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クイック解説
2026年は、G-SHOCKの最上位コレクションであるMR-Gにとって誕生30周年の節目にあたる。今年発表されたモデルを振り返ると、極寒の氷海を表現したブライニクルや、プラチナ箔を文字盤に用いたMRG-B2100HR "悠”など、耐衝撃性という前提条件を守りながら外装の工芸的・美的な表現手法を模索する動きが目立った。それらは実用的なツールウォッチという枠組みを超えて、素材や外装表現の進化を続けるカシオのあり方を示している。
そのアニバーサリーイヤーを締めくくるように、カシオが発表したのが「ブルーローズプロジェクト」である。かつて自然界に存在しなかった青いバラは、バイオテクノロジーによって生み出されたことから不可能を可能にするというメタファーとして語られる。では、本作においてブルーローズが示す矛盾や不可能とは一体何だろうか。それはおそらく、硬質で傷がつきにくい特性により美しさを長く持つ反面、一点への強い衝撃に対しては割れるリスクを伴うサファイアという素材を、あえて高い耐衝撃性が求められる耐衝撃ウォッチの外装に落とし込むという、構造的なパラドックスへの挑戦を指しているのだろう。
そしてその第一弾として、MR-GからはMRG-B5000SAが、フルメタルG-SHOCKからはGMW-B5000SBの2モデルが展開される。ともに、馴染み深い5000系のデザインにブルーサファイアをアクセントとして落とし込んでいる。
MRG-B5000SA
MRG-B5000SAは、角型のフルメタルケースの上下にそれぞれ2カラットのブルーサファイアクリスタルを配置している。加工難度の高い素材でありながら、精緻なファセットカットが施されたサファイアの存在感はとりわけ目を引く。そして注目したいのは、時計全体におけるブルーの統一感である。ケースのリブパーツに施されたブルーAIP加工と、液晶外周部にあしらわれたブルー蒸着が、サファイアの輝きと精悍なリンクを生み出している。サファイア、AIP、蒸着という全く異なる手法で着色を行いながら、ここまでストイックに色合わせを徹底する点には、カシオのこだわりが強く感じられないだろうか。こちらは2026年12月5日(土)発売予定で、価格は88万円(税込)、世界限定500本での展開となる。
一方のGMW-B5000SBは、ブラックIPを施したステンレススティールケースのベゼルディンプル(凹み)部分4カ所に、ラウンドブリリアントカットのラボグロウン・ブルーサファイアをセットしている。MR-Gが提示するプロジェクトの核心的な要素を押さえつつも、全体をブラックとブルーのコントラストで引き締め、より日常使いに適した現実的なパッケージにまとめている点に好感が持てる。こちらは11月7日(火)発売で、価格は11万円(税込)だ。
GMW-B5000SB
ファースト・インプレッション
近年、カシオはチタン合金であるTranTixxii(トランテイクシー)やプラチナ並みの輝きを放つコバルトクロム合金のコバリオンなど、加工難易度の高い新素材を積極的に採用してきた。その延長線上で外装表現の幅を着実に広げてきたわけだが、今回のブルーローズプロジェクトにおけるブルーサファイアの採用は、これまでとは少し毛色が異なる。
G-SHOCKのケースデザインは本来、外部の衝撃から内部モジュールを徹底的に保護するという機能的必然性から生まれている。そこに、硬度は高いが強い衝撃によって欠けや割れが生じる可能性を孕むサファイアクリスタルを外装パーツとして組み込むことは、G-SHOCKの根幹であるタフネスの思想と相反するアプローチになりかねない。
だが、この一見矛盾する課題に挑む姿勢こそが、“不可能を可能にする”という今回のプロジェクトのテーマと重なってくる。耐衝撃構造という絶対的な制約のなかで、いかにして脆さを持つ素材を保護し、腕時計として成立させるのか。この課題に対する答えとしてカシオは、ケースとベゼルを複数のパーツに分割し、割れの原因となるねじを用いずに組み上げるMR-G独自のマルチガードストラクチャーの採用を挙げている。そして、外装のレイアウトを観察すると、さらにもうひとつの合理的なアプローチが見えてくる。ブルーサファイアが配置されているのは、ケース上部のわずかに一段下がった凹部分や、ベゼル前面のディンプル部である。つまり、外部からの直接的な衝撃がクリスタルに到達しにくいよう、物理的なデザインそのものが巧みに計算されているように見えるのだ。異素材を単なる装飾として配置するのではなく、G-SHOCKとしての実用性を損なわないよう合理的に設計されていることがうかがえる。
1996年の誕生以来、実用的なツールウオッチの枠を拡張し続けてきたMR-Gコレクションの30周年を祝うMRG-B5000SAと、その野心的なアプローチをフルメタルの文脈で再解釈したGMW-B5000SB。双方のモデルから見えてくるのは、このプロジェクトが単なるカラーバリエーションの追加ではなく、G-SHOCK全体におけるマテリアル探求の新たなフェーズを示しているという事実だ。タフネスという大前提から逃げることなく、美しさとの矛盾を構造的なアプローチで解決してみせた本作には、「ブルーローズ」という言葉に込めたカシオの意図が、確かな説得力をもって宿っている。
基本情報
ブランド: G-SHOCK
型番:MRG-B5000SA/GMW-B5000SB
直径: 43.2mm
厚さ: 12.9mm(MRG-B5000SA)/12.9mm(GMW-B5000SB)
ケース素材: 64チタン(MRG-B5000SA)/ステンレススティール(GMW-B5000SB)
文字盤色: ブラック
インデックス: ネガ液晶
夜光: LED
防水性能: 20気圧
ストラップ/ブレスレット:デュラソフトバンド(MRG-B5000SA)/ソフトウレタン(GMW-B5000SB)
MRG-B5000SAの裏蓋には、MR-G30周年を示す刻印がある。
価格 & 発売時期
価格: MRG-B5000SA 88万円/GMW-B5000SB 11万円(ともに税込)
発売時期: MRG-B5000SA 2026年12月5日(土)/GMW-B5000SB 2026年11月7日(土)
限定:MRG-B5000SAのみ世界限定500本
詳細は、こちらをクリック。
Photographs by Yusuke Mutagami, Nahoko Omura
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