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神の手を持つと称えられた時計師ミシェル・パルミジャーニ氏の修復工房を前身とするパルミジャーニ・フルリエは、伝統的なスイス時計の技術や装飾技法を継承し、多くの時計愛好家や収集家に支持されてきた。そしてその第2章とも言える新たな物語を綴るのは、2021年にCEOに就任したグイド・テレーニ氏だ。
ブランドの真髄を広く知らしめ、その価値を未来へと繋げるために。そのシンボルとなるのが、トンダ PFコレクションである。インフォーマルでエフォートレスなスタイルはデイリーユースに応え、日々使うことで愛着が増し、そして秘めた魅力を発見することができる。そして近年は、二重時針のGMTや二重分針によるカウントダウンといった独創的な機構を搭載するモデルを発表するなど新しい動きも見せる。取材はCEO就任を振り返ることから始まった。
ファンタスティックな業績を支えたトンダ PFコレクション
柴田 充(以下、柴田)
CEOに就任された2021年、世界はコロナ禍にあり、エンドユーザーの嗜好の変化や軌道修正も必要だったと思います。それから3年が経ち、その間どのようにビジネスを考え、ブランド運営をしてきたかを教えてください。
グイド・テレーニ氏(以下、テレーニ)
まずこの3年についてお話をしましょう。この3年間でパルミジャーニ・フルリエはファンタスティックと言えるほどの記録的な実績を残すことができました。2021年以前と比べてブランドのビジネス規模は5倍になり、昨年は過去最高の売り上げを達成しました。特に2021年に発表したトンダ PFがブランドを牽引するコレクションとしてポジションを獲得したことが大きいですね。
私が就任したときはすでにコロナ禍だったので、特別に何かが大きく変わったということはありませんでした。あくまでもこのブランドをどのように洗練させていくか。それに関するプランを修正することなく進めてきました。具体的にはコニサーにより強くアピールしていくことであり、細部へのこだわりをいかに伝えていくか。それについて戦略を練ってきましたが、日本のマーケットはとても好意的で、新しいブランドコンセプトもいち早く受け入れてくれました。顧客イメージとのすり合わせもうまく進み、ブランドが目指しているインディペンデントブランドの姿と、ラグジュアリーでトラディショナルでありながらも、イノベーティブであるというイメージが上手く結びついたことが、成功につながっていると思っています。
柴田
初監修したコレクションのトンダ PFは、カテゴリーとしてはラグジュアリースポーツウォッチに属すると思います。どのような考えからトンダ PFを生み出したのか、そしてこのスポーティなモデルの新しいラグジュアリー、価値とはどういうものでしょうか。
テレーニ
ラグジュアリースポーツというよりも、スポーツシックという言い方をしましょうか。こうしたカテゴリーは1960年代、70年代からすでに存在していましたし、2000年以降、私がこの時計業界に就いてからも非常に重要なセグメントでした。機能もさることながら、それ以上に使いやすくシーンを選ばないスタイルが広く受け入れられたのです。ただ私はあくまでもエレガントであることを忘れてはならないと思っています。個性を仰々しく訴えるのではなく、機能も控えめに表現することが非常に重要で、トンダ PFも時計製造の伝統や高い技術力、仕上げの細やかさや丁寧さをしっかり作り込んだ上で、デザインがピュアであることを打ち出しました。ラトラパンテやクロノグラフという複雑機構もありますが、いずれも機能だけを派手に表現しないことを心がけています。
柴田
現在の主流であるラグジュアリースポーツに対し、小径化やドレススタイルといったカウンタートレンドも表れています。ここ数年言われてきた(時計愛好家の)世代交代が現実化するなか、ブランドの世界観も含めてどうアジャストしていくのでしょう。
テレーニ
ここ数年で増えているパルミジャーニの新たな顧客層の30代の方たちには、おもしろいと感じ興味を持ってもらえるかが大きなテーマと考えています。とはいえ時計製造ではまったく新しい機構を発明することは容易ではなく、私たちもそうした商品開発は目指していません。創設者のミシェル・パルミジャーニは時計に対して非常に深い知識と、洗練された伝統技術を持っています。それを大事にしつつ、過去をただ振り返るのではなく、いかに革新的であるかという考え方、捉え方をしなければいけないのです。その点、小さいブランドというのは新しいことに取り組んだり、方向転換するにも大きな裁量があります。私たちのブランド規模にはその自由があり、フレキシブルに動けるメリットがあります。
