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先週、HODINKEE編集部は、怒濤の群れをなしてここジュネーブにやってきた。目的は、時計を見ることだ。何せロレックス、パテック フィリップ、カルティエ、チューダー、ゼニス、A.ランゲ&ゾーネ、ヴァシュロン・コンスタンタンなど、数えきれないほどのブランドが出展しているのだ。新しいものや素晴らしい時計。まさに選り取り見取りだ。
さて、私たちはそれらを直で見て写真に撮った。それらについて記事で取り上げており、ポッドキャストで議論した。これらの記事はすべて、ここで読むことができる。
Watches and Wondersは、様々な意味で、その年の時計業界のトレンドを決定づけることから、私たちは引き続き記事を発信し続けたい。現時点で、特に印象深かったのは、以下の時計たちだ。
最小のケースで最大の効果をもたらした時計
私は小柄な人間なので、小さな時計が好きだ。しかし、まさか31mmまで小さくなるとは思ってもみなかった。そして、ステンレススティールとゴールドのツートンカラーの新作チューダー ブラックベイ 31をスナップしたところ、軽く目まいを感じたほどだ。同僚たちがBBプロやGMT “ルートビア”などのアダルトサイズの新商品を称賛している間、私はボーイズサイズのモデルに興奮した状態だったのだ。その小ささときたら、Thom Browne(トム・ブラウン)のシュリンク(縮んだ)スーツのようなスタイルの変遷、プロポーションの再定義のような、計算間違いではない、敢えて狙いを定めたように思えた。その場にいた誰かは忘れたが、私の手首を見下ろし、"それ、似合うよ!"と驚きながら言った。そして私は、“わかってるよ。これこそ求めていた時計だよ。”と答えた。BB31を本来の持ち主に返した後、私は展示会場を彷徨い、他にもたくさんの美しい時計を目にしたのだが、その中でこの時計と同じくらい印象に残った時計が一つだけあった(どれかはご想像にお任せする)。翌日、私は再びチューダーのブースを訪れ、この小さな時計がどうなっているか確認した。すぐに恋しくなってしまったのだ。- ニック・マリノ(Nick Marino)
大成功の予感
先に断っておくと、私はプレスリリースを目にしたときから、カルティエのブラックダイヤル タンク ルイ・カルティエを完全にひいき目で見ている。ジェットブラックのダイヤルにカルティエ タンクほどシックな組み合わせはないだろう。それなのに、シンプルなようでいて、この時計を実際に手に取って見たとき、その外観の面白さに驚かされた。ラッカーで吹いたダイヤルとゴールドの特別感が、大ヒット商品間違いなしと私を確信させた。価格は妥当で(手巻きのタンクで、これほど美しい時計としては)、人類史における車輪の発明ほどのインパクトはないものの、この愛しい小さな時計がいたる所で見かけるようになると思っている。- ノラ・テイラー(Nora Taylor)
展示会で出会った最も興味深い時計
僕はヴァン クリーフ&アーペル レディ アーペル ユール フローラルのような時計は見たことがなく、もしスケジュールがタイトだったら、おそらく目にすることはなかっただろう。レディ アーペル ユール フローラルは、38mmのWG製ケースに格納された、12個の機械仕掛けの花が作動して時間を表示する、奇抜な技術の賜物である。非常に複雑なケース内に完全に隠された自動巻きムーブメントを使用し、花弁は特殊なサイクルで開き、1時間の始まりに開き、次の時間が近づくと閉じる。各時刻の花の模様は、3サイクルの開花ローテーションに基づいており、一見すると花はランダムに咲いているようだ。レトログラードのミニッツ表示が左側ケースの側面に隠されており、その視覚効果はユニークで、僕が普段時計で注目するところとはまったく異なり、完全に驚嘆させられるものだ。僕の腕には似合わないかもしれないが、レディ アーペル ユール フローラルは間違いなくハートを鷲掴みにした。- ジェームズ・ステイシー(James Stacey)
あなたの心を変える時計
自分が何を愛しているのか、よくわかったつもりでいることがある。それは自分が心に決めたブランドの時計であり、Watches and Wondersのカーペットで覆われた壮大なホールで見ることを楽しみにしている時計だ。私の場合、それはロレックスのスポーツモデルの新作であったはずだ。しかし、カルティエに足を運び、ベージュのサントス デュモンを見て、その魅力に取り憑かれてしまった。この時計は今週、カルティエのなかでも、そしてショー全体でも、あまり注目されていないかもしれないが、この時計を見て、そのラッカーダイヤルの美しさの餌食にならない人はいないと賭けてもいい。カルティエがケースにローズゴールドを採用したのは、適切だ。この素材はロマンティシズムに溢れているからだ。本作品は、あなたを魅了することだろう。どうぞお楽しみに。- ダニー・ミルトン(Danny Milton)
