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オーデマ ピゲのCEOであるフランソワ-アンリ・ベナミアス(François-Henry Bennahmias)氏が、2023年末に同社を退社することが明らかになった。彼の退任のニュースは、2022年1月にMissTweed.comのアストリッド・ウェンドランド(Astrid Wendlandt)氏によって最初に報告され、ベナミアス氏と同社の取締役会長であるジャスミン・オーデマ(Jasmine Audemars)氏がLe Tempsのインタビューで確認したものである。ベナミアス氏は同誌に対し、「私は10年間このポジションにいましたが、会社のためにも、そろそろ動くべき時期だと思います」と語っている。
ベナミアス氏は1994年からオーデマ ピゲに勤務し、1999年に北米のマネージング・ディレクターに就任。2012年に暫定CEOに任命され、2013年にその肩書きが正式なものになった。
ベナミアス氏は、オーデマ ピゲを高級時計における目覚ましい地位へと導いた。2013年のWorldTempusとのインタビューで彼は、2012年に 「オーデマ ピゲは6億スイスフラン(約840億円)強の売上をあげ、3万1000〜2000本の時計を販売した 」と語っていた。2018年、オーデマ ピゲは初めて売上高10億スイスフラン(約1400億円)を超え、2021年にはそれが16億スイスフラン(約2240億円)に達し、パテック フィリップを抜いてスイスでの売上高第4位の時計ブランドとなった。
売上が増加する一方で、在庫と販売環境の管理を強化するベナミアス氏の戦略の一環として、販売拠点は減少した。最も大きな革新は、APハウスの開発だ。APハウスは、時計の販売だけでなく、社会的な交流を促進するために設計されたプライベートクラブのような雰囲気のスペースだ。APはまた、2020年に完成した新しいAPミュージアムの設立により、ル・ブラッシュでの足跡を増やした。
最近、ベナミアス氏はオーデマ ピゲを代表するアイコニックなモデルであるロイヤル オークの50周年記念モデルのデザインと製作を統轄した。過去10年半のあいだにオーデマ ピゲはコレクションの数を減らし、ジュール オーデマ、エドワード・ピゲ、トラディション、ミレネリーの各コレクションは廃止された。ベナミアス氏の退任に伴い、APは以下の4つのコレクションを残すことになる。ロイヤル オーク、ロイヤル オーク オフショア、ロイヤル オーク コンセプト、CODE 11.59だ。
ベナミアス氏は、マーベル・シネマティック・ユニバースでチャドウィック・ボーズマン(Chadwick Boseman)演じるブラックパンサーをモチーフにした限定モデル、ロイヤル オーク コンセプト トゥールビヨンで始まったマーベルとのパートナーシップなど、注目を集め、議論を呼んだムーブを担ってきた。しかし、彼が最も広く議論され、話題となったプロジェクトは、間違いなくCODE 11.59コレクションの発表であり、まったく新しい自社製自動巻きクロノグラフ、新しいタイム&デイト自動巻きムーブメント、ミニッツリピーターを含む13種類のリファレンスで2019年に発表した意欲作であった。
ベナミアス氏がAPで行ったすべての決断が、物言うことで知られるオンラインの時計コミュニティから手放しの賞賛を受けたわけではないが、オーデマ ピゲでの彼の10年間は、前例のない成長と否定できない商業的成功の時代だった。彼が今後も時計業界にとどまるかどうかは未知数で、本人もAP社も次なる展開を示唆していない。しかし、時計業界であれほかの業界であれ、彼が再び指導的役割を担うことになれば、それは注目に値するニュースになることは間違いだろう。
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