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クイック解説
昨年ジラール・ペルゴはバンフォード・ウォッチ・デパートメントと協力し、チャリティーオークションのオンリーウォッチのために「キャスケット オンリーウォッチエディション」を製作・出品した。この時計は、1976年に登場した知る人ぞ知るユニークなデジタルLEDウォッチ“キャスケット”にインスピレーションを得たもので、新開発のLEDディスプレイ対応クォーツムーブメント Cal.GP03980を搭載していた。「たった1本のユニークピースのために新しいムーブメントを作るなんてことがあるのだろうか?」と、疑問に感じていた方は相当鋭い。2022年、同社はこのCal.GP03980を用いた限定コレクションを発表した。
キャスケット 2.0と名付けられた本機は、オリジナルのデザインランゲージをキープし、人間工学に基づいた手首にフィットするサイズと特徴的でユニークなデザインを持つ。オリジナルのキャスケットはステンレススティール、イエローゴールドプレート、そしてマクロロン®(ポリカーボネート)の3種類のケースで製造されたが、オンリーウォッチエディションではフォージドカーボンケース、裏蓋とプッシュボタンにはグレード5チタンが用いられていた。キャスケット 2.0もグレード5チタンの裏蓋とプッシュボタンを採用し、ケースにはマット質感のブラックセラミックが使用されている。
オリジナルのキャスケットはLEDディスプレイに時、分、秒、曜日および日付を表示するというシンプルな機能だったが、Cal.GP03980では月、年、セカンドタイムゾーン表示機能、クロノグラフ機能、そしてシークレットデイト表示機能が追加されている。シークレットデイトとは、ユーザーが任意で選んだ思い出に残したい日付を保存できる機能だ。例えば、結婚記念日などの特定の日付(加えて、月および年も)を、毎日ユーザーが指定した時刻に表示させることができる。 またオリジナル同様、この時計は常時LEDディスプレイが発光して時刻を表示するのではなく、ユーザーの必要に応じてケースサイドのボタンを押すことで表示される。プッシュボタンを1日に平均20回押すと仮定した場合の電池寿命は約2年だ。
オリジナルのキャスケットは1976年1月から1978年11月まで生産され、その販売期間を通じて計8200本が作られた。ジラール・ペルゴではこの数字から着想を得て、キャスケット 2.0の生産数を世界限定820本と設定した。価格は56万1000円(税込)で、購入には事前予約が必要。予約は2022年2月22日から2022年3月7日まで同ブランドの公式サイトでのみ受け付け、その後、世界各国のジラール・ペルゴ正規販売店で販売される予定だ。
ファースト・インプレッション
オンリーウォッチに出品された時計のなかで、実は筆者が最も興奮したのがジラール・ペルゴのキャスケット オンリーウォッチエディションだった。理由はシンプルだ。多くのブランドは既存の人気モデルをベースに素材やデザインでアレンジを加えたものを出品していたのに対し、ジラール・ペルゴは現行コレクションにはない、しかも一部の熱烈的なマニアが喜びそうな個性的なLEDウォッチを、わざわざ最新のムーブメントと現代の時計にふさわしい外装を与えて蘇らせたのだ。その存在は異彩を放っていた。オンリーウォッチエディションはたった1本のみのユニークピースだったが、キャスケット 2.0は限定とはいえ、現実的に買うことのできるコレクションだ。心待ちにしていた人は筆者だけではないと思う。
人気のロレアートを含む一体型ブレスレットを備えたラグジュアリースポーツウォッチは1970年代に生まれたが、1970年代の時計業界を端的に表すとしたら、デジタルウォッチの時代と言えるだろう。1970年5月6日、世界初のLEDデジタルウォッチがハミルトン(パルサー)から発表され、数年後に量産化されたLEDモジュールの他社への供給が開始されると、オメガ、ロンジン、ジャガー・ルクルト、ゼニスなど多くの時計ブランドがLEDデジタルウォッチの開発に乗り出した。
ジラール・ペルゴのキャスケットが多くの競合他社が手がけるLEDウォッチと決定的に異なっていたのは、自社で開発と製造を行い、独自のLEDモジュールを使用していたこと。そして伝統的な表現を避け、その名の由来でもあるキャスケット(ひさし)のように迫り出した前頭部にディスプレイをレイアウトし、ケースサイドから表示を見るという前衛的なスタイルを備えていた点にある。熱心なコレクターの研究によると、他ブランドと比較しても同社のLEDモジュールはコンパクトかつ頑丈にできているようで、独特のスタイルが実現できたのもLEDモジュールによるところが大きい。そうした背景もあり、オリジナルのキャスケットは市場で今なお高く評価されている。