すぐに試着する必要があったワイルドな時計
今年のフェアでは、カルティエの動物をテーマにした作品をはじめ、ワイルドな時計が数多く並んだが、カルティエ メティエ・ダール クラッシュ ティグレ メタモルフォーズは中でも際立っていて、発表されてから私の腕に乗せるまでの時間が最も早かったモデルだ。クラッシュはすでに珍しい時計で、最も伝統的なモデルでさえ、まるでサルバドール・ダリの家で誰かが美しい時計をちょっと長くラジエーターの上に置いた(ので溶けた)かのように見える。しかし、この新しいクラッシュは、まったく別の次元で長くラジエーターの上に放置されていたのだろう。参ったな、こいつはワイルド過ぎる。発表されたとき、私はすぐに試着することができなかった。クラッシュは大きい時計ではないし、私の手首も細いのだが、私が長年にわたって何かを学んだことといえば、それは常に自分のタトゥーの色にマッチしそうな時計を身に着けることだ。カルティエの芸術的精神と、宝石と金の神へ捧げる生け贄が、この作品のなかで崇拝されている。好きなものを何でも買える経済的な余裕があれば、この時計は常に身につけ日常使いすることになるだろう。- アトム・ムーア(Atom Moore)
ベストウォッチとなりうるベストな復刻版
ヴァシュロン・コンスタンタン Ref.222の復刻は、決して意外なニュースではなかった。1970年代にデビューしたどんな時計でも、現代に復刻すること自体は特別驚きに値しない。何しろ、世界で最も人気のあるふたつの時計、ロイヤル オークとノーチラスは、その時代に生まれたものだからだ。そのため、ヴァシュロンが過去に手を伸ばし、それらのアイコンと競うように作った時計を復活させることは、実はある種の必然のように思われた。しかし、Ref.222を実際に手にしてみて、これほどまでに素晴らしいとは思ってもいなかった。私はこれまでRef.222の実物を見る機会がなく(ヴァシュロンの発表会では実物が展示されていた)、その反応を見るのは初めてだった。しかし、新しいRef.222を手に取り、試着したとき、私は完全に驚かされたのだ。Cal.1120を搭載したステンレススティールのモデルでもよかったと思うのだが、YGと最新のムーブメントを採用したことで、新しいRef.222の存在感と威厳がさらに増しているとさえ思う。この記事を書いている時点では、Watches and Wondersはまだ開催中なので、まだはっきりしたことは言えないが、今回の新作のなかでは一番好きな作品かもしれない。- ジャック・フォースター(Jack Forster)
新参者にしてベストな時計
同業者からは異論もあるかもしれないが(このリストに居並ぶカルティエを見ればわかるように)、私はグランドセイコーが今年のトレードショーを完全に、そして徹底的に支配したと思っている。日本の時計メーカーとしては初めてのジュネーブ出展であり(それまではバーゼルで発表していた)、パレクスポ会場では非西欧の時計メーカーとしてはグランドセイコーが唯一の存在であった。グランドセイコーは、初の機械式複雑時計の投入や、個人的に大好きなスプリングドライブダイバーズのうっとりするようなアップデート、そして大ヒット間違いなしのGMTのペアを発表し、初年度とは思えないほどのパワーを発揮していた。また、多くのブランドがカラーバリエーションの追加や既存モデルの進化を重視し、安全策をとった。グランドセイコーは、明らかにその申し合わせの蚊帳の外だったようだ。- ローガン・ベイカー(Logan Baker)
もう二度と見られないかもしれない時計
タグ・ホイヤー カレラ プラズマを目にすることができたのは、今回が一度きりだったような気がする。製造数が非常に少ないため、タグ・ホイヤーはこの時計を監視するために独自の警備隊を組織しているほどだ。リューズは大きなダイヤモンドでできており、近所のブティックで気軽に試着できるような類の時計ではない。実際、展示会でも、50万スイスフラン(日本円未定)のこの時計を本気で買おうとしない限り、試着することは許されなかった。それでも、見るからにカッコいい。そして、ガラス越しであっても、現代の時計製造における素材革命、ラボでダイヤモンドを人工的に作り出す方法、カーボンのさまざまな表情などについて、必要なことを教えてくれ、超現実的な世界に引きずり込んでくれた。- コール・ペニントン(Cole Pennington)
