ADVERTISEMENT
トム・ブレイディ(Tom Brady)氏が時計好きであることはよく知られている。12月にサザビーズで開催される“The GOAT Collection: Watches & Treasures from Tom Brady”というオークションでは、ブレイディ氏の時計コレクションが出品され、彼の時計への愛が改めて示されることになる。これまでにも彼はHODINKEEに登場し、自身のIWC(ビッグ・パイロット・ウォッチ・トップガン “モハーヴェ・デザート”)について記事を書いたり、HODINKEE Radioで時計について語ったりしている。ブレイディ氏のキャリアにまつわる記念品が出品される同オークションには、彼の時計5本も含まれている。
ブレイディ氏自身が語ったところによると、彼が時計の世界に足を踏み入れたのは初めてスーパーボウルを優勝した2002年、マンハッタンにあるトルノーを訪れ、IWCのGST オートマティックアラームを手にしたことがきっかけだった。その後の2019年にはタグ・ホイヤーのアンバサダーを務めた時期を経てIWCのアンバサダーに就任し、彼の時計の旅がひとつの区切りを迎えた。(2度目の)フットボール引退後、彼は時計界のフリーエージェントとなり、ロレックス デイデイト“ジグソーダイヤル”やヴィンテージのロレックス デイトナ “ジョン・プレイヤー・スペシャル”など、さまざまな時計を着用している姿が目撃された。
ブレイディ氏が身につけていたかなで最も注目すべき時計のひとつが、彼のカスタム仕様のオーデマ ピゲ ロイヤル オーク フライング トゥールビヨンであり、今回オークションに出品されている。このトゥールビヨンは独特なサーモンのタペストリーパターンに加え、数字の代わりにバゲットカットの“T-O-M-VII-B-R-A-D-Y”の文字が並び、さらにベゼルにも多数のバゲットカットダイヤモンドがセットされている。さらにローターにはブレイディ氏のサインも刻まれている。
過去数年、ブレイディ氏が多くの素晴らしい時計を身につけている姿を目にしてきた。ヴィンテージデイトナや、パテック フィリップの2499 パーペチュアル カレンダー クロノグラフ、さらにはIWCのトゥールビヨン スケレッテまでだ。ただ彼には失礼ではあるが、個人的には今回のモデルがいちばんのお気に入りではない。たとえそれがオーデマ ピゲ最高峰の技術が存分に発揮されていたとしても。
このロイヤル オーク トゥールビヨンを見て、ジョン・ムレイニー(John Mulaney)氏がビバリーヒルズについて語ったジョークを思い出す。“ビバリーヒルズはおしゃれ…かな。DJキャレド(DJ Khaled)が着ているものは高価だけど、見てうらやましくはならない、そんな感じの高級さだ”と。まさにこの時計に対して抱く気持ちもそれに近い。推定価格は40万~80万ドル(日本円で約5760万~1億1580万円)だが、それでも心を揺さぶられるわけではない。そしてこれは(インディアナポリス・)コルツファンの意見として言っている。ブレイディ氏は少なくともその“VII”回のスーパーボウルのうち、何回かコルツを打ち破ってきた。だからその点も考慮して欲しい。
サザビーズにとってこのオークションは、シルベスター・スタローン(Sylvester Stallone)氏のパテック フィリップ グランドマスター・チャイムを540万ドル(日本円で約7億7720万円)を売却した直後に続く、ひとりの大物セレブを引き込む大きな機会である。同オークションでは全部で47点のアイテムが出品され、そのうち27点が時計で(推定総額300万〜600万ドル、日本円で約4憶3165万~8億6330万円)、残りの20点がスポーツ関連の品(推定300万〜500万ドル、日本円で約4憶3165万~7億1980万円)となっている。
