ラリー・バード(Larry Bird)やマジック・ジョンソン(Magic Johnson)の黄金期を経て、NBAは長年にわたり大衆文化を映す鏡だった。それ以来、NBAの人気は高まるばかりだ。最近ではプロバスケットボールが大衆文化を牽引しているようなところさえある。選手の服装や話し方、支援する活動、そして身につけている時計など、それらすべてが世界中の何百万人ものファンに影響を与えているのだ。レッドカーペットに登場する俳優以上に、レブロン・ジェームズ(LeBron James)、マイケル・ジョーダン(Michael Jordan)、ヤニス・アデトクンポ(Giannis Antetokounmpo)といった現役/OBを問わずNBAスターは、特定のアイテムやブランドに注目させることができるのだ。HODINKEEでは過去10数年にわたり、このトレンドを本格的にウォッチし、レポートしてきたが、その勢いは衰える気配がない。
NBAのシーズンをご存じの方なら、5月下旬から6月上旬にかけてシーズンが最高潮に達することを肌で感じていることだろう。木曜日に行われたファイナル第1戦の開幕を前に、NBAと時計にまつわるいくつかのエピソードをご紹介しよう。
このトレンドを牽引しているのは、選手たち自身だ。マイケル・ジョーダンとレブロン・ジェームズというバスケット界史上最高のふたりは、ともに有名な時計愛好家で、地球上で最も深遠で人気の高い作品を含むコレクションを保有している。ほかにもデビッド・ロビンソン(David Robinson)、アンドレ・イグダーラ(Andre Iguodala)、J・J・レディック(J.J. Redick)など、現役/OBを問わず多くのトッププレーヤーがTalking Watchesで自身のコレクションを披露してくれている。
チャンピオンシップのプレゼンテーション、オールスターゲーム、サマーリーグ、そして試合前のウォームアップなど、あらゆる場面でウォッチスポッティングの機会に恵まれ、“NBAスターのスターターウォッチ”や、映画『スペース・ジャム(Space Jam)』(MJが出演した)とのタイアップウォッチ(1回きりだけでなく、第2弾、第3弾、第4弾も!)など、数多くの時計に夢中になるのだ。しかもそこにはさまざまなスポンサー契約をカウントしていない。例えば、ティソは2015年シーズンからNBAの公式ウォッチとタイムキーパーを務めており、このスイスの時計メーカーはダミアン・リラード(Damian Lillard)やクレイ・トンプソン(Klay Thompson)など、多くのNBA選手をアンバサダーに据えている。
一方、ブライトリングは最近、NBA王者に輝いたミルウォーキー・バックスのヤニス・アデトクンポと2度のMVPを獲得し、アンバサダー・スクワッド(仲間)の一員となった。また、現在は(時計アンバサダーとしては)フリーエージェントだが、レブロンは2010年代の大半をオーデマ ピゲで過ごし、2013年には特別仕様のロイヤル オーク オフショアでコラボレーションも果たした。
時計や時計製造に関連するほとんどの事柄と同様に、時計とバスケットボールの関係を深く掘り下げれば掘り下げるほど、より多くの発見があるはずだ。NBAの選手たちが試合前にスタジアムのトンネルを歩く姿を写真に撮ると、毎晩のようにさまざまな種類の時計が手首に装着されているのがわかる。今年のNBAチャンピオンが誰になるかはまだわからないが、過去10年間のNBA関連のトップストーリーを読む(そして眺める!)には、今がいちばんいい時期だ。
私はヒューストン・ロケッツの熱狂的なファンなので、1995年のウェスタン・カンファレンス決勝で、ロケッツの伝説的プレイヤー、ハキーム・オラジュワン( Hakeem Olajuwon)がデビッド・ロビンソンとサンアントニオ・スパーズ(San Antonio Spurs)を制し、この年のリーグMVPに選出された話を持ち出すことに躊躇はない。しかし、それは“提督”の時計コレクションとは何の関係もない。彼は2018年に、これまでで最もお気に入りのTalking Watchesのエピソードのひとつとなった、同僚ジェームズ・ステイシーとの対話に真摯に語ってくれた。ロビンソンは、ユリス・ナルダンのリピーター、F.P.ジュルヌ レゾナンス、そしてシュノーケリング中に着用するロイヤル オーク オフショア QPなど、持てるすべてを披露し、熱を持って語っている。なんてカッコイイのだろう! これは絶対に見逃してはいけないエピソードだ、本当に。
HODINKEE編集部を代表して言わせてもらうと、ほかのライターが企画した記事に嫉妬することは誰にでもあると思う。2020年にダニーが書いた、ロレックスのデイデイトがNBA選手の手首にいかに大きな存在感を放っているかを追った記事には、そんな思いを抱いた。私は、今年の初めに書いたデイデイトの歴史と影響力に関する考察のなかで、この話を何度も引用することになる。
時計を2016年に巻き戻そう。レブロン・ジェームズが地元クリーブランド・キャバリアーズで、ゴールデンステート・ウォリアーズを7連戦の末に破り、NBAファイナルで3対1のゲーム差から逆転した最初のチームとなる劇的な優勝を果たしたころだ。シリーズ終了後、クリーブランドで行われた優勝パレードで、ジェームズの手首には何が巻かれるのだろうと誰もが思ったことだろう。しかし18KYGのロレックス デイデイトと、その真骨頂であるひと目でわかる“プレジデント”ブレスレットを見つけたのだから、驚くにはあたらない。
マイケル・ジョーダンが時計好きなのは周知のとおり。我々は彼がプラチナ製の初代A.ランゲ&ゾーネを着用しているのを目撃してきた。ワシントン・ウィザーズ社でA. ランゲ&ゾーネのダトグラフを着用していたこともあれば、2016年に大統領自由勲章を受章した際にIWCのビッグパイロットを着用したこともある。しかし、実は長年にわたってMJの腕に最も寄り添ってきた、ある意外なブランドがある。ウルべルクである。2020年のNBAオールスターゲームではUR-202を、2022年にはカスタムUR-220を、そして今月初めにはF1マイアミグランプリでスポーツ界の至宝、トム・ブレイディ(Tom Brady)とハグした際に新型のUR-100Vを身に着けているのを目撃されている。
ゴールデンステート・ウォリアーズが現代における初のNBAチャンピオンに輝き、フォワードのアンドレ・イグダーラがNBAファイナルのMVPに選ばれてから7年が経過した。また、Talking Wathcesでイグダーラを迎え、オーデマ ピゲ、パネライ、ロレックスのコレクションを披露してもらってから同じだけ歳月が経過した。NBAのサイクルのなかで7年というのは長い時間だが、イグダーラが今どこにいるか想像してみてほしい。ウォリアーズのメンバーとともに、NBAファイナルに戻っていることだろう。