最も自分らしい時計(そして絶対に外さない時計)
最初は、ブラックとスティールのカルティエ サントスが目に留まった。この時計の曲線が好きで、ちょうどいい感じだったからだ。その後、ブルガリの新しいSketch(スケッチ)を見たのだが、こちらはもっとすごいことになっている。どちらが好きというわけではないが、スタイル的にはこの2本が私のトップだ。Sketchは私の性格にぴったりで、ドレッシーでアートな雰囲気もあり、カジュアルでもある。正直、毎日でも着けられそうな感じだ。でも、忘れてはならないのは、新しいブラック サントスだ。こちらは手放せなくなりそうな一本だ。- ティファニー・ウェイド(Tiffany Wade)
ベスト作曲賞をこの時計に
ショパールのL.U.Cコレクションは、マニアックなオートオルロジュリー(haute horlogerie)界に早くから参入していた時計メーカーだ。そのクラシックなデザインと精巧な機械式ムーブメントは、’90年代後半から’10年代初頭にかけてパテック フィリップと比較されるまでになった。フィリップ・デュフォーにスイス初の顧客と言わしめたほどの時計愛好家であるカール・フリードリッヒ・ショイフレ(ショパールの共同経営者)は、伝統を重んじながらも技術を有意義に発展させた時計ムーブメントを製造している。今年、ショパールはL.U.Cの25周年を記念して、ゴングがサファイアクリスタル製のリピーター3機種(うち1機種は全てをサファイアクリスタルのみで製作した)を発表した。ショパールがサファイアガラスの音響効果を利用したのは初めてではないが、みっつの異なるバージョンの一斉オーケストレーションは、私の耳を釘付けにした。- ジョン・ビューズ(Jon Bues)
多くの人の意表を突くベスト・サプライズウォッチ
ペプシカラーのベゼルを持ったブラックベイ GMTがラインナップされていることから、もしかしたらこの時計の登場を予感していた人はゼロではないかもしれない。だが、きっと多くの人がチューダーの新作、ブラックベイ プロに驚いたのではないだろうか? チューダーは今年、新しいプロフェッショナル向けのツールウォッチとしてブラックベイ GMTと同じムーブメントを搭載した、固定式ベゼルを持つブラックベイ プロを発表した。何よりも目を引いたのは、そのデザインだ。明らかにロレックスが1971年に発表したエクスプローラーⅡのRef.1655を彷彿させるデザインなのだ。スティールベゼルに直接刻まれた24時間表示、そして大きな矢(Freccione)ではなく、形こそスノーフレークだが、24時間針はエクスプローラー Ⅱを彷彿とさせるオレンジカラーが採用されている。筆者がロレックスの時計のなかで最も好きなデザインは、エクスプローラー ⅡのRef.1655だ。シンプルな見た目のモデルが多いなか、イナズマ針のミルガウスと並んで、遊び心のある存在感あふれるデザインがとても好みなのだ。今でも欲しいと思っているが、普段使いしたいかと言われるとNOだ。なかなか手に入りにくい貴重な存在となった今、気軽にはつけづらい。そのため、経年変化したRef.1655の雰囲気を持つモデルがロレックスから出たらいいのに、と思っていたのだが、まさかチューダーから登場しようとは…。筆者にとってブラックベイ プロは、Watches & Wonders 2022で発表された新作のなかで最も欲しいと思った時計であり、最も驚かされた時計ともなった。- 佐藤杏輔
リューズが逆側にあるという提案。純粋なテイスト
逆リューズのGMTマスター Ⅱ。ロレックスによる珍しい左リューズモデルであり、GMTマスターとしては初めてのグリーン×ブラックのベゼルとあり(ちなみにGMT針のグリーンは、過去に存在したブラックベゼルのGMTマスター Ⅱと同じ色)、別に僕がここで改めて紹介するまでもなく今回のウォッチ・オブ・ショーにノミネートされる1本だ。ロレックスはこの時計を“左利き用というわけではなく、あくまで新しい提案”としていて、確かに、左手につけていつもと違ったテイストを楽しめる時計になっている。9時位置に移動された日付表示はちょうど袖口に隠れるため、デイトウィンドウ嫌いな愛好家の方にも気に入られるかもしれない。
しかしながら、僕がこの時計をに引かれた理由はそんな当たり前のことではない。わずか1mmのケースサイズ変更や、色違い、ブレスレット仕様違いを“新作”とするロレックスが放つ、ここまでの新しい提案に刺激されたのだ。クラウンによる逆クラウン。何か意味ありげで、あのロレックスがここまでの変化ある提案をしているということが、新しい時代を予感させる。-関口 優
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