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Hands-On グルーベル・フォルセイ ダブルバランシエール コンヴェクス 42.5mmのブラックカーボンモデルを実機レビュー

“見た目が映える”時計が欲しくなる時もあれば、“高い性能を発揮する”時計を優先したい時もある。このグルーベル・フォルセイなら、そんな選択に迷う必要はない。

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先月、グルーベル・フォルセイが発表したナノ・フドロワイアントEWTは、同ブランド史上最高の成果といえるだろう。この時計は、フライングトゥールビヨンを搭載したフドロワイアント(foudroyante)付きの38mmモノプッシャー式クロノグラフである。フランス語の名前がずらりと並ぶこのウェアラブルなケースに、市場で最も優れた仕上げを施したこの時計は、まさに古参のコレクターが熱狂するようなものだ。しかしブランドを新しく知った人々には戸惑いを与えたようだ。彼らが思い描く典型的なグルーベル・フォルセイの時計ではなかったのだ。一方でこれは“グルーベルの頂点”の新たな形、ダブルバランシエール コンヴェクス ブラックカーボンである。これもまた独自の素晴らしさを備えている。

Greubel Forsey Double Balancier Convexe Black Carbon

 正直なところ、Geneva Watch Daysで同ブランドとアポイントメントを取った際、私が見たいと思っていたのはまさにこのような時計だった。グルーベル・フォルセイは長年にわたり、伝統的なデザイン言語を採用したウォッチメイキングを行っており(彼らがシンプルに“コレクション”と呼ぶラインだ)。同時に、現代のコレクター向けにスポーティなコレクションとしてコンヴェクスラインを確立している。ほぼ40万ドル(日本円で約6290万円)という価格のこの新作は、ほとんどの人にとっては想像を超える存在だろう。とはいえ、ただ眺めたり、その高額な理由を知るだけでも楽しいものだ。

 私は、純粋な驚きと情熱を持って時計に向き合うことが多い。特にミートアップや街角では滅多に見かけないブランドの製品に出合ったときはなおさらだ。そのためHODINKEE創設以来、業界で多くの変化を見てきたベン(・クライマー)やほかのコレクターたちに、自分の考えが正しいか確認したくなることがよくある。ナノ・フドロワイアントには“古くからいる愛好家”が夢中になっただろう、と私に教えてくれたのはベンだった。最近オフィスで彼とこのブランドについて話したとき、私はコンヴェクスコレクションを“マニア向けリシャール・ミル、知る人ぞ知る選択”と表現してみた。ベンから反論はなかったため、この例えを使い続けることにしよう。

Greubel Forsey Double Balancier Convexe Black Carbon

 確かにリシャール・ミルはAPルノー・エ・パピ(APRP)に自社内の独立した大規模な研究開発部門を持ち、グルーベル・フォルセイ(年間の製造本数はわずか260本ほど)では到底実現不可能な方法で、技術革新や大量生産を行い、グルーベルとリシャール・ミルは非常に近い価格帯で競合している。この事実が、年月を重ねるなかでグルーベルにこの種のデザインをさらに進化させるきっかけとなり、今に至っているのだろうと推測する。リシャール・ミルはウォッチメイキングの中核に超軽量素材を採用している。そのため、もし“グルーベル・フォルセイはリシャール・ミルに追随しているだけ”と単純化して考えるなら、カーボンコンヴェクスは納得のいく存在だと言えるだろう。

Greubel Forsey Double Balancier Convexe Black Carbon

 ブラックカーボン製のダブルバランシエール コンヴェクスは、2022年にチタン製の43.5mm×14.35mmケースで初登場したモデルの最新版である。昨年、グルーベル・フォルセイはこの時計をさらに進化させ、幅を1mm削ぎ落としつつ、厚みを維持したままカーボンケースに変更した。このモデルは2023年から2026年にかけて22本限定で展開される。わずかな改良ではあるが、前面と背面を湾曲させ、手首によりフィットするように設計し、文字盤側からの視覚的インパクトを強調したこの時計において重要な意味を持つ。それらすべてを実現するだけでも大したものだが、これをカーボンで実現したことは特筆すべき点だ。

Greubel Forsey Double Balancier Convexe Black Carbon

 ケースの主要部分のほか、メインプレート、メインブリッジはすべて、樹脂を染み込ませたカーボンシートの層を用いたカーボン製である。これらの層は型に積み重ねて加熱・加圧され、硬化させられる。このケースの曲線を実現するために、グルーベル・フォルセイは通常のカーボンケース成形時に使う圧力の8倍、1平方センチメートルあたり16トンの圧力が必要だったと述べている。さらにより密度の高いケース構造をつくるため、曲率に合わせて繊維を配向させた非常に薄いカーボンの層(1層ごとに1~5ミクロン)が使用された。 

