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チューダーがWatches and Wondersで発表した新作について語るとなれば、やはり話題の中心はあの個性的な新作モナークに集まることは間違いないだろう。ただ実際に会場で手に取ってみたなかで、終始私の視線を奪っていた1本があった。しかもそれは、厳密に言えば新作ですらない。
それが、フルブラックのセラミックブレスレットを組み合わせたブラックベイ セラミックである。今回のラインナップのなかで“最も進化を遂げた時計”を挙げるとすれば、私はこれを推したい。というのもこのブレスレットが加わったことで、従来モデルとはまるで別物と言っていいほど印象が変わっているからだ。ブラックベイ セラミックは、2019年のOnly Watchに出品されたセラミック製ユニークピースに着想を得て2021年に登場したモデルだが、これまでは常にボリュームのあるストラップとの組み合わせに限られていた。ただ、その仕様にはいくつか気になる点もあり、とりわけ41mmケースの厚みのあるサイドを強調してしまう点は否めなかった。とはいえ、専用設計のブレスレットが用意されていなかったのは、チューダーとそのサプライヤーにとっても技術的な制約があったのだろう。今回のアップデートはそうした制限をようやく乗り越えた結果と言える。
ありがたいことに、その問題は今回のアップデートによって解消された。気づかない人もいるかもしれないが、実はかなり重要な進化である。41mm径、厚さ13.6mmのケースに組み合わされるのは、エンドリンクまで含めたフルマットブラックのセラミックブレスレットであり、ついに完全体と言える仕様になったのだ。もっとも、この価格帯(税込で107万300円)に収めるために、いくつかの割り切りがあるのも事実である。ストラップ仕様からは22万円の値上がりにとどまっているが、その背景にあるのが仕上げの違いだ。ケースおよびブレスレットのセラミックにはポリッシュとサテンのコントラストは与えられておらず、全面がサンドブラスト仕上げとなっている。だがその結果として、よりタフでステルス感のあるルックスに仕上がっているのも確かであり、これこそが私がブラックベイ セラミックを、より高価でラグジュアリー志向の兄弟モデルよりも好む大きな理由でもある。正直なところ、ステンレススティールモデルのブラックベイでも、このサンドブラスト仕上げがあればきっと気に入るに違いない。
ブレスレットは厚みのあるゴツゴツしたリンクによってかなり強い存在感を放つ。ボリュームのあるブラックベイのケースに対しても、全体のシルエットはしっかりと釣り合う。クラスプに近い数コマは取り外し可能で、リンク同士はネジで固定されている。片側にはマイナス頭のネジが配され、反対側にはキャップ(もう一方の端を隠す楕円形のカバー)が備わる。今日ブースを訪れた際、この点をチューダーのスタッフに尋ねたところ、サイズ調整のためにネジを外すには、まずそのキャップをこじ開けて取り外す必要があるとのことだった。セラミック製ゆえに、うっかりブレスレットに傷をつける心配はそれほど大きくないとはいえ、このモデルに関してはAD(正規販売店)でサイズ調整してもらうのが無難だろう。
さらに言えば、セラミックという素材の性質上、ここでは通常のブラックベイに採用されるクラスプは用意されておらず、もちろんブランド自慢の“T-fit”による微調整機構も備わらない。このブレスレットに組み合わされるのは、側面のトリガーを押して解除するバタフライ式のダブルデプロワイアントクラスプである。私自身、“T-fit”が省かれていることを決定的な弱点とまでは感じない。とはいえ、このブレスレットにはおそらくハーフリンクも用意されていないようで、その点を踏まえるとほかの多くのブラックベイ以上に完璧なフィット感を出すのはやや難しそうだ。もちろん、より低い価格帯でここまで、あるいはそれ以上を実現しているブランドがないわけではない。フォーメックスは、このブラックベイより数十万円安い価格で、セラミック製の微調整機構付きクラスプや際立った仕上げを実現している。ただ、それでもなお抗いがたい魅力があるのも事実だ。ここまで象徴的なブランドが生み出すあのアイコニックなシルエットに、傷のつきにくいオールブラックというひねりが加わるのだから。
ケースとブレスレットをともにオールブラックでまとめたことで、この特徴的なグレートーンのダイヤルをあえて残したチューダーの判断は実に巧みである。ベースとなるのはサンレイ仕上げのグレーダイヤルで、その筋目は光の加減によってダークグレーからライトグレーへと表情を変えていく。そこにミニッツトラック、ロゴ、ダイバーズ表記が艶のあるブラックプリントで配される。光沢のあるブラックのアプライドインデックスと、それに呼応するブラックの針には、いずれもマットグレーのスーパールミノバを充填。つまりこのダイヤルは、いわゆる“ブラックアウト”ウォッチにありがちな見づらさとは無縁で、しっかりとした視認性のコントラストを備えているのである。この点こそ、ほかの多くのブラックアウト系モデルとの差別化ポイントと言っていい。ブランドはこれをブラック・オン・チャコールと表現しているが、まさに言い得て妙だと思う。
ブラックセラミック製ベゼルインサートにはダイビングスケールが刻まれ、文字盤側の印象を引き締めている。ただしここで触れておくべきなのは、ベゼルリングそのものは実際にはセラミックではなく、ブラックPVD加工を施したSS製だという点である。おそらくこれは、セラミックのほうが破損のリスクが高いためだろう。とはいえ、摩耗や日常的なダメージという観点では、このベゼルリングこそがこの時計の欠点になり得る。仮にリングがDLCコーティングであればもう少し安心感があったかもしれないが、ブランドはPVD加工の詳細までは明らかにしていない。クローズドケースバック(こちらもPVD加工を施したSS製)の裏側に収まるのは、これまでと同じくMETAS認定を受けた自社製Cal.MT5602-Uで、パワーリザーブは約70時間である。
新しいブラックベイ セラミックを手首に巻くと、この新作ブレスレットの快適さには驚かされる。正直に言えば、だからこそ新作ブレスレットを得ただけの“新作ではない”時計について、こうして必要以上に長々と書いてしまうほど、ずっと頭から離れなかったのだ。セラミックには意外なほどの重量感があり、ストラップ仕様ではややケースだけが強調されて見えていたバランスを、見た目にも装着感にも改善してくれる。そしてオールセラミックならではの、なめらかで心地よい装着感もいい。最初に触れたとき、ひんやりとした感触がほんの少しだけ伝わるのもまた魅力だ。加えてこの時計には、一般的な41mmのブラックベイよりもわずかに小ぶりに見えるというおまけまである。ダークカラーの時計ならではの視覚効果が効いており、これはかなり大きな美点だと思う。もちろん、ラインナップのなかで最もタフでツール感あふれる1本かと言えばまったくそうではない。むしろその対極にあると言っていい。ただ、これを腕に着けると、ほんの少しだけ自分がクールになったような気分になれるのだ。
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Photos by TanTan Wang
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