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本稿は2016年9月に執筆された本国版の翻訳です。
今週のBring A Loupeは、ヴィンテージパテック フィリップのなかでも特に希少な3針モデルをご紹介。あなたは間違いなく自動巻きのRef.2526を知っているだろうが、ブラックダイヤルにゴビ(Gobbi)のサインが入ったものは見たことがないだろう。そして、エドモンド・ヒラリー(Edmund Hillary)がエベレスト制覇の際着用していたのと同じタイプの特大サイズの、そしてタペストリー文字盤を備えた素晴らしいロレックス プレ・エクスプローラーも登場。さらに、ジャガー・ルクルト、モバード、L.ルロワ(L. Leroy & Cie)などの珍しい時計も揃えた。
パテック フィリップ カラトラバ Ref.2526、超レアなブラックダイヤル仕様
驚くべきRef.2526は、1953年に発表されたパテック フィリップ最初の自動巻き時計だったと言われるモデルだ(少なくとも、最初のうちのひとつ)。オリジナルのブラックダイヤルは、このリファレンスでは非常に希少である。ここでオリジナルという言葉を強調しているのは、あとから交換されたものではなく、オリジナルのエナメルダイヤルが真に望まれているからだ。ブラックダイヤルには、第1世代ダイヤル特有のインデックスが配されているためご安心を。そして6時位置のすぐ上には、非常に特別なサインが記されている。そう、そこにある1行の“Gobbi Milano(ゴビ・ミラノ)”というテキストがすべてを物語る。この時計は、ゴビがサインした唯一のブラック文字盤の2526だと考えられている。オークション会場を沸かせるような個体だ。これ以外のディテールとして、以前ポリッシュされた形跡があるものの、はっきりとわかるホールマークが健在。このイエローゴールドのケースが、素晴らしいコンディションを保っていることがわかる。
ヨーロッパの販売店、Iconeekがこの特別な2526を、掲載時点で約23万5000ドル(当時の相場で約2733万円)で提供していた。
ジャガー・ルクルト “スノードロップ” Ref.E877
メモボックスはジャガー・ルクルトの象徴的な時計のひとつで、この“スノードロップ”モデルは1950年初頭の発売以来、さまざまな形やスタイルで登場したことを思い出させてくれる。Ref.E877のオーバルケースは、間違いなく1970年代のものである。およそ2000本が製造され、この時代の時計、特にブラックダイヤルは一般的ではない。43mmのケースは一見すると巨大に見えるかもしれないが、ラグがないため手首の上に装着すると控えめなサイズに見える。以前の自動巻きメモボックスモデルがバンパー式であったのに対し、これに搭載される自動巻きCal.916は、より現代的なローターを備えている。
このおもしろいジャガー・ルクルト メモボックスは、Matthew Bainのサイトで4950ドル(日本円で約58万円)にて販売される。
ロレックス プレ・エクスプローラー “オヴェトーネ” Ref.6298
ロレックスのRef.6098と6298は、のちのエクスプローラーのいくつかの特徴、特に36mmというケースサイズがマッチしているため、“プレ・エクスプローラー”モデルとして認定されることが多いが、文字盤にはまだエクスプローラーの名は記されていない。初期のバブルバックの流れを汲む、ドーム型のケースバックを備えており、また1953年にヒラリー・エドモンド卿の手首に巻かれてエベレストの頂上に登ったことでもよく知られている。信じられないほどのタペストリー文字盤が、この時計の大きな魅力であるのは明らかであり、完璧なラジウムドットとアプライドインデックスもそのまま残っている。さらに、ブレスレットにエンドリンクがないことにも注目してほしい(これらは1954年にロレックスが特許を取得したもので、すぐにエクスプローラーに採用されたわけではない)。この時計が1953年に製造された一方で、ブレスレット(少なくともクラスプ)には1956年という刻印があるため、これはあとから追加されたものかもしれない。ときには少し隙間が生じることもあるが、私には少し長いように思える。予想どおり、この自動巻きムーブメントは1955年まで生産された、初期のデイトジャストやサブマリーナーにも搭載されていたCal.A296である。
イタリア人ディーラー、エルヴィオ・ピヴァ(Elvio Piva)氏が、この素晴らしいロレックスを掲載時点で約1万7900ドル(当時の相場で約208万円)で出品していた。
モバード スーパーサブシー300
このモバードのコンディションは、今日紹介しているほかの時計には遠く及ばない。しかし、1970年代のダイバーズウォッチとしては非常にクールであり、両方向回転するベークライトベゼルと、非常に読みやすい文字盤を備えている。本モデルは、今見ているブラックとダイバーの大好きなオレンジの2色で展開していた。搭載される自動巻きムーブメントはゼニスのCal.2552 PCをベースにしている。当時、この両ブランドは同じ傘下にあったのだ。時計の写真はもっとわかりやすいものでなければならないが、いずれにせよ、まともな時計であることには間違いない。唯一の大きな問題は、秒針に施された奇妙な夜光塗料だ。ただインデックスの焼けたトリチウムとよく調和している。
eBayの出品期限は切れており、記事執筆時の入札はまだ900ドル(当時の相場で約10万円)を下回っていた。
L.ルロワ クロノグラフ
このエレガントなクロノグラフを最初に見たとき、文字盤にはパテックやヴァシュロンと書かれているのを想像するかもしれない。ただしよく見ると、1940年代から50年代のファッショナブルなパリジェンヌの注目を集めてブレゲと競った、L.ルロワによってつくられたことがわかる。35mmサイズのこのクロノグラフは、パテックのクロノグラフ Ref.1579 “スパイダー”シェイプをほうふつとさせる、派手なラグを装備し、またアプライドインデックスが文字盤に見事なバランスをもたらしている。内部には信頼性の高いValjoux 23が収められ、出品者は素晴らしいコンディションだと説明している。
フランス在住のコレクターがこのL.ルロワ クロノグラフを、掲載時点で約7280ドル(当時の相場で約85万円)にて販売していた。