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クイック解説
ジェラルド ジェンタが時計界に与えた影響はただならぬものがある。彼はオーデマ ピゲ ロイヤル オークやパテック フィリップ ノーチラスのデザインを手がけたことで有名だが、それだけではない。1969年に自身の名を冠したレーベルを立ち上げ、さまざまなデザインを探求した。その中のひとつがバイレトロ レイアウトを用いて2020年に復活したアリーナ バイ レトロだ。この時計は、2019年に発売された「ジェラルド ジェンタ 50周年記念モデル」に続くモデルである。どちらも、アリーナケース(実際のアリーナに似ていることから名付けられた)を採用しており、12時位置にジャンピングアワーウィンドウ、また文字盤の上半分に沿ってレトログラードミニッツがある。そして、下半分にはレトログラードデイト表示が配される。60分ごとに分針がゼロにスナップバックし、それと同時にアワーカウンターが回転し、31日ごとに日付が戻る。これは全て、内部に搭載されたCal.BVL 300による。
初めてジェンタがレトログラードミニッツとジャンピングアワーカウンターを組み合わせたのは1996年のことだった。それ以前にも、彼のレーベルではそれぞれの複雑機構を別々に搭載したものを作っていたが、一緒にしたものはなかった。最近は、スイスのル・サンティエにあるブルガリの工場で、ジャンピングアワーとレトログラードミニッツの両方を搭載したムーブメントを作っている。
2000年に、ブルガリはジェラルド ジェンタ社とそれに関連する全てのデザイン、特許、商標を取得。ジェンタのビジョンを尊重するために細心の注意を払っていて、彼のオリジナルのレーベルの下で製造されたバイレトロ・ウォッチの独特な美学の維持に徹している。ロゴはモダンなフォントにアップデートされたが、それ以外のデザインは90年代に作られたオリジナルの時計を忠実に再現している。
その名の通り、バイレトロはスポーティな印象を与える。チタンケースと、モダンスポーツカーのスピードメーターを彷彿とさせるダイヤルデザインがその象徴であろう。80年代半ばのポルシェ944には、視認性を最大限に高めるために、マットブラックの背景に鮮やかなイエローのトラックを配したメーターが装備されていたが、このアリーナ バイ レトログラード スポーツも同様の配色を用いている。ただ、ポルシェのゲージが比較的平凡に見えるのに対し、ジェンタ・ウォッチはスケルトンの針とモダンなサンセリフフォントの組み合わせで、スタイリッシュな印象だ。またトランスパレントバックにより、BVL300をじっくりと鑑賞することができる。シースルーのケースバックは確かに一般的だが、バイ レトロ スポーツのテーマ性を考えると、これは自動車メーカーがガラス越しにエンジンを見せるようなものじゃないか。例えば、フェラーリやシボレー・コルベットなどをディスプレーするときだ。
アリーナケース自体にも見逃せないポイントがたくさんある。ケースデザインは、そのスレンダーな外観とは裏腹に、もともとは遊び心のあるディズニーキャラクターのウォッチに使われていたものだった(ジェンタの代表作とも言える)。形状は、古代ローマにおいて、ルディと呼ばれるグラディエーターのショーを開催するために使用されていた、構造物からインスパイアされている。リューズのデザインはジェンタのシグネチャーであり、このスポーティなルックスにも関わらず、アリーナケースとバイレトロの文字盤レイアウトから、彼のデザインであることがすぐに分かる。
ファースト・インプレッション
アリーナ バイレトログラード スポーツの発表は、ブルガリが古いジェンタのデザインをもとにイノベーションを試みたことを証明するわけで、非常にエキサイティングだ。ここで重要な点は、ブルガリがジェンタ社を買収したのは、単に有名な時計デザイナーの名前を利用するためだけではなかったということだ。2000年の買収に伴い、ジェンタ社スタッフと彼らの経験、レーベルに備わる知的財産、そして同社に関連する全ての専門知識が伝承されたのだ。つまり、近頃騒がれているブルガリ オクト フィニッシモ・ファミリーは、この買収なしには実現できなかったというわけである。
このバイレトロは、デザインをスマートでスポーティにまとめていて、第一印象がとても良い。レトログラード(具体的に言えば、ジェンタ以外のバイレトロの複雑機構)は通常より渋いデザインの時計に見られることが多いが、これはブルガリがジェンタデザインをいじることを恐れなかったことを示している。まさにジェンタ本人が望んだ試みであろう。
基本情報
ブランド: ジェラルド ジェンタ(Gerald Genta)
モデル: アリーナ バイ レトロ スポーツ(Arena Bi-Retrograde Anthracite)
品番: SAP103448
直径: 43mm
厚さ: 12mm
ケース素材: チタン
文字盤色: ブラックとアンスラサイトのダイアル、イエローのインデックス及び針
インデックス: ミニッツトラック (12時位置にジャンピングアワーカウンター)
夜光: 無し
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: マットブラックのアリゲーター製ストラップ
ムーブメント情報
キャリバー: BVL 300 バイレトロ
機能: ジャンピングアワー、レトログラード表示の分(120°)と日付け(180°)
直径: 26.2mm
厚さ: 6.1mm
パワーリザーブ: 42時間
巻き上げ方式: 自動巻き、 両方向巻き上げのローター
振動数: 2万8800振動/時
価格・発売時期
価格: 未定
発売時期: 2020年12月
詳細は、ブルガリ公式サイトへ。