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Hands-On クロノ ブンキョウ トウキョウの34mmは、日常使いできるヴィンテージウォッチだ

ニューオールドストックのような雰囲気と、現代の時計らしいクオリティが同居した独立時計師・浅岡 肇氏によるセカンドラインブランド待望の新作。

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Lead image, Kurono Bunkyō Tokyo

クロノ ブンキョウ トウキョウ(Kurono Bunkyō Tokyo)は、アカデミー(AHCI)会員の独立時計師・浅岡 肇氏によるセカンドラインブランドだ。ハジメアサオカ(HAJIME ASAOKA)名義のハイエンドウォッチはハンドメイドで製作するため、その数は極めて少ない。また製作にかかるコストも非常に高額となる。“浅岡 肇の時計は欲しいけれど、なかなか手に入れられず不満に思っている人は少なくないのでは?” そんな思いから、買いやすい価格で、スピーディにユーザーの手元に届けられる時計を提供するべくクロノ ブンキョウ トウキョウは誕生した。

 浅岡 肇の時計が欲しくても手にできないのは、何も一般のエンドユーザーに限ったことではない。浅岡 肇本人もそうなのだ。せっかく時計を作り上げても、ハジメアサオカ銘の時計はすぐに首を長くして待っている購入者へ納品しなければならない。そんななか、クロノ ブンキョウ トウキョウでは“浅岡 肇のプライベートウォッチ”をコンセプトとして、何よりも自分自身がつけて楽しめるよう、サイズ感やデザイン、ディテールなど浅岡氏の好みやこだわりが時計の随所に盛り込まれている。

 筆者は以前、文京区にある浅岡 肇氏のアトリエを訪れたことがあった。浅岡氏の代名詞とも言える高精度なパーツ製作の要となるCNC工作機械が並ぶなか、アトリエの片隅に置かれた小さなショーケースにヴィンテージウォッチがいくつも並んでいたのを覚えている。そう、彼はヴィンテージウォッチの愛好家なのだ。何十年、ものによっては100年近くもの年月を経たヴィンテージウォッチを精度や防水性を気にせず、日常使いすることはあまり現実的とは言えない。そこで自身が好きなヴィンテージウォッチにヒントを得て、日常使いできる精度、そして防水性と堅牢性を持つ時計を作ることにしたのだという。そうして出来上がったのが、新作の34mmというわけだ。

NOSのヴィンテージと見紛う小ぶりなサイズとダイヤルの色味

 筆者が初めてこの34mmを見て目を奪われたのは、絶妙なカラーリングのブルズアイデザインダイヤルだった。現代の時計のようなコントラストが効いた鮮やかな色味ではなく、かといってわざとらしく経年変化したような色味でもない。まさにニューオールドストック(NOS)のヴィンテージウォッチが引き出しの奥からそのまま出てきたような雰囲気を持っていた。そして、その魅力をより際立たせていたのがモデル名にもなっている34mmという小ぶりなサイズだ。実際につけてみると、ダイヤルと小さなサイズが相まって本当にヴィンテージウォッチをつけているかのような錯覚を覚えた。

 マーケティングマネージャーが言うには、この34mmは1930年代のアール・デコスタイルのヴィンテージウォッチが着想の原点になっているということだ。ダイヤルの色味の表現については、浅岡氏が細かく数値化したカラーサンプルを用意し、それをもとにダイヤルサプライヤーと試作を何度も重ねてようやく理想に近い表現にたどり着いたものだという。その小さなサイズや防水性と堅牢性を持たせるというコンセプトは、まるでミドーの名作、マルチフォートの現代版のようだ。

単なるヴィンテージ風ではない現代の技術に基づくディテール

 つけてみると、まさにヴィンテージウォッチそのものという印象だが、時計のディテールをじっくり見てみるとヴィンテージウォッチにはない、現代の時計だからこそ備わった特徴も見えてくる。それこそが、この34mmに単なるヴィンテージ風の時計ではない魅力をもたらしているようだ。

 例えば、ケース。素材は高級時計によく使われる316Lステンレススティールだが、34mmは鍛造成形によるケースを使用している(ちなみに過去に販売されてきた製品もすべて鍛造ケースを使用)。鍛造は文字どおり金属の塊を叩いて成形する加工法だ。金属を金型で叩くことにより金属の目が詰まり、硬く頑丈なケースを作ることができる。ちなみに鍛造には熱間鍛造と冷間鍛造(両方の特性を持つ温感鍛造もある)があり、熱間鍛造の場合は金属を加熱して柔らかくなった状態で加工するため、成形の自由度が高く、難加工材の成形にも向いている。一方の冷間鍛造は、常温で成形するため、高い寸法精度が得られるほか、表面の仕上がりがよくなるというメリットもある。これはまた金属内部の気泡である、鬆(す)が圧着されるためで、これによりケースを研磨した際に歪みが出にくくなるのだ。クロノ ブンキョウ トウキョウのケースは、冷間鍛造によって成形されている。ケースに文字を写してみたが、キレイに鏡面仕上げが施せるため、文字が歪みなく映り込んでいるのがわかる。

