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春の陽気を感じはじめると、私はまるで多重人格のように時計の趣味が豹変する。これまでのネオヴィンテージや小径ケースへの愛着いったん脇に置かれ、気軽で楽しく、そして外でのアクティビティにも付き合ってくれるような時計を求めはじめるのだ。たとえばグラベルバイクでのトレーニング中や、湖に飛び込む瞬間に寄り添ってくれる、非接続型の頼れる相棒としてなど。楽しい腕時計はツールウォッチ並みのタフさから、時刻も伝えるポップアートのようなモデルまで、品質やスタイルを犠牲にすることなく適正な価格で手に入る。夏に向けたインスピレーションが欲しいなら、次のリストをぜひチェックして欲しい。ビーチでの1日、湖畔の週末、あるいは陽だまりの帰り道にもぴったりなセレクションを紹介する。
スウォッチ スクーバクア
バイオセラミック製の44mm径スウォッチ、スクーバクアはその大振りなサイズ感も相まって、価格以上の満足感をもたらしてくれる。今季は新たに4色の夏らしいカラーバリエーションが登場。雰囲気はどこか懐かしくもシンプルで、オリジナルスウォッチに通じる親しみやすく透明感のあるサマーピースである。一見するとおもちゃのような愛嬌を持ちながらも、水泳やシュノーケリングにも対応する本格的な性能を備えている点が見逃せない。ベゼルには夜光付きの15分トラックを備え、100mの防水性能を誇る。ラバーストラップは安心感のある爪のようなスウォッチ独自のラグ構造でケースに接続されており、ケースからストラップにかけてはツートーンのフレッシュなデザインが統一されている。10時位置に配置されたリューズも使い勝手を考慮したエルゴノミックな設計だ。
スクーバクアはその名前以上にファンキーなスウォッチであり、厚さ15.4mmのケースながらも価格は非常にお手ごろ。予算にやさしい点も大きな魅力だ。手首での存在感を控えめにしたいならブラック シー ネトルがうってつけだが、私のおすすめは90年代的なフラッシュ感をためらいなく放つオーレリア・オーリタバージョン。クラゲにちなんだその名のとおり、3色の針が遊び心を加えてくれる。
価格はラバーストラップ仕様で2万2550円(税込)。詳細はスウォッチ公式サイトから。
トゥセノー シェルバック V2
スウェーデン発のトゥセノー(Tusenö)は、ツールウォッチという国際言語を巧みに操るブランドである。一見すると、ケースデザインにはセイコーの62MASリデザインをほうふつとさせる要素があり、最近の小径化トレンドのなかであえて40mmというサイズを貫くダイバーズウォッチだ。だが、シェルバックは単なる懐古趣味にとどまらない、揺るぎないモダニティを宿しており、ルミノバの発光性能も一級品である。実際、手首につけて試したことがあり、その精密なつくり込み、すっきりとしたモダンなライン、そして驚くほどのルミナスに太鼓判を押したい。なかでも印象的なのは、6時位置のスマイリーフェイスのロゴのような意外性あるディテール。タイポグラフィにこだわる人には少々引っかかるかもしれないが、時針がゆっくりとその上を通過する際、ロゴの文字が時針先端の円形フレームにぴたりと収まる様子は思わず見入ってしまう精緻な遊び心だ。
こうした小さなことが違いを生み、鮮やかなサンドイッチダイヤルや堅牢なブレスレットデザインもその一因である。この分野で完成度を突き詰められるブランドは意外と少ない。とりわけテーパードのフラットリンクデザインは、どこかタグ・ホイヤーを想起させる仕上がりで、ずっしりとした存在感を放つ。全面サテン仕上げでたわみは一切なく、ダイバーズクラスプには3段階で調整可能なスライド式マイクロアジャスト機構を搭載。さらに表面には1200ビッカースの硬化処理が施されており、ヘアラインの傷を効果的に防いでくれる。仮にこれが完全にアジア製の時計であったとしても、私はシェルバック V2を高く評価したと思う。だが実際にはスイス製であり、ムーブメントにはセリタ製SW200のエラボレグレードを採用している。これが1000ドル(日本円で約14万円)を大きく下回る価格で手に入るのだから、その価値は疑いようがない。
価格はステンレススティール製ブレスレット仕様で749ドル(日本円で約11万円)。詳細はトゥセノー公式サイトから。
タグ・ホイヤー フォーミュラ1 ソーラーグラフ
私は、初代フォーミュラ1コレクションのカタログを所有していた世代であり、それが時計への情熱に火をつけた大きなきっかけであった。多くの人にとっても、あのモデルはスイス時計への入門編として機能し、気がつけば目まぐるしく回る時計収集のメリーゴーラウンドへと誘われることになった。私の場合、その回転は今も止まることがない。そして今回、タグ・ホイヤーが投入した最新のソーラーグラフバージョンは、その原点を鮮やかに呼び起こしてくれるモデルだった。これはブランドにとっても実に堅実な一手である。
初代フォーミュラ1を覚えている世代であれば、クォーツのツールウォッチとしてはやや高価に感じるかもしれない。だが実際に手に取ってそのクオリティを目の当たりにすれば、38mmのこのスポーツウォッチが、その価格に見合うものであることはすぐに分かるはずだ。さらにすべてのモデルが、太陽光で充電されるソーラー駆動式。外に出て、ついでに日焼けも楽しもう。
ブレスレット仕様で価格は28万6000円(税込)。詳細はタグ・ホイヤー公式サイトから。
ドクサ サブ 200T アクアマリン
