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価格に対して、人々がこれまで以上に敏感になっているように感じる。時計レビューの書き出しとしては少し変わっているかもしれないが、最近ずっと気になっていた。というのも、多くのコレクターから“最近の時計はどれも少し高すぎる”という声を聞くことが増えたからだ。関税や素材コストの問題、あるいは価格に関わらず人々が狂ったように買い漁った影響など理由は何であれ、今回のブライトリング スーパーオーシャン ヘリテージの刷新はまさに絶好のタイミングで、しかも納得感のある価格で登場したと感じている。そして40mmという、自分にとって理想的なサイズであることもうれしい。さらに言えば、このモデルはブライトリングのダイバーズウォッチのなかで最も汎用性の高い1本のように思える。
先月発表されたスーパーオーシャン ヘリテージの刷新では、44mmから36mmのダイバーズウォッチ、そして新たに42mmのクロノグラフまで幅広いバリエーションが用意された。これらのモデル(編注;42mmのクロノグラフを除く)は、今年発表された38mmケースのトップタイム B31に使われたブライトリング B31ムーブメントを搭載している。
前述のトップタイムで最も興味深かった点は、ブランドの持つカジュアルなクロノグラフというデザイン美学を持つモデルが、3針時計へと姿を変えたことかもしれない。しかしスーパーオーシャン ヘリテージにおいては、ちょうどいいサイズ感の40mmが新たに登場したこと、ちょうどいい価格の90万2000円(税込)を実現したことである。
時計が手元に届いてまず戸惑ったのは、40mmモデルの2本がグリーンとブルーなのか、それともグリーンとブラックなのか判別しにくかったことだ。というのも影のなかやサファイアクリスタル越しでは、ブラックのスーパーオーシャン ヘリテージのサンバーストダイヤルは反射防止コーティングの影響で青っぽく見え、そのせいでずっともやもやしていたのである。
ブラックはより汎用性の高い選択肢だが、42mmや36mmモデルにはブルーがあるのに40mmにブルーがないのは機会損失だと感じている。もちろん(ブルーの色味としては)、ケリー・スレーター限定モデルがあるが、(このモデルは)時計に詳しくない友人でさえロレックスの“パームダイヤル”デイトジャストを思わせると言うほど印象的なモデルだ。しかしその限定モデルが完売すれば、いずれベースモデルとしてブルーが追加されるのではないかと思っているが、たとえその予想が外れたとしても大きな問題ではない。
40mmのスーパーオーシャン ヘリテージのグリーンダイヤルモデルは、この2本のなかで勝者と言える存在だ。グリーンはほかの派手な色のように“見てくれ”と主張しすぎることもなく、セラミックベゼルはサンバーストダイヤルと比べるとかなり違って見える(やや黄味がかっているかもしれない)が、実際に手に取ってみるとあまり気にならなかった。
スーパーオーシャン ヘリテージがラインナップのなかでどの位置づけにあるかを知ってもらおうと、ブライトリングはほかにも新作モデルを2本送ってくれた。ひとつはB01を搭載した42mmのブルーのクロノグラフ、もうひとつはB31を搭載した44mmのダイバーズモデルだ。以下のリストショットを見てもらえれば、サイズ感を比較すると40mmモデルがいかに優れたバランスを持っているかがよくわかる。ただし、装着感についてはこのあと説明しよう。
44mmのB31搭載スーパーオーシャン ヘリテージ
40mmの小型モデル
サンバーストダイヤルには一長一短がある。見た目は素晴らしく、ポリッシュ仕上げのインデックスとプリントされたミニッツトラックが組み合わさることで、質感や光のコントラストが豊かに感じられる。ただし撮影は難しい。写真で実物の魅力を伝えきれないのは些細な問題かもしれないし自分の責任かもしれないが、触れておきたいポイントだ。反射する金属面は180°反対側のものを映すため、時計が影のほうを向いているとサンバーストの効果が薄れてしまうことに気づいた。直射光の下では本当に美しく見える。特にダイヤル上に配された立体的な“B”ロゴも気に入っている。
