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One to Watch インターネット時代のカリフォルニア発新興ウォッチメーカー、Vaerこそ我々が待ち望んだものだ

あなたのZ世代の甥っ子が好きになるだろうし、あなた自身も好きになるだろう。

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Vaerは、あなたに語りかけない。そう、あなた。今、HODINKEEを読んでいるあなただ。

 彼らがそれを望んでいないわけではない。実際、彼らのデザインはインサイド・ベースボールのヴィンテージウォッチをモチーフにしたものが多く、それはHODINKEEのユーザーの暗黙の了解と言える。彼らは、より多くの人にこの趣味を知ってもらいたいそうなのだ。まだ時計を持っていない人たちや、創業者であるライアン・トレス氏とレーガン・クック氏のように、若く、技術に精通し、流行に敏感な人たちに。しかし彼らは、品質管理よりもインスタグラムのインフルエンサーによるマーケティングキャンペーンに注意を払うような「ライフスタイル」ウォッチブランドになるのではなく、時計のクラシカルな美しさで人々を夢中にさせたいと考えているのだ。

A watch with a black dial laying on its side.

S5 標準モデルのフィールドウォッチ。

 例えば、最も人気のある時計を見てみよう。ねじ込み式リューズ、100m防水、サファイアクリスタル、アメリカ製クオーツムーブメントを搭載した36mmノーデイトのツールウオッチだ。組み立てもアメリカ国内だ。アリゾナ州ファウンテンヒルズにあるスタートアップ企業、FTS(Fine Timepiece Solutions)が担っている。FTSでは、組み立て、修理、そして「アメリクォーツ」と呼ばれる独自のクォーツムーブメントの提供も開始している。

 筋金入りの純粋主義な時計愛好家を惹きつけるために作られたように聞こえるし、彼らはそういう人が買うのを止めないだろうが、彼らのターゲットはルーキーなのだ。

 クック氏は次のように語った。「これまでは、すでに10本の時計を持っているようなコレクターのために時計を作る傾向がありました。私たちが考えているのは、1本の時計を購入するお客様のことで、それが初めての時計かもしれないようなお客様のことです。タイムレスなものを作るというのが基本的な考え方です」

オリジン・ストーリー

 トーレス氏とクック氏は、2010年代半ばに同じテクノロジー系企業で働いていた。カリフォルニア出身のトーレス氏は、朝、会社に行く前にサーフィンをするのが習慣だった。しかし、問題があった。大学卒業直後の収入では、ビーチからオフィスまで使える時計が買えなかったのだ。ダニエル・ウェリントンなどの時計は朝の波に耐えられない。G-SHOCKは波打ち際では問題ないが、オフィスで着用するには少しかさばる。

A GMT watch with a red and blue bezel laying down on a piece of brown leather.

スイス製のG7 Meridian GMT

 トーレス氏はまずデザインをスケッチし、それを会社の工業デザイナーであるクック氏に持ち込んだ。酷使に耐え、会社でも通用し、さらに手ごろな価格の時計は可能だろうか? そしてその結果、Vaerが誕生した。

 10気圧防水。クオーツ。サファイアクリスタル。トーレス氏とクック氏が最初にフォーカスしたのは、それだけだ。最初はシンプルだったものが、時間とともに複雑になっていくのは常で、現在のVaerコレクションは159ドルから1200ドルまでの時計で構成されている。アメリカ製のクオーツ時計もあれば、スイス製でETAのムーブメントを内蔵したGMTもある。これは、お客様が時計収集のどの位置にいても選択肢があるよう考慮したものだ。159ドルのクオーツ式フィールドウォッチを購入したとしても、1年後、2年後には同じデザインの自動巻きムーブメントにアップグレードしたくなるかもしれない。

A black dial field watch on a leather strap.

Images by James K. @waitlisted

A black dial dive watch on a leather strap.

