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Photos by Anthony Traina
今年はブライトリングの創業140周年である。ほかの優れた時計ブランドと同様に、ブランドはさまざまな方法でその歴史を祝っているが、先週、歴史的なブライトリングウォッチの巡回型展示会が地元シカゴのブライトリングブティックに立ち寄ると聞き、驚きとよろこびを感じた。コレクションにはコックピットクロックからブライトリング エマージェンシーまで、17本のヴィンテージブライトリングがラインナップされている。
コレクションはシカゴから始まったが、年内はアメリカ各地を巡回展示する予定なので、もしかしたらあなたの地域にもやってくるかもしれない。ブライトリングは世界各地でも同様の巡回型展示を開催している。
ブライトリングのことだから、コレクションは明らかにクロノグラフとアビエーションウォッチに偏っている。レオン・ブライトリングは1884年に会社を設立したが、1914年に亡くなり、その後息子のガストンに引き継がれ、最終的にはウィリーに引き継がれた。
ガストンはブライトリングにすぐに影響を与え、2時位置に独立したプッシャーを備えた初の腕時計用クロノグラフを導入した。これにより、初のモノプッシャー クロノグラフが誕生したのである。ブライトリングは超初期のモノプッシャーのひとつを展示していたが、特に1930年代に製造されたこちらのやや後期のモデルが私には印象的だった。
ブライトリングのクロノグラフといえばナビタイマーである。しかしナビタイマーの前にブライトリングは1942年にクロノマットを発表した。クロノマットには計算尺が追加されており、その仕組みは28回説明を受けてもまだ理解しきれていないが計算に役立つものだ。ブライトリングは、いまではこれを“元祖スマートウォッチ”とまで呼んでいる。クロノマットとナビタイマーを並べて見るとその共通点は明らかだ。クロノマットは小さくてシンプルな文字盤を持ちながらも、ナビタイマーに見られる多くの機能的かつ美的な特徴が確立されていた。
宇宙で初めて着用されたスイス製腕時計は、1962年5月24日にスコット・カーペンターが地球を周回する2番目のアメリカ人宇宙飛行士となった際彼の手首にあったブライトリング コスモノートである。2年前、ブライトリングはその正確な時計を公開した。コスモノートはナビタイマーをベースにしたモデルで、それより少し大きく、広大な宇宙空間のなかで昼夜を区別するための24時間表示の文字盤を備えている。
ここで、ブライトリングのツールとパイロットクロノグラフから少し離れた話をしよう。1940年代に、ブライトリングは大きくて頑丈なパイロットウォッチに代わるエレガントなクロノグラフが必要だと考えた。それからブランドのエレガントかつスタイリッシュなクロノグラフとして、1943年にブライトリング プレミエを発表した。長年にわたり、ブライトリングはプレミエをスティール、ゴールド、クローム、さらにあらゆる種類の文字盤など、数十種類のバリエーションで製造。すべてをカタログ化するのは計算尺と同じくらい複雑に思えるが、昨年ブランドはプレミエの80周年を祝した素晴らしい本を出版した。
トップタイムは、ブライトリングがクロノグラフにスタイルをもたらすための次なる試みであった。1960年代に導入されたトップタイムコレクションは、若い層をターゲットにデザインされた。ケースと文字盤のデザインはシンプルかつスリムであり、特に計算尺と比較すると際立っている。当然、ロレックスやホイヤー、UG(ユニバーサル・ジュネーブ)などの競合他社に似た要素もあるが、トップタイムは独自の存在感を確立した。おそらく最も有名なのは、ジェームズ・ボンドが『007/サンダーボール作戦』でトップタイム(Ref.2002)を着用していたことだろう。
もちろん、ブライトリングのすべてがパイロットやアビエーション、宇宙に関連するわけではない。ブランドは1957年にダイバーズウォッチであるスーパーオーシャンを発表した。現在、スーパーオーシャンはすり鉢状のベゼルで知られており、コレクターたちに愛されている。
ブライトリングがクロノグラフを水中に持ち込む方法を考え始めるのに、時間はかからなかった。初代スーパーオーシャンのあと、すぐにスーパーオーシャン“スローモーション”クロノグラフが登場した。スイープ秒針をクロノグラフの分計測用カウンターに置き換え、ダイビングのタイミングを測るようにしたものだ。6時位置の窓には、クロノグラフが作動中かどうかを示すインジケーターがある。この時計は当サイトでも何度も取り上げているが、見るたびに新鮮な魅力を感じる。
クォーツが主流の時代に、ブライトリングは1983年にクロノマットを発表した。これは、イタリアのフレッチェ・トリコローリというジェットチームのために設計された自動巻き時計である。ベゼルには、15分刻みで配置された一目でわかるライダータブが配されているのが特徴だ。イタリア出身のジェンティーレ氏は、イタリアで育ったころ、クロノマットがすべてだったと語ってくれた。
ブライトリングのエマージェンシーモデルなくして、現代のブライトリングの物語を語ることはできない。
そして、エマージェンシーとはまったく逆のものもある。ホワイトゴールドでできたヴィンテージブライトリングのカクテルウォッチだ。1940年代には、ブライトリングはさまざまなカクテルウォッチを製造していた。このような時計はパテック、オメガ、あるいはロレックスの展示会で見かけることはあっても、ブライトリングから出てくるとは思わないかもしれない。
最後に、20世紀におけるブライトリングのクロノグラフウォッチのノウハウは、“プロジェクト99”に結実した。これはブライトリングとホイヤー、後にハミルトンとデュボア・デプラによる共同プロジェクトで、自動巻きクロノグラフを製作するものだった(ジェフ・スタインによる素晴らしい記事はこちらから)。こうして誕生したのが、1969年に発表されたCal.11である。ブライトリングはこの自動巻きクロノグラフのキャリバーを“クロノマチック”に搭載。そしてホイヤーとハミルトンも、初期の自動巻きクロノに同じ名前を使用した。
これらの時計を見せてくれた、また写真を撮らせてくれたシカゴのブライトリングブティックとブライトリングのヘリテージ部門責任者ジャンフランコ・ジェンティーレ氏に感謝する。