デイト表示については常に賛否が分かれるところだが、これはほぼ理想的な配置だろう。6時位置に配置されているため、ダイヤルの左右対称性を損なわない。プリントされた枠も視認性を高めており、必要なときにすぐ日付を確認できる。ただ、デイトディスクの色をダイヤルと合わせてくれたらもっとよかったと思う(とはいえ、放射仕上げのデイトディスクを作るのは簡単ではないだろうが)。それでもこのダイヤル自体はとても気に入っているため、こうした点は取るに足りない小さな気付きに過ぎない。
新しいB31キャリバーについては、ここで少し注目しておくべきだろう。というのも、このムーブメントは登場から3カ月が経ち、読者にとってはすでに目新しさが薄れつつあるが、実際に使ってその信頼性が証明されるほどの時間はまだ経っていないという微妙な時期にあるからだ。
とはいえ、今のところ気になる問題もないので高く評価していいだろう。自動巻きでパワーリザーブは約78時間、サイズは直径28.4mmで、厚さは4.8mmと比較的コンパクトで汎用性が高く、36mmから44mmのケースに収めてもダイヤル側から見て違和感はない。また、ムーブメントのおかげで時計全体の厚みも11.7mmと抑えられている。仕上げも、90万2000円(税込)~という価格帯にふさわしいクオリティだ。
このモデルのデザイン上のアップデートのひとつは、フォールディングバックル付きラバーストラップのオプションに加えて、新しく再設計されたメッシュブレスレットがラグの隙間にきれいに収まり、ケースと一体化するようになったことだ。ラグ幅は20.05mmと記載されている(これは少し不思議な数値だが)、20mm幅のNATOストラップであれば問題なく使用できるはずだ。ただ残念なのは、このメッシュブレスレットは従来のスーパーオーシャン ヘリテージには装着できないという報告が挙がっていることである。
不思議なことだが、これまで旧型のメッシュブレスレットを実際に見たことがなかった。しかし今回、ブライトリングがメッシュブレスレットの美観を保ちながら、長さ調整の問題にしっかり対応している点には感心した。パテックの新しいエリプス用ブレスレットほど複雑ではないかもしれないが十分な仕上がりで、バタフライ式のデプロイヤントクラスプにはブライトリングのロゴがあしらわれている。さらに装着感も非常に快適だった。
価格に対する感じ方は人それぞれだが、新しい40mmのスーパーオーシャン ヘリテージの90万2000円(税込)~という価格を少し高いと感じる人もいるだろう。個人的には80万円くらいのほうがしっくりくる気がする(現在の定価より10%ほど安い計算だ)。そもそも10%、20%、30%値引きされてうれしくない人などいないだろう。それでも、この時計に関しては定価であっても不満を感じる人はほとんどいないのではないだろうか。
スーパーオーシャン ヘリテージの汎用性の話に戻ろう。ねじ込み式リューズと逆回転防止ベゼル、そして200m防水というスペックを備えたこの時計は、十分に実用的なダイバーズウォッチである。ただ、ベゼルに分目盛りや数字がない点を物足りなく感じる人もいるかもしれないがこれは好みの問題であり、ISO規格のダイバーズウォッチとして問題があるわけではない。このモデルは名前が示すとおり1950年代のスーパーオーシャン、Ref.1004などに着想を得たヘリテージモデルであり、最終的にはこのデザインがいい方向に作用していると思う。
もし、よりモダンでやや“ごつめ”のデザインを求めるなら、ブライトリングにはすでにスーパーオーシャンのメインコレクションが用意されている。これらはデイト表示を完全に排除した堅実な時計だが、個人的には今、新しいB31キャリバー搭載モデルへのアップデートを期待しているところだ。そしてそれらメインのスーパーオーシャンはビーチに出かける夏の装いにはぴったりだと思うが、水辺から離れた場面ではスーパーオーシャン ヘリテージのほうがより汎用性の高い選択肢だと感じている。
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