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今週のヴィンテージウォッチ
HODINKEE本社のスタッフは、この水曜日(※)から本格的なホリデーに突入する。ニューヨークはとても寒く、5番街やソーホーを走り回ってホリデーショッピングの最後の仕上げをする代わりに、ヴィンテージデスクで頭を下げて、ミッドセンチュリーのツールウォッチやドレスウォッチの楽しさを皆さんと分かち合っているところだ。
こんな幸せなことはない。
※編注:本稿は2022年12月14日に公開された記事です。
今週は、パテック フィリップの初代エリプス(ローガンが好きでたまらない)、ワックマンの超クールなトリプルデイトクロノグラフ(サオリのイチオシ)など、たくさんの新商品を紹介するが、なかでも1970年代に作られたイエローゴールドのカルティエ ゴンドーロはこのホリデーシーズンに特別な人へのプレゼントとして最適だ(だからショーンも狙っているのかも)。だが、それだけではない。1960年代のセイコー スポーツマチック 5も見逃せない。新しいSKX スポーツスタイル GMTが必要なのは、このような昔のセイコー 5を手に入れたときだろうか? そしてスーパーコンプレッサーケースを持つ1970年代のダイバーズウォッチであるミルスのアルキメデス、1960年代のユニバーサル・ジュネーブのポールルーター スーパーが登場しているがHODINKEEのヴィンテージ部門の今週の更新では、後者を紹介している。
珍しいシルエットの貴金属製ドレスウォッチ、ファンキーな1970年代のダイバーズウォッチ、そしてクラシックな日常使いのツールウォッチなど、そう、いづれも年末年始のお買い物リストに必要なものばかりだ。いつもどおり、今週のセレクションのなかからスタッフのお気に入りをご紹介するが、ほかにもHODINKEE Shopに直接アクセスして、現在販売中のヴィンテージウォッチの全セレクションも見て欲しい。
1960年代製ワックマン トリプルデイト クロノグラフ
1950年代後半から1960年代にかけて、スイス時計産業は腕時計のデザインに明確な変化をもたらし、ドレスウォッチが主流だった時代から、刺激的な海外旅行やアウトドアアドベンチャーに重点を置いたスポーツウォッチの領域へと移行していった。このワックマンのトリプルデイト クロノグラフは、まるでドレスウォッチからスポーツウォッチへと市場の主流が移り変わる1960年代から、そのまま持ち出したかのような印象を受ける。
私がこのワックマンを最も気に入っているのは、時計史におけるユニークな融合の瞬間が37mmのコンパクトなケースのなかで表現されている点だ。
スタイル的に言えば、このワックマンはきちんとしたデザインでありながら、同時にちょっと冒険的でもあるバランスのとれたモデルだ。1940年代から1960年代にかけて、トリプルデイト、トリプルデイトクロノグラフが大流行した。ヴァシュロン・コンスタンタンの有名なトリプルカレンダーを搭載したRef.4240(現代のヒストリーク トリプルカレンダー 1942のベースとなったもの)はこの時期に製造され、さらにモバードで製造、ティファニーのサイン入り(そして販売もされた)トリプルデイトのRef.44776もあり、これはフランクリン・デラノ・ルーズベルト大統領が所有していたものだ。理由はどうであれ、トリプルデイトカレンダーはこの時代における機能の代表格だった。
トリプルデイトのデザインとフォーマットにクロノグラフ機能を加えることで、時計全体がよりスポーティに感じられ、ユニバーサル・ジュネーブのトリコンパックスや、伝説のスキー選手であるジャン・クロード・キリーが着用したことで有名になったロレックスの“キリー”クロノグラフを思い起こさせる。多くの時計メーカーがすぐにこれに続き、クラシックなトリプルデイト クロノグラフは、そのフォルムと機能により、過度な高級感や複雑さはなく、価格もパーペチュアルカレンダー クロノグラフよりもはるかに低く抑えられている。
歴史的に見ると、このワックマンの腕時計は、時計製造の歴史のなかで多くのスイス企業がアメリカでの販売網を積極的に拡大していた興味深い時期に作られたものだ。1930年代、アメリカの時計産業とその製品の競争力を維持するために、スイス時計を完成品として輸入し、アメリカ国内で販売するための関税は非常に高かった。そのため多くのスイス時計メーカーは、高い関税を避けるためにアメリカに拠点を置く企業と提携し、その企業がスイス時計メーカーの販売代理店となった。
ニューヨークを拠点とするワックマンは、この時代最も著名なディストリビューターのひとつとなり、特にブライトリングとの関係で大きな成功を収めたことで知られている。このようなアメリカの代理店の多くは、国内販売用に入荷した時計のダイヤルに社名を入れるようになった。そのため、このワックマンのトリプルデイト クロノグラフは、この時計が誕生した同時期にワクマンが代理店を務めていたチャールズ・ジガンデ社が製造したトリプルデイト クロノグラフと酷似しているのだ。
