Speedmaster Date prototype ref. 145.0022 // 345.0022

 一見すると、Lot 273はほかのスピーディープロと同じように見えるが、あることに気づくだろう。それは日付表示窓だ。ダイヤルの4時半の位置付近に、日付表示用の枠とカラーマッチングされたカットアウトがあるのだ。このプロトタイプのスピードマスターで特にすばらしいと思うのは、ラグの裏に隠された“Not For Sale”の刻印だ。スピードマスター好きで、すでに何でも持っている人には、一見の価値ありの抜群にカッコイイ一本だと思う。予想落札価格は2万~4万スイスフラン(約265万〜530万円)だ。

A. Lange & Söhne Lange 1 Ref. 101.027X

Lot 276: A.ランゲ&ゾーネ ランゲ1 Ref.101.027X、Image, Phillips

 ジュネーブ・ウォッチ・オークション XVで、最後に目を引いたロットがある。Lot 276,、A.ランゲ&ゾーネの特別なランゲ1 Ref.101.027である。ホワイトゴールドのケースにシルバーのダイヤルと青焼き針が特徴だ。このモデルは、ステンレススティール製のランゲ1と同様の美しさを備えているが、より伝統的な貴金属製であることが大きな特徴だ。ランゲ1の希少なモデルは以前にも増して需要が高まっており、このような美しい組み合わせのランゲ1はこれまでほとんど市場に出回ることはなかった。予想落札価格は3万~6万スイスフラン(約400万〜795万円)だ。

 やれやれ、これで決まりだ。興味深く、好奇心をそそる珍しい24の時計が、今週金曜日からフィリップスで販売されるのだ。でも、まだ始まったばかりだ。火曜日には、文化的に重要なロイヤルオークのハンズオンレポートをお届けする予定だ。

Bacs&Russoと共同によるフィリップスのジュネーブ・ウォッチ・オークション XVは、ホテル「ラ・レゼルヴ」で、2022年5月7〜8日、22時(日本時間)から開催される予定だ。

All Royal Oak images by James K./@waitlisted, unless noted. 

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ロイヤル オーク50周年記念オークションジュネーブ・ウォッチ・オークションXVの残りのカタログをご覧いただけます。XVのカタログをご覧になり、フィリップスでオンライン入札の登録をしてください。

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ランゲ1も高値が付くというのが時代を感じる。黒文字盤のパテックが一番興味を引くが、世にある時計全てが素晴らしいのがパテックの凄さなのかなと思う。