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Hands-On ヤヌスのダイバーズウォッチ、ディティス ダイバーをハンズオン

ギリシャに着想を得たマイクロブランドが贈る、ダイバーズウォッチ三部作の最終モデル。

ジェイソン・ヒートン(Jason Heaton)が、当時新興ブランドだったヤヌス初のダイバーズウォッチ、ヤヌス アビソスをレビューしてから6年が経過した。ヤヌスはギリシャ出身の創業者、ヤコブ・ハツィディミトリウ(Jacob Hatzidimitriou)氏のルーツを、親しみやすいダイバーズウォッチのシルエットに融合させたモデルだった。今年、ヤヌスはダイバーズウォッチ トリロジーの最後を飾る3番目のモデルとして、これまでで最もコンパクトなケースを備えた、ディティスを発表した。

 ディティスはヤヌス ミハニコスの第2世代のデザインを受け継ぎ、より装着しやすい直径41mmへとダウンサイジングしたモデルだ。サンドブラスト仕上げのグレード2チタンを使用したディティスは、厚さ14.68mmのずっしりとしたプロポーションを誇る。しかし短く設計されたラグと49mmのラグ・トゥ・ラグにより、全体のバランスは制御されている。デザイン面では、ブルータリズムを感じさせる無骨なシルエットと、マーキングのない逆回転防止“ダイブベゼル”がミニマルな美学を維持しつつ、多くの曲線や傾斜面、直線的なショートラグがその印象を和らげている。ベゼルの表面に施されたざらつきのある質感は装飾的なものだが、縁に施された刻み加工により、しっかりとしたグリップ感が得られる。

Ianos Dytis White Dial Wristshot
Ianos White Case Side
Ianos White Dial subdial macro

 ダイヤルはブルーとホワイトの2色展開で立体的な大型夜光ブロックが視認性を高めている。これらの夜光要素は随所にあしらわれており、少し傾斜がかった見返しリング上にあるミニッツインデックスも同様の素材だ。マットなダイヤルは美しい陰影効果を生み出し、強い光の下では各ブロックの周囲に影が落ちる。同ブランドの過去2作のようなギリシャ的なモチーフを期待しているなら、今回もそれはダイヤルで存分に発揮されている。このふたつのダイヤルオプションに選ばれたブルーとホワイトの色はギリシャ国旗の色であるのが明白だし、12時位置のマーカーにはギリシャ国旗のラインを表す4本の水平線があしらわれている。そのほかのインデックスの形状は、私のような人間には単に視認性のためにデザインされたように見えるが、実際にはギリシャの潜水石、いわゆるダイビング・ストーンから着想を得ている。なお文字盤下部のサインは、ギリシャ語で“Dytis”と綴られている。そして最後に、このモデルの最も特徴的なモチーフは、スモールセコンドの役割を担う“イービルアイ”ディスクである。このスモールセコンドは実用性という点ではあまり機能的とは言えず、ランニングインジケーターと呼ぶのが妥当だろう。

 文字盤の大胆な要素が視覚的に前面に出ているのはいいことだが、私はアビソスやミハニコスに見られる秒表示のほうが好きだ。これまでのインジケーターデザインはよりインダストリアルで抽象的な印象があり、ツールウォッチとしてのルーツを思い起こさせる造形だったが、この目のデザインはややグラフィック寄りで、意図がやや露骨に感じられる。とはいえ、3作目でまったく異なるアプローチに挑戦したブランドを責めるつもりはない。むしろ、よりウェアラブルなこのケースサイズに過去モデルの要素をいくつか組み合わせたデザインが見られたら、さらに魅力的だっただろう。また、ブルーダイヤルでは特に問題なかったものの、ホワイトダイヤルではコントラストの効いたアウトラインプリントが施されていないため、肉眼ではアプライドインデックスと周囲のブルーのプリントにわずかなズレがあるように見えることがあった。遠目には気にならないが、完璧さを追求する人にとっては特に1850スイスフラン(日本円で約34万円)という価格を考えると気になるポイントかもしれない。

Ianos Blue Dial Macro
Ianos Blue Dial wristshot
Ianos Dytis Blue Dial Layflat on table

 ムーブメントはこのセグメントのマイクロブランドウォッチとしてはごく標準的なもので、自動巻きのセリタSW360が搭載されている。パワーリザーブは42時間、振動数は2万8800振動/時と、このキャリバーに期待されるスペックを備えており、イービルアイディスクを用いたスモールセコンドのレイアウトを特徴としている。シースルーバック仕様ではないが、それは当然だろう。というのもヤヌスの時計において最も特徴的なデザイン要素は裏蓋にあり、具体的には裏蓋に組み込まれたストラップチャンネル(ストラップを裏蓋に沿わせて収納する溝)の存在がそれにあたる。ケース厚が14.68mmと厚めであるにもかかわらず、このストラップチャンネルがあるため、1本挿しのラバーストラップをとおしても装着時の厚みが増すことはない。つまりケースは手首にとても近い位置で装着され、私の手首では同じような仕様のほかのダイバーズウォッチよりも小さく感じられた。

 ダイヤルについていくつか気になる点はあるものの、この時計の装着感についてはまったく非の打ちどころがない。ラバーストラップは驚くほど柔らかく、ツーピースの構により手首にぴたりと密着するつけ心地を実現している。こうした点で、ヤヌスは依然として競合モデルより1歩先を行っている。

Ianos Buckle
Two Ianos Dytis laying
Layflat side shot of white Dytis

 ヤヌス ディティスは、ミニマルかつブルータリズム的なデザインのモデルが手ごろな価格で多数存在するという、非常に競争の激しい市場に参入している。しかし同ブランドはそのデザイン言語を堅持しており、このダイバーズウォッチシリーズの締めくくりとなる本作でシリーズとしては初めて、より装着しやすいプロファイルを実現した。今後のモデル展開にとっても好材料となるだろう。これからブランドがどのような方向に進むのか、そして次のフェーズでダイバーズウォッチブランドとしての現在のアイデンティティからいかにして脱却していくのか、非常に興味深いところである。

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