時計をつけるということは、それがスポーティであれエレガントであれ、それ自体がライフスタイルを身につけるということです。だからこそクラシックではなく、あくまでも同時代のコンテンポラリーとして表現したいと思います。
私はよくプライベートラグジュアリーと表現するのですが、周囲にひけらかすのではなく、自身が満足を得ることこそが非常に大事な要素なのだと考えています。
– グイド・テレーニ氏
柴田
伝統的な時計製造技術の裏付けがあり、充実した生産ラインをそろえ、ファイナンスもしっかりしている。まさに盤石の態勢のなかで、あらためてパルジャーニ・フルリエにおいて最も大切なコアバリューはどんなところにあると思いますか。
テレーニ
それにはふたつのポイントがあります。ひとつ目は、とても深く高い技術力とそれがもたらす文化です。ミシェルはもともと時計の修復から始めましたが、そこで得た知識や技術、仕上げはより洗練され、審美性にもつながっています。もうひとつがアンダーステートメントで、表現が控えめということです。これもミシェルが持っている信念のひとつで、時計修復を通して培った控えめな価値観がコレクションに息づいています。修復の仕事では作者に敬意を持ち、決して⾃分の作⾵が前に出てはいけませんから。今後もこれを継続し、より浸透させていきたいと思っています。私はよくプライベートラグジュアリーと表現するのですが、周囲にひけらかすのではなく、自身が満足を得ることこそが非常に大事な要素なのだと考えています。
柴田
美しい仕上げや細やかさ、エレガントさは感覚に訴えるものでもあり、ともすると理解しづらいところもあると思います。あまねくユーザー層にその価値をアピールするには何が必要で、どういうことが大切でしょうか。
テレーニ
1996年のブランド創設以降、コレクションはミニマムでピュアということがデザインのエッセンシャルな要素だと思っています。長く使っていても新鮮で飽きない。確かにひと目では伝わりにくい部分もあるかもしれません。ただ時計の本質を知るには手に取り、どう感じるかが最も大切です。その点、トンダ PFのブレスレットはとてもフレキシブルな作りで、手首に乗せてもらうとその魅力をすぐ感じていただけるでしょう。私たちの顧客層というのは、マジョリティではないし、私たち自身もメインストリームのブランドではないと考えています。例えばディナーのテーブルに着いたときに、みんなが同じような時計をしていても、⾃⾝の審美眼で時計を選ぶ⼈がターゲットなのです。
柴田
不安定な世界情勢や経済の動きを見ると、ラグジュアリーマーケットは今後縮小していくという予想もあると思います。それがブランドにどのような影響を与え、そのなかでどのような展開を考えられていますか。
テレーニ
もちろん高級時計はラグジュアリーのカテゴリーに入りますが、一般的なラグジュアリーアイテムとは厳密には別物だと考えています。長期的に見たときにその技術や表現、価値への興味は失われませんし、ブランドの不変性もあります。ただ直近では、コロナ後に急な売買やリセールバリューがバブル的に盛り上がったような動きは確実にスローダウンしていくと思います。こうした状況は、ある顧客層はとても影響を受けていますが、私たちの顧客は時計を投資目的ではなく、喜びとして手にしてくださっているのであまり関係ないのです。そういった意味で今減少しているマーケットは私たちに直接影響はしていません。
時計業界としてもスイスからの輸出ベースは60%伸び、依然として力強いと言えます。そういった状況からも、リテーラーやバイヤー、マーケットが今後を占うということで、今回のウォッチズ&ワンダーズでの新作を多分心待ちにしているのだと思います。そしてそれ以上に時計愛好家の高まる期待にぜひ私たちも応えたいと願っています。
適切なパートナーと適切な場所で、適切な関係を築くことが重要
今後のマーケット展望を訊ねると、多くの可能性があり、ディストリビューションの余地があると彼は答えた。直近では韓国で新たなパートナーと契約を締結し、リローンチを成功させた。ドバイやサウジアラビア、ロンドンでもブティックを展開するという。3月27日には日本初の直営店が伊勢丹 新宿店にオープンした。大切なことは、適切なパートナーと適切な場所でしっかりとしたパートナーシップを結んでいくことだという。そうした関係性こそがブランドを成功に導くものであり、日本での成功はその証だと語る。また国内の取扱店舗は10店舗を数え、互いにサポートする強い関係を築いているが、前述の理由からその数を無暗に増やすことは考えていないそうだ。独立系ブランドとして独自の道を歩むパルミジャーニ・フルリエは、時計を多様性へと導き、魅力の可能性をさらに広げる。一人ひとりの個性が異なるように、パルミジャーニ・フルリエが刻み続ける時もほかとはまた違うということなのだ。
その他、時計の詳細はパルミジャーニ・フルリエのウェブサイトまで。