 しかも、34mmのケースはヴィンテージウォッチによくみられたステップドベゼルを採用しているのだ。これはヴィンテージウォッチに明るい浅岡氏の見識があってこその表現だろう。

ブラックライトを当てて蓄光を光らせた様子。

 また、ダイヤルも色味やデザインばかりに注目しがちだが、細部にまで浅岡氏のこだわりが行き届いている。外周に向かってカーブするボンベダイヤルを採用するが、本機が搭載するMIYOTAのムーブメントを含めて現代の汎用ムーブメントはフラットなダイヤルを合わせる想定のため、ダイヤルと接する面はフラットに作られている。そこで本機では、このムーブメントの形状に合わせたボンベダイヤルの設計が行われた。そして蓄光の入り方。時・分針とアラビア数字インデックスに蓄光が施されているが、はみ出しもなく非常にキレイだ。これにはもちろんダイヤルサプライヤーの技術の高さもあるが、キレイに蓄光が入れられるようにデザインを考え、またサプライヤーとしっかりとクオリティコントロールを行うなど、これは浅岡氏も非常にこだわった部分のようだ。

 なお、風防にはボックス形状に加工されたサファイアクリスタルが採用されている。通常、ヴィンテージウォッチではこうした形状の場合、加工しやすいガラスやアクリル風防が用いられるが、硬く耐久性に優れたサファイアクリスタルを使用できる点は、やはり現代の時計製造技術があってこその利点と言えるだろう。

CS034A(オーカー/ホワイト) 画像:クロノ ブンキョウ トウキョウ

CS034B(ブルー/アイボリー) 画像:クロノ ブンキョウ トウキョウ

CS034C(ホワイト/レッド) 画像:クロノ ブンキョウ トウキョウ

CS034D(ホワイト/ブルー) 画像:クロノ ブンキョウ トウキョウ

 しかしながら、40mm前後の大きさがスタンダードな現代において、34mmというサイズは本当に小さく感じられる。筆者は好みだが、小さなサイズに比較的抵抗が少ない人が多いヴィンテージウォッチ愛好家であっても、きっと好き嫌いが分かれるのではないだろうか。実際、販売に際して浅岡氏の周りからもそうした声が出たらしい。そのため、34mmは販売本数をCS034A(オーカー/ホワイト)、CS034B(ブルー/アイボリー)、CS034C(ホワイト/レッド)、CS034D(ホワイト/ブルー)の各色80本、計320本に絞ったということだ。

 とはいえ、独立時計師・浅岡氏のこだわりが詰まった時計が、これまででもっとも手頃な15万円(税込)という価格で手に入るのだ。ヴィンテージウォッチは好きだが、気軽につけられないと敬遠していた人にとってはもちろん、コストパフォーマンスの高い時計を求める人にとっても、理想的な選択肢のひとつとなってくれると思う。

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基本情報

ブランド: クロノ ブンキョウ トウキョウ(Kurono Bunkyō Tokyo)
モデル名: 34mm
型番: CS034A(オーカー/ホワイト)、CS034B(ブルー/アイボリー)、CS034C(ホワイト/レッド)、CS034D(ホワイト/ブルー)

直径: 34mm
厚さ: 9.6mm
ケース素材: ステンレススティール(316L、鍛造)
文字盤色: ホワイト/ブルー、オーカー/ホワイト、ブルー/アイボリー、ホワイト/レッド
インデックス: アラビア数字アワーインデックス、レイルウェイミニッツトラック
夜光: 時・分針とアラビア数字アワーインデックスに蓄光
防水性能: 5気圧
ストラップ/ブレスレット: カーフレザーストラップ、SS製尾錠

レザーストラップは老舗の時計ストラップメーカーとして知る人ぞ知る、和久元に特注したカーフレザーストラップを使用。ヴィンテージウォッチのような小ぶりなサイズに合わせて、すぐに手首になじむ芯材を使用しない薄手の作りになっている。


ムーブメント情報

キャリバー: MIYOTA 90S5
機能: 時・分表示、センターセコンド
直径: 25.6mm
厚さ: 3.9mm
パワーリザーブ: 約40時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 24 


価格 & 発売時期

価格: 15万円(税抜)
発売時期: 7月21日(木)午後11時(日本時間)から公式ホームページ上のみで販売。購入の際は、事前に公式ホームページにて要アカウント登録(登録無料)
限定: 各色80本(4色展開)※4色同時購入可。

詳細は、クロノ ブンキョウ トウキョウ公式サイトをクリック。