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Photos by Mark Kauzlarich
昨年、ロレックスは長く続いたチェリーニに代わる、まったく新しいドレスウォッチコレクションのパーペチュアル 1908を発表した。ロレックスのドレスウォッチとしてはやや地味ではあるものの、それは堅実なラインであった。
ロレックスは今年、パーペチュアル 1908のプラチナモデルを発表し、そこに“ライスグレイン”モチーフのギヨシェ装飾を施したアイスブルーダイヤルを加えた。それだけで一気に1908は華やかなコレクションとなり、2024年のロレックス新作が比較的少なかったなかで、1908は際立った存在に感じられた。
昨年のゴールド製1908モデルと同様、プラチナ950のサイズは39mm径×9.5mm厚だ。ロレックスの典型的なスタイルに従い、プラチナケースにはアイスブルーの文字盤を組み合わせている。しかし、ブランドが“ライスグレイン”と呼ぶギヨシェ装飾のほかに、ミニッツトラックの外側にはもうひとつの異なる模様もある。ロレックスによると、この文字盤は伝統的なギヨシェのエンジン・ターニング(旋盤)機械と技術を駆使しているとあるが、現代においてはひとりの職人が旋盤を操作しているわけではないと想像できるだろう。個人的には、最初のプレス画像で見たときよりも実物の質感はより繊細に感じられる。
昨年の1908を高く評価する一方で、文字盤が大半を占める39mmのドレスウォッチは少し物足りなさを感じていた。今回のギヨシェは、昨年よりもおもしろい方法で文字盤のスペースを埋めており、既存モデルよりも魅力的である。パターンは中央から外側へ放射状に広がっており、ロレックスはミニッツトラックの周りの文字盤を仕上げるために、仕上げの異なる圧着されたギヨシェを施した。
シースルーバックから見える内部には、昨年の1908で発表されたのと同じロレックスCal.7140が搭載されている。昨年のレビューで触れたとおり、Cal.7140はロレックスのシリコン製シロキシ・ヘアスプリング(ヒゲゼンマイ)を使用しており、これは昨年まで31mm径デイトジャストのような小型モデルにのみ採用されていたものである。ダニー(・ミルトン)が調査したように、ロレックスがふたつの異なる種類のヒゲゼンマイをモデル全体で使い続けていることは注目に値する。またロレックスがシロキシ・ヘアスプリングと、クロナジーエスケープメントを組み合わせるのはこれが初めてのことだ。それ以外にも、最高級クロノメーター、約66時間のパワーリザーブ、ゴールドの自動巻きローター、2万8800振動/時の振動数など、Cal.7140はロレックスに期待されるものをすべて備えている。
ロレックスは、プラチナ 1908にマットブラウンまたはブラックのアリゲーターストラップ(内側に緑色のライニング付き)と、プラチナ製のデプロイヤントクラスプを組み合わせている。ザ・クラウンはこのコレクションを1908と称しており、これはハンス・ウィルスドルフが“ロレックス”という用語を商標登録した年にちなんでいるが、実際には、のちに登場したヴィンテージバブルバックからインスピレーションを得ている。2023年、ロレックスはWatches & Wondersでこのヴィンテージバブルバックをシースルーにし、1908のようなモデルからインスピレーションを得たと示唆している。その影響は文字盤のレイアウトや数字にはっきりと表れているが、ヴィンテージバブルバックの優れた魅力は否定できない。
1908は大振りで現代的なプラチナ製ドレスウォッチであるが、そのプロファイルは非常に着用しやすいと感じている。薄くて、部分的にフルート加工されているベゼルはオールフルート加工ほどうるさくない。サファイア製のシースルーバックを持つドレスウォッチでありながら、50mの防水性能を備えているのもいい。1908を1年間使用してきたが、最も議論の余地があるのはおそらく針だ。もちろん、時針はヴィンテージの天文台スタイルの針を参考にしたものだが、1908に合っているかどうかは確信が持てない。
プラチナ 1908は、437万300円(税込)もする高級ドレスウォッチである。この価格帯で最高の時計、あるいは最高のドレスウォッチであると主張するつもりはないが、優れた時計であることは確かだ。
私にとって最も興味深いのは、ロレックスがその成長を遂げつつあるパーペチュアル 1908を“伝統的な時計製造技術へのオマージュ”と位置付けていることだ。これはまさに、このコレクションを考える上で正しい方法であり、“プロフェッショナル”スポーツウォッチに対抗するものではなく、あくまでも補完するものだ。私にとって“伝統的な時計製造技術”とは、クラフツマンシップや複雑さのようなものを探求することを意味している。ロレックスがギヨシェを行ったことは前者に該当すると思うが、1908の未来においてはその両方の要素があると期待している。
430万円も出せば、多くの素晴らしいブランドから素敵な時計をたくさん手に入れることができる。例えばチューダーに行けば、18K無垢のブラックベイ 58が税込448万8000円(!)で買える。両者が競合しているわけではないが、チューダーが約450万円もするダイバーズウォッチを製造するのであれば、それについて言及する必要があるだろう。ドレッシーなカルティエのほうが好みなら、新しいプラチナ製「トーチュ」も同じくらいの価格である。この話はもっと続けられるだろう。重要なのは、これらの時計がほかの時計より優れている(または劣っている)というわけではなく、ロレックスが過去数十年にわたってスポーツウォッチで築いてきたような差別化を、この分野では行っていないということだ。しかし、プラチナ 1908は堅実な新しいドレスウォッチであり、これは十分すぎるほどの出来である。
ロレックス パーペチュアル プラチナ 1908のサイズは39×9.5mm、50m防水。自動巻きのロレックス製Cal.7140搭載、約66時間パワーリザーブを確保し、ゴールドローターは2万8800振動/時で振動する。希望小売価格は437万300円(税込)。詳しくはロレックスのパーペチュアル 1908コレクションをチェック。
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