 2016年の発売以来、自己資金で運営されているVaerは、一攫千金を狙うようなスキームではない。継続的な成功を収めた後、投資家や別の会社に高く売ろうという計画もない。

 「私たちは自分たちの貯金でこの会社を立ち上げました」とクック氏は言う。「例えば、サブマリーナーを買う代わりに、1万ドルをVaerの設立に充てました。時計は投資になりますが、私たちは自分自身に投資することにしたのです」

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我々がなぜ気に入ったか

 小規模で独立した時計メーカーが、既存システムを「壊す」として消費者への直接販売モデルを活用する。これは、今ではさほど斬新とは言えなくなったコンセプトだ。

 しかし、10月にニューヨークで開催された「Windup Watch Fair」でVaerを見たとき、私の目を引いたのは、創業者の率直な姿勢だった(そして、製品の質の高さだったが、これについては後述する)。

A black dial dive watch laying on top of a passport.

D4 アークティックソーラーダイブウォッチ

 多くの若い時計メーカーが、時計愛好家全部に気に入られるような時計を作ろうと無理をしているのを見てきた。彼らは、インスタグラムやフォーラムに多くの時間を費やし、すべての時計が理想的な基準に合致することが重要だと考えているのだ。問題は、彼らが対象としているのは、率直に言って、全体から見れば非常に小さな層であるということだ。若い時計メーカーにとって消費者に直接販売するモデルの良さは、製品に関するストーリーをコントロールできることだ。しかし、製品の価格や魅力に限界があるのであれば、何の意味もない。いくらストーリーテリングをしても、スケールアップすることはできない。

 Vaerのメンバーはこのことを理解している。彼らは幅広いセレクションを提供しているが、そのすべてが、マニアックな要素を取り入れた、クラシックで受け入れやすいスタイルで、しかも手の届きやすい価格なのだ。

 若い人が薄っぺらいファッションウォッチや2000年代の名残の44mm以上のリバイアサンで満足してしまわないよう、Vaerは、これまで見たことのない方法で人々を愛好家の世界へと導いている。

A wrist shot of a man wearing a GMT watch with a red and blue bezel. He is reaching into the inner pocket of his green jacket.

Image by James K. @waitlisted.

 クック氏は、「私たちは、一般的に時計を小さくすることを強く推奨しています。36mmでは小さすぎるというバイヤーの意識を変えたいのです。また、クオーツと機械式のどちらが優れているかということは言いません。両方の価値を説明し、お客様に選んでいただくのです。世の中の多くの人にとって1000ドルは大金です。そのため、クオーツは、アナログ時計をつけたいと思う人にとって入門的な役割を果たします。200ドルでその提案を試すのはずっと簡単ですから」

 Vaerのように2つの会話を同時に行うことは、何世紀もの経験を積んだスイスの高級時計ブランドにとっては難しいことだ。しかし、この二面性をいかに維持するかが、Vaerの成長を面白くしているのだ。

A black dial field watch with tan accents on a leather strap.

C5 トラディション ブラックUSA クオーツ

 この時計は、外観的には特に革新的というところはない。「オマージュ」という言葉を使いたくなるかもしれないが、それは厳しすぎる表現だと思う。C3 トラディション ブラックフィールドにはロレックスのエクスプローラーのような定番モデルの影響が見られ、D5 トロピック ダイブウォッチにはジャガー・ルクルトのディープシー アラームのようなディープカットのデザインが採用されている。また、小規模な時計メーカーにありがちな文字盤上のじゃまなロゴマークは、使っていない。

 退屈なものを繰り返すことはしていない。すべてが新鮮で刺激的に感じるのだ。

 「手頃な価格の時計市場に威厳があるとは思いません」とクック氏は言う。「時計の世界で最も強力で共鳴的なブランドは、極めて高いエントリーポイントを持つ高級品です。実際の市場は細分化されています。私たちはこれをチャンスと捉えています。私たちは、1万ドルの時計に含まれるすべての要素を備えた200ドルの時計を提供したいと考えています」

A black dial dive watch on a tan NATO-style strap lays down on a faded green background.

