Introducing: オリス　プロパイロット X キャリバー400は同社の自社製ムーブメントを新たな高みへと導く

我々が知っていること

新しいオリスプロパイロットX キャリバー400を紹介しよう。チタン製で、グレー、ブルー、サーモンの3色のダイヤルがある。そして内部にはオリス Cal.400を搭載されている。

　2021年6月にオリス自社製Cal.400が登場したとき、それはオリス、そしてより大きなスケールで業界の新たなスタンダードとなった。手の届きやすい価格と信頼性を両立させるためのものであることが明確になった。120時間のパワーリザーブ、耐磁性、10年のサービスインターバルを備え、手ごろな価格の自社製キャリバーの水準を一気に引き上げたのだ。このムーブメントはアクイスに搭載され、新しいムーブメントの持つ飾り気のない、古き良き時代のイデオロギーに完璧にマッチしている。

　Cal.400以前、オリスが自社開発した唯一のものは、先鋭的なCal.115だった。このキャリバーはスケルトンムーブメントで、10日間のパワーリザーブとノンリニアパワーリザーブインジケーター、そして主ゼンマイにオリス独自の新合金を使用している。ビッグクラウンプロパイロットX キャリバー115を一目見れば、オリスが独自の知的財産を開発することにかけて、ほかを寄せ付けないメーカーであることは明らかだ。

　では、プロパイロットX キャリバー400はどこに位置するのだろうか。ちょうどその中間、スイートスポットに位置している。サンドブラストとサテン仕上げが施されたハイテクチタンを採用し、ミニマルなダイヤルデザインは控えめで堂々としており、シンプルなエレガンスを醸し出している。オリスがCal.400を新しいラインに展開するのは時間の問題だった。これまでにアクイスライン、ダイバー65、ビッグクラウンポインターデイトに搭載されてきた。

我々が思うこと

プロパイロットX キャリバー400は、Cal.400のこれまでで最高の応用例かもしれない。オリスはこの時計を、第一に“メカニックの喜び”、第二に“アヴィエーションとのつながり”を称えるものとして巧みに位置づけた。このブランドは常に愛好家コミュニティに響く強い視点を持ち続けている。この時計に関するプレスリリースのなかで、オリスは「オリスが展開するのは100%機械式時計です。クォーツはひとつもありません。そして確実にスマートウォッチもないのです」」と、機械式時計製造へのこだわりをアピールしている。

現代のテクノロジーは非常にスマートで、私たちの多くはその仕組みを理解していません。AIへの急速なシフトは、私たちのデバイスと、それがどのように機能するのかを理解する私たちとの距離を縮めるだけでしょう。これこそが機械式時計が愛される多くの理由のひとつです。機械式時計はテクノロジーの眩しい光に対する解毒剤です。脱進機の歯車が振動し、クロノグラフのプッシュボタンがセンターセコンドを着実に進めるのを見ると、安心感を覚えるものです。詩的でもある。喜びさえ感じるのです。

　そして、これこそがプロパイロットX キャリバー400のすべてなのだ。航空業界とのつながりや、真偽のほどが疑わしい歴史的出来事に関するストーリーなど、作為的なものは一切ない。ただ、非常によくできた機械式時計だということだ。オリスはまともな時計を製造しているのだから、ここで必ずしもマーケティングストーリーを作る必要はないのだ。

　ダイヤルのレイアウトはバランスと視認性に優れ、これまでアラビア数字のみを採用してきたプロパイロットに、まったく新しい個性を与えている。チタンのような宇宙時代の素材と伝統的な外観のダイヤルの組み合わせは、珍しく、非常に魅力的だ。この時計はプロパイロットのラインナップに内包されるものの、決して「航空機！」とアピールするようなものではない。ダイバーでなくてもダイバーズ65 コットンキャンディを身につけてもいいし、同様にプロパイロットX キャリバー400の魅力を知るのに航空マニアである必要がないのも確かだ。実際、購入者の大半は航空業界の人々ではなく、自社製ムーブメントを搭載した優れたデザインの普遍的な魅力に惹かれて購入するのではないかと私は予想する。この時計について、“彼らはこれを正しく理解した”ということ以外に、これ以上言うことはないだろう。