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ヴィンテージウォッチの世界では、すべての道はローマへ通じている。文字どおりだ。いや、少なくともローマのあるイタリアでは、というべきか。この国では、時計、とりわけヴィンテージのパテック フィリップへの情熱が、ほかでは見られないほど深く文化に根づいている。何十年にもわたって受け継がれてきた。さらに世界のファッションの中心地としてのミラノの存在を考えれば、パテック フィリップが第7回のウォッチアート・™グランド・エキシビション(ミラノ2026)の開催地にミラノを選んだのも納得できる。無料(要予約)のこの展覧会では、パテック フィリップの過去と未来のクラフツマンシップ(技術的にも芸術的にも)の両面から時計製造の芸術を称えることを目的としている。この展覧会は本日10月2日に始まり、10月18日まで開催される。伝統に従い、ブランドは今回もこの瞬間を祝して新しい時計を発表した。7つの限定モデルに加え、さまざまなメティエ・ダールを用いた希少なハンドクラフトコレクションから25モデルが登場する。
手巻き式のパーペチュアルカレンダー・クロノグラフ(120本限定)という大きなニュースについては、ベンがこちらの記事で紹介している。また、希少なハンドクラフトコレクションの全モデルも、近日中にミラノからのフォトレポートでお届けする予定だ。すべてが完全な新作というわけではないものの、特に素晴らしい数本に施された新たな仕上げは、それだけで1本の記事にする価値がある。まず押さえておきたいのは、今回紹介する時計はいずれも、建前としてはイタリア市場向けということだ。とはいえ存在すら知らずにいるよりは、知ったうえで手に入れる機会を逃すほうがまだいい。たとえ、手に入れ損ねたとしても
昼夜表示を備え、地図を描いたクロワゾネエナメルダイヤルが復活。Ref.5531Gのバリエーションも登場
新作のクロノグラフ・パーペチュアルカレンダーも目新しいが、昼と夜それぞれのミラノの街並みを描いたクロワゾネエナメルダイヤルを備えたRef.5531Gの新作2モデルは、今回紹介する6本のなかでもっとも人気を集めるかもしれない。パテック フィリップが街路図をモチーフにするのは、今回が初めてではない。たとえばジュネーブの街路図を描いたモデルや、ニューヨークでの展覧会に合わせて発表された5531の昼夜2バージョンがある。しかも今回は各モデルわずか5本限定。イタリアの正規販売店の間で、激しい争奪戦が繰り広げられることになりそうだ。
パテック フィリップや家など何であれ、約1億4000万円を費やすことを普段考えもしない人にはあまり知られていないかもしれないが、Ref.5531は同ブランドのなかでも特に需要の高いモデルのひとつであり、多くの人が購入を巡って頭を悩ませる時計だ。というのもこれは申請制のモデルであり、どれほどのコレクターであろうと、どれほどのVIPであろうと、精緻なクロワゾネエナメルダイヤルを備えた美しいミニッツリピーター搭載のワールドタイマーを託されるにふさわしい理由を、文字どおり小論文にして提出しなければならないのだ。自分の申請がどう受け止められるのか、大学への願書を出すときのように不安を口にするVIPもいれば、手に入れた5531を誇らしげに見せてくれる人もいる。そうした話を聞く機会は、パテック フィリップのほかのどの時計よりも、この5531のほうが圧倒的に多い。
展覧会のショーケースで両モデルを実際に目にした。普段使いしやすいのは昼のモデルだろう。一方、夜の街路を照らす鮮やかな黄色の光を描いたモデルは、よりスポーティで、これまで市場に登場した5531のなかでも間違いなく最も前衛的だと思う。ピエト・モンドリアンとワシリー・カンディンスキーを掛け合わせたような趣がある。エナメル職人は誰もがそれぞれ一流の芸術家だが、このダイヤルには著名なアニタ・ポルシェのイニシャルであるA.P.がごく控えめに記されている。各タイムゾーンの都市名はすべてイタリア語で表記され、もちろん中央ヨーロッパ時間の都市はミラノだ。マローネ、なんて素晴らしい時計のペアなのだろう。