ロイヤル オーク フライング トゥールビヨンとともに、ブレイディ氏のコレクションからさらに4本の時計が今回のオークションに出品されている。そのひとつがリシャール・ミル 35-03 “ベイビー ナダル”だ。これはRMが可変慣性モーメント“バタフライ”ローターを導入したモデルであり、7時位置にあるプッシャーを使ってローターの動作を調整できる仕組みだ。この調整可能なローターのアイデアは、ふたつの翼のようなパーツ位置を変えることでローターの慣性を変化させるというもの。7時位置のプッシャーを押すと“スポーツモード”に入り、ローターの動作がブロックされる。ブレイディ氏はこれまでも複数のリシャール・ミルを着用している姿が目撃されており、このモデルもその一部として注目されている。推定価格は30万〜50万ドル(日本円で約4320万~7200万円)。
名高いアスリートであるブレイディ氏は、やはり必携のパテック フィリップ ノーチラスとロレックス デイデイトも所有している。ノーチラスは5980R、ローズゴールドのクロノグラフモデルだ。パテックは2013年にこのモデルにブレスレットを追加している。なぜならすべてのノーチラスにはブレスレットが必要だからだ。当時、ベン(・クライマー)は“もしあなたがそういう男なら、これがまさにその時計だ。私が言いたいことは分かるはずだ”と語っていた。そして、おそらくブレイディ氏ほど“そういう男”にふさわしい人物はいないだろう。彼が2017年にこの5980を手にして以来、それを着用している写真を見つけることができる。推定価格は18万〜24万ドル(日本円で約2590万~3460万円)。
最近、有償のアンバサダー契約から解放されたブレイディ氏だが、サザビーズの出品物のひとつは、彼がIWCと関わっていたころを思い起こさせる。またその関係は、とても自然に始まったことを忘れてはならない。彼がトルノーで購入したGST オートマティックアラームは、実は購入する前から長いあいだスクリーンセーバーに設定していたと語っているが、これは有名な話だ。
ブレイディ氏がタンパベイ・バッカニアーズで最後にスーパーボウルを制した際、ロンバルディ・トロフィーをタンパ湾に投げ入れたパレードを覚えているかもしれないが、そのとき彼が着用していたのがこのIWC トップ・ガン エディション “SFTI”だ。推定価格は1万2000〜1万8000ドル(日本円で約170万~260万円)。
サザビーズは時計に加え、ブレイディ氏のキャリアにまつわる記念品も出品した。彼がNFLコンバインで40ヤードダッシュの際に着用したシャツ(推定価格10万〜20万ドル、日本円で約1440万~2880万円)、ミシガン大学時代の最後の試合で着用したジャージ(推定価格30万〜50万ドル、日本円で約4320万~7200万円)、そしてタンパベイ時代に使用したヘルメット(推定価格10万〜15万ドル、日本円で約1440万~2160万円)などがある。
2022年の熱狂的な時期に、ブレイディ氏のルーキーカードが230万ドル(日本円で約3億3140万円)で売却され、フットボールカードとしては史上3番目に高額な取引となった。時計と同様、あらゆるコレクターズアイテムの市場はそのあと落ち着きを見せている。それでもなおブレイディ氏への関心は根強い。最近では日曜日にフィールドで活躍する代わりに、Netflixでジョークのネタにされているものの、彼の人気は健在だ。
今回のオークションにブレイディ氏の名が付くことで、どれほどの“ブレイディ・プレミアム”が加わるのか非常に興味深い。とくにロイヤル オーク フライング トゥールビヨンは、そのダイヤモンドがまさに“ブレイディ”を象徴しているかのようで、間違いなく彼自身よりも高額な落札価格を記録するだろう。しかしほかの時計に関しては、ブレイディ氏=GOAT(史上最高選手)というイメージと結びつけにくい部分もある。もちろん出自は時計の価値に影響するが、その影響はどの程度表れるだろうか?
これらの注目アイテムを含む全47点のThe GOAT Collectionは、12月10日のサザビーズ・ニューヨークオークションにかけられます。また、オークションの前週にはプレビューも行われる予定です。詳細については、サザビーズの公式サイトをご覧ください。