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ハロー、007。今日は私が常々、現代のウォッチメイキングにおける公然の秘密だと思っていた、セイコー ダイバーズ Ref. SKX007についてご紹介しよう。ダイバーズウォッチと正式に呼ばれるためには、厳格なことで知られるダイバーズウォッチ規格ISO 6425の基準をすべてクリアしていなければならない(少なくとも加盟国の中では)。今回ご紹介するのは、それをクリアする自動巻き時計の中でも、圧倒的なコストパフォーマンスの高さを誇る一本だ。この時計は、ISO基準とダイバーズの精神の両方に適っているといえる。
我々が以前「100万ドルの時計に見える75ドルの時計」という記事でご紹介した、セイコーのもうひとつの公然の秘密ともいえるあのセイコー5も同様だ。結局のところ、どちらもプロダクトそのものが魅力的であるため、信じられないような価格設定については、この時計を語る上で最も取るに足らない側面なのかもしれない。
SKX007は、価格設定こそ謙虚かもしれないが、ダイバーズウォッチの堂々たる系譜の1つであり、それはセイコーが150m防水のRef.6217を発表した1965年にまで遡る。それ以降セイコーは、1977年まで製造されていたアイコン的存在のRef.6105(映画「地獄の黙示録」の中でマーティン・シーンが着用していたことはファンの間で有名な話だ)から、飽和潜水を含む極限の環境下での使用を想定したプロ仕様のモデルまで、幅広いダイバーズウォッチを発表してきた。プロ仕様のシリーズには世界で初めてケースにチタンを採用した1975年のプロフェッショナルダイバー 600mも含まれている(1980年のポルシェデザインによるチタン クロノグラフは、チタンケースに加えてチタン製の一体型ブレスレットを採用した世界初のプロダクトである)。
現在セイコーが提供するのは、少なくとも技術面からみれば、世界中の時計の中でおそらく最もピュアで実用的な機械式ダイバーズウォッチだといえるだろう。グランドセイコー スプリングドライブ ダイバーは、自動巻きスプリングドライブムーブメントとパワーリザーブ表示で、高い精度(誤差は1日に1秒以内)だけでなく、ダイビング中のパワー切れを防ぐために巻き上げ残量が十分にあるか確認できる機能も持っている。
SKX007と直系の従来モデルであるセイコー 7002とはかなり似通っていて、こちらもSKX007と共に200m防水の認定を受けている。セイコー 7002は1996年まで製造されていて、今回紹介したモデルの登場と共に生産終了となった。SKX007も既に製造されておらず、市場に流通しているもののみとなっており、これは非常に残念なことだ。というのもこの製品にはセイコーのダイバーズウォッチの、いや、実際にはISO準拠の機械式ダイバーズウォッチというカテゴリ全体のエントリーモデル価格としての存在意義があるからだ。
SKX007は機能的なミニマリズムへの挑戦であり、この時計には余分なものが一切ない。ケースは頑丈で、堅牢なSSケースを持ち、エントリーからハイエンドモデルを含むすべてのセイコーの製品がそうであるように極めて精巧に作られている。曲線的なケースサイドは優美に立ち上がり、リューズガードを形成する。リューズは4時位置にあるため、手の甲に当たって不愉快な思いをしなくてすむ配慮がなされている。(リューズはセイコー 5と同様に時刻合わせのみに使うもので、SKX007には手巻き機能が無いため、ゼンマイを巻くためには手に持って軽く揺らす必要がある)
ベゼルは0.5分刻みで回転できるが、これはこの時計がとても低コストながら高品質であることを示すポイントのひとつだ。ベゼルの三角マーカーの先端は(夜光カプセルが埋め込まれていて)常に正確にインデックスマークを(または正確にその間を)指し示している。
セイコーのお家芸ともいえる高精度・高品位な時計が、この価格で手に取れるのは実に素晴らしい。また、文字盤も装飾的ではなく、それでいて機能的であり、大きくて明るめの夜光塗料の目盛り(セイコーのダイバーウォッチは暗闇で明るく光を灯すことで知られている)があり、白く塗られた秒針の後端部には夜光が施されたドットがまで配されているため、暗所での動作チェックもラクラクこなすことができる。白いデイデイト表示は好まない人もいるが、実は白にすることでより文字盤の均整がとれており、暗所での視認性も高めている。
ジュビリースタイルのブレスレットは、他の部分と同じように、装飾的というよりは機能的だ。セイコー 5のブレスレットと同じでカチャカチャと音がするので、多くのオーナーが他のバンドに換えている。しかし、時折安っぽい音が鳴ることを別にすれば、結構着け心地がいいのだ。ダイバーがウェットスーツの上から着けるためのエクステンション機能がないのは残念だが(ただこの価格帯の製品に対して、それを責めることはできない。最も、この時計を着けて何度もダイビングをしたい人は、長いNATOストラップかラバーストラップに換えた方がいいだろう)。
Cal.7S26については、セイコー 5同様にムーブメントは非の打ちどころがなく、マジックレバー式巻き上げシステムは開発者の努力の賜物であり、なおかつ非常に効率的(時計を手にすると、ごくわずかな動きもキャッチして即座に作動し始める)であるということを伝えるに留めておこう。
このように、素晴らしく高機能で、偉大な歴史の裏付けを持つ真のダイバーズウォッチがここにある。では、価格はどうか。大抵いつでも、Amazonで3万円程度で販売されている。信じられないような価格だが、これは真実だ。私は最近の時計関連のアイテムで、ここまで安価なもの(まぁ、NATOストラップと...バネ棒くらいだろうか)はそう多く思い浮かばない。また、この価格帯で少しでも競合する製品となると、全く何ひとつ思いつかない。同等の高機能を求めるのならば、G-SHOCKあたりを検討すべきだろう。G-SHOCKはそれ自体が素晴らしいツールとしての時計ではあるものの、ISO6425準拠ではない。SKX007は長年にわたって、そして今もなお、市場にあふれる高価格で装飾過多な「ラグジュアリー」なダイバーウォッチを非難し、また素晴らしくバリュー・フォー・マネーな時計として永らく存在し続けている。
より高価かつ高品位なプロスペックスについては、こちらのセイコー公式サイトへ。