我々にとって多くの場合、時計の入り口となるのはステンレススティールという素材だ。スポーティで弾力性に富み、控えめな印象がある。金やプラチナに比べ素材としての価値が低いため、貴金属に代わる、より手頃な選択肢として登場した。我々がこうしたスティール製の時計を好むようになったのは、現代のテイストが往年のツールウォッチへの共通の愛着によって定義されているからである。つまり、兵士、パイロット、登山家、ダイバー、レーサー、宇宙飛行士のための時計のことだ。しかし、当時、スティールウォッチは実用的なものであり、文字通り、使い倒される道具だった。ではいい時計と言えば? それはゴールドの時計であり、一般的にはイエロー系の時計だった。
長年会社に勤めると、金時計をもらうことがある。それは退職を祝った時計であり、自分の価値を証明する時計でもあった。例えば、ロレックスのデイデイトは現在では「プレジデント」と呼ばれている。そのユニークなゴールドのブレスレットと、多くのアメリカ大統領に選ばれていることから、最高級のステータスシンボルになっているのだ。
ここ数年、時計愛好家は、時計産業全体がゴールドからスティールへの移行が進んでいる(しばしば嘆かれている)ことに気づいている。私のコレクションにはかなりの数のスティールウォッチがあるので、それはよくわかる。しかし、オーデマ ピゲやパテック フィリップのような、優れたスティール製スポーツウォッチの市場は熱狂的で、貴金属に匹敵する価格基準を作り出している。スティールは、もはや倹約のための代替品ではない。SS製のノーチラスやロイヤル オークで家を買うことができるのだから。
本来なら何も問題はない。市場は市場であり、我々の購買パターンが市場の変動を決定するのだ。しかし、市場は時間の経過とともに変化するものであり、私はそろそろ甘美に輝くゴールドの方向へ戻る動きを見たいのだ。私はHODINKEEきっての映画愛好家であると同時に、ツートンの時計をこよなく愛する人間でもある。私がコンビを好むのには理由があるのだ。ゴールドとスティール、どちらかを選ぶ必要がないからだ。
ツートンへの愛着は、金無垢の時計に対する情熱へと徐々に成熟していった。かつては私の腕には似合わない、金持ち用時計に見えたが、今では憧れに値する時計だと感じている。そして突然、私の好きなスポーツモデルのゴールド版のことしか考えられなくなったのだ。金無垢のサブマリーナー、金無垢のGMTマスター、金無垢のゼニス エル・プリメロ、そして先月からは金無垢のムーンウォッチが私の頭を埋め尽くしている。
ゴールドには、時計製造におけるある種の洗練をはっきりと物語るものがある。金無垢の時計は、スティールの時計のようにラグジュアリーさを隠すことができない。隠れることができない、それがポイントだ。もちろん、ホワイトゴールドの場合は別だが(今回の記事では取り上げない)。
さて、その桁外れの金額(特にマッチする金のブレスレットがついている場合)など、ゴールドの時計を所有するには特有の欠点があるが、それはおわかりだろうと思う。ゴールドはまた、簡単に傷がつきやすく、ステンレススティールと比較してもそれは明らかだ。気の弱い人は、5桁ドルの値段の時計が摩耗しているのを見ると、怖気づくかもしれない。私自身は、傷は所有することの一部であり、どんな時計も美しく見せてくれるものだと考えている。
HODINKEEでは、ゴールドを試すことを恐れないコレクターについて、いくつかの素晴らしいエピソードを紹介してきた。特に、ジェイソン・ヒートンによる、有名なダイバーであり探検家でもあるシルヴィア・アール(Sylvia Earle)博士が、金無垢のロレックス デイトジャストを身につけて海に飛び込んだというエピソードを思い起こしている。また、コール・ペニントンがブレット・ギリアム(Bret Gilliam)氏について書いた "金無垢のロレックス サブマリーナーで深海にいった男"という記事もある。
最近、ゴールドウォッチのことばかり考えているので、HODINKEEのEditor's Picksで夢の時計をリクエストされたとき、金無垢の36mmロレックス エクスプローラーを夢想してしまった。今でも夢が叶う日が来るのを待っている。というわけで、HODINKEEの過去の記事から、ゴールドウォッチにまつわる素敵なエピソードをピックアップしてみた。優雅に、楽しんで欲しい。
特集記事
コール・ペニントンは、ダイバー、ブレット・ギリアム氏がイエローゴールドのサブマリーナー Ref.1680を身につけて1万7000本以上のダイビングをしたという興味深い物語をお届けした。
HODINKEEの編集長であるジャック・フォースターが、ゴールドのロレックス デイデイトを何年も待ち望み、そしてユニークで素晴らしい状況下でついに手に入れたことの意味を語るパーソナル・エッセイ。
この作品は、少し前のものだ。HODINKEEの創設者であるベン・クライマーは、ソリッドゴールドのAP ロイヤル オーク クロノと1週間を過ごし、期待通りの(文字通り)ヘビーヒッターとなった。
このウィークエンドラインナップで最も新しいゴールドウォッチに関する記事は、ジェームズ・ステイシーが執筆した(写真も!)、スピードマスター ムーンウォッチシリーズの最新のゴールドウォッチについてだ。
このTalking Watchesでは、豪華な黄金の時計を所有するコレクターに出会った。
ゴールドのデイデイトなんて、なんだか馬鹿げている。あまりに大袈裟だ......。でも、心が求めるのには理由がある。
– ジャック・フォースター私たちのゴールドウォッチコレクションはこちらからご覧いただけます。