なお、キャスケットというのは正式なモデル名ではない。これはコレクターが親しみを込めて呼んだ愛称で、当時は単にデジタルクォーツという名で販売された。また、ケースの使用素材で異なるリファレンスナンバーが与えられており、製造本数も異なっていた。前述の通り、オリジナルのキャスケットは1976年1月から1978年11月までに8200本が作られたが、その内訳はSSケースのRef.9931が4000本と最も多く、18KGPケースのRef.9934が2200本、そして軍用に開発されて間もなかったグラスファイバー強化樹脂を用いたマクロロン®(ポリカーボネート)ケースのRef.9939は2000本と最も数が少ない。
ジラール・ペルゴCEOのパトリック・プルニエ(Patrick Pruniaux)氏は、次のように語っている。
「すべての時計が時が経過しても外観と魅力を保ち続けるわけではありません。ところが、1978年にオリジナルのキャスケットの生産が終了したあとも、この時計への関心は決して衰えませんでした。私たちは定期的に問い合わせを受け、このモデルが中古市場で元の10倍の値段で売れるなど、大きな注目を集めているのを見てきました。購入したあらゆる物の価値が、そのように高くなればよいのですが。要するにオリジナルのキャスケットは、永遠の魅力を持つ時計をデザインするという私たちの評判をさらに確かなものにします。永遠の魅力を約束するスタイリッシュな時計、キャスケットの復活を心から歓迎します」
このコメントに新しいキャスケットに込められた想いが表れていると思う。
ここ数年で、いくつかのブランドが1970年代に作られたLEDウォッチの復刻版をリリースしている。外観はオリジナルの雰囲気を巧みに表現しているが、その多くはカジュアルウォッチ、ファッションウォッチの枠を出ない作りのものが少なくない。だが、キャスケットの狙いは明確だ。わざわざコストをかけて自社で新しいLEDディスプレイ対応のムーブメントを開発。外装はレアモデルであるマクロロン®ケースを彷彿とさせるマットな質感のセラミックケースで、画像で見るかぎり、オリジナルには見られなかったエッジを随所に備え、ポリッシュ仕上げを施すなど、高級感を与える工夫がなされている。特にセラミック製のブレスレットはオリジナルとは異なり、メリハリのある仕上げを持った高級時計らしいディテールだ。
そもそも復刻モデルというのはマス向けのプロダクトではなく、本来はオリジナルを知る熱心なファンに向けたものであろう。そうしたファンが望むのはメーカー側がしっかりとユーザーを見据えていることがわかる、妥協のないものづくりを感じさせる時計ではないだろうか。おそらくキャスケット 2.0は万人受けする時計ではないだろう。だが、ニッチなファンには確実に刺さる時計になっていると思う。そして同時に、歴史ある高級ブランドが手がける復刻モデルというのは、いつもそういう存在であって欲しいと筆者は願っている。
基本情報
ブランド: ジラール・ペルゴ(Girard-Perregaux)
モデル名: キャスケット 2.0(Casquette 2.0)
型番: 39800-32-001-32A
サイズ: 42.4×33.6mm
厚さ: 14.64mm
ケース素材: ブラックセラミック。ケースバックおよびプッシュボタンはグレード5チタン
文字盤・インデックス: チューブ状LEDディスプレイ
防水性能: 50m(5気圧)
ストラップ/ブレスレット: ブラックセラミック(内側はラバー)製ブレスレット、TI製フォールディングバックル
ムーブメント情報
キャリバー: GP03980
機能: チューブ状LEDディスプレイによる時・分・秒表示、カレンダー(曜日・日付・月・年)表示、クロノグラフ、セカンドタイムゾーン表示、シークレットデイト表示(思い出に残したい日付を保存できる機能)
直径: 26.24×27.6mm
厚さ: 6.4mm
電池寿命: 2年(1日平均20回表示すると仮定した場合)
駆動方式: クォーツ
振動数: 3万2768Hz
部品数: 45
価格 & 発売時期
価格: 56万1000円(税込)
発売時期: 2022年2月22日から2022年3月7日までブランド公式サイトでのみ受け付け。その後、世界各国のジラール・ペルゴ正規販売店で販売
限定: 世界限定820本
詳細は、ジラール・ペルゴ公式サイトをクリック。