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※本記事は2016年7月に執筆された本国版の翻訳です。
そんなに昔のことではないが、我々は多分1万円以下の、いつでも買える時計の話をしたはずだ。そしてそれは価格以上の素晴らしい価値があったため、独自の分野で、ロイヤル オークやサブマリーナーやスピードマスターのようなアイコニックな存在になった。その時計とは、1963年以来、モデルチェンジをしながら製造され続けているセイコー 5のことだ。セイコー 5の特徴は、手頃な価格で耐久性のある腕時計のベンチマークとなった。確かに、エントリークラスと見なされる可能性があるが、あなたが欲しいと思う唯一の時計になる可能性だって十分にある。今回、我々は「The Two Watch Collection」(時計二本コレクション)というこのコラムで取り上げる時計として、セイコー 5ともう一つの実に象徴的で歴史的に重要な時計、他の追随を許さない無敵の、そして文字通り破壊不可能なカシオ G-SHOCKの組み合わせ以上のものを思いつくことはできない。
どちらも有名な時計であり、どちらも手頃な価格で、どちらか一方だけでもあれば十分という時計だろう。しかし、このコラムの目的は、あなたのニーズをできるだけ多く満たす時計を見つけるだけでなく、2つ一緒にあることが一部分の合計よりも素晴らしくなり、お互いを引き立てあうような2つの時計を見つけることにある。
セイコー 5
最初にセイコー 5について語ろう。実に簡単だ。セイコーがプロスペックスとハイエンドのグランドセイコー(ほんの2例をあげればだが)によってここ数年で得た全ての注目を考えれば、セイコー 5を「激動の1920年代」の豪華客船で働く作業員のように感じるのは容易である。蒸気を維持するために必要不可欠な存在であると同時に、ファーストクラスでシャンパンを飲んでいる紳士淑女の目に触れないよう、船長が甲板の下に置いておきたいと考える存在でもある。しかし、セイコーは「5」が意味するものを誇りに思い、スポーツ 5とそれに続く「5」の歴史を紹介している。端的に言うと、最初の「5 」は、スポーツマチックとして1963年に導入され、その後様々な5つのモデルを経て、現在も販売されている。それらは、どこでもどんな場合でも、丈夫な機械式時計を必要とする誰かが居る限り使われてきた。人々は、多くの理由でセイコー 5を必要とする。動作の信頼性のため、または週末の作業用だったり、それとも単にその背後にある偉大なストーリーと機械式時計を所有する喜びのためかもしれない。セイコー 5を手に入れる全ての人が、欲しいから買うわけではなく、相対的に節約できるから買うという人もいるだろう。しかし、その安さと実用性によって、セイコー 5が現存する最も広く所有され生産された唯一の自動巻き時計になったということを否定はできない。
私が最初にセイコー 5に興味をもった理由の一つは、子供の頃のファンタジーに根ざしている。熱心なSF小説の読者だった私はタイムトラベルに思いをはせ、もしクォーツ時計の電池を交換する方法が見つからない状態で、過去に閉じ込められたらどうなるだろうと空想した。その時計が、地元の人を驚かせるものになるか、あなたが巨大な歯と飢えた何者かに食べられた時間を正確に示すものになるかは、どの時代に閉じ込められたかにかかってくる。 しかし、あなたが確実に望んでいないのは、2〜3年で動かなくなる時計だろう。自動巻きの時計が、この今では問題にならない問題の解決策であると思った少年は、明らかにまだ5年ごとに推奨されるオーバーホールについては知らなかったと思うが、セイコー 5の所有者のほとんどもまた、その存在を知らなかったのではないかと思う。彼らは単純に時計が使い物にならなくなるまで、満足してずっと使っているのだ。少なくとも、逸話的な証拠によれば、2〜30年の間は。
カシオ G-SHOCK
カシオ G-SHOCKは、セイコー 5と同じくらいの知名度があり、それ以上に多くの人に愛用されている。セイコー 5が、耐久性、ねじ込み式リューズ、曜日・日付表示、防水性、自動巻きの5つの基本性能で知られるように、1983年に発売された初代G-SHOCKは「10」という数字で定義されていた。
カシオの発明家である伊部菊雄氏が自らと時計に課した3つの基本的な目標は、10年の電池寿命、10気圧防水、そして最も重要なことは、10mの高さからコンクリートの床への落としたとしても、その衝撃に耐えられるということだった。悲劇的な出来事、英雄的な出来事、崇高な出来事など、G-SHOCKが目撃した人々の人生を変えるような出来事の数々は、他のどの時計よりもはるかに多い。高山から深海、超音速飛行、宇宙空間に至るまで、あらゆる場所で使用されてきたが、この時計を破壊するためには、尋常でないほどの力と意志が必要になる。G-SHOCKの「コンテナに覆われたコンテナ」のような構造によって与えられた耐衝撃性に加えて、彼らは同様にさらに特異な形の罰にも耐えられるようだ。4000ガウス以上の磁力をもつネオジウム磁石の上に私の(この記事で紹介されている)G-SHOCKを置いてみたが、全く影響を受けなかった。カシオは、G-SHOCKは耐磁性をもつように設計されていると語ったが、これは現実世界で遭遇するであろうあらゆるものに対し、私が予想すらしなかった程のレベルの耐性だ。
実際、タフソーラーモデルのG-SHOCKは、あなたが一方通行の時空間に不注意で落ちて、2億年前の時代に行ってしまった場合、本当に持っていくべき時計である可能性が高い。チップやクォーツの計時パッケージの故障がなければ、永遠でないにしても、少なくとも退屈なほど長い時間はもつだろう。IC回路の最も一般的な故障原因はそれほど特異なものではない。ほとんどは熱、酸素、湿気の影響で、ケースが適切に密閉されている限り(G-SHOCKは密閉されていなければ役に立たない)、どんなロストワールド状況下でも長持ちするはずだ。その唯一の泣き所は、おそらくガスケットの劣化ではないだろうか。
G-SHOCKが誕生した時には、セイコー 5が世に出てから既に20年が経過していたが、この2つは80年以上の歴史を共有している。この2種の時計は、他の2種の時計では考えられないほど人々の経験を体現する。そして、それぞれが独自の方法で、ある種妥協のない純粋主義を表現しているのだ。これら2つの時計を見ると、時計製造全体の神髄を表しているかのように感じる。
しかし、どのような価格帯の時計にもしばしば欠けているもの、つまり、明確な技術とデザインのビジョン、さらにその本質的なビジョンのため妥協することなく追求されているもの、これらをなくしては、この2つの時計はあり得ないし、お互いの存在を引き立てあうこともない。スイスでもドイツでもなく、日本から来た2つの時計が、このような一途さを表現しているのは興味深い。第二次世界大戦後を代表する最も人気のあるアイコニックな2つの時計を紹介するコラムの第1回目をお楽しみいただけただろうか。その価格に関わらず腕時計の技術とデザインの古典ともいうべきG-SHOCKとセイコー 5は、これ以上ないほど「時計二本コレクション」の第一弾に相応しいと思うのだ。
今回取りあげた時計は;セイコー 5 SNKL23とカシオ G-SHOCK タフソーラー(ソーラー充電)。
セイコー 5は、私たちの最も人気のある記事だった;"百万ドルのように見える75ドルの時計”
また、その進化した姿を示す、全く異なるG-SHOCKについては、6000ドルのG-Shockの記事をご覧頂きたい。