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Introducing IWCがインヂュニアを拡大―パーペチュアルカレンダー、トゥールビヨン、セラミックなどの複雑機構と素材を採用(編集部撮り下ろし)

インヂュニアのラインアップが、予想外のかたちで広がっている。

IWCはインヂュニアコレクションの拡充を続け、今週ジュネーブで5つの新作を発表した。2023年の登場以来、現行のインヂュニアは4つの異なるサイズにわたり、多様な素材や複雑機構を取り入れてきたが、そのいずれもが1976年のジェラルド・ジェンタによるSL Ref.1832に着想を得た一体型デザインを基盤とする。本コレクションの拡張は、その基礎となるデザインの強さを示すものだ。ちなみに今年でその誕生50周年を迎える。

IWC Ingenieurs 2026

 今回のモデルは、IWCが1976年のジェンタのデザインを現代的に解釈した初めての試みというわけではない。2013年にはインヂュニア・オートマティック Ref.3239が登場したが、これはブランドの新たな局面を象徴するモデルで、よりツールウォッチ的なシルエットを採用。その後クロノグラフ(2014年のレビューはこちら)を含むさまざまなバリエーションで展開された。インヂュニアは1950年代の本来のルーツに一時回帰したあと、洗練されたジェンタによる一体型ブレスレットデザインを纏って再登場。これはIWCがツールウォッチとしての出自を完全に捨てることなく、より上質な領域へとシフトしようとする意思の表れだった。

 2023年に登場したインヂュニア・オートマティック 40 Ref.3289は、発表時には比較的抑制の効いたアプローチを取っていた。スティール(SS)製モデルが3種類、チタン製モデルが1種類、そして唯一の差し色となるティールダイヤルを備えたモデルが1種類という構成だ。一体型ブレスレットの流行がピークを迎えてから数年経過していたとはいえ、これらは長期的な視点で設計されていた。単なるレトロな復刻モデルではなく、ジェンタの原初的な思想を現代的に表現したものだった。価格に対する評価はさておき、IWCはこの時計において細部までこだわり抜いたと言えるだろう。

IWC Ingenieurs 2026

 インヂュニアコレクションの中核は依然として40mmの時刻・日付表示を備えた3289だが、今年のWatches & Wondersで発表された新作は、それ以外のサイズで展開され、40mmモデルにはある程度の余裕が生まれている。それでは、今回発表された新しいインヂュニアを順に見ていこう。

インヂュニア・パーペチュアル・カレンダー 41 IW344904(チタン)
IWC Ingenieurs 2026

 2023年の新生インヂュニアでは、SS製モデル3種類に加え、グレーダイヤルにブラックアクセントを配したフルマット仕上げのチタン製モデルも登場していた。これはSS製モデルよりも価格が高かったため、ほとんど注目されることなく、ひっそりと成功を収めた。今年、IWCは同じモノクローム配色を採用した、2作目のチタン製インヂュニアを発表。念のため確認しておくと、内部にはパーペチュアルカレンダーを備えたCal.82600が搭載されている。グレーダイヤル上には針やアプライドインデックスを含め、すべての情報が黒で配置されており、これまでに目にしたことのないような、きわめてユニークなパーペチュアルカレンダーウォッチとなっている。

IWC Ingenieurs 2026
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 ケースは直径41.6mm×厚さ13.2mmだが、チタンの採用により装着感は軽快だ。自社製ムーブメント Cal.82600は、時刻とカレンダー機能の調整をリューズのみで行える点が特徴で、これはクルト・クラウス氏の設計の誇りでもある。インヂュニアは昨年、SS製ケースにこのムーブメントを初搭載したが、今回チタン製モデルが加わったことで、ブランド史上最も軽量なパーペチュアルカレンダーとなった。しかし656万7000円(税込)という価格を考えると、財布もこれまでで最も軽くなるかもしれない。

インヂュニア・トゥールビヨン 41 IW345901(18Kレッドゴールド)
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 昨年インヂュニアコレクションはセラミックだけでなく、35mmおよび40mmの18Kレッドゴールドモデルが登場したことで貴金属のラインナップも拡充された。今年は41mmのケースにレッドゴールドが初採用され、同コレクションで初めてCal.82905を搭載する。このムーブメントは、ダイヤルの6時位置に配された60秒トゥールビヨンを特徴としており、これまでにないドラマチックなインヂュニアだ。ゴールド製のケースとブレスレットは、オリーブグリーンのダイヤルとコントラストをなし、42mmのセラミック製モデルで始まったテーマをさらに発展させている。

