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Introducing モンブラン ヘリテイジ マニュファクチュール パルソグラフ ローズゴールド限定モデル

世界で最も優美なクロノグラフがそのケースに貴金属を纏い、比類なき美しいムーブメントを包み込んだ。

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モンブランの高級ウォッチラインについて考察すると必ず、ある種の哲学的問題に突き当たる。私が考えるに、批評家たるもの読者が考えるべきことをわざわざ伝える必要はない。

 当然、俯瞰的な考察を放棄し“あくまで主観的意見だが…”と前置きするような批評は役に立つことも、興味を惹かれることもない。私に言わせると、できの良い評論は主観性を排除しているものだ。

 しかし、ミネルバが作るモンブランの時計は、ミネルバの名を汚すという理由で毛嫌いする人々に、違うとはっきり言ってやりたい衝動に駆り立てるほど素晴らしい。

 もしかすると私のオフィスでの立場上、最悪な事態となるかもしれないが続けよう:モンブランはローズゴールドケースのヘリテイジ マニュファクチュール パルソグラフを発表した。そして、私はこれを最高に美しい一本だと考えている。

 最新のヘリテイジ パルソグラフは2014年のモデルとは大きく異なり、当時ベン・クライマーをして“これこそが真のハイエンド・クロノグラフ”と言わしめた。ケース素材の他に、この2014年モデルとそれに続く2019年モデルには大きな隔たりがある。

 2014年モデル−マイスターシュティック ヘリテイジ パルソグラフはモノプッシャー式の、今回のローズゴールドモデルと同じムーブメントを搭載していた。しかし、ケース、ダイヤル、ダイヤル上のフォント、ラグの形状は現代風のデザイン要素が盛り込まれていた。−搭載したムーブメントは確かに古典的ではあったが、多くの点でヴィンテージウォッチとしてのインターフェースを持ち合わせていなかったのだ。

 ただでさえモノプッシャー式クロノグラフにノスタルジーを感じずにはいられまいが、デザインの進化によってヴィンテージウォッチの世界観を身近に感じさせることに成功している。2019年のSSモデルはマイスターシュティック ヘリテイジ パルソグラフから劇的変化を遂げたのだ。

 もちろん、その背景には審美性に非常に優れたCal.MB13.21の存在があったが、アワートラック上に段差をつけた立体的なサブダイヤルを配したコッパーカラーのダイヤルが、極めて平面的なマイスターシュティックモデルに取って替わった。なお、パルソメータースケールはとても魅力的なロビンエッグブルーで表記される。

 2019年のSSパルソグラフはわずかに小さくなった。オリジナルモデルが直径41mm×厚み12.65mmに対し、2019年モデルは40mm×12.65mmである。コアなヴィンテージマニアが好むアンダー40mmではないが、Cal.MB13.21のサイズ(29.5mm×6.40mm)を考慮すると、不満を感じることは皆無で、ケースとムーブメントのバランスも秀逸だ。パルソグラフのような時計の醍醐味は、ランゲのダトグラフやCal.CH27-70を積んだパテックのクロノグラフ同様、ムーブメントの壮観なインパクトに尽きる。大口径のMB13.21は、古典的なハイエンドムーブメントの粋を結集するのに理想的なキャンバスとなったのだ。

 ローズゴールド製のケースは、パルソグラフにSS製よりもクラシックなオーラを与えたことは間違いないが、同時にムーブメントの風格にもマッチするように感じられる。

 昨今のトレンドは、古典的なクロノグラフムーブメントをSSケースに与えることだと理解できるものの、ケース素材とムーブメントのコンビネーションに関していえば、超高級ムーブメントの真髄は、ゴールドケースに収められてこそ発揮されると思わずにいられない。

 パルソグラフのダイヤルはSSモデルとは、精緻さと高品質な仕上げにおいて遜色のない出来に仕上がっている。モンブランはこのダイヤルカラーをスモークタバコブラウンと呼ぶが、葉巻入れの残り香を思わせる響きを超えた何かを感じさせる。

 ダイヤル上の色の組み合わせは、SS製パルソグラフよりも親しみを感じさせるものになった-ダイヤルの針も含め、暖かい室内装飾のようなブラウンとゴールド調で構成されていて、基調となる色からアクセントとなっているのは、先端が赤く彩られたクロノグラフ針である。

 私はSS製パルソグラフよりこちらの方が好みだ。もちろんサーモンダイヤルの彩りは素晴らしいが、深夜の寒空から暖炉の残り火の前に招き入れられたような、スモークタバコブラウンは仄かな暖かさで包み込んでくれるようだ。

 モンブラン ヘリテイジ パルソグラフ シリーズの購入を真剣に検討しているのなら、ダイヤル、針、ケースデザインだけが検討材料ではないだろう-ムーブメントの素性も同じくらい重要な要素だ。

