ダイビングと同じように、ダイバーズウォッチも万人向けではないとわかっているつもりだ。しかし、もしあなたが世界海洋デーをきっかけに、週末用のダイバーズウォッチやダイビングの資格取得を考えているなら、モヤッとする時計マーケティングの産物と便利なツールウォッチとを区別するための、いくつかの基本的なポイントを考えてみるのはどうだろう。
ダイバーやダイバーズウォッチマニアにとっては当たり前のことでも、それ以外の人たちにとっては常識からかけ離れていることがある。もし、あなたがスキューバの入り口よりずっと深く無数のダイバーズウォッチの世界に足を踏み入れたいのであれば、ここには役立つアドバイスがあると思う。
設計上、すべてのダイビング機材はオーバーエンジニアリングであるべきだ。そうすることで、万が一トラブルが発生した場合でも、ギアには十分な安全性と能力があることになる。そのため、ダイバーズウォッチには防水性能200mという表示があるが、ハードコアなダイビングを除けば、その深度は実際に必要とされる2倍以上なのだ。
誇張しているわけではない。ダイビングのPADI資格(または類似の資格)を取得した人は知っていると思うが、レクリエーションダイビングでは、最大水深30〜40mでダイバーを訓練する。もっと深く潜りたい場合は、非常に専門的な、まったくカジュアルではないトレーニングを修了しなければならないのだ。
世界のひと握りのエリートダイバーを除けば、200m防水で十分だ。それ以上の防水性能は、ダイビングボート上でのクールな演出のためであり、それ以外の目的はほとんどない。
2018年に新しく更新されたISO 6425は、国際標準化機構によって維持されているダイバーズウォッチのための規格である。ほかの規格と同様に、腕時計をダイビングに適したものにするための一連の機能とデザイン要素、およびメーカーによる腕時計の表示方法について示唆している。
この規格は、多くの人があらゆるダイバーズウォッチを評価する基準となっているが(特にインターネット上での議論において)、規格であって法律ではないことを考慮する必要がある。その基本はしっかりしたものだ。ISOから引用すると、"水深100m以上の水中での潜水に耐え、暗闇でも見える潜水時間を示す安全な測定システムを備えたダイバーズウォッチに適用される "となる。
もし、現行のスペックから外れた時計、例えば経過時間のゼロ点に夜光のピップがない時計や、5分毎のマーカーに夜光がない時計を持っていたとしても、その時計がダイビングに使えないとか、ダイビングコンピューターのよいバックアップにならないとかいうことにはならない。このスペックは、完璧なものではなく総体的なものであり、改良や変更にはオープンなのだ。
これは僕がダイビングとダイバーズウォッチのキャリアを積むなかで学んだことだが、ダイバーズウォッチはウェットスーツの上や、文字通り海に囲まれた空きスペースでしか使えないような巨大なスティールの塊である必要はないのである。もちろん、ハードコアでツール性のあるダイバーズウォッチも楽しいが、上記のように、必要なのは実現可能なスペックリストに適合する時計なのだ。
わかりやすく言うと、ダイバーズウォッチは日常使いの時計でもあるのだ。ロレックスのサブマリーナー、オメガのシーマスター、セイコーのさまざまなダイバーズウォッチなど、多くのモデルがあるが、どれも日常的に身につけることができ、しかもどんなダイビングにも対応できる。水中でしか身につけられない方が好きというのでなければ、カジュアルにもフォーマルにも使える時計をおすすめする。
ダイビング用の時計を購入した場合、宅配ピザのタイミングを計る以外の目的でベゼルを使用する必要がある。しかし問題は、多くのベゼルが、水に濡れたりグローブを着用しているときに良好なグリップを提供するようにつくられていないことだ。もちろん、ダイビングボートの上など、手も時計も乾いた状態でベゼルをセットするシナリオもあるが、水面を長時間泳ぐダイビングや、潜水時間以外を確認するため深海でベゼルを回す場合はどうだろう?
