今年も夏が到来し、フィレンツェで2年に1度開催されるメンズファッションの見本市、第106回ピッティ・ウオモが開催された。トスカーナの猛暑のなか、袖をまくった1万5000人ほどの参加者がストリートに繰り出してメンズスタイルのメッカとして知られるこのイベントを楽しんでいた。素晴らしい腕時計が数多く見られたことも、特筆に値する。
今回はこれまでのどのシーズンよりも、その趣向に大きな変化が見られた。従来のNATOストラップに代わってエキゾチックでオーダーメイドのレザーストラップが主流となり、ジェンタ風のデザインとタンクケースのMIXが人気の時計フォーマットとして浮上してきた。従来のピッティ・ウオモではヴィンテージのロレックスが長年にわたって王座を守り続けてきたが、今回は初めて新作(特にオイスターパーペチュアルに見られた鮮やかな文字盤の新作)がその座を揺るがした。特にグリーン文字盤のものは新品、ヴィンテージを問わず(ケイン・クロージャーのチームに聞けばわかるだろう)、非常に人気が高いようだった。
しかし最新のファッションのなかで腕時計は何をもの語っているのだろうか? ファッションでは10年ぶりにフォーマルスタイルの復権が見られる。これはフィレンツェの暑さを考えると驚きだ。ピッティ・ウオモはかねてよりスーツスタイルで知られてきたが、今またスーツが中心舞台に返り咲いている。しかし今回は控えめなトーンの色調、例えば暖かいグレーやほぼブラックのような色で、余分なアクセサリーを省いたスタイルが主流となっている……もちろん素晴らしい腕時計の数々を除いては。
時には、写真を撮る際に時計そのものではなく「この人はどんな時計をつけるだろうか?」ということが気になったりする。この場合、パウロ(Paulo @P.paolodevivo)にはブルガリ オクト フィニッシモのような力強さと控えめさを兼ね備えた時計が似合うと思った。
カフブレスレットのヴィンテージ ロレックス サブマリーナー。
イタリア人はアメリカンカルチャーに対する才覚と確かな情熱を持っており、その点で本場のアメリカ人をしばしば凌駕する。これがその好例だ。
非常に貴重なパテック フィリップ Ref.3521を持つアラン・シー(Alan See @thearmouryhk)。
ふたりの冒険者の肖像(下に示す、もうふたりも)。ピッティ・ウオモは時計においても服装においても、スタイリッシュな人々がクラシックを再解釈しようとする素晴らしい機会である。
ロレックス エクスプローラーのペア。
ヴィンテージ時計愛好家として知られるアレッサンドロ・スクアルツィ氏(Alessandro Squarzi @alessandrosquarzi、右)とスコット・シューマン氏(Scott Schuman @thesartorialist、左)。
ロブ・レポートのポール・クラウトン(Paul Craughton)だ。
ポール所有のヴィンテージ ヴァシュロン・コンスタンタン。
ピアース・ブロスナン(Pierce Brosnan)演じるボンドが着用していたオメガのシーマスター。
マックスは、彼が幼いころに父親が使っていたこの時計が欲しかったという。
@bryclandscoのイーサン。ヴィンテージ時計コレクションをもとにしたスタイルの構築方法を知りたいなら、デザイナーのイーサン・ニュートン(Ethan Newton)を参考にすれば間違いない。
イーサンのヴィンテージ ロレックス サブマリーナー。
フェデリコ・カルッチ(Federico Carlucci @federico_hunter_carlucci)はヴィンテージコレクター兼ディーラー。服装と同様、時計にも正しいプロポーションがあり、当然誰にも自分に合ったスタイルというものがある。
巨大なパネライ ルミノールを見事につけこなすフェデリコ。
@bryclandscoのケンジは、美しいロレックス オイスタークロノグラフ Ref.3525をつけていた。
ケンジはいつもヴィンテージスタイル全般に対してある種のシックさを添えてくれる。
@nomanwalksaloneのグレッグ・ラルーシュ(Greg Lalouche)。
グレッグ・ラルーシュはヴィンテージのロレックス サブマリーナーをタンカラーのNATOストラップにつけていた。
タンクスタイルの時計なら、それがなんであれ素晴らしいというのが私の主張だ。
@marcotaddeiofficialのマルコ。
マルコは手首にジェラルド・チャールズを巻いていた。
アレッサンドロ・ピロウニス(Alessandro Pirounis @pirounis.Official)。
アレッサンドロは母親のカルティエ タンクを身につけている。
ジョナサン(Jonathan @cainclothiers)は、1978年に祖父から譲り受けた鮮やかなグリーン文字盤のフィンエアー オメガを愛用している。彼はこの時計を2度修復して毎日着用しており、最近ではABP製の特注クロコダイルストラップを追加した。
ケイン・クロージャー(@cainclothiers)のジョナサン。
この夏、私がもっとも気に入った組み合わせかもしれない。クラシックなカルティエのタンクに、一風変わったスーツをコーディネート。
@hespokestyleのブライアン(Brian)。
ブライアンが身につけているのは、結婚記念に妻から贈られたカルティエ タンク アメリカンの100周年記念モデル。
マイケル・アンドリュース・ビスポーク (@michaelandrewsbespoke)のコリー・シルヴェスター(Cory Sylvester)は、仕事の記念日を祝って贈られたツートンカラーのロレックス サブマリーナーと一緒に。
スティーブ・カルダー(Steve Calder @informale_)は、オメガのスピードマスターでシンプルな夏のスタイルをスマートに仕上げている。
ウォーリン(Worlin @caineclothiers)は、フィンランドで過ごすサマーシーズンに向けて、小さめのサイズで珍しい文字盤色の新作ロレックス オイスター パーペチュアルを選んだ。
@caineclothiers のウォーリン。
モーリス・ド・モーリアックの特注品で、ケースはブロンズ製。
オットー(Otto @caineclothiers)は、真面目なスーツにステンレススティールの腕時計を合わせている。クラシックには理由があってそうなっていることを思い出させてくれる。
オットーとクラシックなロレックス エクスプローラー。
このロレックス デイトジャストの鋭くカットされたベゼルと、シアサッカーのスーツ、ニットのオープンシャツの繊細な質感の対比が素晴らしい。