 私自身は外装が素晴らしいと思うが、多くの−あるいは大半の−愛好家は第一級の、古典的なハイエンドクラスに仕上げられたムーブメントが搭載されていることを知れば、大きな満足感を覚えるだろう。

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 技術面でいえば、クロノグラフムーブメントはこの数十年で飛躍的進化を遂げ、自動巻きのロレックスCal.4130とオメガCal.9900を引き合いに出せば、これらはクロノグラフのエンジニアリングの最先端をいくムーブメントである。

 これらのムーブメントは高い信頼性と精密な動作を担保するための調速機構(ロレックスにおけるパラクロム製ヒゲゼンマイ;オメガにおけるコーアクシャル脱進機)とクラッチ機構(いずれも垂直クラッチ式を採用)など多くの技術革新を取り入れている。

 しかし、ヘリテイジ パルソグラフは言うなれば絶滅危惧種のような佇まいと仕上げを表現している:クラシックなデザイン、水平クラッチの採用、手巻き式クロノグラフムーブメントは20世紀におけるミネルバの様式美を代表するものなのである。

 Cal.MB13.21の原型は1920年代前半に遡る。長年製造が継続される中で、モノプッシャー式とデュアルプッシャー式の2仕様がそれぞれ生産された。Cal.13-21は、当時のオーナーであったフレイ家が、クラシックなミネルバ製ムーブメントの再来に多大な情熱を注いだ、イタリア人投資家に会社を売却した事情が背景にある。

 ミネルバがモンブランの傘下に収まった際に発足したInstitut Minerva de Recherche en Haute Horlogerie(ミネルバ高級時計研究所)は、ミネルバ13系と16系の生産を継続しただけでなく、一層技術的に高度な、それでいて古典的系譜を受け継ぐムーブメントも並行して開発した。エグゾトゥールビヨン・ラトラパンテは私がこれまでみてきた時計の中でミニマリズムとは対極的な、最も美しい時計のひとつだと考えている。

 高級時計入門者にとって、腕時計の価値を評価するときにムーブメントの仕上げの出来がいかに重要であるかを正しく理解することは難しいものだ。それも無理はない;まず上手く仕上げるのは単純に難しい、そしてコストがかかる、スキルを持った人材はそれほど多くないというのが現実だ(例えば、美しい面取りを施すのは専門的スキルが必要だ)。

 時計に対する興味の対象によっては、写真以外で美しく仕上げられたムーブメントを見ることもなく過ごしてしまうことも珍しくないのだ。このことは、精密に組み立てられた大量生産ムーブメントと、本当の意味で伝統的な手仕上げによって作られたムーブメントとを見分けることを難しくしている。

 一般に、収集家と愛好家のマーケットではムーブメントに対する反応は専門家に比べると鈍いものだ。時計の新作の購入者の多くは、ムーブメントについては何か問題がないかという点でのみ関心を持ち、ヴィンテージ愛好家はダイヤルやケースなどのヴィジュアル面にのみ気を取られすぎて、ムーブメントのことまでは気が回らないのである。

 冒頭で私は、一般に批評家は何を真剣に考えなければならないかを読者に伝えるべきではないと言ったが、あえて学者ばりに教訓めいたことをいうならば、まずムーブメントの仕上げを見るべきと言いたい。私は長年時計ライターとして生計を立ててきたが、実に素晴らしいハイエンドな仕上げのムーブメントの本質的価値(そんなものがあればの話だが)と時計愛好家からの反応には感覚的なズレが生じることに疑問を抱いてきた。何に関心を抱くべきかを説くつもりは毛頭ないが、それは酷く恥ずべきことだ。

 この感覚の非対称性が生じた原因の一端は、時計製造の歴史の大部分において美しく仕上げられたムーブメントは、それを作った時計職人しか見ることができなかったという事実である(そして、結果的に下手くそな修理職人が、しばしばそれを台無しにした)。

 この問題の本質をジョージ・ダニエルズは的確にまとめた。そのムーブメントを英国紳士の威厳に喩えて称賛するハンドメイドの英国時計は、職人のためにあるものだと。スノッブな願望と、目を奪うような機械式時計の美に対する関心に矛盾を感じない我々のような愛好家にとって幸運なことに、ヘリテイジ パルソグラフにはシースルーバックが用意されている。

 Cal.MB13.21はこのモデルではローズゴールドにメッキされていて、ローズゴールド無垢のケースとダイヤルの温かみと相まって、その視覚効果は絶妙だ-言い換えれば、あなたにとって好ましく感じられるものは、私にとっても同じである。

 時計製造におけるアート(美意識と機械の融合と定義しよう)は2つの様式に昇華した:手巻きの3針時計(フィリップ・デュフォーとロジャー・スミスが好例だ)と伝統的な水平クラッチを備えたクロノグラフである。後者には複雑時計の醍醐味が詰まっており、複雑機構とは名ばかりの直感的に理解できないシロモノとは異なるのだ。例えば永久カレンダーとミニッツリピーターは、仕組みを理解するのにちょっとした学習が必要になる。トゥールビヨンに至っては、初心者には混乱の元となるだけである。

