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クイック解説
ユリス・ナルダンは、船舶用時計であるマリンクロノメーターの製作で世界的な評価を得たブランドとして知られていますが、同社が手掛ける作品のなかには、その影に隠れ忘れられがちな存在があります。それは天文時計です。
1980年代半ば、当時のCEOであった故ロルフ・W・シュナイダーと物理学者で天文学者であり天才的な時計師としても知られるルートヴィヒ・エクスリン博士とのタッグによって誕生した3本の天文複雑時計からなる天文三部作は、大きな話題に。そのユリス・ナルダンから、旧正月を迎えた今日、天文時計の最新作となるブラスト ムーンストラックが発表されました。
ムーンストラックは、月の自転(月齢)、地球から見た太陽の見かけの動きと潮の干満を時計の上で表現する同社独自の機構で、天文三部作を手掛けたルートヴィヒ・エクスリン博士も製作に関わっています。実はムーンストラックの登場は今作が初めてではありません。2009年のエグゼクティブ ムーンストラックでデビューし、2017年にはワールドタイム機構を搭載したエグゼクティブ ムーンストラック ワールドタイマーがリリースされています。
新作のブラスト ムーンストラックは、その名のとおりムーンストラックを2020年に発表された新たなコアコレクションであるブラストのパッケージに収めたモデルです。いくつものファセットを備えた鋭角的なラグを持つブラストの特徴的なケースは、ブラックセラミックとブラックDLCコーティングが施された直径45mmのチタン製。アリゲーター、ベルベット、またはラバーのブラックストラップが付属します。
内部に搭載されるムーブメントは、自社製の自動巻きCal.UN-106。これは先代のエグゼクティブ ムーンストラック ワールドタイマーと共通です。シリコン素材を採用した脱進機とヒゲゼンマイや、2万8800振動/時の振動数や約50時間のパワーリザーブなどスペックの変更はありません。基本的に先代をベースに大幅なデザインアップデートが施されたモデルということです。
地球、月、太陽の位置関係は、文字盤上の3枚のディスクによって再現されています。中央にある地球を表すアースディスクは、ドーム型のサファイアクリスタル製で、北極点から見下ろした北半球の大陸が内側にマイクロエングレービングされています。その外周にはリアルな質感でペイントされた月を表すムーンディスクがあり、さらに外周には希少なブロンザイトと呼ばれる鉱物で太陽を表現したムーンディスクが備えられています。
特に興味深いと思ったのは、ムーンフェイズ。月の軌道を表す楕円の先に設けられた丸い開口部を用いて、その下にあるムーンディスクを表示することで月の満ち欠けを表しています。太陽の動きにあわせて1日に1回転し、29日12時間41分9.3秒でダイヤルを1周。天体の位置関係まで再現されているため、現実世界と同じように月の明るい面が常に太陽の方向を向くように動きます。
時刻は、アベンチュリン製のディスクで描かれた夜空を背景に表示されます。日付はアースディスクの外周に配された18Kローズゴールド製のリングを、夜光塗料が塗布された三角形の針で示すポインターデイト表示式。
また、ワールドタイマーとして世界の24のタイムゾーンに自由に設定することができます。対応する都市名が記された固定フランジと24時間表示としても機能するサンディスクを併用することで世界各国の時刻をすぐに読み取ることができます。
さらに8時位置と10時位置のプッシュボタンを押すことで時針だけを素早く1時間単位で前進と後退させられるため、旅行中などにも便利に活用できる仕様となっています。
月と太陽の引力によって引き起こされる潮汐は、事前にどの位置関係で小潮か大潮なのかの知識を必要としますが、ムーンディスクとサンディスクの位置関係から読み取ることができます。もっと知りたい方は、ジャック・フォースターの記事「月齢、潮汐、そして洪水について」をぜひご覧ください。
あなたの周りの世界とはるか上空の宇宙をつなぐユリス・ナルダン ブラスト ムーンストラックは、限定生産で価格は951万5000円(税込)です。
ファーストインプレッション
ブラスト ムーンストラックには、本当に数多くの機能が搭載されています。プレスリリースを読み、スペックシートを眺めているだけで頭が混乱して「これはまさにムーンストラック(狂気のよう)な時計だな」と思いました。ですが、本機が優れているのは、ローカルタイム、ホームタイムや日付に至るまで、ほとんどすべての機能をリューズで設定できるということ。天体の動きを忠実に再現したハイコンプリケーションでありながらユーザビリティは高められているのです。
2020年に発表されたばかりのブラストは、ユリス・ナルダンの新たな方向性を位置づけるコレクションです。トゥールビヨン搭載の初代ブラスト、フライングトゥールビヨンにプチソヌリ機構のアワーストライカーを搭載した第2作のブラスト アワーストライカー、そして今日発表されたブラスト ムーンストラックを見ると、同社のハイコンプリケーションウォッチをモダンにアピールするプラットフォームとして構築しているように感じます。
今の市場の流れやトレンドから言えば、ブラストデザインにブレスレットをつけて、しかも素材をスティールにしたらどうなるだろう...なんて想像してしまいますが、ユリス・ナルダンはただ時流に乗るのではなく、これからも独自のやり方で同社のハイウォッチメイキングをアピールしていくのでしょう。
基本情報
ブランド: ユリス・ナルダン(Ulysse Nardin)
モデル名: ブラスト ムーンストラック(Blast Moonstruck)
型番: 1063-400-2A/3A
直径: 45mm
厚さ: N/A
ケース素材: ブラックセラミック、ブラックDLCチタン
文字盤色: ブラック、ピンクゴールド
インデックス: アラビア数字
夜光: あり、時、分、日付針
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: ブラックDLCチタンとピンクゴールド製のSYNCフォールディングクラスプ付きのブラックアリゲーターストラップ(またはベルベット/ラバーストラップ)
ムーブメント情報
キャリバー: Cal.UN-106
機構: 時、分、日付、ムーンフェイズ、朔望月、潮汐係数、ワールドタイム、デュアルタイム、地球から見える太陽と月の位置
パワーリザーブ: 50時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時(4Hz)
石数: 42
クロノメーター認定: なし
追加情報: 総部品数335個
価格 & 発売時期
価格: 951万5000円(税込)
発売時期: 今春予定
限定: 限定生産
詳細は、ユリス・ナルダン公式サイトへ。