Introducing オリス アクイス デイト ニューヨークハーバー リミテッドエディション II（編集部撮り下ろし）

　この団体を初めて聞くという人、特にニューヨーク在住であれば、ぜひ詳しく調べてみて欲しい。というのも、この団体はまさに“地元”に根ざした活動を行っているからである。スイスの時計ブランドによる非営利団体とのコラボレーションというと、往々にして遠い存在の団体が選ばれがちだが、ビリオン オイスター プロジェクトはその対極にある存在だ。簡単におさらいしておくと、このプロジェクトは2014年に設立され、ニューヨーク港に10億個の牡蠣を再生させるという壮大な目標を掲げている。一見すると途方もない試みに思えるかもしれないが、これまでに1億5000万個の牡蠣を再生しており、それもすべてこの取り組みに協力するボランティアや学生たちの力によるものだ。また、ニューヨークのレストランで食べ終えたあとの牡蠣の殻がその後どうなるか気になったことがあるなら、ビリオン オイスター プロジェクトがこれまでに回収・再利用した牡蠣殻の量は、およそ290万ポンド（約1300トン）にも上る。これらは新たに孵化した牡蠣の幼生が付着し、成長するための基盤として活用されている。

　だがひとつ疑問が残る。なぜ牡蠣なのか？　実はこの小さな生き物たちは、非常に優れた力を持っている。1個の牡蠣が1日にろ過できる水の量は、およそ50ガロン（約190リットル）にもなるのだ。これを10億個の牡蠣というプロジェクトの目標と掛け合わせてみれば、牡蠣だけでニューヨークの水域の健康と清潔さに与える影響がいかに大きいかがすぐにわかる。さらに言えば、牡蠣礁がもたらす生物多様性への貢献も無視できない。

　このようなパートナーシップは、スイス時計業界におけるサステナビリティのリーダーを目指すという、オリスが公に掲げている目標と一致している。企業としては2021年にカーボンニュートラルを達成し、3年間で毎年10％ずつ排出量を削減するという計画も成し遂げた。時計づくりにおいても、オリスはアクイス アップサイクルやアクイス オリス×ブレスネットなど、再利用やリサイクルをテーマにした複数の取り組みと提携してきた。同社はこうした時計が文字盤の大きさに比して、実際の環境負荷に大きな影響を与えるわけではないという現実を正面から認識しており、それでもなおこうしたモデルが社会における対話のきっかけとなり、“触媒”、つまり現実社会の場での議論を促す存在であると捉えている。

　さて、話を時計本体に戻そう。ニューヨークハーバー リミテッドエディション IIは、グリーンダイヤルを備えた初代41.5mmモデルの後継として登場したもので、今回はケース径を43mmへと拡大している。文字盤にはマザー・オブ・パールを採用し、ブランドはこれを“アクアグリーン”と呼んでいる。ただ正直に言えば、この色の説明には少々異議を唱えたい。というのも“グリーン”というよりほとんど“アクア”寄りだからだ…まあ、今回は見逃しておくことにする。ケース径は43.5mm、厚さは13.1mm、ラグ・トゥ・ラグは51mm。特徴的な沈み彫りのステンレススティール製ベゼルは健在で、ソリッドケースバックには美しいエングレービングとともに、限定2000本中の固有のシリアルナンバーが刻まれている。ムーブメントにはセリタSW200をベースとしたオリス製Cal.733-1を搭載。今回の新作では、カラーをそろえたラバーストラップとフォールディングバックルを標準で装備し、さらにSSブレスレットも付属している。

　オリス アクイス デイト ニューヨークハーバー リミテッドエディション IIは現在販売中で、価格は46万2000円（税込）。売上の一部はビリオン オイスター プロジェクトによる牡蠣礁の再生、殻の回収、教育活動などの支援に充てられる。

　あの時計もまた、とても気に入っていた。特に独特な色合いのマザー・オブ・パールダイヤルは、実物で見ると本当に印象的だった。そして今回の新作もその魅力は変わらず、よりブルー寄りのカラーリングは、初代の少し変わったグリーンよりも、より多くの人に受け入れられるのではないかと思う。もし初代モデルのグリーンが、ハドソン川の汚れた水を思わせる色だったとすれば、今回の新鮮な色使いは、ビリオン オイスター プロジェクトが水をよりきれいで健やかなものへと変えるうえで成し遂げてきた、大きな前進を象徴していると言える。

　驚いたのは、今回の新作でケースサイズを43.5mmに拡大したという判断である。たしかに、アクイスのケースデザインは43.5mmという数字の印象ほど大きくは感じさせず、装着感は比較的抑えられている。とはいえ決して小ぶりなケースではない。もっとも初代モデルはチャリティの一環として展開された2000本すべてが完売していることを考えれば、今回のモデルも同じように高い支持を集めるのではないかという予感がある。これはクールな時計にふさわしいクールなストーリーだ。そして裏蓋には記念ロゴがしっかりと刻まれているが、それ以外の場面では、ガバナーズ島で牡蠣殻をスコップで掘っていないときでも気兼ねなく着けられる、さりげないデザインに仕上がっている。

ブランド: オリス（Oris）
モデル名: アクイス デイト ニューヨークハーバー リミテッドエディション II（Aquis Date New York Harbor Limited Edition II）
型番: 01 733 7789 4187-Set

直径: 43.5mm
厚さ: 13.1mm
ラグ・トゥ・ラグ: 51mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤: アクアグリーン
インデックス: アプライド
夜光: あり、スーパールミノバ
防水性能: 300m
ストラップ/ブレスレット: フォールディングクラスプ付きラバーストラップ、SSブレスレット付属

キャリバー: 733（高品位セリタSW200ベース）
機能: 時・分表示、センターセコンド、日付表示
直径: 25.6mm
パワーリザーブ: 約41時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 26
クロノメーター: なし

価格: 46万2000円（税込）
発売時期: 発売中
限定: あり、世界限定2000本（個別シリアルナンバー入り）

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Photos by Shota Akiyoshi