 対照的に、水平クラッチ式のクロノグラフは操作が直感で完結するものだ。もちろん、その仕組みを理解するには、ちょっとした努力が必要となる。特に時刻表時の輪列とクロノグラフ用の輪列がどのように同期するのか理解するのに苦戦するかもしれないが、挫折してしまうほど複雑ではない。

 そして、水平クラッチのコラムホイールが作動する様子は、まさに神秘的である―その神秘性は手の届くもので、時計づくりにおける独創的な課題解決法を教えてくれるものだ。クロノグラフはどこにでもあるものだと思うかもしれないが―もっとも広く普及している複雑機構はカレンダー機構だが―コラムホイールと水平クラッチは必要であるからこそ発明され、この発明に至るプロセスには何十年もかかったことを忘れてはならない。

 多感な十代の少年だった頃(意地悪な読者の中には“子供は大人の父である”と言いたそうなので、先に言っておこう)、私はジョイスの小説《若き芸術家の肖像》の主人公が、トマス・アキナスの美学について語る台詞に大きな影響を受けた。

 ジョイスはアキナスのラテン語原文を“美には全体性、調和、そして輝きの3つの要素が必要だ”と解釈した。それ自体を別のものと切り離して見つめること;ある部分と別の部分の相関性を見つけること;美の対象の輝きを見つけること。これは深い、目に見えない宇宙の秩序を表しているのである。

 これこそが腕時計に込められたテーマであり、私たちが時計に関して情報交換することが必ずしも、真に素晴らしい作品に対する十分な注意を喚起する結果にはならないのである。

 私たちは時計の写真を眺めては直感的に好きか嫌いかを判断するが、その後より深く考察し、個人的な好みを超えた判断を省みることはほとんどない。全ての意見を受け入れる、もしくは自分の意見以外は認めないというのは私たちがよく取る本能的な態度だ。

 しかし、私が時計について書いてきた甲斐があったことのひとつは、ある狭い話題について掘り下げると、それが驚くほど深かったり、意外なところで別の世界と結びついていることを再発見したりすることである。私が思うにこの時計、ダイヤルにモンブラン銘の入ったこの時計はクラフトマンシップと歴史だけでなく、世界観をも内包しているのである。

 時計のデザイン、そしてムーブメントは、根源的なレベルで理に適った秩序ある宇宙観を拠り所にした我々の時間と文化を体現している。このような文脈では、学術的な美学を持ち出すのは不適切ではないだろう。

 高級時計に真剣に向き合うとすれば(そうしよう)、このような時代だからこそ、私たちは自分自身に何に着目すべきですべきでないかを少し考え、デザイン、工作精度、金銭的な価値などの上辺では測れない、自分の内なる声を聞いて関心をそそる要因を追求することを自らに課すべきだ。素晴らしい時計製造のあり方は、人類の叡智を垣間見せるのと同時に、崇高な向上心を表現するからこそ真の知的興奮をもたらすのだ。

 私たちには本質的価値を持つ美を体現した創造物に素晴らしい名を与えた;文化である。自分の中に時計文化といえるものを切り開くことに王道はない-それには長い時間を要し、好奇心を持ち続けること、固定観念に立ち向かう勇気が必要だ;これらの資質は現代では稀有なものとなった。

 しかし、自分の手に、腕に何か自分を突き動かすものがあるとすれば、それは価値があるものかもしれない。時計製造と時計そのものは確かに様々な愉悦を与えてくれるものであるが、ヘリテイジ パルソグラフのような、我々に別の世界を見せてくれる時計は稀有で、特別なものだ-たとえダイヤルに高らかにモンブランを掲げていても。

モンブラン ヘリテイジ マニュファクチュール パルソグラフ 限定モデル ローズゴールドケース 概要:ケース、18KRG製にサファイアクリスタルのドーム型風防;サファイアシースルーバック;40mm×12.65mm 5気圧防水;18KRG製リューズ(刻印有)。 グレイン仕上げアワーチャプターリングに“スモークタバコ”ブラウンにラッカーされたドーム状ダイヤル。ローズゴールドメッキのドーフィン型の針、アプライドインデックス。ムーブメント、Cal.MB M13.21、タキメーター表示の手巻き水平クラッチクロノグラフ;チラネジ付きテンワとフィリップスターミナルカーブ付きヒゲゼンマイ、製造はミネルバ;モノプッシャーとコラムホイール;ローズゴールドメッキされた地板と洋銀製ブリッジ;振動数、1万8000振動/時(2.5Hz)、22石、限定100本、価格3万3000ドル 詳細はMontblanc.com
 photos:Tiffany Wade(HODINKEE編集部)