表面的にはシャープな印象で、ダイヤルを乱すことなく、適度な複雑さと情報量を備えているのがこのワックマンの特徴だ。この時計がどのように誕生したかについての裏話も興味深いもので、結局のところ、ヴィンテージウォッチは歴史から切り離すことはできないのだ。この風変わりなワックマンについて、詳しくはこちらでご覧ください。
1970年代製カルティエ ゴンドーロ 18Kイエローゴールド
1973年にカルティエの時計部門は、いや、カルティエ全体が飛躍の年を迎えた。この年、カルティエはロンドン、パリ、ニューヨークの3つのメゾンに分かれていたが、新たな投資家グループのリーダーシップのもと、ひとつの組織としてまとまり始めたのだ。
経営陣が大きく変わると同時に、時計部門がすべてシステム化され、最も有名な時計のデザインとコレクションが初めて連続生産されることになった。ご存じの方も多いだろう。ヴァンドーム、サンチュール、ファベルジェ、ベニュワール、ゴンドーロ、エリプス、サントス、クリスタラー、クッサン、スクエア、タンクノルマル、タンク ルイ・カルティエなどだ。
現代のブランドが、1暦年中に12種類ものモデルを同時に生産することは考えらない。しかもダイヤルの変更だけでなく、同じケースを複数サイズ用意したわけではない。12種類のケース形状、そのうちの11種類はスモールサイズとラージサイズのいずれかが即座に用意された。これは新しいSKUをどんどん増やし、カルティエが時計製造に大規模な投資をする用意があることを外部に知らせようとしたのだろう。
このように新しく登場した時計のなかには、カルティエの定番となったものもあれば、徐々にコレクターのカルト的な存在になったものもある。そして、その一方で比較的目立たず、今か今かと復活の時を待っているものもある。定番となった時計は、ルイ・カルティエ(時折L.C.と略される)やサントス(約5年前、スティーブンのレビュー以来、個人的にずっと欲しいと思っていた)など、簡単に見分けがつくものばかりだ。
本格的なコレクターはベニュワールやノルマルを追い求める傾向があるが、今日はそんなカルティエのデザインのなかで、まだ輝く機会を待っている、最後に残った一群を紹介する。ゴンドーロ(フランス語でゴンドラの意)は、カルティエの時計デザイン言語のなかにすんなり入る時計で、ケースは四角く、ダイヤルは白、視認性の高いブラックのローマ数字と青のソード針が特徴だ。
しかし、大げさでなく、派手でなくとも、このケースが加えるものがゴンドーロを特別なものにしている。スクエアデザインからクッションのようなデザインへと進化し、トノーになり過ぎない適度な(言葉は悪いが)ビジュアルの膨らみがゴンドーロの持ち味だ。そして忘れてはならないのが、あの段差のあるケースである。HODINKEE Shopでじっくりと見て欲しい。
1970年代製パテック フィリップ エリプス Ref.3548J 18Kイエローゴールド
ドレスウォッチといえば、控えめな印象があるのではないだろうか? 少なくとも、1960年代後半のパテック フィリップのデザイン部門にいわせれば、そうではない。1960年代後半、パテック フィリップは“エリプス”と名付けたブルー&ゴールドの腕時計を発表し、時計界に衝撃を与えた。
今日のエリプスを考えるとき、少し小さい、あるいは堅苦しい、あるいは時代遅れでさえあると考えるのは簡単だが、ちょっとユーモアを持って、エリプスが最初に登場した50年以上前のパテック フィリップのカタログの状態を考えてみて欲しい。見渡す限り、カラトラバとコンプリケーションだった。カラーバリエーションに興味があっても、あまり選択肢はなかった。エリプスは、貴金属製の卵型ケースと、特殊な化学処理によってエレクトリックブルーの色調を帯びたユニークな金無垢のダイヤルで、世界に衝撃を与えたのである。
初代エリプスには2種類のケースがあり、伝統的なラグの有無が主な違いとなっている。エリプス Ref.3546はよりオーソドックスなラグで、エリプス Ref.3548(今回紹介するモデル)はラグが隠されており、ケースはまるで手首に浮いているかのように見える。
そのスリムなケースに収められた手巻きCal.23-300が、このモデルをさらに魅力的なものにしている。Cal.23-300は、ブレゲヒゲゼンマイとフリースプラングテンプを搭載し、パテック フィリップが製造した10リーニュ手巻きムーブメントのなかでも最高級とされる。
エリプスは、ドレスウォッチとしては驚くべき二面性を持っている。その派手な外観とは裏腹に、袖口の下に隠せるほどスマートでスリムなフォルムが特徴なのだ。私は一般的にカラフルで大胆な服を敬遠する人間ではないが、パテック フィリップのエリプスは私が非常に個人的なスタイルで答える方法を知らない美的挑戦を提起していることを認めざるを得ない。もし、あなたが挑戦する気があるなら、このエリプスを今すぐ、こちらであなたのものにすることができる。
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