ヴィンテージテイストのダイバーズウォッチへの熱が冷めつつある、という声も聞かれるが、ドクサ(Doxa)はその流れに真っ向から反論している。私自身、かつてサブ 300を所有していたことがあり、今でも手放したことを後悔している。そんななかサブ 200Tの再設計されたケースを目にして、その思いはいっそう強まった。このモデルは、私の夏のウィッシュリストに確実に加わる1本だ。ドクサならではのブランドDNAと、(ジャック=イヴ・)クストーの伝統をしっかりと受け継ぎつつ、それをコンパクトな39mmサイズに凝縮した魅力的な仕上がりとなっている。
200mの防水性能を、厚さわずか10.7mmというスリムなケースに収めたこのモデルは、日常使いに理想的なスポーツウォッチといえる。ムーブメントには信頼性の高いスイス製のセリタ SW200-1を搭載しており、無駄のない堅実な構成が魅力だ。私が夏の1本として断然おすすめしたいのは、アクアマリンのモデルに見る涼やかなターコイズの輝き。このカラーはヴィンテージ感あふれるデザインにモダンなコントラストを添えており、実に見事なバランスを実現している。
装着感に優れたFKMラバーストラップ(ダイヤルと同色)仕様で価格は1550ドル(日本円で約22万円)。詳細はドクサ公式サイトから。
マラソン MSAR アークティック エディション 36mm
近年、多くのアウトドア愛好家たちはGPS機能を備えたスマートウォッチを愛用しているが、私にとってマラソン(Marathon) MSAR アークティック エディション 36mmはそうした流行への、堅牢かつ小型のアナログな解決策のような存在である。マラソンファミリーのなかで最小サイズとなるこのモデルは、36mmのSSケースに収められた堅牢な構造を持ち、13mmという安心感ある厚みと18mm幅のソフトラバーストラップが装着感を高めている。その小ささに反して、タフさと存在感をしっかり兼ね備えたモデルである。
MSAR アークティック 36mmの自動巻きモデルは、この冒険譚に登場するコール・ペニントンが実際に着用していた1本である。
この時計は、まさにツールという言葉の真の意味を体現しており、300m防水を誇るダイバーズスペックの堅牢さと、フィールドウォッチを思わせる24時間表示付きのクリアなホワイトダイヤルを融合させた、魅力的な時計だ。60分スケールのベゼルも操作感に優れ、タイミング計測に重宝する。ムーブメントにはETA製ハイトルクFØ6クォーツを搭載。年差±10秒という高精度と、まさに防弾級の信頼性を誇る。またトリチウムガス入りのインデックスは常時発光するため、私が計画している亜寒帯のキャンプ地でも大いに役立つはずだ。
ラバーストラップ仕様で価格は900ドル(日本円で約13万円)。詳細はマラソン公式サイトから。
ファーラー アーバー リッサム
暑さが押し寄せるこれからの季節、気分までゆったりと緩やかになってくる日もある。そんなときにぴったりなのが、英国ブランドファーラー(Farer)が提案する新作リッサム コレクションだ。38mmというサイズ感も手伝い、リラックスしたエレガンスが際立つ。なかでもアーバー リッサムはラズベリーレッドのダイヤルが印象的で、ヴィンテージ感を漂わせつつもそこにはモダンな解釈がしっかり息づいている。アプライドのローマ数字インデックスはすっきりとしたデザインで視認性にも優れており、スーパールミノバとセラミックを融合させたLumicast®素材が暗所での視認性をさらに高めている点も見逃せない。クラシカルと現代性が絶妙に交差するこのモデルは、暑い季節のゆるやかな一日を彩るのに最適である。
テクスチャーのあるダイヤルの上でオレンジのスモールセコンド針が鮮やかに際立ち、さらに同系色のラズベリーカラーのスエードストラップがこのモデルの魅力を決定づけている。マットブラックのモノクロなツールウォッチを愛する人にとっては思わず眉をひそめたくなるかもしれない。だがそれこそが新しい季節を楽しむための最良の選択肢なのかもしれない。アーバー リッサムはスイス製で、ムーブメントにはラ・ジュー・ペレ製の手巻きD100ムーブメントを搭載。ソワニエグレード(Soigné-grade)で4姿勢調整済み、青焼きビスやブランド独自の装飾が施されるなど、仕上げにも抜かりがない。洗練されたデザインとスリムな装着感を兼ね備えたリッサム コレクションは、カラーで笑顔を誘い、価格以上の価値を提供してくれる。
価格はストラップの種類にかかわらず1295ドル(日本円で約19万円)。詳細はファーラー公式サイトから。
ミスター・ジョーンズ カオシファイ
夏のある日には、時間のことなど思い出したくもない。そんな気分になることがある。だからこそ私は読みやすさを少し犠牲にしてでも、ミスター・ジョーンズ(Mr Jones)の芸術的な腕時計を選びたくなるのだ。ロンドンのコヴェント・ガーデンに拠点を構えるこのブランドは、アーティストやイラストレーターに依頼し、SS製のケースを表現のキャンバスへと変貌させている。その一例が、イラストレーターMr. Philによってデザインされたカオシファイ メカニカル(Khaosify Mechanical)。40mmのこのモデルは伝統的な針を排した設計で、想像力の表現そのものといえる。時刻の読み取りもユニークで、白い雲の目のキャラクターが時を、白い矢印状の生き物が分を示す仕組みになっている。まさに時を忘れて楽しむための、アートピースとしての腕時計である。
こうしたキャラクターたちは、薄い透明ディスクに多層プリントで描かれており、なかにはムーブメント本体、セリタ SW200にも大胆にプリントされたものが存在する。ミスター・ジョーンズウォッチと同様、カオシファイは時計づくりとデザインにおけるアートを、肩の力を抜いた楽しい視点から捉えたものである。
レザーストラップ仕様で価格は695ドル(日本円で約10万円)。詳細はミスター・ジョーンズ公式サイトから。
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