IWC Ingenieurs 2026
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 IWCにおいて、2013年に発表されたユニークなインヂュニア・コンスタントフォース・トゥールビヨン以来、インヂュニアにトゥールビヨンが搭載されるのは初めてのこととなる。この最新作は、前作のような視覚的なインパクト(その複雑さは言うまでもない)には欠けるかもしれないが、フルゴールド製ブレスレットを備えた上品な外観はよりシックな雰囲気を醸し出し、その不足を十二分に補っている。本作は、前回“マルクス・ビューラー” ビッグパイロット・ウォッチに採用されていた、トゥールビヨンを備えた自動巻きムーブメント Cal.82905を搭載。ムーブメントはシースルーバックから眺めることができ、本モデルは100本限定生産となる。本稿執筆時点において、IWCは価格を公表していない。

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 本モデルにより、インヂュニアは複雑機構の領域をさらに拡張した。しかし同時にクロノグラフやGMTといった実用的な機能を飛び越え、いきなり最上位へ踏み込んでいる。これについてどう解釈するかは皆さん次第だが、ブランドイメージや希少性の観点において、その上昇傾向と確実に歩調を合わせている。

インヂュニア・オートマティック 42 IW338902(オリーブグリーンセラミック)
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 インヂュニア・オートマティック42には、ふたつ目のバリエーションが加わるが、これは引き続きセラミック素材を採用している。昨年はこのサイズで、ブラックのジルコニウムオキサイド・セラミックケースとブラックダイヤルを組み合わせたモデルが登場したが、今年はそれに続く形で、ゴールドのアクセントを効かせたオリーブグリーン仕様が投入される。アーストーンのセラミックはIWCにとって目新しいものではなく、モハーヴェやウッドランドといった過去の展開を踏まえれば、このオリーブグリーンもなじみのある色味だ。ダイヤルも同じグリーンで統一され、ゴールドの針とインデックスが温かみのあるコントラストを生み出している。

IWC Ingenieurs 2026
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 とはいえ、ゴールドのアクセントはそれだけにとどまらない。リューズにはレッドゴールドを、ベゼルを固定する5本のビスには18K Armor Gold®(従来のゴールドよりもはるかに硬い素材)を採用。これらの要素は、この時計が持つ個性にやや意外性のあるひねりを加えており、昨年のよりシンプルなブラック×ブラックのモデルに比べて、評価の分かれる一本となる可能性が高い。

 このインヂュニアにはIWCの自社製ムーブメント Cal.82110が搭載されており、その姿はシースルーバックから見られる。厚さは11.5mmだが、セラミック素材の採用により装着時の負担は軽減されており、全体としては十分に着用しやすいサイズ感に収まっている。IW338902の価格は352万3300円(税込)だ。

インヂュニア・オートマティック 35 IW324911/IW324907(ジェムセット/ダークブルー)
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 最小サイズのインヂュニアにも、ふたつの新しいリファレンスが加わる。この世代では初となる、宝石があしらわれたベゼルを備えたモデルも登場。一見するとスペック上では、35mmというサイズは40mmとのあいだに大きなギャップがあるように思えるが、手首に載せるとしっくりくるはずだ。一体型デザインの特性上、数値以上に大きく感じるが、スケールダウンされたプロポーションは十分に成立している。まさに、自分たちが求めていたことに気づいていなかったインヂュニアだ。

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 このふたつの新リファレンスにより、IWCはこのデザインがフェミニンにもマスキュリンにも対応できる汎用性を備えていることを示している。ひとつ目はIW324911(280万2800円/税込)で、SS製ケースとブレスレットに、シルバーの“グリッド”ダイヤルを組み合わせ、45個のホワイトダイヤモンドをあしらったレッドゴールド製ベゼルがそれを囲む。やや意外性のある外観ではあるが、ベースデザインを新たな方向へと押し広げるものであり、今後さらにバリエーションが展開しそうだ。もう一方は、40mmで初登場したクラシックなネイビーブルーダイヤルが、今回35mmケースサイズのIW324907(168万1900円/税込)にも展開された。


我々の考え

IWCによるインヂュニアコレクションの拡充は着実なものだが、想像していたほど網羅的ではなく、やや保守的な傾向にある。マットグレーとブラックのチタン製パーペチュアルカレンダーは、今回のラインナップのなかで最も意外性のある存在だが、コレクションの文脈に収まっている。これらはいずれも、現在のインヂュニアの原型となったジェンタ設計のSL Ref.1832の発売50周年を記念するモデルではない。アニバーサリー疲れという現象もあるが、今回の機会こそ、IWCが新しいインヂュニアで型破りな試みを行い、従来の枠組みから飛び出す絶好のチャンスだ。発売から数年が経過した今、まさにそれが必要とされている。