僕がダイビングを始めた頃、最もまごついたのは、ダイビングスポットで波に揺られながら、7mmのウェットスーツ用グローブで薄いノッチバンド(あるいはもっと悪いことに、滑らかな波状のベゼル)を握ろうとして、滑ったりベゼルが回転したりしているうちに、同僚はさっさと潜っていったことだ。
命にかかわるような機能ではないが、セイコーのSRP777を装着してバンクーバーのケルビングローブに潜ったとき、ベゼルの形状やローレット状のギザギザ(ジンピング?)のおかげでセットをしやすかったことを思い出す。このような小さなことが、ツールウォッチをよりツールらしくしているのだ。
水中に潜っていないとき、理想的な夜光とは明るく長く光るものだ。しかしダイビングはこのシナリオを一変する。水中で夜光を必要とするということは、濁った暗い水中にいるか、ナイトダイビングをしているかのどちらかだ。いずれにせよ、何らかの懐中電灯を用意する必要がある。
水中では懐中電灯ですぐに夜光をチャージできるし、潜水時間も30~60分程度が一般的なので、耐久時間はそれほど問題ではない。しかし、重要なのは視認性だ。ベゼル上のピップと分針の位置関係を、どれだけ素早く読み取ることができるかが重要なのだ。
ほとんどのダイビングをバンクーバーでしていたため、僕にとっては暗くて濁った海が普通だった。僕のダイブコンピューターにはバックライトがなかったので、経過時間を見るためにダイバーズウォッチをよく使っていた。そのダイブコンピューターはライトで充電することができたが、数分しか持たなかったけれど、まともなダイバーズウォッチであれば、水面を泳ぐだけで光らせことができる。
ほとんどのダイバーズウォッチは、ストラップにブレスレットなどの日常的なオプションをつけて販売されている。ダイビング用のセカンドオプションが付属しているものもあれば、ブレスレットの留め具にダイビング用のエクステンションが付属しているものもある。ダイビングをする場所や装着するもの(ウェットスーツやドライスーツの厚さなど)により、これらのソリューションの有用性は大きく変わってくるのだ。
暖かい海でダイビングをする場合、エクステンションを開いて薄手のウェットスーツの袖口からダイブウォッチをつけることができる。また、水温が高ければグローブは必要なく、時計はいつものように手首に装着したままでも大丈夫だ。
しかし、冷たい水中でダイビングをする場合や、単に手袋の安全性と暖かさを好む場合は、ラバーストラップやチューダー ペラゴスのような優れたエクステンションシステムを備えたブレスレット、あるいはドライスーツの前腕部に巻き付けるエクステンションとして使用するストラップなどが必要になる。
僕は上記のソリューションをすべて使用したが、最もエレガントなのは間違いなくチューダーのものだ。しかし、長いラバーストラップには勝てない。ダイビングの日に簡単に交換することができるからだ。これは、もしあなたがライセンスを取って熱帯以外の環境でダイビングをしようと思っているならば、考える価値のあることだ。
水中では深く潜るほど光が弱くなるのは当然だが、光の変化は、懐中電灯を使わずに目に見える色にも影響することをご存知だろうか。
これは本当だ! ダイバーズウォッチは多色使いのデザインが多いが、色は色域の波長によって深海で吸収される。波長が長ければ長いほど、深海への浸透力は弱まる。赤は約15フィート(約4.5m)あたりで消えていき、オレンジは約25フィート(約7.5m)、黄色は約45フィート(約13.5m)、緑は約75フィート(約22.5m)で灰色になってしまう。さらに、これらの数値は水中での光の水平方向の移動量も含んでいるので、あっという間に色が消え始めることもある。
僕はドクサのプロフェッショナルが大好きだが、あの鮮やかなオレンジ色の文字盤は、ダイビングを楽しんだあとの船のデッキやTikiバーに一番似合うかもしれない。
これはすべてのダイビングギアに言えることだが、特に腕時計は、まだスキューバダイビングの感覚を磨いている段階であれば、なおさらだ。複雑なダイバーズウォッチは邪魔なだけだ。
ヘリウムエスケープバルブ、ロック付きベゼル、文字盤上の水深を示す小さな針など、重厚なダイバーズウォッチがある。だがあなたには必要ないのだ。確かにカッコイイし機能的かもしれないが、普通は不要だ。ダイバーズウォッチはシンプルで使いやすいものであるべきなのだ。複雑な機能は、基本的な機能(潜水時間の記録)を、マーケティング資料や人間工学的な落とし穴の下に覆い隠してしまうだけなのだ。
クラシックモデルを見ると、なぜダイビング中にわざわざ使うのかという視点を見逃すことなく、すべての基本をカバーしている。
これはライセンスを取得したときに教えられることだが、すべてのダイビングギアはダイビング後に最低限のメンテナンスが必要で、それはダイバーズウォッチも同じである。特に海水で潜る場合は、真水で器材を洗い流すのが基本だ。
時計をつけてダイビングをした? 洗い流さないと、ベゼルの下に砂利や塩分が蓄積し、適切な使用感を阻害する恐れがある。
水洗いだけでなく、適切な間隔で時計のメンテナンスを受け、時計メーカーに圧力テストをしてもらい、時計が仕様通りであることを確認しよう。これらの簡単な手順を省くことは、ダイビングの前にリューズをねじ込むのを忘れるのと同じくらい愚かなことだ。いずれにせよ、水を楽しんで欲しい。
Lead image credit: Gishani Ratnayake.
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