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Hands-On ミンの新作37.02 “ミニマリスト”が起こすかもしれない革新。あなたにはそれが何か分かるだろうか?

ネタバラシは避けるが、この時計にはちょっと頭が混乱するような仕掛けがある。それが何なのか、予想がつくだろうか。

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クイズの時間だ。トップ画像には、ミンが腕時計の歴史上で初めてのものと考えている、ある要素が写っている。その違いは絶妙で、ほとんど信じがたいものだが、見つけるのは比較的簡単なはずだ。そのイノベーションとは何か? ヒントが必要なら針を見てみよう。予想をコメント欄に書き込んでみて欲しい。だが、不正はなしだ。ヒントが必要なら、下記の写真を見てみよう。

Ming 37.02 "Minimalist"

 まだ分からない? では明かりをつけてみよう。次の写真を見れば、そのイノベーションが見えてくるはずだ。これがミン 37.02 “ミニマリスト”だ。時針と分針を備えた、シンプルなセリタ製自動巻きムーブメントのスティールウォッチにふさわしい名前である。しかしそのトリックはサファイア製ダイヤルに隠されている。唯一の見分け方は青色に発光するスーパールミノバ X1を使った針だ。サファイアダイヤルのインデックスには、ミン独自の液体発光塗料“ポーラーホワイト”が充填されている。この塗料は、真に白く発光する夜光素材としてはきわめて希少なものだ(唯一ではないが)。そう、これは白色に輝く夜光なのだ。

Ming 37.02 Minimalist

 ミン・テイン(Ming Thein)氏は、白く発光する夜光塗料を長年追い求めており、その探求について昨年、ブランドのブログで言及している。彼は、白色光はほかのすべての色が等しく組み合わさったものにすぎないのだから可能なはずだとサプライヤーに主張し続けてきたと語った。しかしサプライヤーは応じることができなかった(またはその意図がなかった)ようだ。そこでミンは、必要な材料を自ら調達してこのプロジェクトに挑んだ。それだけでもきわめて印象的だ。

Ming 37.02

 それ以外の点では、この時計は比較的シンプルだ。17.01と27.01モデルと同様に、ミンのデザイン哲学と彼らが腕時計の核とはかくあるべしと考えているものを体現しており、37.02はこれらのモデルの進化形または思想を受け継いでいる。この時計はブランド特有のフレアラグ、サテンとポリッシュ仕上げの組み合わせ、直径38mm、厚さ11mmのバランスの取れたSS製ケース、そして100mの防水性能を備えている。まさに“ミン”を最も純粋で完璧な形で表現した一本だ。

Ming 37.02
Ming 37.02

 ムーブメントには、ミンが手を加えたセリタ製SW300.M1自動巻きを採用し、約45時間のパワーリザーブを備えている。アンスラサイト仕上げのスケルトンブリッジとカスタマイズされたローターが特徴で、多くの時計に搭載されているベーシックなセリタ製ムーブメントよりも若干の改良が施されている。ただし、この新作はミンのモデルのなかでムーブメントを主役としたものではない(とはいえ同ブランドにはそうしたモデルも豊富に揃っている)。

Ming 37.02

 ここで触れておくべきもうひとつの重要な達成がある。これは、ミンのスイスに新設されたオロロジー・ミンで、設計・エンジニアリング・管理のすべてを自社で行った初の腕時計である。このプロジェクトはおよそ2年前、イノベーションの追求とよりよい価値の提供、サプライチェーンの管理強化、リードタイム短縮を目指して始まった。この時計は即時出荷が可能で、限定版ではない。

 私が初めて37.02 ミニマリストを見たとき、残念ながらすでにサプライズが台無しになっていたため何を目にしているのか心の準備ができていた。しかしGeneva Watch Daysでほかのジャーナリストたちと一緒にこの時計を見た際、下の写真のどこが“おかしい”のかを理解しようと頭を巡らせる彼らの姿を見るのは楽しかった。そういう意味では、37.02 ミニマリストの最大のセールスポイントが、同時に最大の課題にもなりうるのかもしれない。少なくとも今のところ、私たちの脳はこうした変化に対応できるようにはできていないと感じている。

Ming 37.02

 市場に出回っている純粋な白色の夜光塗料は、ほかに思い浮かばない。私たちが色をどう感じるかは、光が表面にどのように作用するかに基づいており、周囲の環境もその表面に影響を与える。そのためたとえ画像の色補正を完璧に行っても、ケースの金属やガラスに奇妙な色味が映り込むことがあるのだ。青色のスーパールミノバX1を使うのは、夜光部分が白く光ることを証明するために必要だったが、実際にはポーラーホワイト塗料に少し紫がかった色味が出ることがある。ただ私たちの脳が白を夜光として認識しにくいだけなのかもしれない。

Ming 37.02

 遮光カーテンを引いた部屋でこの時計をつけてみた。夜光塗料が蓄光されていることも分かっていたし、自分の顔から1インチ(約2.5cm)先がかろうじて見える状況にもかかわらず、私の脳は白いプリントが外部の光で照らされている時計を見ていると確信していた。実際には違うと理解しているのに、私の脳はそれを認めようとしなかった。

Ming 37.02

 この時計が悪いと言いたいわけではない。価格はSW-300ムーブメントとしては少し割高だが、エントリーモデルとしては堅実で、スケルトン加工や仕上げにひと手間かけている。そのほかのデザインもミンのデザイン哲学に合致している。ただ私たちが光と闇を見る際に働く奇妙な心理的条件付けがあり、この時計はそれを覆すものだ。それが心理的に合わない人もいるかもしれないが、少なくともこれは腕時計として、そして夜光塗料が暗闇で時間を読み取る助けになる時計として、しっかり機能している。それこそが重要なポイントだろう。

Ming 37.02

 私はこのミンのイノベーションを評価しており、それ自体が革新のように感じられる。それ以上に、今後これをほかの時計にどう応用していくのかに興味がある。たとえば、ダイナミックなダイヤル構造とパターンを持つ20.01にこの新しいポーラーホワイト塗料が採用されたらおもしろいだろう。近いうちにそんなモデルが登場するのではないかと確信している。

Ming 37.02
Ming 37.02

 新しい夜光塗料を抜きにしても、このモデルはミンの堅実なエントリーモデルであり、同社が革新と成長を続けるなかで息の長い存在になるだろう。ミニマリストなデザインが好きな人も、ダイヤルが光と作用して独特の反転効果を生むなど、ブランドの特徴を好む人も、この時計は一考の価値がある。そして幸運なことにこのブランドの多くのモデルとは異なり、購入に踏み切るまでにじっくり検討する時間がある。

Ming 37.02

ミン 37.02 “ミニマリスト”。直径38mm×厚さ11mm、ステンレススティール製ケース、100m防水。ミン独自のポーラーホワイト塗料を注入したサファイア製ダイヤル、時・分針にはスーパールミノバX1を採用。セリタ製SW300.M1自動巻きムーブメント、約45時間のパワーリザーブ。アンスラサイトスケルトン製ブリッジおよびカスタマイズローター。フロントとリアには両面反射防止コーティング付きドーム型サファイアクリスタル。ラグ幅20mmのミンFKM製ブラックラバーストラップ(タックバックルシステム)価格は3250スイスフラン(約57万円)。Ming.watchで販売中。