ホブネイル装飾にはどうも弱い(いや、苦手な)はずの私ですら、この2本には抗えない。ホワイトゴールド(WG)製の中抜きラグは、手首に載せたときの印象を少し軽やかにしてくれる。チャイムの音色は素晴らしく、48時間のパワーリザーブを備えたマイクロローター式ムーブメントを搭載する(パワーリザーブは少し短いが、許容範囲だ)。さらにサファイアクリスタル製のケースバックではなく、音の響きがよいソリッドケースバックも付属する。サイズは直径40.2mm×厚さ12.08mm。ワールドタイムのプッシュボタン式の調整機構まで備える複雑な時計であることを考えれば、妥当な大きさだろう。価格は1億3839万円(税込)。一般の人にとっては到底現実的な価格ではないが、このクラスのコレクターにとっては納得できる価格だ。イタリアでこの1本を狙っているコレクターの皆さん、幸運を祈る。
パテック フィリップ グランド・コンプリケーション 5531G-012 および 5531G-013: 防塵防水仕様の直径 40.2mm×厚さ 12.08mmのWG製ケース。昼と夜それぞれのミラノの街並みを描いたクロワゾネエナメルダイヤル。ミニッツリピーター(ふたつのゴングで鳴るチャイム)機能を備えたワールドタイム。内部には48時間のパワーリザーブを備えたCal.R 27 HUを搭載。各ダイヤルにつき 5本限定。価格は1億3839万円(税込)。
パーペチュアルカレンダーとミニッツリピーターを含む、イタリアン“トリコロール” カラトラバケースのトリオ
今回の新作のなかでも、これはおそらく最も意外性があり、ひときわ大胆なモデルだ。実際、下で紹介する赤いモデルは、パテック フィリップのティエリー・スターン社長が、ミラノで発表された新作のなかでお気に入りに挙げた1本でもある。イタリア国旗のトリコロールがこれほど鮮烈な配色だとは、今回カラトラバスタイルの3モデルのダイヤルにそれぞれ単色で用いられた姿を見るまで、あまり意識していなかった。そして今ではすっかりその存在感に気づかせられた。まずは、最も控えめなRef. 7007G-010から見ていこう。
型番が示すように、この新しいタイム&デイト表示のカラトラバは、モータースポーツを思わせる40mmの6007Gシリーズからインスピレーションを得ている。だが今回は、型番の先頭に“7”を冠することで、より女性を意識したアプローチへと転じ、ケースは直径38mm×厚さ9.97mmのWG製となった。ダイヤルには引き続きカーボンの織り目を思わせるデザインを採用するが、今回は全体をホワイトでまとめ、ブラックのアクセントを大胆に効かせている。ブラック仕上げを施したWG製のインデックスの縁取りと針には、夜光塗料が施されている。これまで同様、搭載するムーブメントはCal.26-330 S C。本作にはホワイトのアリゲーターストラップが組み合わされる。200本限定で、価格は773万円(税込)。そして、これはまだ序の口だ。
イタリア国旗のホワイトモデルを挟む、複雑機構を備えた両端の2カラーのモデルも大胆だ。ひとつはパーペチュアルカレンダー搭載のグリーンダイヤルを備えたRef.7147G(こちらも新たな型番)。もうひとつはミニッツリピーターを搭載したRef.7047Gである。先日も触れたように、今年発表されたミニッツリピーターは、スポーティなデザインゆえに、やや過小評価されている、あるいは誤解されているのではないかと感じていた。しかし、この新バージョンなら見落としようがない。ホワイトモデルと同じカーボンの織り目を思わせるダイヤルに、レッドのストラップを組み合わせている。深い眠りから飛び起きたテレビタレントが、この時計を買うためにイタリア国籍を取得しようと宣言する、そんな光景が目に浮かぶ。ケースは直径38mm×厚さ10.62mmと、ミニッツリピーターとしてはコンパクトだ。搭載するのは、1989年に登場したマイクロローター式のCal.R 27 PSだ。限定5本で、価格は1億1193万円(税込)となっている。
