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オーデマ ピゲが製作したなかでも最も歴史的意義のある時計のひとつである“グロス ピエス”No.16869が、サザビーズ・ニューヨークで行われたオークションの早朝のセッションで落札され、当初控えめであった50万〜100万ドルのエスティメートを大きく上回る結果を叩き出した。ちなみにこの出来事の直前には、フィリップス・ニューヨークで開催されたフィリップス時計オークション: XIIIにて、フランシス・フォード・コッポラ(Francis Ford Coppola)氏の個人所有だったF.P.ジュルヌ FFCプロトタイプが1075万5000ドル(約16億7000万円)で落札され、こちらも話題となったばかりである。
“グロス ピエス”は、オルムステッド・コレクションに含まれるほかの時計、特にこれまで知られていなかったパテック フィリップの時計ほどメディアから注目はされていなかった。これは、400万ドルを超えるような高額落札が、パテック フィリップやロレックス、特に懐中時計の分野ではとりわけパテック フィリップ以外ではほとんど見られないからだ。
HODINKEEでは以前、この時計の詳細をIn-Depth記事で取り上げ、イギリス市場向けに製作されたスイス製複雑時計としてその知られざる歴史を掘り下げた。この懐中時計は、オーデマ ピゲの“ユニヴェルセル”と並ぶ当時の最も複雑な懐中時計であり、天文表示を備えた唯一の懐中時計、そしてトゥールビヨンを搭載する唯一知られた作品である。こうした複数の要素が重なった結果、激しい入札競争が生まれ、最終的に落札価格はハンマープライスで630万ドル(日本円で約9億8700万円)、手数料込みで773万6000ドル(日本円で約12億1200万円)に達した。
ふたつのムーブメントを搭載したパテック フィリップが、合計で500万ドル超えを記録。
会場が本格的に熱気づいたのは、まず市場初登場となる銀と金で仕立てられた、2系統の輪列を持つ10日巻き“プレス・パピエ”デスククロックの競売からだった。この時計は、ロバート・オルムステッドの生涯の多くの時間を、彼のベッドサイドで共に過ごしたとされるもので、最終的に手数料込みで273万4000ドル(日本円で約4億2800万円)で落札された。続いて登場したのは、ジョン・モトリー・モアヘッド(John Motley Morehead)特注のパテック フィリップ ダブルムーブメント ミニッツリピーター スプリットセコンド クロノグラフ(レジスター付き)であり、こちらはさらに高額の371万ドル(日本円で約5億8000万円)に到達した。次のロットも同じくダブルムーブメントのパテックで、こちらもこれまでパテック フィリップにすら知られていなかった作品である。ミニッツリピーターと2組の時分針のみを備えた比較的シンプルな構成ながら、結果は見事なもので249万ドル(日本円で約3億9000万円)で落札された(編注;オーデマ ピゲ “グロス ピエス”の詳細は、こちらの記事を読んで欲しい)。
いくつかのロットを挟み、コレクターたちがひと息ついたところで、再び“グロス ピエス”の入札が始まった。およそ6人の電話入札者と数名の会場入札者によって、価格は瞬く間に200万ドル、300万ドルを突破。元HODINKEE編集者で、現在はサザビーズのスペシャリストであるリッチ・フォードン(Rich Fordon)が、電話でクライアントのために強気の入札を続け、500万ドルを超える局面でも粘り強く競り合った。実際、フォードンは500万ドルの入札をわずか一瞬の差で競り勝ち、会場を沸かせた。その直後、ダヴィデ・パルメジャーニ(Davide Parmegiani)氏が笑いながら「(どちらが先に入札したか)揉めないようにね」と言って510万ドルを提示。入札はふたりの電話入札者とパルメジャーニ氏の三つ巴となり、彼は時折10万ドル刻みではなく20万ドル単位で金額を提示するという強気の姿勢を見せた。それでもフォードンのクライアントは怯まず、3者による白熱した攻防は、最後の一瞬まで続いた。
オークショニアのクララ・ケッシ(Clara Kessi)が630万ドル(日本円で約9億8700万円)でハンマーを振り下ろそうとした瞬間、彼女は「後悔しないでね(No regrets)」と声をかけた。するとダヴィデ・パルメジャーニ氏が笑いながら「大いに後悔するさ(A lot)」と返答し、その直後フォードンのクライアント(パドルナンバー847)に落札が決まった。オーデマ ピゲの時計におけるこれまでの最高落札額は、チャリティ目的で販売された世界に1本の“ブラックパンサー”コンセプトウォッチによる520万ドル(当時のレートで約6億7600万円)だったが、こうしたチャリティオークションの価格は多くのコレクターのあいだでは“実質的な記録”としては扱われないことが多い。チャリティを除く過去最高額は、2022年にサザビーズが落札したジェラルド・ジェンタ(Gerald Genta)本人のロイヤル オークが出した210万ドル(当時のレートで約2億7000万円)である。今回の結果は、初期のオーデマ ピゲを収集するコレクターにとって非常に興味深いものだ。というのも、この価格帯に到達することは、パテック フィリップでさえ滅多にないからである。そうした意味でも、今回の落札はオーデマ ピゲ製懐中時計にとってひとつの転換点となったと言っていいだろう。
編注;特に驚くことではないが、編集部では当初からこの時計がオーデマ ピゲによって落札されたと見ており、その予想は翌朝に発表された同社のプレスリリースによって正式に確認された。
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