 これはグルーベルのデザイン哲学を象徴する、特に際立った特徴のひとつだ。多くのブランドは時計が大きく見えないよう工夫を凝らす方法を模索している。実際多くのブランドが市場向けの適切なサイズバランスをまだみいだせておらず、40mmを無難な選択肢として設定しているのが現状だろう。しかしグルーベルはその逆を行った。9時から3時にかけてのケースの中心線は明らかに厚く、特に見返しリング上のアワーマーカーやミニッツマーカーを見るとその違いが際立っている。また、針もディスプレイに合わせて大きく湾曲しており、パワーリザーブや主ゼンマイ香箱のような文字盤の平坦な部分と比較するとさらに際立って見える。

Greubel Forsey Double Balancier Convexe Black Carbon

 最新作のナノを除けば、グルーベル・フォルセイのダブルバランシエールはおそらく、同ブランドで最も機械的に興味深いモデルといえる。ダブルテンプを採用した時計は市場に多数存在するが、ブランドがこのモデルで実現したのは、それぞれのテンプを時計の平面および自然な重力に対して、さらに互いに異なる角度で傾けることだった。

 その目的は位置誤差を最小限に抑え、ディファレンシャルを通じて誤差を打ち消すことにある。このディファレンシャルはルモントワール・デガリテとしても機能する。下の画像で確認できるディファレンシャルは2番車によって動力を供給され、3つの同軸車を横方向に組み合わせて構築されている。上下の歯車は、その左右にある4番車のピニオンを駆動している。

Greubel Forsey Double Balancier Convexe Black Carbon

 上下の歯車のスポークに取り付けられたスパイラルスプリングとして、正面と背面に配置されたルモントワール・デガリテ(上下の位置)を確認できる。スプリングは4分ごとに巻き上げられ、エネルギーを一気に解放してトルクと振幅を制御する。しかし上の画像でまず目を引くのは、カーボン製の巨大なメインプレートだろう。

Greubel Forsey Double Balancier Convexe Black Carbon

 リシャール・ミルにはない、グルーベル特有のこだわりもある。徹底した伝統的な高級仕上げなどがそれだ。それでも、きわめてスポーティでモダン、人目を引く時計を手に入れることができる。ただしこの時計はその最良の例とは言えないかもしれない。地板やその他の大部分をカーボン製にしたことで、伝統的な仕上げ技術を施す余地がほとんど残されていないのだ。時計の背面よりも表面にその技術が多く見られるが、それでも確かに存在している。

Greubel Forsey Double Balancier Convexe Black Carbon

 ここで採用されているすべての技術的驚異に対し、最大の疑問点は素材そのものにあるかもしれない。スティール、ゴールド、プラチナといった金属ケースが修理可能であることには、どこか安心感がある(これらはいずれもある程度は修理が可能だからだ)。自動車に詳しい人なら、高級スポーツカーへのカーボン素材の増加が大きなメリットをもたらす一方で、深刻な潜在的欠点も伴うことをご存じだろう。このようなケースが時間の経過にどう耐えるか(特に層の剥がれや剥離など)は、時のみが明らかにするだろう。しかしブランドは、追加の圧力と精密な層構造によって、より耐久性の高い製品を実現していると確信しているようだ。

Greubel Forsey Double Balancier Convexe Black Carbon

 細部へのこだわりが快適で装着感のよい時計を実現している。私の手首は7.25インチ(約18.4cm)で、42.5mmのケースサイズにぴったり合う。厚みが14mm以上あるケースには奥行きがあるが、それこそが狙いの場合もある。もう一度リシャール・ミルに話を戻すと、RM65-01はオートマティック スプリットセコンド クロノグラフだが、厚みは16.1mmもある。グルーベル・フォルセイの織物加工が施されたラバーストラップと、チタンとカーボンのフォールディングクラスプを使えば、装着していることを忘れるほど快適だ。

Greubel Forsey Double Balancier Convexe Black Carbon
Greubel Forsey Double Balancier Convexe Black Carbon
Greubel Forsey Double Balancier Convexe Black Carbon

 もうひとつ気になる点を挙げるとすれば(40万ドル、日本円で約6290万円という値段以外に)、それは読みやすさだ。撮影に与えられる5分から10分の短い時間ではその点を考慮するのを忘れてしまうことが多いと認めざるを得ない。今年レビューした時計のなかでも、特に読みやすさが劣る部類に入る時計だ。もっと早い段階で指摘すべきだったかもしれない。この時計を数日、あるいは1週間身につけていると、長針を素早く読み取れないことで20分から50分のあいだに少し不満を感じ始めるかもしれない。しかし写真は現実を完全に再現しているわけではない。時間を確認するために手首を動かすと、その動きによって光と影が変化し、針が視認しやすくなるのだ。そして忘れてはならないのは、自分が目の前にしているのは、時計愛好家が夢見るような最高にクールな時計だということだ。

Greubel Forsey Double Balancier Convexe Black Carbon

グルーベル・フォルセイ ダブルバランシエール コンヴェクス ブラックカーボン。直径42.5mm、厚さ14.35mmのカーボン複合素材ケース、50m防水。スケルトン文字盤には、時・分・秒針、パワーリザーブインジケーター、ルモントワール・デガリテを備えた傾斜したダブルテンプのムーブメント、約72時間パワーリザーブ。テクスチャーラバーストラップ。価格は35万1000スイスフラン(記事掲載時の価格は約40万ドル、日本円で約6290万円)。