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Entry Level H.モーザーの最も安価な時計は、スイスの高級独立時計製造の世界への近道である

モーザーは、あらゆる時計製造のなかで最も興味深く、挑発的なブランドのひとつだが、その青天井の価格に目を覆いたくなることがある。だが、この時計を手にすることは、その価値を知る最も簡単な方法だ。

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188万1000円 (税込)もする時間表示のみの腕時計を“バリュープロポジション”と表現するのは非常にためらわれるが、スイスの高級独立時計製造という希有な世界を深く掘り下げるとH.モーザーの数百万、数千万の時計が同業他社に対して持つ固有の長所を理解することが容易になる。パイオニア・センターセコンド スイスマッドレッドもそのひとつだ。

H. Moser Pioneer Swiss Mad Red

 188万1000円 (税込)という価格は、私の個人的な購買力(数十万円)からは大きく外れているが、この深紅の時計には評価すべき点がたくさんある。私にとっては搭載されている自動巻きマニュファクチュールキャリバー、HMC 200から物語は始まる。このキャリバーはケースの隅々まで広がるサファイアクリスタルのシースルーバックから、その全貌を見ることができるのだ。モーザーの関連会社であるプレシジョン・エンジニアリングが製造したシュトラウマン・ヘアスプリングが、強固なV字型のテンプ受けでしっかりと固定されているのが見えるのはとても素晴らしい。爪による両方向巻上げ機構はシャフハウゼンならではの気の利いた技術だ。ダイヤモンドポリッシュとモーザー伝統のコート・ド・ジュネーブ仕上げ、いわゆる“モーザーダブルストライプ”装飾は、この価格帯では最高の出来栄えと言えるだろう。HMC 200は2017年にモーザーから発表されて以来、同社が多くの時計コレクションに採用する、ある種基礎となる3針ムーブメントとして機能している。

Moser Swiss Mad Red
Moser Swiss Mad Red

 しかし、主役はその真っ赤なフュメダイヤルだ。ムーブメントはルーペを開いて自分のなかのオタク心を解放したいときにいつでも見ることができ、ダイヤルは遠くからでも注目を集めるものである(人前で“それは何?”と言われること受け合いだ)。

 鮮やかなグラデーションダイヤルは中央のバーガンディから始まって次第に暗くなり、ほとんど黒に近い色合いになっていく。アプライドインデックスとファセットインデックス、ドラマチックなグレーのH. Moser & Cie.の文字、そしてスーパールミノバのドットで各時間を示すスロープ状の見返しが、ほかのデザインをシンプルに保ちながらも全体に視覚的なおもしろさを与えている。ブランドの歴史に詳しい方なら、このダイヤルをチーズをふんだんに使った悪名高いモーザーのダイヤルで見覚えがあるかもしれない。

H. Moser Pioneer Swiss Mad Red

 ステンレススティールケースは、42.8mm×10.6mmの素敵なプロファイルを備えている。試着してみると、確かに“大きめ”の腕時計であることはわかるが、大げさな重さには感じないし、ドラマチックでもない。カーブした角張ったラグデザインはディナープレートのように手首の上に乗るのではなく、手首に密着するように時計を装着することができる。ケースは柔らかなラインと滑らかな曲線を多用した複雑な構造だが、最も印象的なのはモーザーのパイオニアコレクションに見られる4つの存在感のある“グリル”のような凹凸だ。

H. Moser Pioneer Swiss Mad Red

 これらの窪みには確かに少し慣れが必要で、私はモーザーのエンデバーコレクションで採用されているよりクラシカルなデザインのほうが好きだと公言している。今年のWatches & WondersでモーザーのCEO、エドゥアルド・メイラン(Edouard Meylan)氏にパイオニアコレクションのこのデザインに対するこだわりについて尋ねたところ、彼はパイオニアコレクションのスポーティさを強調すると同時に、視覚的なトレードマークを確立するための方法であると語った。確かにモーザーのスポーツウォッチそのものだ。ねじ込み式リューズ、夜光塗料をふんだんに使ったダイヤルと針、大胆なダイヤルカラー、そして120mの防水性……。この夏、パイオニア・センターセコンド スイスマッドレッドを水中へ持ち込んでも何の問題もないだろう。

H. Moser Pioneer Swiss Mad Red

 パイオニア・センターセコンド スイスマッドレッドは、その価格帯で多くのものを提供し、真の自社製ムーブメントを内蔵しているため、独立した高級スイス時計製造の世界への真の入り口のひとつとなっている。手仕上げのムーブメントを搭載した時計を1万ドル前後で製造する真に単独オペレーションで時計を生み出す独立系(トースティ・ライネフローラン・ルコントなど)はほかにもいくつかあるが、たいていはETAキャリバーなど既存のムーブメントデザインをベースに、年間を通じても小ロットの生産で、(ほとんどの場合)従来の小売ネットワークには乗らないため、入手困難な状況になっている。

 H.モーザーのパイオニア・センターセコンド スイスマッドレッドは独自のムーブメント構造、独自のヒゲゼンマイを持ち、そのすべてがモーザーとその関連会社によって製造されており、ほかの独立系時計メーカーよりも少しアクセスがいいのが特徴だ。例えばアメリカ国内だけでも、モーザーのウェブサイトには、その時計を扱い見ることができる小売店のある12の都市がリストアップされている。モーザーは現在、品質と独自性を維持しながらも、時計メーカーとしての真の価値を提供できるスイートスポットで事業を展開しているのだ。この時計ほど、その組み合わせを象徴する時計はないだろう。

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H.モーザーの詳細については、公式サイトをご覧ください。