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Introducing H.モーザー エンデバー・コンセプト ミニッツリピーター トゥールビヨン 2021年新作

H.モーザーらしいスタイルをもった、ミニマルでありながら理にかなったミニッツリピーター。

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クイック解説

 H.モーザーから、2021年の新作第1弾となるエンデバー・コンセプト ミニッツリピーター トゥールビヨンが発表された。文字通り、ミニッツリピーターとトゥールビヨンを備えたグランドコンプリケーションだが、特筆すべきはミニッツリピーターである。

 本作では、ダイヤル6時位置の開口部からフライング トゥールビヨンを見せると共に、ケースバック側に置かれることの多い2つのゴングとミニッツリピーターハンマーをダイヤル側に配置。多くの技術的課題、特にゴングがフライング トゥールビヨンの動作を妨げないことはもちろん、控えめなデザインというブランドの根幹を成すコンセプトを尊重するためにこのパーツを湾曲した形にする必要が生じたが、H.モーザーはミニッツリピーターのエキスパート、Timeless Manufacture SAの協力を得ることでこれを実現させた。

 ムーブメントとケースの製作においては、特に品のあるプロポーションをキープするための大きさと厚さを確保することを主眼に、開発が進められた。テフロン製のランナーに取り付けられたスライドボルトは、スペースを節約するために地板の中に組み込まれ、ケース中央部にはムーブメントを収め、そしてサウンドボックスを作るための十分なスペースが確保された。これにより、2個のハンマーが2個のチャイムを叩き、時、15分単位、および分を告げる音を増幅させている。

 ミニッツリピーターのメカニズムを確実に動作させること自体難しいことだが、大きさ、長さ、そして澄んだ音色を併せもつ美しい音を奏でるためには、ミニッツリピーターを完全に理解していることが必要である。そのため、ケース形状は、チタンの特性を最大限に引き出せるように設計、開発、調整がされており、共鳴に必要なスペースが大きく設けられた。チタンは負荷がかかった状態でも変形しにくい(弾性係数が高い)剛性に優れた素材であり、また密度が低くく軽量。これにより、音響壁の振動エネルギーロスを抑えた効率的な伝達を実現している。

 また、6時位置のミニッツ フライング トゥールビヨンには、精度と計時機能を高めるためにボールベアリングが取り付けられた(スケルトンブリッジ越しに、ダイヤル側からも確認することができる)極めて現代的なトゥールビヨンが採用された。

 ミニッツリピーターとフライング トゥールビヨン。搭載機構は複雑極まりないが、レス・イズ・モア(少ないほど豊かである)の概念を体現するエンデバーコレクションに合わせて、ダイヤルはロゴもインデックスもないミニマルなデザインを採用。ミニマルであるがゆえに、サンバースト仕上げをもつ新たなエレクトリックブルーダイヤルの美しさを際立たせると共に、各コンプリケーションが浮かんでいるようなロマンチックなスタイルに仕上げられている。

 まさにH.モーザーらしい本作は、世界限定20本で価格は3900万円(税抜予価)。今春の発売を予定している。

ファースト・インプレッション

 元々リピーターウォッチは、照明の乏しい時代にダイヤルが視認しにくい暗闇でも時刻を知るために考え出された機構である。そうした点から見ると、インデックスをもたない、極めてミニマルなダイヤルデザインが特長のエンデバーコレクションにとって、ミニッツリピーターはぴったりの機構と言えよう。また、リピーターウォッチ同様、現代において実用価値は乏しいとされるが、精度の向上を狙ったトゥールビヨンの搭載は、正確な時間を音で知らせる必要があるミニッツリピーターにとって極めて相性の良い選択と言えるだろう。

 さて、何ともユニークな本作だが、厳密には全くの新作ではない。2019年に既に発表されており、当時のモデルは世界限定10本、ホワイトゴールドケースにブラックのラッカーダイヤルという仕様で登場した。この度発表された新作は、2019年モデルの素材バリエーションだ。ちなみに、搭載ムーブメントは前作と同じく手巻きのCal.HMC 903である。このムーブメントは最大巻き上げ時で、約90時間ものパワーリザーブを確保。機構が複雑でパワーを要するためにパワーリザーブが短くなりがちなミニッツリピーターウォッチにとって、実用性を高める極めて魅力的なムーブメントである。

 サンバースト仕上げの存在感が際立ったエレクトリックブルーダイヤルも気になるところだが、今回の新作で個人的に最も興味を引かれたのは、採用されているチタンケースだ。
 以前、オーデマ ピゲのロイヤル オーク ミニッツリピーター スーパーソヌリを紹介した際にも少し触れたが、近年は細部に至るまで丁寧に仕上げが施された、優れたチタンケースを使用するハイエンドモデルが多く見られるようになった。チタンは難加工素材であり、特に磨いてポリッシュ仕上げを施すのが難しいといわれる。

 だが、写真を見ても分かるように、本作のチタンケースはベゼル、ミドルケース(サイドはサテン仕上げ)、そしてケースバックに至るまで全面的にポリッシュ仕上げが施されている様子が見て取れる。チタンには、低アレルギーで軽量であるなど、時計の外装素材としてメリットが多い反面、前述のように加工が難しかったため、仕上げで高級感を与えることが難しかった。そのため、これまでは高額なハイエンドモデルにはあまり用いられて来なかったのだが、本作のように美しい仕上げをもつチタンケースウォッチが登場している現状を見るに、コストをかけることのできるハイエンドモデルでは、今後もチタンの採用がさらに進むのではないかと感じている。

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基本情報

ブランド: H.モーザー(H. Moser)
モデル名: エンデバー・コンセプト ミニッツリピーター トゥールビヨン(Endeavour Concept Minute Repeater Tourbillon)
型番: 1903-0500

直径: 43mm
厚さ: 14mm
ケース素材: チタン
文字盤色: エレクトリックブルー(サンバースト仕上げ)
インデックス: なし
夜光: なし
防水性能: 日常生活防水
ストラップ/ブレスレット: レッドライニング付きブラックアリゲーターレザーストラップ、モーザーのロゴが刻印されたTI製ピンバックル 


ムーブメント情報

キャリバー: HMC 903
機構:  時・分表示、6時位置にミニッツ フライング トゥールビヨン、ミニッツリピーター(4分の1 時間、分をチャイムで告げる)
直径: 33mm
厚さ: 9.62mm
パワーリザーブ: 90時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万1600 振動/時
石数: 35
追加情報: ダイヤル側にミニッツリピーターのハンマーとチャイムをレイアウト


価格 & 発売時期

価格: 3900万円(税抜予価)
発売時期: 今春発売予定
限定: 世界限定20本 

詳細は、H.モーザー公式サイトをクリック。