グリーンのRef.7147Gは、見覚えがあるかもしれない。生産終了となった、パーペチュアルカレンダー搭載の直径35mmの小ぶりなRef.7140をベースにしている。新作ではケースを大きくし、直径38mm×厚さ10.18mmのWG製とした。より幅広い購入層、そして男女双方に向けたサイズ設定なのだろう。内部には、イタリア語表示のパーペチュアルカレンダーを駆動するマイクロローター式ムーブメント Cal.240 Qを搭載する。イタリア語表示のパーペチュアルカレンダーとは、ヘブライ暦や中国暦、ヒジュラ暦のようなものなのかと疑問に思う人もいるだろう。そうではなく、表示がイタリア語になっているだけの通常のパーペチュアルカレンダーだ。よし、その調子で話についてきて欲しい。では、Ref.7147Gは今後さらに展開されるのだろうか? 確かなことは言えないが、そうなって欲しいと思う。こちらはRef.5237よりわずかに小さく、少し厚みがあるが、スポーティさを抑えた数字インデックスを採用すれば、厚さも同程度にできるかもしれない。価格は2239万円(税込)だ。
あの織り目のようなテクスチャーがパーペチュアルカレンダーに採用されるとは思ってもみなかった。ましてや、鮮やかなグリーンダイヤルに夜光仕上げの数字インデックスと針を組み合わせるとは。近くで見ると、ダイヤルには豊かな奥行きがあり、色がよく映えるため、印象的でないとは言えないだろう(しかしさまざまな意味で、より印象的なのはRef.7047Gのほうだ)。ミニッツリピーター搭載モデルは5本限定で、パーペチュアルカレンダー搭載の新リファレンスは100本が製造される。イタリアらしさを最もストレートに表現しているのは、この3本かもしれない。一方、もっと繊細な表現を楽しみたい方は、美しい25本の“希少なハンドクラフトコレクション”をすべて紹介する、近日公開のフォトレポートをお待ちいただきたい。
ウォッチアート・™グランド・エキシビションで発表された新しいアクアノート
さて、アクアノートが再びウォッチアート・™グランド・エキシビションのラインナップに加わった。しかもステンレススティール製だ。新作Ref.5167Aの登場は、私のように5164Aを愛し、その復活を切望している人間にとっては、傷口に塩を塗られるような話かもしれない。しかし、この種の展覧会でアクアノートの限定モデルが発表されるのは今回が初めてではない。実際、現代のアクアノートのなかでも特にコレクター人気の高いモデルのひとつが、シンガポールで開催された同イベントに合わせて500本限定で製造されたことがある。ダイヤルコード「-012」を持つもうひとつの5167Aだ。つまり、ほかの限定モデルと同様、今回の新作も主な変更点は文字盤の色と、ムーブメントの一部を公式ロゴで覆ったディスプレイケースバックということになる。
新作では、ブルーからブラックへと移り変わるフュメ仕上げを施したダイヤルに、赤い分目盛りとセンターセコンド針を組み合わされている。ストラップはダイヤルに合わせたミッドナイトブルーのラバー製だ。しかし今回はさらに希少性が高い。総製造本数はわずか250本。カーキダイヤルを採用した希少なRef.5167A-010を除けば、これまでに登場したなかでも特に希少なバリエーションのひとつとなる。
パテック フィリップ アクアノート 5167A-014: 直径40.8mm×厚さ8.10mmのSS製ケースで、30mの防水性能を備えている。ブルーからブラックへと変化するフュメ仕上げが施されたダイヤルには、赤のアクセントが配されている。時・分・秒表示と日付表示を備え、自動巻きムーブメント CAl.26-330 S Cを搭載。パワーリザーブは45時間。サイズ調整可能なミッドナイトブルーのラバーストラップに、SS製のフォールディングバックルを組み合わせる。価格は712万円(税込)。
パテック フィリップ ウォッチアート・™グランド・エキシビションの詳細、展示時計、および参加方法については、ウェブサイトをご覧ください。
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