誰もが大好きな強盗映画。この伝統的なジャンルを、2001年に鬼才スティーブン・ソダーバーグが『オーシャンズ11』で覆し、気まぐれとウィットと皮肉を注入した。ソダーバーグ監督は、ジョージ・クルーニー(ダニー・オーシャン役)、ブラッド・ピット、ジュリア・ロバーツ、マット・デイモンという豪華キャストを揃え、群像劇に新しい意味を与え、最終的には大人気の3部作につながったのだ。
ソダーバーグ監督は、誰も好きではない映画をリメイクして、映画フランチャイズとして成功させた。そして、誰もが知っているように、今日の映画界では映画フランチャイズは不死身の存在だ。そこで2018年、オーシャンズの世界に新たな作品『オーシャンズ8』が参入した。ダニー・オーシャンの妹で、同じく犯罪の首謀者であるデビー・オーシャン(サンドラ・ブロック扮する)を中心に展開し、クルーニー/ピットの作品にはやや及ばないが、面白いのだ。この映画はラグジュアリーの世界に焦点を当てており、ケイト・ブランシェット演じる主人公は、アビエーションがテーマのアイコニックなツールウォッチを終始身につけている。
注目する理由
最新作『ザ・ロストシティ』(2022年)のあと、サンドラ・ブロックは先日、女優業を休止することを発表した。これはある意味驚きだったが、誰にでも休息は必要だ。彼女が休んでいるあいだには、我々は彼女のオーシャンズ作品に注目する。ただ、必ずしも彼女というわけではなく、ブラッド・ピットの役にあたるルー(姓はなく、ただルー)を演じるAリスト女優、ブランシェットの手首を見ていよう。
『オーシャンズ8』は、オーシャンとルーがニューヨークのメットガラ(Met Gala)で1億5000万ドルのカルティエのネックレスを盗み出す強盗計画を描く。この計画を成功させるために、彼らは泥棒と犯罪者の部隊を集めなければならない。偽のネックレスをスキャンして3Dプリントしたり、ファッションデザイナーを使って映画界のセレブ、ダフネ・クルーガー(アン・ハサウェイ)の首にネックレスをつけるように仕向けてガラに潜入したりと、あらゆる手を使って仕事をこなすことになる。もちろん、物事は予定通りには進まなかったり、進みだすこともあったりする。楽しい音楽や気の利いた編集など、オーシャンズ映画に期待されるあらゆる要素が盛り込まれている。すべてはハッピーエンドに導かれ、犯罪を成功させたヒーローに拍手を送るのだ。イェーイ。
映画ではカルティエのダイヤモンドが中心となるものの、我々はそれよりもルーが腕にしていたIWCに注目する。彼女がつけているのは、ブレスレットタイプのステンレススティール製IWC パイロット・ウォッチ・マークXVIIIだ。ビッグ・パイロットの名を冠さない、IWCの真骨頂ともいえるモデル。シンプルで見やすく、クラシックなデザインのこの40mmの時計は、オリジナルのIWCマークXIを思い起こさせる。マットなブラックダイヤル、真っ白でスタイリッシュな数字、そして大きな白い針が特徴だ。通常、この時計はレザーストラップと組み合わせて使用されるが、ここではクラスプに楽しいマイクロアジャスト機能を備えた、非常に過小評価されているブレスレットを装着している。
この時計が気に入っているのは、これから時計を購入する人の多くに合うような、IWCの原型となる選択肢だということだ。この選択は、思慮深さを感じさせるだけでなく、キャラクターにもぴったりだ。ルーは自信に満ち溢れたクールな女性である。個人的に、マークXVIIIはその精神性にマッチしているだけでなく、彼女のキャラクターが持つテイストを表しているように思う。彼女はプロフェッショナルであり、その技は合法的なものではないかもしれないが、自分の仕事を成功させるために必要な道具はある。このIWCは、それにピッタリなツールだと思う。
オーシャンに話を戻すと、映画の冒頭で時計に関する素敵なイースターエッグが登場する。彼女が刑務所から釈放されるとき、看守が腕時計を彼女に返す。このとき、この時計はかつて彼女の兄、ダニー・オーシャンが所有したもので、彼が亡くなるまでに持っていたことがわかる。では、ふたつの『オーシャンズ』シリーズをつなぐ架け橋は何なのか? 時計だ。ダニー・オーシャンの時計については、近いうちにWatching Moviesで紹介するので、ご心配なく。
見るべきシーン
映画の序盤、おおまかな犯罪計画が具体化し始めると、オーシャンとルーはメットガラに説得力を持って潜入するためには、ファッション・デザイナーを犯罪に巻き込む必要があることに気づく。そして、ヘレナ・ボナム・カーター演じるローズ・ワイルという失脚したデザイナーに目をつけ、彼女の最新のファッションショーを見に行くが、そのショーは大失敗に終わる。ショーのあと、隅っこで拗ねているワイルに、ルーとオーシャンは計画を持ちかける。ルーは青いパンツスーツを着て、ワイルの横に座る。すると[00:18:07]、ブルーの袖の下からスティール製のIWC マークXVIIIが現れ、この時計と相性の悪い服はないことがわかる。
このシーンからまもなく、ルーは、ハサウェイ演じるクルーガーがメットガラのデザイナーとしてワイルを採用するように仕向けるため、ある計画を立てる。彼女は、ワイルとダコタ・ファニング(本作では本人役)のランチをセッティングし、その写真をタブロイド紙に掲載してクルーガーに嫉妬させようとする。レストランの向かいのテーブルに座って写真を撮っているとき[00:24:12]、彼女のIWCとスティール製ブレスレットがはっきりと目に入る。やがて、シーンはクルーガーに移る。彼女は餌に食らいつき、1億5000万ドルのプランは、成功に向けて動き出す。
『オーシャンズ8』(サンドラ・ブロック、ケイト・ブランシェット主演)は、ゲイリー・ロス(Gary Ross)が監督、マイケル・ジョートナー(Michael Jortner)が小道具を担当。iTunesやAmazonでレンタルや購入が可能だ。