 私は、200ドル以下で40mm以下のツールウォッチがどれだけあるのかと考えた。あまりない。ベルトゥッチがあって、タイメックスが1、2本あるかな。他にもいくつかあるかもしれない。しかし、既存の選択肢の中で、Vaerのように米国での組み立てを提供しているものは思いつかない。

 それは、多くの人にとって本当の意味での付加価値だと思う。また、これは単なるマーケティング上のギミックではない。アメリカでの組み立ては、品質管理の面でも、時計製造についての知識を深める面でも、Vaerを支えているのだ。

A watchmaker holds the dial of a watch.

一部のVaerモデルでは、米国で組み立てを行っている。

A watchmaker holds an assembled watch head.
A watchmaker holds an assembled case, bezel, and crystal.

 「私たちは時計職人ではありません」とクック氏は語る。「ですが、アメリカで組み立てを行うことで、より多くの情報を得ることができました。仮にすべての部品をスイス製にしていたとしても、トルクや針のテンションなど、より複雑なディテールについては、はるかに知識が不足だったでしょう。組み立てを米国に持ってきたことで、私たちは成長し、製品もより良くなりました。プロセス全体をより身近に感じることができました」

 FTS社は、これまでにもベンラスType I 限定モデルの組み立てやワルダンへのクォーツ・ムーブメントの提供などを行ってきたが、「素晴らしいパートナーです」とトーレス氏は言う。

 「組み立てをアメリカに移したことで、我々のやり方は一変しました。海外の設計者だと選択肢が少ないですが、FTSでは各パーツの状態を確認することができます。また、ロットを重ねるごとに、プロセスを少しずつ改善しています。これは製品の品質にとって非常に良いことです」

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次に来るもの

 Vaerは設立してからまだ6年しか経っていないが、2021年は彼らにとって最大の年になりそうだ。春にはアメリクォーツを搭載した初の時計を、夏にはソーラークォーツを搭載した初のフィールドウォッチを発表し、最近ではスイス製のGMTの予約を開始するなど、この若い企業の製品群は新たな高みを目指している。

Two GMT watches laying side by side. One has a red and blue bezel, the other has a black bezel.

 今でもフルタイムの社員はクック氏とトーレス氏だけだが、ビジネスの現状を見るがぎり、これまで以上に高い自信を得ることができたようだ。

 「私たちは長い道のりを歩んできました」とクック氏。「私たちは自己資金で運営しています。私たちの成長は、人々がどれだけ私たちを気に入ってくれるかで決まります。本当に草の根的な活動で、一から作り上げてきました。製品に安定性を見出し、基盤を作ったので、それをできるだけ多くの人に見てもらいたいのです」

 製品は力強く、品揃えもこの2年間で飛躍的に増えた。Vaerによると、製品と収益における現在の割合は、クオーツと機械式で半々になるそうだ。しかし、新しいソーラークォーツモデルの成功により、クォーツ側に傾くと予想している。近い将来について、Vaerが語れる最大の展開は、より実験的でオフビートなオプションを備えた、追加の文字盤カラーの導入だ。

 しかし今、トーレス氏とクック氏は、ビジネスがここまで来たことに驚きを隠せない。

A white dial field watch on a bracelet.

 トーレス氏は、「私はデジタル分野ビジネスを学びました。他の人と同じようにアプリを作るものだと思っていました。純粋なデジタル、純粋なアプリ、純粋なテクノロジーから、今ではハードの商品を扱うようになりました。これは予想外でした」と言う。

 クック氏もじ意見だ。

「最も価値のある時計は、自分が最も長く身につける時計です。人々の思い出が込められたものを作ることは、とてもやりがいがあります。それは、私たちが販売するものよりもはるかに価値のあるものになります。時計が重要かつパーソナルな方法で、お客様の人生の一部となるのです」

Lead image by James K. @waitlisted

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Vaerの詳細はオンラインでご覧いただけます。